安く上げてほしい。その一言が、これからは言い方を選ぶ必要のある一言になりました。賃貸管理をしていれば、退去のたびに原状回復を手配します。オーナー物件を預かっていれば、外壁も屋上も設備更新も、いつかは発注する側にまわります。その見積りの姿が、この数か月で静かに変わりはじめました。材料費と労務費と経費が分かれて記載され、労務費の欄には下回ってはいけない目安がある。改正建設業法が令和7年、すなわち2025年の12月に全面施行され、著しく低い労務費による見積りの依頼が禁じられたためです。規制を受けるのは工事会社だけではありません。頼む側、つまり注文者にも及ぶ部分があります。本記事では、ウルスタ代表として中小の不動産会社の実務に関わる立場から、発注する側にまわる私たちが何を知り、何を組み替えるべきかを整理します。
なぜいま、修繕の見積りの見え方が変わったのか
順を追います。出発点は令和6年、2024年の法改正です。建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律が令和6年6月14日に公布されました。長い名前ですが、建設業界では担い手三法の第三次改正と呼ばれています。人手不足と長時間労働という積年の課題に手を入れるための改正で、施行は一度にではなく段階的に行われました。そして令和7年、2025年の12月に全面施行に至っています。
全面施行の段階で入った規定が、発注する側にとって重要です。中央建設業審議会が労務費に関する基準を作成して勧告する仕組みが動きだし、令和7年12月2日に第一弾の勧告が出ました。現場では標準労務費と呼ばれています。そのうえで、この基準を著しく下回る労務費による見積書の提出が禁じられ、同時に、注文者の側からそうした見積りを求めることも禁じられました。対象は公共工事に限りません。民間工事も、下請取引も含めた、すべての建設工事の請負契約が射程です。
あわせて国土交通省は、発注者と受注者の間における建設業法令遵守ガイドラインを令和8年、2026年の1月に第8版へ改訂し、元請と下請の関係についてのガイドラインも第12版へ改訂しました。制度が動いた直後に、実務の解釈を示す文書が更新されているという状況です。
全面施行から半年あまり。私のまわりで起きているのは、見積書の様子が変わったことへの戸惑いです。総額しか見ていなかった担当者が、内訳の並んだ書面を前にして、どこを見ればよいのか分からない。変わったのは書面の形ではなく、頼み方の作法そのものです。夏は退去が落ち着き、秋の修繕に向けた見積りを取り始める時期でもあります。整えるなら今が適期です。
【要点】発注する側から見た改正の全体像
細部に入る前に、発注する側に関係する部分だけを抜き出して一枚にまとめます。社内共有の資料をつくるなら、この粒度から始めるのが早いはずです。
| 項目 | 内容と、発注する側にとっての意味 |
|---|---|
| 根拠となる法律 | 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律。令和6年法律第49号として令和6年6月14日公布 |
| 全面施行 | 令和7年、2025年12月。段階施行の最終段が動いた |
| 標準労務費 | 中央建設業審議会が作成し勧告する労務費に関する基準。令和7年12月2日に第一弾が勧告された |
| 禁止された行為 | 基準を著しく下回る労務費等による見積書の提出。および注文者が、そうした見積りを求めたり変更を依頼したりすること |
| 見積書の内訳 | 材料費、労務費、適正な施工に不可欠な経費の内訳を明示する努力義務が受注者側に課された |
| おそれ情報 | 資材の高騰などが生じるおそれを認めるとき、受注者は契約締結までに注文者へ通知する |
| 契約書の記載事項 | 資材高騰に伴う請負代金や工期の変更方法が、契約書の法定記載事項に加わった |
| 変更協議 | 実際に高騰が生じたとき、受注者は変更の協議を申し出ることができ、注文者は誠実に応じるよう努める |
| 解釈の指針 | 発注者と受注者の間における建設業法令遵守ガイドライン第8版が令和8年1月に公表された |
何を直そうとした改正なのか——労務費へのしわ寄せという構造
背景を押さえておくと、細かい規定の意味がつながります。国土交通省が示している構図は単純です。発注者から適正な金額が支払われず、元請や中間の下請が経費の増加を吸収しきれないとき、最後に削られるのが末端の労務費だった。労務費が削られれば賃金が払えない、賃金が低ければ人が来ない、人が来なければ工事が回らない。この連鎖を断つために、労務費だけは下回ってはいけない床をつくろう、という発想です。
不動産の側から見ると、この数年の実感と重なります。原状回復の職人が捕まらない、給湯器の交換に何週間も待たされる。人手が足りないという話を、私たちは工期の遅れという形で受け取ってきました。その供給側の事情に、法律の側から手当てが入ったというのが今回の位置づけです。
だから、この改正を単なる規制強化として読むと本質を外します。削ってよい費目と、削ると工事の質か納期が崩れる費目が、書面の上で分かれた。そう読むほうが実務に使えます。
標準労務費とは何か——単価表ではなく、下回ってはいけない目安
誤解が生まれやすいところなので、言葉を丁寧に置きます。標準労務費は、中央建設業審議会が作成して勧告する労務費に関する基準です。これは公共工事の積算に使う単価表とは別のものであり、この金額で発注しなさいという指示でもありません。著しく下回ってはいけない水準を示すもの、という理解が実態に近いはずです。
もうひとつ実務上大事なのは、基準が職種や工種ごとに順次つくられていくもので、すべての工事に基準が用意されているわけではないという点です。令和7年12月の勧告は第一弾であり、対象は限られています。目の前の工事に基準があるのかないのかは、国土交通省が公表している資料で確認する必要があります。基準がない工種について、あるかのように話を進めるのは避けてください。
逆に言えば、基準がある工種については、見積書の労務費が異様に低いときに立ち止まる理由ができました。安いのは企業努力かもしれませんが、無理をしているのかもしれません。無理をした見積りは、工期の遅れか、施工の粗さか、追加請求という形で戻ってきます。長く付き合う協力業者を選ぶうえで、この視点はむしろ発注する側を守ります。
著しく低い労務費による見積りの依頼の禁止——注文者が当事者になる場面
ここが本記事のいちばんの要点です。禁止されているのは、受注者が著しく低い労務費で見積書を出すことだけではありません。注文者が、そうした見積りを求めることも禁じられています。つまり頼む側が規制の当事者になります。
具体的にどういう場面かを想像してみてください。相見積りを三社から取り、いちばん安い一社の金額を他社に示して、この金額まで下げられませんか、と持ちかける。あるいは、去年と同じ金額でお願いします、と資材と人件費の上昇を無視して据え置きを求める。金額の総額だけを見て一律に下げさせるやり方は、結果として労務費を削らせる依頼になりうるということです。
もっとも、値引きの交渉そのものができなくなったわけではありません。仕様を落とす、範囲を絞る、時期をずらす、数量をまとめる。労務費以外の変数を動かす交渉は従来どおり成り立ちます。変わったのは、内訳を見ずに総額だけを叩くやり方が通らなくなったことです。何が著しく低いと評価されるかの考え方は国土交通省のガイドラインに示されていますので、社内の判断基準はそちらを土台にしてください。
見積書の内訳明示——読み方をどう変えるか
改正により、受注者は見積書に材料費、労務費、そして適正な施工を確保するために不可欠な経費の内訳を記載するよう努めることとされました。努力義務ですが、実務では内訳のある見積書が標準になっていきます。問題は、受け取った側にそれを読む型がないことです。三社の見積りを並べて、総額の欄だけを比べて終わっていないでしょうか。
| 見る欄 | 何を確かめ、何を疑うか |
|---|---|
| 材料費 | 単価と数量が分かれているか。同じ仕様で各社の数量が食い違うなら、拾い方か想定範囲が違う。仕様書の書き方を疑う |
| 労務費 | 人工の数と単価。極端に少ない人工は、工程の短縮か、下請への押し付けか、拾い漏れのいずれか。理由を聞く |
| 経費 | 足場、養生、廃材処理、駐車場、安全対策。ここを一式で潰している見積りは、後から追加が出やすい |
| 諸経費の率 | 各社で率が違うのは当然。率そのものより、何を賄う前提かを聞くほうが実になる |
| 一式表記の数 | 一式が多い見積りは比較に耐えない。数量と単価に割ってもらうよう依頼する。これは労務費を削る依頼ではないので問題にならない |
| 工期 | 金額と工期はつながっている。短い工期は人を増やすか残業で吸収する。工期だけ短く金額だけ安いという見積りは成立しにくい |
実務で効くのは、比較する前に仕様と数量の前提を揃えることです。前提が揃っていない見積りを並べても、安い会社が優秀に見えるだけで比較になりません。この一手間が後の追加請求を減らします。
おそれ情報の通知と、契約書に定める変更方法
もうひとつ、契約の段取りに関わる規定が入りました。受注者は、資材の高騰などにより請負代金や工期に影響を及ぼすおそれのある事象があると認めるとき、契約を締結するまでに、その情報を注文者へ通知しなければならないこととされました。現場ではおそれ情報と呼ばれています。国や業界団体が公表する資材価格の統計、供給元の発表といった、客観性のある情報が想定されています。
通知を受ける側にとって重要なのは、その先です。資材高騰に伴う請負代金や工期の変更方法が、契約書の法定記載事項に加わりました。つまり、上がったらどうするかを、契約の時点で書いておく必要があります。上がってから話し合いましょう、では要件を満たしません。
実務としては、契約書のひな形を見直すことになります。協議の契機となる事象、申出の方法、協議の期限、変更の対象となる範囲。この四つが書いてあれば、おおむね形になります。ひな形を工事会社任せにしている会社は、この機会に自社で内容を確認しておいてください。変更方法の定めがないまま押印すると、法定記載事項を欠いた契約書のまま進むことになります。
資材が上がったときの協議——誠実に応じる努力義務
実際に高騰が生じたとき、受注者は請負代金の変更について協議を申し出ることができます。そして注文者は、その協議に誠実に応じるよう努めなければならないとされました。努力義務ではありますが、方向ははっきりしています。契約後の価格変動リスクを受注者だけに負わせてきた実務を、是正するという方向です。
不動産会社にとって難しいのは、協議に応じるかどうかを自社だけで決められない場面が多いことです。費用を負担するのはオーナーであり、管理会社は間に立つ立場だからです。ここで管理会社がやるべきことは、値上げを飲むかどうかの判断をオーナーに丸投げすることではありません。何がどれだけ上がり、根拠は何で、飲まない場合に何が起きるのかを、判断材料として整理して渡すことです。
もうひとつ、オーナーとの取り決めの側にも、この構造を織り込んでおくと後が楽になります。見積り承認から着工までに時間が空けば、その間に資材が動きます。承認の有効期限と、価格変動時の再提示の扱い。最初に決めておけば揉め事になりにくくなります。
管理会社が自ら工事を請け負う場合——軽微な建設工事の線引き
ここまでは発注する側の話でしたが、管理会社が自社でリフォーム部門を持ち、オーナーから工事を直接請け負っている場合は、受注者としての規制も受けることになります。その入口が建設業の許可です。
建設業法では、軽微な建設工事のみを請け負う場合には許可が不要とされています。一般的な建設工事であれば請負金額が500万円未満、建築一式工事であれば1500万円未満、または木造住宅で延べ面積が150平方メートル未満のもの、といった線引きです。金額は消費税を含めて判断し、材料を注文者が支給する場合はその材料費も含めて考える、という点が見落とされがちです。工事を分割して一件あたりの金額を下げても、実質が一つの工事であれば合算で判断されるという点も押さえておいてください。
そして重要なのは、許可が不要であることと、建設業法の規定がまったく及ばないことは同じではないという点です。適用範囲は規定ごとに異なりますので、自社が請け負う側にまわるのであれば、許可の要否だけで判断せず、所管の行政庁や専門家に確認してください。原状回復の内容によっては、清掃のように建設工事に当たらないものと、造作の変更のように当たりうるものが混在します。
原状回復の発注をどう組み替えるか
賃貸管理の現場でいちばん頻度が高いのは原状回復です。ここをどう組み替えるかを具体化します。
| 工程 | これまで | これから |
|---|---|---|
| 仕様の決め方 | 立会いの所見をもとに口頭で依頼 | 部位ごとの仕様と数量を書面にして各社へ同じ条件で提示する |
| 見積りの取得 | 総額の比較で一社を選ぶ | 内訳のある見積りを求め、材料費と労務費と経費を分けて確認する |
| 金額の調整 | 安い社の金額を示して他社に下げさせる | 仕様と範囲と時期という変数で調整する。総額のみを叩かない |
| 工期の設定 | 次の入居日から逆算して短く切る | 逆算は変えないが、無理な工期は金額か品質に跳ねる前提で早めに動く |
| オーナーへの提示 | 合計金額と負担区分 | 合計金額に加えて、内訳と、金額が動きうる要因を添える |
| 記録 | 見積書と請求書 | 仕様書、内訳付き見積書、変更の協議の経緯まで残す |
手間が増えるように見えますが、増えるのは最初の一回だけです。仕様書のひな形を一度つくれば、次からは部位ごとに拾って埋めるだけになります。
場面別の対応と、つまずきやすい落とし穴
| 場面 | 対応の型 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 相見積りで一社が突出して安い | 内訳の労務費と経費を確認し、想定している範囲を聞く | 安さの理由を聞かずに採用する。抜けている工程が後から追加で出る |
| 去年と同じ金額でと言いたくなる | 仕様か範囲を見直したうえで金額を相談する | 据え置きを求めることが、実質的に労務費を削る依頼になりうる |
| 契約書が工事会社のひな形 | 資材高騰時の変更方法の定めがあるか確認する | 法定記載事項を欠いたまま押印する。後の協議で拠り所がなくなる |
| 着工前に資材が上がった | 根拠資料を求め、オーナーへ整理して提示する | 管理会社の判断で先に断る。または無条件に飲んでオーナーへ事後報告する |
| おそれ情報の通知が来た | 内容を記録し、契約書の変更方法と突き合わせる | 営業の値上げ予告と誤解して受け流す |
| 自社で工事も請け負っている | 許可の要否と、請け負う工事の範囲を整理する | 金額を分割すれば軽微になると考える。実質が一件なら合算で判断される |
| 小規模な修繕ばかり | 建設工事に当たるものと当たらないものを切り分ける | すべて同じ扱いにして、必要な整理を怠る |
制度の理解で慎重に扱う点
この分野は、対象となる契約や事業者の範囲が規定ごとに異なります。断定を避けるべき点を明示しておきます。
第一に、施行日の細部や条項の番号は、必ず国土交通省の資料と原文で確認してください。段階施行の各段の日付は、解説によって表記が揺れることがあります。社内資料に日付を書き込むときは、二次情報を根拠にしないでください。
第二に、違反した場合の勧告や公表といった措置が、どの発注者にどう及ぶかは、発注者の性質によって扱いが異なります。公共工事の発注者について明示されている措置を、民間の発注者にそのまま当てはめて説明しないでください。自社が受ける可能性のある効果については、原文とガイドラインで確認するのが確実です。
第三に、著しく低いという評価は個別の判断を含みます。ガイドラインに考え方は示されていますが、金額の線が一律に決まっているわけではありません。社内の運用基準を、法律上の基準であるかのように協力業者へ示すのは避けてください。
第四に、標準労務費は順次拡充されていくものです。基準のない工種について、基準があるかのような前提で交渉しないでください。
第五に、建設業許可の要否、および請け負う工事が建設工事に当たるかどうかの判断は、法律上の判断を含みます。自社が受注者にまわる場合は、所管の行政庁や専門家に確認してください。仲介や管理の立場から、協力業者に対して許可の要否を断定的に助言するのも避けるべきです。
よくある質問
相見積りを取ること自体が問題になりますか。
相見積りそのものは問題になりません。禁じられているのは、著しく低い労務費による見積りを求めたり、そのような内容へ変更するよう依頼したりすることです。同じ仕様と数量の条件を示して複数社から見積りを取り、内訳を確認したうえで選ぶという進め方は、むしろ推奨される形です。
賃貸の小さな修繕にも関係しますか。
建設工事に当たる請負契約であれば、規模の大小によって規定の適用がなくなるわけではありません。ただし、清掃や消耗品の交換のように建設工事に当たらないものも実務では多く含まれます。切り分けが難しい場合は、内容ごとに所管の行政庁や専門家に確認してください。
オーナーが直接工事会社に発注している場合はどうなりますか。
その場合の注文者はオーナーです。管理会社が代理や媒介として関与しているなら、実質的にどちらが条件を決めているかによって見え方が変わります。管理会社が金額の交渉を主導しているのであれば、依頼の仕方には同じ注意が必要です。関与の立場を書面で明確にしておくことをお勧めします。
内訳のない見積りが届いたら、受け取ってはいけませんか。
内訳の明示は受注者の努力義務であり、内訳がないことをもって直ちに違法になるわけではありません。ただし比較にも説明にも使いにくい書面ですので、内訳を分けて出してもらうよう依頼するのが実務的です。この依頼は労務費を削る依頼ではありませんので、遠慮する必要はありません。
協議に応じる努力義務とは、値上げを必ず受け入れるという意味ですか。
そうではありません。求められているのは、協議に誠実に応じる姿勢です。根拠を確認し、範囲や仕様の見直しを含めて話し合うこと自体が協議です。結論として金額が変わらないことも当然ありえます。避けるべきなのは、協議の申出そのものを取り合わない対応です。
今週からやることリスト
最後に、今日から着手できる形に落とします。順番どおりに進めれば、一週間で体制が整います。
| 順序 | やること |
|---|---|
| 1 | 国土交通省の改正建設業法に関する説明資料と、発注者と受注者の間における建設業法令遵守ガイドラインの最新版を社内の共有フォルダに保存する。参照先を全員が知っている状態にする |
| 2 | 直近三か月に取得した工事の見積書を五件ほど抜き出し、内訳が分かれているかを確認する。分かれていないものは次回から内訳付きで依頼すると決める |
| 3 | 原状回復の仕様書のひな形を一枚つくる。部位、仕様、数量、工期の希望を書ける形にして、各社へ同じ条件で出せるようにする |
| 4 | 使用している工事請負契約書のひな形に、資材高騰に伴う請負代金や工期の変更方法の定めがあるか確認する。なければ追記を検討する |
| 5 | 金額交渉の社内ルールを一枚にまとめる。総額のみを提示して下げさせるやり方をやめ、仕様と範囲と時期で調整すると明文化する |
| 6 | オーナーへの見積り提示の様式に、内訳と、金額が動きうる要因を書く欄を追加する。承認の有効期限も明記する |
| 7 | 自社が工事を請け負っている場合は、請負金額の実績を洗い出し、許可の要否について所管の行政庁または専門家に確認する |
制度が変わるとき、現場でいちばん危ないのは、自分は関係ないと思い込むことです。建設業法は工事会社の法律だ、と長く思われてきました。けれども今回の改正で、頼む側の作法にまで線が引かれました。線が引かれたということは、その内側なら堂々と交渉できるということでもあります。安くしてくれとだけ言っていた頃より、何をどう調整したいのかを言葉にできる会社のほうが、良い見積りを引き出せます。
- 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律。令和6年法律第49号として令和6年6月14日に公布され、段階的に施行されたのち、令和7年、2025年12月に全面施行されたこと
- 中央建設業審議会が作成し勧告する労務費に関する基準、いわゆる標準労務費。令和7年12月2日に第一弾の勧告が行われたこと。職種や工種ごとに順次拡充されるものであり、すべての工事に基準が用意されているわけではないこと
- 労務費に関する基準を著しく下回る労務費等による見積書の提出の禁止、および注文者による、そうした見積りの依頼や変更の依頼の禁止。公共工事と民間工事の別を問わず、下請取引を含む全ての建設工事の請負契約が対象とされていること
- 見積書における材料費、労務費、適正な施工を確保するために不可欠な経費の内訳の明示に関する努力義務
- 資材の高騰などにより請負代金や工期に影響を及ぼすおそれのある事象についての、契約締結前の通知。いわゆるおそれ情報の通知
- 資材高騰に伴う請負代金や工期の変更方法が契約書の法定記載事項に加えられたこと、および変更協議の申出に対して注文者が誠実に応じるよう努めることとされたこと
- 国土交通省の発注者と受注者の間における建設業法令遵守ガイドライン第8版、および建設業法令遵守ガイドライン第12版。いずれも令和8年、2026年1月に公表されたこと
- 建設業の許可を要しない軽微な建設工事の範囲。一般的な建設工事は請負金額500万円未満、建築一式工事は1500万円未満または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満とされていること。金額は消費税を含めて判断すること
- 施行日の細部、条項の番号、違反に対する措置の適用範囲、建設業許可の要否については、国土交通省の資料の原文および所管の行政庁で確認すること。いずれも2026年7月時点の公開情報および自社の実務をもとに整理したものであり、個別の取扱いは事案により異なる


