2026年6月だけで、5件の勧告が公表されました。出版、楽器製造、小売。業種はばらばらですが、違反の中身はどれも似ています。発注書を出していない。支払いが60日を超えている。この2つです。公正取引委員会は2026年6月10日、フリーランス・事業者間取引適正化等法について、令和7年度の運用状況を公表しました。指導1,542件、勧告10件。施行から1年半が過ぎ、この法律は完全に執行段階へ入っています。そして、原状回復を一人親方に頼み、物件写真を個人のカメラマンに頼み、間取り図を個人に外注している中小不動産会社は、この法律の直撃圏内にいます。本記事は、ウルスタ代表として中小不動産会社の実務に関わる立場から、公表された数字と、自社で今すぐ直すべき3点を整理します。
先月だけで5件——勧告と実名公表が普通になった
フリーランス・事業者間取引適正化等法、いわゆるフリーランス法が施行されたのは、令和6年11月1日です。施行当初、現場の空気は「様子見」でした。しばらくは周知期間だろう。うちのような小さい会社にまで手は回らないだろう。私自身、施行の翌月に同業の集まりで話題に出したとき、真剣に聞いていた人はほとんどいませんでした。
その空気は、もう通用しません。令和7年6月に最初の勧告が出て以降、公正取引委員会は事業者名を挙げて勧告を公表し続けています。2026年6月に限っても、公表された勧告は5件。出版社、楽器メーカー、小売業と、業種はばらばらです。共通しているのは、違反の中身です。取引条件を書面や電磁的方法で明示していなかった。報酬の支払期日を60日以内に定めず、あるいは定めた期日までに支払わなかった。この2点が、勧告事案の骨格になっています。
注意していただきたいのは、勧告された事案の多くが、悪質な搾取ではないということです。契約書は交わしていた。値切ってもいない。ただ、法律が求める項目を明示していなかった。ただ、慣行どおりの支払サイクルで払っていた。それだけで、社名が公表されます。この法律は、悪意ではなく、不備を捕まえる法律です。だからこそ、真面目にやってきた会社ほど油断します。
【要点】令和7年度の運用状況
公正取引委員会が2026年6月10日に公表した数字を整理します。対象期間は令和7年度、つまり2025年4月から2026年3月までの1年間です。
| 項目 | 令和7年度の実績 |
|---|---|
| 違反被疑事件の新規着手 | 1,626件 |
| 措置(勧告または指導) | 1,552件 |
| うち勧告 | 10件 |
| うち指導 | 1,542件 |
| フリーランスからの申出 | 604件 |
| 相談対応 | 公取委の窓口で4,351件。フリーランス・トラブル110番で13,400件 |
| 原状回復された不利益の総額 | 1,734万円 |
| 調査対象となった発注事業者 | 3万名 |
勧告10件という数字だけを見ると、まだ少ないと感じるかもしれません。しかし本当に見るべきは、その下の1,542件です。指導は公表されませんが、指導を受けるということは、公正取引委員会から書面や電話で是正を求められるということです。担当者は資料を集め、社内を調べ、報告書を書くことになります。年間1,552件は、1営業日あたり6件を超えるペースです。もはや、たまたま運が悪かった会社の話ではありません。
そして、違反行為の類型別の内訳が、この法律の性格をはっきり示しています。措置に至った違反行為は延べ2,727件あり、その内訳は次のとおりです。
| 違反行為の類型 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 期日における報酬の支払義務違反 ——60日ルールを守っていない | 1,135件 | 41.6パーセント |
| 取引条件の明示義務違反 ——発注書を出していない、項目が足りない | 1,126件 | 41.3パーセント |
| 買いたたき | 250件 | 9.2パーセント |
| その他(受領拒否、報酬の減額、返品、購入強制など) | 216件 | 約7.9パーセント |
上位2つで、全体の8割を超えます。この法律で捕まる会社は、ほぼ例外なく、発注書を出していないか、支払いが遅いかのどちらかです。逆に言えば、この2つを直せば、リスクの8割は消えます。そして、この2つは、社内の書式と経理の締め日を変えるだけで直ります。数百万円の投資も、外部コンサルタントも要りません。
「うちは情報通信業ではない」で安心できない理由
措置1,552件を業種別に見ると、情報通信業が575件で37.0パーセント、学術研究・専門技術サービス業が326件で21.0パーセント、運輸業・郵便業が135件で8.7パーセントと続きます。不動産業は、上位3業種に入っていません。
これを見て、「うちは関係ない」と結論づけるのは早すぎます。理由は3つあります。
1つ目。上位3業種を足しても67パーセントです。残りの約33パーセント、件数にしておよそ510件は、それ以外の業種に散らばっています。不動産業がゼロだという公表はありません。
2つ目。公正取引委員会は、業種を絞って集中調査をしています。令和7年度は、放送業と広告業を対象に集中的な調査を行い、128名の事業者に是正を求める指導をしました。翌年度にどの業種が選ばれるかは公表されていません。フリーランスへの外注が多く、書面文化が薄い業種——という条件で候補を挙げるなら、不動産・建設・清掃は、当然に視野に入ります。
3つ目。これが最も重要ですが、そもそも不動産会社ほど個人への外注が多い業種は、そう多くありません。原状回復の職人、ハウスクリーニング、草刈り、鍵交換、物件撮影、間取り図の作成、マイソクのデザイン、ポスティング、内見代行、Webサイトの更新。過去12か月の支払先を並べれば、個人事業主が10件、20件と出てくるはずです。件数が少ないのではなく、まだ見つかっていないだけ、という可能性を疑ってください。
誰が対象か——一人親方も、一人社長の法人も
この法律の適用範囲は、意外と誤解されています。整理します。
守られる側を、法律は「特定受託事業者」と呼びます。これは、業務委託の相手方であって、従業員を使用しない個人、または代表者1名のみで他に役員がおらず、従業員も使用しない法人です。ここが重要な点で、相手が法人であっても、実質的に一人でやっている会社なら対象になります。「相手は株式会社だから関係ない」という判断は、しばしば誤りです。付き合いのある内装業者が法人成りしていても、社長ひとりで現場に出ているなら、対象である可能性が高い。
義務を負う側のうち、より重い義務を負うのが「特定業務委託事業者」です。これは、従業員を使用する個人、または役員がいるか従業員を使用する法人です。株式会社である以上、代表取締役という役員が必ずいますから、法人の不動産会社は、従業員がゼロでも、原則としてこれに該当します。社長ひとりの管理会社であっても、義務は免れません。
なお、取引条件の明示義務だけは、特定業務委託事業者に限らず、業務委託をするすべての事業者に課されています。つまり、個人事業主の不動産会社が、別の一人親方に外注する場合でも、明示義務はかかります。
御社の外注先を、並べてみてください
抽象論では動けないので、具体的に並べます。相手が従業員を使わない個人、または一人法人であるなら、次の外注はすべて対象です。
| 外注先 | 不動産会社での典型的な発注 | 取引の種類 |
|---|---|---|
| 内装・原状回復の職人 | クロス貼替、床、建具の補修、退去後の軽微修繕 | 役務提供委託 |
| ハウスクリーニング業者 | 退去後清掃、エアコン洗浄、定期清掃 | 役務提供委託 |
| カメラマン | 物件撮影、動画、360度パノラマ | 情報成果物作成委託 |
| 図面作成者 | 間取り図のトレース、マイソクのレイアウト | 情報成果物作成委託 |
| デザイナー・ライター | チラシ、Webサイト、物件紹介文、SNS運用 | 情報成果物作成委託 |
| 内見代行・鍵の受渡し | 案内、鍵の受渡し、現地立会い | 役務提供委託 |
| 巡回・草刈り・ゴミ出し | 共用部の巡回点検、除草、ゴミ集積所の管理 | 役務提供委託 |
| ポスティング業者 | チラシの配布 | 役務提供委託 |
| 営業代行・電話対応 | 反響の一次対応、アポイント取得 | 役務提供委託 |
従業員のいる法人への発注は、フリーランス法の対象外です。ただしその場合でも、自社の規模によっては中小受託取引適正化法——2026年1月1日に下請法から名称と内容が改められた法律です——の対象になることがあります。「フリーランス法の対象外だから何をしてもよい」ということにはなりません。
発注書を出していますか——明示すべき9項目
最多の違反類型のひとつ、取引条件の明示義務から見ます。業務委託をしたら、直ちに、次の事項を書面または電磁的方法で明示しなければなりません。公正取引委員会規則が定める項目は、おおむね次のとおりです。
| 明示すべき事項 | 不動産会社でよくある不備 |
|---|---|
| 1. 発注者と受注者の名称 | 口頭やチャットのみで、記録が残っていない |
| 2. 業務委託をした日 | いつ頼んだのかが特定できない |
| 3. 給付または役務の内容 | 「原状回復一式」で済ませている |
| 4. 給付を受領する期日または役務提供を受ける期日 | 「入居までに」など、日付がない |
| 5. 給付を受領する場所または役務提供を受ける場所 | 物件名・部屋番号の記載がない |
| 6. 検査をする場合は、検査を完了する期日 | 完了検査をするのに期日を定めていない |
| 7. 報酬の額 | 「あとで見積もり」のまま着工している |
| 8. 支払期日 | 最大の穴。後述します |
| 9. 現金以外で支払う場合の必要事項 | 相殺や手形の扱いを書いていない |
明示の方法は、書面でなくてかまいません。メール、チャット、業務システムの発注画面。電磁的方法であれば足ります。特別なシステムを買う必要はなく、既存の注文書のひな型に足りない項目を追記すれば、その日から要件を満たせます。私たちの会社でも、既存の注文書に不足していたのは6番と9番だけでした。追記に要した時間は1時間です。
報酬の額など、発注時点でどうしても定められない事項がある場合は、その事項の内容が定まっていない旨を明示したうえで、内容が定まったら直ちに明示する、という運用が認められています。ここは実務上ありがたい規定です。ただし、「定まらないから全部あとで」は通りません。定められる項目は、その場で出す。これが原則です。
60日ルール——月末締め翌月末払いは、計算するとアウトです
ここが本記事でいちばんお伝えしたいところです。
特定業務委託事業者は、給付を受領した日、あるいは役務の提供を受けた日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に、報酬の支払期日を定め、その期日までに支払わなければなりません。支払期日を定めなかった場合は、受領した日そのものが支払期日になります。60日を超える期日を定めた場合は、受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。契約書に何と書いてあっても、法律が上書きします。
問題は、この「60日」を、多くの会社が締め日から数えていることです。法律が数えるのは、締め日ではなく受領日です。ここを取り違えると、ごく普通の支払サイクルが違反になります。実際に数えてみます。
| 支払サイクル | 7月1日に役務提供を受けた場合の支払日 | 受領日から起算した日数 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 月末締め・翌月末払い | 8月31日 | 62日目 | 60日超 |
| 月末締め・翌月25日払い | 8月25日 | 56日目 | 適法 |
| 月末締め・翌月20日払い | 8月20日 | 51日目 | 適法 |
| 月末締め・翌々月払い | 9月30日 | 92日目 | 明確な違反 |
月末締め・翌月末払い。日本の商慣行としてごく一般的なこの条件が、月初に受領したぶんについては60日を超えます。7月1日を1日目として数えると、7月31日が31日目、8月29日が60日目です。8月31日は62日目。2日オーバーです。30日の月であっても、月初受領分は61日目になり、やはり超えます。
これは重箱の隅ではありません。令和7年度の違反類型で最多だったのが、まさにこの「期日における報酬の支払義務違反」で、1,135件です。多くは、悪意なく慣行に従っていただけでしょう。しかし法律は、日数で判定します。
不動産会社には、さらに固有の危険があります。原状回復費用の職人への支払いを、オーナーからの入金や承認を待ってから行う運用です。オーナーの決裁が遅れれば、職人への支払いは平気で2か月、3か月と延びます。しかし、フリーランス法は、オーナーからの入金の有無を一切考慮しません。職人から役務の提供を受けた日から60日。これがすべてです。オーナーが払わないから職人にも払えない、という理屈は通りません。
7つの禁止行為——現場で起きること
1か月以上の継続的な業務委託については、次の7つが禁止されます。条文の言葉だけでは実感が湧かないので、不動産の現場で起きる形に翻訳します。
| 禁止行為 | 現場で起きる形 |
|---|---|
| 受領拒否 | オーナーの気が変わったので、資材を仕入れ済みの職人に工事のキャンセルを一方的に通告する |
| 報酬の減額 | 「今回は入居が決まらなかったので、撮影代は半額で」と後から通告する |
| 返品 | 完成した間取り図やチラシを、使わないからと引き取らせる |
| 買いたたき | 「他社は5,000円でやってくれる」と、協議なく単価を一方的に切り下げる |
| 購入・利用強制 | 自社が扱う保険や資材の購入を、発注継続の条件にする |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 繁忙期の内見応援や、追加撮影を、無償で頼む |
| 不当な給付内容の変更・やり直し | オーナーの指示が変わったので、貼り終えたクロスを職人の費用でやり直させる |
買いたたきは、違反類型の第3位で250件です。ここで誤解が多いのですが、単価を下げること自体が違反なのではありません。協議をせずに、一方的に、通常の対価より著しく低い額を定めることが違反です。原材料費や人件費が上がっているのに据え置く、という形でも問題になり得ます。値上げの申し出を受けたら、まず協議の席に着き、その記録を残す。それだけで、この類型は避けられます。
募集表示・ハラスメント・30日前予告
ここまでは取引の適正化、つまり公正取引委員会と中小企業庁が所管する部分でした。この法律にはもうひとつ、厚生労働省が所管する就業環境の整備という柱があります。不動産会社に効くのは、次の3つです。
募集情報の的確表示。業務委託の募集を、自社サイトや求人媒体に出すときは、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、内容を正確かつ最新に保たなければなりません。「内見スタッフ募集、業務委託、月30万円可能」といった、実態と離れた見出しは危険です。募集を締め切ったのに掲載を放置しているのも、最新に保つ義務との関係で問題になり得ます。
ハラスメント対策の体制整備。これは契約期間の長短にかかわらず義務です。ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にし、相談窓口を定め、周知する。相談があったら迅速かつ適切に対応する。従業員向けの就業規則やハラスメント方針はあるのに、業務委託先が対象に入っていない会社が大半だと思います。方針に一文足すだけです。
中途解除の30日前予告。6か月以上の継続的な業務委託を中途解除する場合、あるいは更新しない場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。さらに、予告日から解除日までの間にフリーランスから理由の開示を求められたら、遅滞なく開示する義務があります。「来月から別の業者に切り替えます」と月末に伝える、という運用は、もうできません。長く付き合っている清掃業者や巡回スタッフを切り替えるときは、必ず30日前です。
業務委託のはずが、労働者だった
最後に、フリーランス法より手前にある、もっと大きな落とし穴に触れます。
この法律は、相手が労働者ではないことを前提としています。逆に言えば、業務委託と称していても、実態として指揮命令を受け、時間や場所を拘束され、報酬が労働時間に対して支払われているなら、その人は労働基準法上の労働者と評価される可能性があります。そうなると、フリーランス法どころの話ではありません。残業代、社会保険料、有給休暇。遡って請求される可能性があります。
不動産会社で危ないのは、内見代行や巡回スタッフを、固定シフトで、事務所に出社させ、細かく指示しながら「業務委託」で回しているケースです。心当たりがあるなら、フリーランス法の対応より先に、その契約の実態を確認してください。順序を間違えると、発注書だけ立派になって、より重い問題が残ります。
違反したらどうなるか
公正取引委員会は、違反があれば勧告を行います。勧告に従わない場合は命令が出され、命令をしたときは公表されます。命令に違反した場合、および検査を拒んだり虚偽の報告をしたりした場合は、50万円以下の罰金です。法人には両罰規定が適用されます。
ただ、率直に申し上げて、罰金50万円は問題の本質ではありません。実質的な制裁は、勧告の段階で社名が公表されることです。公正取引委員会は、勧告事案を事業者名入りで公表する運用をしています。地域で名前が知られている管理会社にとって、「フリーランスへの支払いを遅らせて勧告を受けた会社」という記録が検索結果に残ることの重さは、50万円とは比較になりません。オーナーは見ます。職人も見ます。採用にも響きます。
30日で終わらせる着手順
やることは多くありません。4週間で終わります。
| 週 | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | 会計ソフトから過去12か月の支払先を出力し、個人名義および一人法人に印をつける | 対象外注先リスト |
| 2週目 | 既存の注文書に、明示9項目のうち欠けている項目を追記する | 新しい発注書のひな型 |
| 3週目 | 受領日から支払日までの日数を全件計算し、60日を超える取引を洗い出す。締め支払条件を変更し、相手に通知する | 支払サイクル変更の通知 |
| 4週目 | ハラスメント方針に業務委託先を追加。募集情報を点検。6か月以上の契約に30日前予告の条項を追記 | 方針・契約書の改訂 |
このうち、最も効くのは3週目です。違反類型の最多が支払遅延であり、その原因のほとんどが、悪意ではなく締め日の設計だからです。締め支払条件を「月末締め・翌月25日払い」に変えるだけで、リスクの4割が消えます。経理に相談してください。多くの場合、断られる理由はありません。
よくある質問
Q1. 長年の付き合いで、口約束でやってきました。今さら発注書を出すと、水くさいと思われませんか。
逆です。金額と納期と支払日が書面に残ることは、職人にとっても守りになります。実際、私たちが発注書を整えたとき、いちばん喜んだのは職人のほうでした。「言った言わない」で揉めなくなるからです。
Q2. 相手が法人なら対象外ですよね。
いいえ。代表者1名のみで、他に役員がおらず、従業員も使用していない法人は対象です。一人親方が法人成りしただけの会社は、多くがこれに当たります。
Q3. スポットの単発発注でも、発注書は要りますか。
要ります。取引条件の明示義務は、継続的かどうかを問わず、業務委託をしたすべての場合に課されます。7つの禁止行為だけが、1か月以上の継続的業務委託に限られています。
Q4. オーナーからの入金が遅れています。職人への支払いを待ってもらえますか。
待てません。60日は、職人から役務の提供を受けた日から起算します。オーナーの入金は関係ありません。再委託の特例には要件があり、事前の明示が必要です。
Q5. チャットでの発注でも、明示義務を満たしますか。
電磁的方法による明示として認められます。ただし9項目が揃い、あとから確認できる形で保存されていることが前提です。口頭やその場限りの通話は、明示になりません。
Q6. 支払期日を90日と契約書に書いてしまいました。
その条項にかかわらず、60日を経過する日が支払期日とみなされます。契約書を直してください。
まとめ
令和7年度、フリーランス法に基づく措置は1,552件でした。勧告10件、指導1,542件。そして違反類型の8割超は、報酬を60日以内に払っていないことと、取引条件を明示していないことです。悪質な搾取ではありません。書式と締め日の不備です。
不動産会社は、外注が多い業種です。原状回復、清掃、撮影、図面、内見代行。個人事業主への発注が10件、20件と積み上がっているのが普通です。そして「月末締め・翌月末払い」という、疑ったこともない支払条件が、計算すると60日を超えています。
今週やるべきことは1つだけです。過去12か月の支払先を出力して、個人名義の相手に印をつける。話はそこからです。30分で終わります。そのあと、注文書に項目を足し、締め日を5日前倒しする。それだけで、この法律のリスクのほとんどは消えます。
- 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況及びフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組」2026年6月10日公表(新規着手1,626件、措置1,552件、勧告10件、指導1,542件、申出604件、違反行為の類型別件数、原状回復総額1,734万円、業種別・地区別内訳)
- 公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」および同法パンフレット(適用対象、取引条件の明示、60日以内の報酬支払、7つの禁止行為、再委託の特例)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号。令和6年11月1日施行)および公正取引委員会関係施行規則(令和8年1月1日施行の改正を含む)
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(令和8年1月1日施行)
- 内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和8年1月1日改定。労働者性の判断を含む)
- いずれも2026年7月時点の公開情報および自社の賃貸管理・売買実務をもとに整理


