相続した世田谷の実家、売る・貸す・残すはどう決める?使える特例と期限

この記事の結論
- どれを選ぶにしても、まず相続登記です。2024年4月1日から義務になり、相続を知った日から3年以内に申請します。
- 売るなら、条件を満たせば「空き家の3,000万円特別控除」が使えます。期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。貸すと、この特例は使えなくなります。
- 残す(空き家のまま持つ)なら、管理が必要です。管理が行き届かず区から勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減が外れます。
最初にやること:相続登記
売るにしても、貸すにしても、残すにしても、最初に必要なのは実家の名義を相続した人に変えること(相続登記)です。名義が亡くなった方のままでは、売ることも、きちんとした賃貸の契約を結ぶこともできません。
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。
- 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請します。
- 正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。
- 2024年4月1日より前の相続も対象です。この場合の期限は2027年3月31日です。
遺産分割の話し合いがまとまらないときは、「相続人申告登記」という簡単な手続きで、ひとまず義務を果たすこともできます。
売る・貸す・残すを比べる
| 売る | 貸す | 残す(空き家のまま持つ) | |
|---|---|---|---|
| お金 | まとまったお金が入る。条件を満たせば税の特例あり | 毎月の家賃。修繕や管理の費用がかかる | 固定資産税と管理の費用がかかり続ける |
| 手間 | 売れるまで。売ったら終わり | 入居者対応・修繕が続く(管理会社に任せられる) | 換気・草木・郵便物など定期的な見回り |
| 税の特例 | 空き家の3,000万円特別控除、取得費加算の特例 | 貸すと空き家の特例は使えなくなる | 管理不全で勧告を受けると、土地の軽減が外れる |
| 向いている人 | 住む予定がない、相続人で分けたい | 将来住むかもしれない、家賃収入がほしい | 近いうちに家族が住む予定がある |
迷ったときは、期限のある特例から逆算するのが失敗しにくい考え方です。とくに「空き家の3,000万円特別控除」は、一度貸してしまうと使えなくなるので、貸す前に必ず比べてください。
売るなら:空き家の3,000万円特別控除
亡くなった方が一人で住んでいた家を相続して売った場合、条件を満たせば、売った利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306)。主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 主な条件 |
|---|---|
| 建物 | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家。マンションなど区分所有の登記がされた建物ではないこと |
| 住んでいた人 | 相続の直前に、亡くなった方以外に住んでいた人がいないこと(老人ホームに入所していた場合も、条件を満たせば対象) |
| 相続後の使い方 | 相続のときから売るときまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと |
| 売る時期 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。かつ、2027年(令和9年)12月31日までの売却 |
| 売る金額 | 1億円以下 |
| 耐震・取り壊し | 耐震基準を満たすようにするか、取り壊して更地にする。2024年1月1日以後の売却なら、売った年の翌年2月15日までに行えばよい |
| 相続人が3人以上 | 2024年1月1日以後の売却では、1人あたり2,000万円まで |
例として、亡くなったお母さまが一人で住んでいた1975年築の家を、相続した2人の子が売る場合を考えます。2人とも住んでおらず、誰にも貸していなければ、条件に当てはまる可能性があります。
売るなら:取得費加算の特例
相続税を払った人が、相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合、払った相続税の一部を、売った不動産の取得費に足せる特例があります(国税庁 No.3267)。取得費が増えるので、売った利益にかかる税金が軽くなります。
この特例と、空き家の3,000万円特別控除はどちらか一方しか使えません。相続税がかかった方は、どちらが有利かを計算してから選びます。
なお、自分が住んでいた家を売るときの「居住用財産の3,000万円特別控除」(No.3302)は、売る人自身が住んでいたことが前提です。相続した人が住んでいない実家には、この控除は使えません。
貸すなら:特例と管理の考え方
世田谷区の一戸建ては、賃貸でも借り手が見込める地域が多くあります。将来家族が住むかもしれない、家賃収入がほしいという場合は、貸すのも一つの方法です。
ただし、一度貸すと、空き家の3,000万円特別控除は使えなくなります(相続のときから売るときまで、貸付けに使っていないことが条件のため)。数年後に売るつもりがあるなら、貸す前に、売った場合の税金と比べてください。
期間を決めて貸したいときは、契約の期間が来たら終わる「定期借家契約」が向いています。修繕・入居者の募集・家賃の管理は、管理会社に任せることもできます。
残すなら:空き家の管理と固定資産税
家が建っている土地は、固定資産税が軽くなる「住宅用地の特例」を受けています。ところが、2023年12月13日に施行された改正空家法で、管理が行き届かない「管理不全空家」として区から勧告を受けると、この特例が外れるようになりました。これまでは、倒壊の危険があるような「特定空家」だけが対象でした。
空き家のまま持つなら、換気、雨漏りの確認、庭木の手入れ、郵便物の整理などを定期的に行う必要があります。遠方に住んでいて通えない場合は、見回りを頼める先を決めておきましょう。
期限を一枚にまとめる
| いつまで | 何を |
|---|---|
| 相続を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税の申告・納付(相続税がかかる場合) |
| 相続で取得したことを知った日から3年以内 | 相続登記(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで) |
| 相続税の申告期限の翌日から3年以内 | 取得費加算の特例を使って売る |
| 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 空き家の3,000万円特別控除を使って売る(2027年12月31日までの売却) |
世田谷区の相談窓口
世田谷区は空き家の相談窓口を設けています。2026年10月21日からは、区の空家等管理活用支援法人が運営する「せたがや家の終活ナビ」で、売買・賃貸・片づけ・解体まで無料で相談できます。地域のために空き家を活かしたい方向けには「世田谷区空き家等地域貢献活用相談窓口」もあります。
ウルスタでも、売る・貸す・残すのどれがよいかを一緒に整理するところから相談を受けています。宅建士として売買と賃貸の両方を扱い、税理士法人での経験もあるので、税金の論点も含めて全体を見ながらお話しできます。
よくある質問
相続登記をしないと、実家は売れませんか。
兄弟で相続した実家は、誰が売る手続きをしますか。
空き家の3,000万円特別控除は、マンションでも使えますか。
実家を貸してから、あとで売ることはできますか。
出典・参考にした資料
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3307 被相続人居住用家屋等が老人ホーム等に入所した場合の特例
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」
- 世田谷区「空き家の相談窓口」
- 世田谷区「世田谷区空き家等地域貢献活用相談窓口」
2026年10月20日時点で確認した内容です。制度や期限は改正で変わることがあります。個別の税金や登記は、税理士・司法書士・税務署・法務局にご確認ください。
世田谷の家や土地のこと、まず話を聞かせてください
売るか貸すか決まっていなくてもかまいません。旗竿地や私道に面した家、相続で名義が決まっていない家など、条件が難しい家のご相談もお受けします。相談は無料です。


