不動産会社の業務改善 読了 25分

石綿の事前調査は2026年1月に全面施行へ——賃貸管理会社が発注者として負う義務と、100万円の線引きの本当の意味

請負代金が100万円未満だから事前調査はいらない——これは誤りです。100万円は報告の閾値であって、調査そのものは規模によらずすべての解体・改修工事で必要とされています。原状回復の1室でも例外ではありません。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
アスベスト事前調査|賃貸管理の発注者実務2026
目次

2026年1月1日以降に着工する工事から、工作物の石綿事前調査にも資格者が必要になりました。令和2年7月に改正された石綿障害予防規則は、施行スケジュールの最後のピースがこれで埋まったことになります。ただ、賃貸管理の現場で本当に効いてくるのは、この資格の話そのものではありません。事前調査は、工事の規模によらずすべての解体・改修工事で必要という一行のほうです。ここを取り違えている会社が、まだ相当あります。ウルスタ代表として自社で210室の管理を預かる立場から、発注者側の実務として整理します。

【要点】2026年1月に埋まった最後のピース

結論から書きます。石綿の事前調査は、解体・改修工事の規模や金額によらず、すべての工事で必要です。よく聞く「床面積80平米」「請負代金100万円」という数字は、調査結果を役所に報告しなければならない工事の線引きであって、調査そのものが不要になる線ではありません。原状回復で1室の内装を壊すときも、給湯器を1台交換するときも、事前調査の対象です。そして2026年1月1日以降に着工する工事からは、工作物についても資格者が調査しなければならなくなりました。
項目内容
根拠法令石綿障害予防規則/大気汚染防止法/建築基準法
改正の起点令和2年7月の石綿則改正。同年10月以降、順次施行
2026年1月の追加工作物の事前調査に資格者が必要
調査の対象規模によらずすべての解体・改修工事
報告の対象床面積80平米以上の解体/税込100万円以上の改修 ほか
記録の保存調査結果・作業状況の写真とも3年間
発注者の立場届出義務と配慮義務の両方がある
石綿の使用禁止2006年9月から製造・輸入・使用等が禁止

石綿の規制は、3つの法令が重なっている

この分野が分かりにくいのは、目的の違う法令が同じ工事に同時にかかるからです。整理しておきます。

法令守ろうとしているもの所管・窓口
石綿障害予防規則工事に従事する労働者の健康労働基準監督署
大気汚染防止法周辺への飛散の防止都道府県・大防法政令市
建築基準法建築物そのものの安全性建築主事・特定行政庁

石綿則は労働安全衛生法の下にある省令で、守る相手は現場の作業員です。大気汚染防止法が守るのは近隣の住民です。建築基準法は、吹付け石綿等について増築等の改修時における除去または飛散防止措置の実施を義務付けています。三者は目的が違うので、届出の窓口も期限も別々に走ります。ひとつ出したから全部済んだ、という話にはなりません。

賃貸管理の側から見ると、この三重構造は「誰に何をいつ出すのか」という手続の話に見えます。ただ、根っこにあるのは吸えば健康を損なう繊維が、古い建物の壁や天井裏に残っているという事実です。石綿は2006年9月から製造・輸入・使用などが禁止されましたが、それ以前に着工した建築物には、防火・保温・断熱の目的で使われている可能性があります。管理を預かっている築古の物件は、まさにその年代です。

事前調査は全工事で必要——最大の誤解はここ

厚生労働省のポータルには、報告対象となる工事を列挙したうえで、注記として一行こう書かれています。事前調査そのものは、上記の規模によらずすべての工事で実施する必要があります

この一行が実務では最も重い意味を持ちます。現場でよく聞くのは、こういう会話です。今回の原状回復は40万円だから報告の対象外だね、じゃあ調査もいらないね——後半が誤りです。報告は不要ですが、調査は必要です。

工事の例事前調査結果の報告
1室の原状回復・内装解体 30万円必要不要
ユニットバス交換 90万円必要不要
外壁塗装 480万円必要必要
木造アパート1棟解体 床面積240平米必要必要
給湯器1台交換 22万円必要不要

調査を省いた工事で石綿含有建材を破砕してしまえば、飛散するのは同じです。金額が小さいから安全、ということはありません。むしろ小規模工事のほうが、養生も届出も薄いまま進みがちです。

報告が要るのは80平米と100万円から

報告対象は次のとおりです。石綿の有無によらず、該当すれば報告が必要という点に注意してください。調べた結果「無し」だったときも報告します。

区分基準
建築物の解体解体部分の床面積の合計が80平米以上
建築物の改修請負代金の合計額が税込100万円以上
特定の工作物の解体・改修請負代金の合計額が税込100万円以上
鋼製の船舶の解体・改修総トン数20トン以上

建築物の解体だけが面積基準で、あとは金額基準です。ここも取り違えやすいところで、解体工事の見積が90万円だったから報告不要、とはなりません。解体は面積で見ます。

請負代金100万円の数え方

100万円の中身の定義は、環境省の資料に明記されています。これを知らないと、境界線上の工事で判断を誤ります。

扱い内容
含む材料費を含めた作業全体の請負代金
含む消費税
含まない事前調査の費用
契約が無いとき請負人に施工させた場合の適正な請負代金相当額で判断

税込で見るという点は実務で効きます。税抜95万円の改修は、税込では100万円を超えます。見積書の税抜金額だけを見て「ぎりぎり対象外」と判断していると、報告漏れになります。

それから最後の行。請負契約が発生していない場合でも、適正な請負代金相当額で判断します。自社の職人が直接施工する自主施工の場合も、外注したらいくらかで見るということです。内製化しているから対象外という理屈は通りません。

分割して発注しても、一本とみなされる

環境省の資料には、こう書かれています。解体、改造、又は補修の工事を同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったものとみなします

ここは意図の有無を問いません。報告を避けるために分けた場合はもちろんですが、悪意なく分けた場合も同じ扱いです。たとえば同じ棟の外壁塗装を、南面60万円・北面60万円で同じ業者に2本の契約で出す。合計120万円なので、報告対象です。予算の都合で期をまたいで分けた、稟議の金額枠に収めるために分けた——動機が何であれ、一本として見ます。

賃貸管理では、稟議の決裁権限に合わせて工事を分割する慣行のある会社があります。50万円までは支店長決裁、それを超えると本部、といった運用です。この慣行が石綿の報告基準と正面からぶつかります。決裁の都合で切った工事が、法令上は一本の工事として合算されるからです。決裁のための分割と、契約としての分割を、同じものにしないでください。

建築物と工作物の境目——エアコンはどちらか

2026年1月の改正で工作物に資格者調査が入ったため、目の前の設備が建築物なのか工作物なのかを判断する場面が増えました。ここが今回いちばん間違えやすいところです。

工作物とは、建築物以外のものであって、土地、建築物又は工作物に設置されているもの又は設置されていたものの全てをいいます。定義だけ読むとほとんど何でも入りそうですが、建築設備は建築物の側で扱うという重要な例外があります。

設備どちら扱いか
給水設備・排水設備建築設備=建築物
換気設備・暖房設備・冷房設備建築設備=建築物
排煙設備建築設備=建築物
ガス・電気の供給、汚水処理の設備建築設備=建築物
エレベーターのかご等工作物
エレベーターの昇降路の壁面建築物

報告システムの説明にも、建築物の改修工事には模様替えや修繕のほか、建築設備の設置・修理・撤去等を行う場合が含まれると明記されています。つまりエアコンの交換も、給湯器の交換も、配管の更新も、建築物の改修として扱います。工作物の資格者が必要になる話ではありません。

一方で、同じエレベーターでもかご等は工作物、昇降路の壁面は建築物です。この線引きは令和2年10月28日付けの通達に示されたもので、直感では割れません。迷ったら業者任せにせず、根拠を確認してください。

2026年1月に加わった工作物の資格者調査

石綿則の施行スケジュールを時系列で並べると、2026年1月がどこに位置するかが見えます。

時期内容
2020年10月成形品等の除去は原則として切断・破砕によらない方法で
2021年4月調査結果の記録を3年間保存/作業状況を写真等で記録し3年間保存
2022年4月一定規模以上の工事は事前調査結果等を電子システムで届出
2023年10月建築物の事前調査は資格者が行う
2024年4月切断等の作業で湿潤化・除じん性能を有する電動工具の使用等
2026年1月工作物の事前調査は資格者が行う

建築物側は2023年10月にすでに資格者調査になっています。ですから賃貸管理会社の日常業務——原状回復、設備交換、外壁改修——の大半は、3年近く前から資格者調査の対象でした。2026年1月の改正で新たに義務が生じたわけではない部分のほうが、実は多いのです。にもかかわらず今回あらためて確認をおすすめするのは、この機会に自社の運用が2023年10月の要件を満たしているかを点検できるからです。

特定工作物のうち、賃貸物件で出会うもの

報告対象となる特定工作物は17種類が告示で定められています。全部を覚える必要はありません。賃貸管理で現実に出会う可能性があるものだけ抜き出します。

特定工作物賃貸物件での例
ボイラー及び圧力容器寮・社宅・大型物件の給湯ボイラー
煙突ボイラー用の独立煙突。建築設備の排煙設備は除く
配管設備建築設備を除いた配管。屋外の埋設管など
貯蔵設備受水槽まわりの設備、燃料タンク
変電設備・配電設備キュービクル、受変電設備
発電設備非常用発電設備。太陽光・風力は除く

17種に入らない工作物はどうなるのか

特定工作物以外の工作物についても、事前調査は必要です。ただし資格者による調査が義務づけられるのは、塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業に限るとされています。駐車場のライン塗装のやり直しや、外構の塗り替えといった作業がここに触れる可能性があります。範囲が直感的でないので、工事の内容を業者に説明したうえで判断を仰ぐのが安全です。

調査できるのは誰か

調査の対象資格
建築物建築物石綿含有建材調査者等(2023年10月から)
特定工作物のうち反応槽・加熱炉・ボイラー・配管設備・焼却設備・貯蔵設備・発電設備・変電設備・配電設備・送電設備工作物石綿事前調査者のみ
特定工作物のうち煙突・トンネルの天井板・プラットホームの上家・遮音壁・軽量盛土保護パネル・鉄道の駅の地下式構造部分・観光用エレベーターの昇降路の囲い工作物石綿事前調査者/一般建築物石綿含有建材調査者/特定建築物石綿含有建材調査者 のいずれか

注意したいのは2行目です。ボイラーや受変電設備の調査は、建築物石綿含有建材調査者の資格では足りません。工作物石綿事前調査者という別の講習を修了した者でなければならない。付き合いのある工事業者が「うちは調査者がいます」と言っていても、それが建築物側の資格である可能性があります。設備の工事を頼むときは、どちらの資格かまで確認してください。

報告先は2か所ある

報告は労働基準監督署と自治体の両方に対して行います。根拠法令が違うからです。石綿則に基づく報告は労働基準監督署へ、大気汚染防止法に基づく報告は都道府県または大防法政令市へ。ただし実務上は、報告システムを使えば一度の入力で両方に届きます。窓口に出向く必要はありません。

報告義務を負うのは元方事業者、つまり元請です。発注者ではありません。ここは押さえておいてください。管理会社が発注者の立場であれば、この報告を自分で出す必要はない。ただし後述するとおり、発注者には発注者で別の届出義務があります。

報告システムとGビズID

石綿事前調査結果報告システムの利用にはGビズIDが必要です。2種類あります。

種別取得方法できること
GビズIDエントリーメールアドレスがあれば即日発行通常の報告
GビズIDプライム印鑑証明書と申請書を郵送複数工事の一括申請

自社で施工まで行っていて工事本数が多い会社は、プライムを取っておくと一括申請が使えます。取得に郵送手続が必要なので、必要になってからでは間に合いません。

なお、このシステムは2026年3月19日に機能変更が入りました。申請一覧画面で検索結果の表示上限1万件を超えるとダウンロードができなくなり、ダウンロード画面でExcel形式を選ぶ場合の上限が100件に設定されています。年度末にまとめて実績を吸い出そうとすると引っかかる可能性があるので、台帳は自社側にも持っておくのが安全です。

発注者にも、独自の届出義務がある

ここからが管理会社にとっての本題です。厚生労働省のポータルには、発注者の義務としてこう書かれています。

吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材等が使用されている建築物又は工作物の解体・改修作業を伴う工事については、作業開始の日の14日前までに、発注者が地方公共団体へ特定粉じん排出等作業実施届出書を提出しなければなりません。

元請ではなく発注者が出します。オーナーの代理として工事を発注している管理会社は、この義務を誰が履行するのかを管理受託契約の中で明確にしておく必要があります。オーナー本人が出すのか、管理会社が代行するのか。ここが曖昧なまま14日前を過ぎると、誰も出していないという事故になります。

そして14日前という期限は、工程に対して意外に長い。調査で吹付け石綿が見つかってから逆算すると、届出の受理を待って着工することになるので、入居募集のスケジュールが2週間以上ずれます。退去から次の入居までを詰めている物件ほど、影響が大きくなります。

発注者の配慮義務——3つの柱

届出とは別に、施工業者に対する配慮義務が定められています。3つに整理できます。

具体的に何をするか
情報提供設計図書、建築確認申請の副本等、石綿の有無を確認するうえで有用な情報を施工業者に提供する
撮影の許可作業の実施状況について写真等による記録が適切に行われるよう、写真の撮影を許可する等の配慮をする
費用と工期事前調査の費用および石綿除去等工事に必要な費用を適正に負担し、工期・作業方法に係る発注条件についても法令遵守ができるよう配慮する

3つ目が実務では厳しい。工期を詰めろ、費用は下げろ、と言い続けることが配慮義務に反しうるという構造です。相見積を取って一番安い業者に決める、という判断そのものが問題なのではありませんが、その安さが事前調査を省いたことによる安さであれば、発注者の側の問題になります。

設計図書が残っていない物件をどうするか

配慮義務の1つ目に設計図書の提供が挙がっていますが、管理を受託した築古物件で図面が揃っていることは、正直まれです。オーナーが代替わりしていれば、なおさら残っていません。

この場合、書面調査ができないぶん現地調査と分析調査の比重が上がり、費用も工期も増えます。これは避けられません。できることは、工事の直前ではなく、管理受託の時点で図面の有無を確認しておくことです。無ければ無いで、次に何かあったときに時間がかかると分かっている。それだけで工程の組み方が変わります。

管理受託時のチェックリストに「竣工図・建築確認申請の副本の有無」「建築時期」の2行を足すだけで足ります。1980年代の建物なのか2010年代なのかで、石綿含有の可能性はまったく違います。2006年9月より前に着工した建物かどうかを、物件台帳に持っておく。これが実務としていちばん効きます。

事前調査の費用は、誰が負担するのか

費用は発注者が適正に負担することとされています。管理会社が立て替えて発注していても、最終的にはオーナーの負担です。問題は、その説明ができているかどうかです。

厚生労働省の資料には、事前調査費用の項目例が挙げられています。

項目内容
書面調査設計図書等の確認
現地調査目視による確認
裏面確認調査仕上材の裏側の確認
分析調査採取した試料の分析
総合調査報告書調査結果の取りまとめ
諸経費交通費ほか

金額の相場は公表資料に書かれていないため、本稿でも書きません。ただ、この6項目が見積に立っているかどうかは確認できます。事前調査費という行がそもそも無い見積は、調査をしていないか、どこかに埋め込んでいるかのどちらかです。大規模修繕の資金計画については 修繕積立金と大規模修繕——資金計画の立て方 で扱っています。

オーナーへの説明を、どう設計するか

オーナーからすれば、去年と同じ工事なのに見積が上がったように見えます。ここで説明を間違えると、管理会社が上乗せしていると疑われます。

伝える順番を固定しておくと事故が減ります。

順番伝えること
1法令で調査が義務づけられていること。会社の判断ではない
2調査は工事の規模によらず必要で、今回も例外ではないこと
3費用は発注者負担と定められていること
4石綿が見つかった場合に工期がどれだけ延びる可能性があるか
5見つからなかった場合も報告と記録が残ること

4番目を先に言わないのがコツです。まだ見つかってもいない除去費用の話から始めると、オーナーは工事そのものを止めたくなります。調査は義務、費用は発注者負担、という事実から入る。修繕費の説明の組み立て方は オーナーへの修繕費説明——納得を得る順番 に詳しく書きました。

記録は3年——何をどこに残すか

石綿則では、事前調査の結果の記録と、作業の実施状況の写真等による記録を、いずれも3年間保存することとされています。保存義務を負うのは事業者側ですが、発注者としても手元に置いておくべきです。理由は単純で、3年のあいだに施工業者が変わったり、物件が売却されたりするからです。

残すもの置き場所の考え方
事前調査結果報告書物件台帳に紐づける。工事フォルダに置かない
報告システムの控え同上。年度フォルダだけに置くと追えなくなる
作業状況の写真業者から受領する運用にしておく
計画届の写しレベル1・レベル2があった場合に取得

工事フォルダではなく物件台帳に紐づけるのが要点です。工事は単発ですが、建物は残ります。次に同じ建物で工事をするとき、前回の調査結果があれば書面調査の出発点になります。逆に、工事ごとのフォルダに散らばっていると、5年後には誰も探せません。売却の局面でも同じで、調査記録の有無は買主にとって意味のある情報です。

業者選定でこれだけは確認する

厚生労働省が発注者向けに挙げている確認事項を、実務で使える形に落とします。

確認することいつ
見積に事前調査費が計上されているか見積受領時
調査を行う資格を持っているか。建築物か工作物か発注前
石綿事前調査結果報告書の提出調査終了後
労働基準監督署に提出した計画届の写しレベル1・レベル2があった場合
作業の実施状況の記録。写真を含む工事完了後

2行目の「建築物か工作物か」は今回の改正で追加された観点です。従来のチェックリストを使い回していると、ここが抜けます。

年間の工事計画に、調査を組み込む

石綿の手続を工事ごとの個別対応にしていると、繁忙期に必ず漏れます。年間の計画側に埋め込むほうが確実です。

時期やること
計画時物件台帳の建築時期を見て、調査が重くなる物件を先に洗い出す
予算化事前調査費を工事費と別行で計上する
発注前分割発注になっていないかを合算で点検する
着工30日前調査を終える。吹付け等があれば14日前の届出に間に合う
完了後記録を物件台帳へ。工事フォルダで完結させない

着工30日前に調査を終える、という一行が効きます。14日前の届出期限から逆算すると、調査結果が出るまでの分析日数を考えて、この程度の余裕が要ります。有害物質まわりの期限管理という点では 低濃度PCBの2027年期限——賃貸建物の設備をどう洗い出すか と考え方が近く、洗い出しの台帳は共通化できます。

よくある誤解

誤解実際
100万円未満なら調査は不要誤り。100万円は報告の閾値。調査は全工事で必要
石綿が無ければ報告も不要誤り。有無によらず、対象工事なら報告する
解体も金額で判断する誤り。建築物の解体は床面積80平米で判断
税抜で100万円を見る誤り。消費税を含めて判断する
自社施工なら対象外誤り。適正な請負代金相当額で判断する
2026年1月から新しく義務が始まった建築物の資格者調査は2023年10月から。今回は工作物
エアコン交換は工作物の調査が要る誤り。建築設備は建築物側で扱う
報告は元請が出すので発注者は無関係誤り。発注者には14日前の届出と配慮義務がある
建築物の調査者がいれば設備も見られる誤り。ボイラー等は工作物石綿事前調査者が必要

情報の扱いで慎重にした点

本稿は厚生労働省と環境省の公表資料を骨格にしています。そのうえで、書かなかったことを明示しておきます。

書かなかったこと理由
事前調査費用の相場公表資料に単価の記載がないため。項目のみ挙げた
罰則の法定刑条文まで遡って確定できなかったため、金額・年数を書いていない
自治体の上乗せ条例地域差が大きく網羅できないため
補助金の制度名・金額自治体ごとに要件も期間も異なるため

とくに自治体の条例には注意してください。大気汚染防止法とは別に、独自の届出や規制を設けている自治体があります。管理物件の所在する自治体の環境部局に、一度確認しておく価値があります。本稿の内容も、実際の運用設計にあたっては厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトおよび環境省の公表資料で最新版を確認してください。法令や告示は改正されます。

最後に一点だけ。この規制の目的は、手続を増やすことではありません。吸えば健康を損なう繊維を、作業員と近隣に浴びせないことです。40万円の原状回復であっても、壁を壊せば粉じんは出ます。金額の大小と、体に入る繊維の量は関係がない。そこだけ押さえておけば、細かい条文を暗記していなくても、判断を大きく誤ることはないはずです。

執筆:馬場生悦/宅地建物取引士。中小不動産会社向けの実務支援を行うウルスタ代表。自社で210室の賃貸管理と売買の媒介を手がけながら、現場で起きたことをもとに記事を書いています。管理と工事の履歴を1つの画面にまとめる仕組みは ウルスタ で提供しています。
参照した資料
  1. 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改正石綿則のポイント」——令和2年7月改正と施行スケジュール、記録の3年間保存、建築物は令和5年10月・工作物は令和8年1月からの資格者調査、電子システムによる届出、建築基準法における吹付け石綿等の取扱い
  2. 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「工作物石綿事前調査者」——工作物の定義、特定工作物17種の告示、区分ごとに事前調査を実施できる資格、エレベーターのかごと昇降路の壁面の区別
  3. 環境省「石綿事前調査結果の報告について」——報告対象となる3類型、床面積80平米および請負代金100万円の基準、分割契約を一の契約とみなす取扱い、請負代金の数え方
  4. 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「石綿事前調査結果報告システムについて」——報告対象4類型、事前調査は規模によらず全工事で必要である旨、建築設備を含む改修工事の範囲、GビズIDの2種別、2026年3月19日の機能変更
  5. 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」——2006年9月の使用禁止、作業開始14日前までの特定粉じん排出等作業実施届出書、発注者の配慮義務3類型、事前調査費用の項目例、業者選定時の確認事項