国土交通省は2026年11月2日、「安心R住宅」の標章を使うときの要件を緩める告示案の意見募集を始めました。リフォーム提案書は売買契約の成立までに作ることを約束すれば足り、現況写真は所有者の同意が得られなければ掲載しなくてよい、という2点が柱です。意見の締切は2026年12月3日です(e-Govパブリック・コメントの案件ページ)。この記事では、案の中身と日程、既存住宅の売買を扱う不動産会社が今のうちに確かめておくことをまとめます。
発表の中身
意見募集の対象は「特定既存住宅情報提供事業者団体登録規程の一部を改正する告示案」です。この規程(平成29年国土交通省告示第1013号)は、国土交通大臣が一般社団法人などの事業者団体を登録し、その団体が構成員の事業者に「安心R住宅」の標章を使わせる仕組みを定めたものです(国土交通省 安心R住宅のページ)。所管は国土交通省住宅局参事官(住宅瑕疵担保対策担当)付と不動産・建設経済局不動産業課です。
改正概要(PDF)は、改正の理由を、標章を使うときに求められる書面の提出や写真の閲覧の要件が「既存住宅売買の商慣行」と合っておらず、制度を使う妨げになっているため、と説明しています。改正の中身は次の2点と、所要の改正です。
1. リフォーム提案書は「契約成立までに作る約束」でもよくなる(第10条第2項第1号ハ)
今の規程では、標章を使う前に作る書面に、基準に合うリフォーム工事が実施済みであること、またはリフォーム工事の内容と費用を書いた提案書が作成済みであることを書く必要があります。改正概要は、提案書は購入者の要望に応じて作ったり変えたりすることが多く、事業の前にできているとは限らないこと、提案どおりに工事が行われるとも限らないことを挙げています。
案では、構成員が住宅購入者に対して売買契約が成立するまでに提案書を作成することを約束する場合も、標章を使えるようにします。
2. 現況写真は、所有者の同意が得られなければ掲載しなくてよくなる(第10条第2項第3号)
今の規程では、外装・主たる内装・台所・浴室・便所・洗面設備の現況の写真等を、購入者が閲覧できる状態に置くことが求められています(登録規程(PDF))。改正概要は、所有者が住んだまま売買が進むことが多く、写真をすべて載せることをためらう所有者もいることを理由に挙げています。
案では、写真を撮ることや閲覧できる状態に置くことについて所有者の同意が得られない場合は、掲載しなくてよいこととします。
日程と対象の一覧
| 項目 | 公表された内容 |
|---|---|
| 案の公示日 | 2026年11月2日 |
| 意見の締切 | 2026年12月3日(木)23時59分(e-Gov)。要領では郵送も12月3日必着 |
| 意見の出し方 | e-Govの意見提出フォーム、電子メール(本文に直接入力)、郵送。電話では受け付けない |
| 改正する告示 | 特定既存住宅情報提供事業者団体登録規程(平成29年国土交通省告示第1013号) |
| 変わる条項 | 第10条第2項第1号ハ(提案書)、第10条第2項第3号(写真等)ほか |
| 対象 | 国土交通大臣の登録を受けた事業者団体と、その構成員として標章を使う事業者 |
| 施行日 | まだ確定していません(下の注を参照) |
| 経過措置(案) | 施行の際にある改正前の様式の用紙は、当分の間、取り繕って使える |
施行日について、改正概要の「今後のスケジュール(予定)」には、公布が「令和8年1月22日(金)」、施行が「令和9年2月1日(月)」と書かれています。一方、告示案の本文(別紙・PDF)の附則は「令和9年1月1日から施行する」としています。資料の間で日付がそろっておらず、公布の日付も案の公示日より前になっています。この記事では施行日を確定したものとして扱いません。公布される告示で確かめてください。
安心R住宅の今の要件
国土交通省の説明では、安心R住宅は、耐震性などの基礎的な品質があり、リフォームを実施済みかリフォーム提案が付いていて、点検記録などの保管状況について情報提供が行われる既存住宅に、登録団体の構成員が標章を付けて広告できる制度です(安心R住宅制度に関するQ&A(PDF))。登録規程の第10条第2項は、構成員に次のことを求めています。
| 号 | 求められていること | 今回の案 |
|---|---|---|
| 第1号 | 標章を使う前に、基準に合う既存住宅であること・共同住宅等なら管理規約と長期修繕計画があること・リフォームの実施または提案書・書類の保存状況を書いた書面を作り、写しを登録団体に出す | ハ(リフォーム)に「契約成立までに提案書を作る約束」を加える |
| 第2号 | 購入者に第1号の書面の写しを渡す | 変更の説明なし |
| 第3号 | 外装・主たる内装・台所・浴室・便所・洗面設備の現況写真等を購入者が閲覧できる状態に置く | 所有者の同意が得られないときは不要とする |
| 第4号 | 購入者が求めたら、管理規約・長期修繕計画(管理組合の承諾がある場合)や保存されている書類を開示する | 変更の説明なし |
標章を使えるのは、登録された事業者団体の構成員だけです。登録団体の一覧は国土交通省の登録事業者団体一覧で確かめられます。
不動産会社の実務で何をするか
まだ案の段階で、施行日も確定していません。今の時点でできることは次の5つです。
- 自社が登録団体の構成員かどうかを確かめる。安心R住宅の標章を使えるのは、登録団体に加わっている事業者だけです。加わっている場合は、所属する団体が改正にあわせて規約や業務の手引きを直すかどうか、団体からの案内を待ちます。
- 提案書を「契約成立までに作る」流れを、案件の管理表に入れておく。案どおりになれば、提案書が未作成でも標章を使えるようになりますが、そのかわり契約成立までに作る約束をすることになります。どの物件で約束をしたか、いつまでに誰が作るかを物件ごとに残しておくと、作り忘れを防げます。
- 現況写真の同意を、媒介契約の段階で所有者に確かめる。案では「所有者の同意が得られない場合」に写真の掲載がいらなくなります。同意を得たか、得られなかったかを、日付とあわせて書面やメールで残しておくと、あとで説明できます。
- 意見があれば12月3日までに出す。居住中の物件の写真や提案書の作り方について現場で困っている点があれば、e-Govの意見提出フォームから出せます。氏名や法人名は意見とともに公表されることがあると要領に書かれています。
- 公布されたら、施行日と様式を確かめる。資料の間で施行日がそろっていないため、公布の告示で日付を確かめます。案の附則では、改正前の様式の用紙は当分の間、取り繕って使えるとされています。
よくある質問
Q1. いつから変わりますか
まだ決まっていません。改正概要には施行が令和9年2月1日と書かれ、告示案の附則には令和9年1月1日と書かれています。公布される告示で施行日が決まります。
Q2. 写真を1枚も載せなくても、安心R住宅として広告できるようになりますか
案では、写真を撮ることや閲覧できる状態に置くことについて所有者の同意が得られない場合に、掲載がいらなくなるとされています。同意が得られる場合は、今と同じく写真を閲覧できる状態に置くことになります。耐震性やインスペクションなどほかの要件は、今回の案で変わるとは説明されていません。
Q3. 提案書を約束したのに、契約までに作れなかったらどうなりますか
改正概要と告示案には、約束を守れなかった場合の扱いは書かれていません。登録団体の規約や手引きでどう扱うかは、まだ公表されていません。
Q4. 登録団体に加わっていない会社にも関係がありますか
今回の案が変えるのは、登録団体の構成員が標章を使うときの要件です。加わっていない会社は、もともと安心R住宅の標章を使えません。ただし、安心R住宅として広告された物件を客付けする場面では、写真や提案書の扱いが変わる点を知っておくと購入者に説明しやすくなります。
出典
- e-Govパブリック・コメント「特定既存住宅情報提供事業者団体登録規程の一部を改正する告示案に関する意見募集について」(案件番号155260727・2026年11月2日公示)
- 国土交通省「特定既存住宅情報提供事業者団体登録規程の一部を改正する告示案について」改正概要(令和8年10月・PDF)
- 同 別紙(告示案・PDF)
- 同 意見公募要領(PDF)
- 国土交通省「安心R住宅」
- 国土交通省「安心R住宅 登録規程・ガイドライン、申請方法等」
- 特定既存住宅情報提供事業者団体登録規程(PDF)
- 国土交通省「安心R住宅」制度に関するQ&A(PDF)
- 国土交通省 登録事業者団体一覧
この記事は 2026-11-05 時点の情報です。