家賃査定 読了 12分

家賃査定システムの比較2026|査定書とオーナー提案に使うときの確認点、契約とデータの注意

家賃査定システムを入れる目的が、募集賃料の決定か、管理受託の提案か、更新時の見直しかで、比べる点は変わります。査定書の中身、オーナー提案での注意、件数と費用、データと契約の確認点を、法令の条文と合わせて整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
家賃査定システム比較2026|査定書・オーナー提案・契約とデータで見る確認点
目次

家賃査定システムは、使う目的を先に決め、その目的で出す書類(査定書や提案書)が根拠と前提を示せるかで比べると選びやすくなります。募集賃料を決めるのか、管理受託の提案に使うのか、更新時の賃料の見直しに使うのかで、必要な機能は変わります。この記事では製品の順位や料金は載せず、比べる観点と導入前の確認点を整理します。なお、筆者が代表を務めるウルスタ株式会社の製品にも「賃料査定」という機能があります。

使う目的を先に決める

家賃査定システムは、同じ「賃料の目安を出す」道具でも、使う場面によって重視する点が違います。次の表で、自社で最も回数の多い目的を決めてから比べます。

目的主に使う場面重視する観点
募集賃料の決定空室の募集を始めるとき、長く空いている部屋の見直し近い時期の成約事例を見られるか、条件を変えたときに金額がどう動くか
管理受託の提案新しいオーナーへの提案査定書の見やすさ、根拠の説明、会社名を入れた出力
更新時の賃料の見直し更新が近い契約の確認今の賃料と周辺の水準を比べられるか、複数の部屋をまとめて見られるか
収益物件の売買売却の査定、購入の検討賃料の目安を利回りの計算に使える形で出せるか

目的が複数ある場合も、すべてを1つの製品で満たそうとするより、最も回数の多い目的で使いやすいものを選び、他の目的は手作業で補えるかを見るほうが現実的です。

査定書で確かめること

オーナーに渡す査定書は、金額だけでなく、その金額の前提が読み取れることが大切です。確かめる項目の例です。

  • 対象物件の条件(所在地、築年数、面積、間取り、階数、設備)が記載されるか。
  • 比べた事例(所在地の範囲、面積、賃料、募集か成約か、時期)が示されるか。
  • 査定した日と、使ったデータの時点が書かれるか。
  • 金額を幅で示せるか(下限と上限など)。
  • 担当者のコメントを書き加えられるか。会社名や担当者名を入れられるか。
  • 出力の形式(PDF、表計算ソフト)と、作った査定書を保存して後から呼び出せるか。

根拠の事例が示されない査定書は、オーナーに「なぜこの金額か」と聞かれたときに答えにくくなります。試用の際は、実際に査定書を1枚作り、社内の別の担当者に読んでもらい、説明なしで前提が分かるかを確かめると違いが見えます。

査定書の構成の例

システムが出す査定書をそのまま使う場合も、自社で表紙や説明を加える場合も、次のような構成になっているかを見ると、オーナーに伝わりやすいかを判断できます。

項目書く内容
対象の部屋所在地、築年数、面積、間取り、階数、主な設備
査定の前提査定した日、使ったデータの時点、募集賃料と成約賃料のどちらを使ったか
比べた事例所在地の範囲、面積、賃料、時期
査定の結果賃料の目安(幅で示す)
担当者の所見現地で確かめた有利な点と不利な点、提案する賃料と募集の進め方
注意書き目安であり将来の家賃を約束するものではないこと、鑑定評価ではないこと

精度の数字は条件をそろえて読む

精度を数字で示している製品もありますが、何と比べた誤差か(募集賃料か成約賃料か)、どの指標か、対象の期間・エリア・件数、誰が測ったかが違えば、数字を並べても比べられません。条件が示されていない場合は、自社の成約事例を使って確かめます。手順は賃料査定ツールの比較の記事で紹介しています。

オーナー提案に使うときの法令上の注意

「鑑定」「鑑定評価」と書かない

不動産の鑑定評価に関する法律は、「不動産の鑑定評価」を、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することと定義し(2条1項)、他人の求めに応じ報酬を得てこれを業として行うことを「不動産鑑定業」としています(2条2項)。不動産鑑定業者の登録を受けない者は、不動産鑑定業を営めません(33条)。提案書や査定書には「鑑定」「鑑定評価」という言葉を使わず、「査定」「賃料の目安」と書きます。

管理受託の契約に進むとき

賃料の提案をきっかけに管理受託契約を結ぶ場合、登録を受けた賃貸住宅管理業者は、契約を結ぶまでに書面を交付して重要事項を説明します(賃貸住宅管理業法13条1項)。説明事項には、管理業務の内容及び実施方法、報酬の額並びにその支払の時期及び方法、報酬に含まれていない費用で通常必要とするものなどが含まれます(施行規則31条)。査定書で示した賃料の見込みと、管理の内容や費用の説明は分けて、オーナーが比べやすい形にしておきます。

サブリースの提案で賃料を示すとき

サブリース(特定賃貸借契約)を勧誘する場合は、賃貸住宅管理業法28条(誇大広告等の禁止)と29条(不当な勧誘等の禁止)がかかります。28条は、特定転貸事業者が支払うべき家賃などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示を禁じています。29条1号は、勧誘の際に、相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を禁じています。査定の金額は今の時点の目安であり、将来の家賃を約束するものではないことを、書面で示しておきます。

更新時の賃料の見直しに使うとき

更新が近い契約について、今の賃料と周辺の水準を比べる用途もあります。賃料の改定は、入居者との合意で行うのが基本です。借地借家法32条1項は、建物の借賃が、租税その他の負担の増減、土地や建物の価格の上昇や低下その他の経済事情の変動、又は近傍同種の建物の借賃との比較により不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって借賃の増減を請求できると定めています。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うとされています。

同条2項は、増額について協議が調わないときは、請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃を支払えば足りるとしています。つまり、査定の結果が今の賃料より高く出ても、それだけで入居者に新しい賃料を求められるわけではありません。オーナーに見直しを提案するときは、査定の結果は話し合いの材料の一つであること、入居者の合意が要ること、合意できない場合の扱いを合わせて説明します。

複数の部屋の見直しを検討する場合は、部屋ごとに今の賃料、査定の結果、入居の時期、更新の時期を並べた一覧を作ると、オーナーと優先順位を話し合いやすくなります。システムを比べるときは、こうした一覧を作るためのデータを書き出せるかも確かめます。

件数と費用の考え方

家賃査定システムの料金は、月額の固定、査定件数に応じた段階、利用者数に応じた段階など、組み立て方が製品ごとに違います。料金は改定されることがあるため、検討する時点の公式ページと見積もりで確かめます。比べるときは、自社の月の査定件数で1件あたりの費用に直すと比べやすくなります。

1件あたりの費用の計算例

仮の数字で計算例を示します。月額2万円で、月の査定件数が40件なら、1件あたり500円です(20,000÷40)。同じ月額でも月10件しか使わなければ、1件あたり2,000円になります。繁忙期と閑散期で件数が変わる場合は、年間の件数で計算します。

あわせて、件数の上限を超えたときの扱い、利用者を増やしたときの料金、査定書の出力が別料金かどうかも確かめます。試用から本契約に切り替わる条件(期間が過ぎると自動で有料になるかどうか)も、申し込む前に確かめておきます。

導入前に社内で決めること

システムを入れる前に、次の点を社内で決めておくと、試用の段階から比べる観点がぶれにくくなります。

  • 誰が使うか。営業の担当者全員か、賃料を決める担当者だけか。利用者数で料金が変わる製品では、費用にも影響します。
  • 査定書の雛形。会社として載せる項目(根拠の事例、前提、担当者のコメント)と、表現の決まり(「鑑定」と書かない、将来の家賃を約束しない)。
  • 最終決定の手順。査定の結果をもとに賃料を決める人と、オーナーへの提案を確認する人。
  • 記録の残し方。査定額、提案額、成約賃料を並べて残し、定期的に差を見直す。

これらを決めてから試用すると、「この製品で社内の決めごとどおりに査定書を作れるか」という具体的な基準で比べられます。

データ・個人情報・契約の確認点

データの書き出し

過去の査定結果や査定書を、解約後も使える形で書き出せるかを確かめます。オーナーへの説明の経緯として残しておきたい資料だからです。書き出しを自社でいつでも行えるか、提供会社への依頼が必要かも聞いておきます。

個人情報の委託

査定書にオーナーの氏名を入れる、自社の成約事例を取り込むといった使い方では、個人データを外部のサービスで扱うことになります。個人情報保護法23条の安全管理措置と、委託に当たる場合の25条の委託先の監督を踏まえ、次の点を利用規約と契約で確かめます。

  • 提供会社がデータにアクセスする場面と、その範囲。
  • 入力したデータを提供会社が別の目的で使うことがあるか。
  • データの保存場所と、再委託先の有無。
  • 漏えい等が起きたときの連絡の方法。
  • 解約後のデータの削除。

契約期間

最低契約期間、自動更新の有無、解約の申し出期限、料金改定の通知方法を確認します。解約の申し出期限は、社内の予定表に入れておくと、乗り換えの時期を逃しにくくなります。

ウルスタくん(この記事を出しているウルスタ株式会社の製品です)にも、「賃料査定」という名前の機能があります。物件・入居者の管理、更新が近い契約の一覧、募集図面(マイソク)、書類と電子サインなどと同じサービスの中にある機能の一つです。自社製品のため、この記事では他の製品との優劣や査定の数字の当たり外れは書きません。検討する場合も、この記事の観点で確かめてください。

よくある質問

Q1. 賃料査定ツールと家賃査定システムは違うものですか

呼び方の違いで、決まった区別はありません。どちらの名前の製品でも、元データ、根拠の表示、査定書の出力、契約の条件を同じように確かめます。

Q2. 査定額をそのまま募集賃料にしてよいですか

査定額は目安です。現地の状態、募集する時期、近い時期の成約事例を合わせて担当者が判断し、決めた理由を記録しておくと、オーナーへの説明や次の募集に使えます。

Q3. 査定書にオーナーの名前を入れても問題ありませんか

入れること自体は一般的ですが、氏名は個人データとして外部のサービスに保存されます。提供会社のデータの扱いを利用規約と契約で確かめ、社内で見られる人を限っておきます。

Q4. 精度の数字が高い製品を選べば安心ですか

測った条件が違えば、数字は比べられません。数字の条件を提供会社に確かめるか、自社の成約事例を入力して、査定額と成約賃料の差を確かめるほうが判断の材料になります。

Q5. 更新のときに査定の結果を理由に賃料を上げられますか

賃料の改定は入居者との合意で行うのが基本です。借地借家法32条は、近傍同種の建物の借賃と比べて不相当となったときなどに増減を請求できると定めていますが、協議が調わないときは、請求を受けた側は裁判が確定するまで相当と認める額を支払えば足りるとされています。査定の結果は話し合いの材料の一つとして扱います。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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