賃貸管理 読了 16分

普通借家と定期借家の違い|貸すならどっち?(2026年版)

普通借家は正当事由がなければ更新を断れず、定期借家は期間の満了で終わります。書面・事前説明・終了通知の要件と、手続きを誤った場合の扱いを比較表で整理しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
普通借家と定期借家の違い|貸すならどっち?(2026年版)
目次

普通借家は、期間が来ても貸主に正当事由がなければ契約が続く契約です。定期借家は、期間が来れば更新なしで終わる契約です。定期借家にするには、書面での契約と、契約書とは別の書面による事前説明が要ります。どちらが良いかは、物件をいつまで貸せるか、長く住んでほしいかで変わります。本稿は借地借家法の条文と国土交通省の資料をもとに、二つの違いを並べます。

結論|違いは「期間が来たら終わるか」

建物の賃貸借は、借地借家法の決まりで借主が強く守られています。普通借家(期間の定めがある普通の建物賃貸借)では、貸主が更新を断るにも、期間の定めがない契約を貸主から解約するにも、正当事由が要ります(借地借家法28条)。正当事由があるかどうかは、貸主と借主それぞれが建物を使う必要性、これまでの経緯、建物の利用状況と現況、立ち退き料などの財産上の給付の申出を考えて判断されます。

定期借家(定期建物賃貸借)は、この「更新」の決まりを外す契約です。借地借家法38条1項は、期間の定めがある建物の賃貸借を書面で結ぶ場合に限り、契約の更新がない旨を定めることができるとしています。期間が満了すれば、正当事由がなくても契約は終わります。ただし、書面での契約、事前説明、終了の通知という手続きを一つでも誤ると、更新のない契約として扱われなくなるおそれがあります。

まとめると、普通借家は「借主が長く住める代わりに、貸主の都合では終わらせにくい契約」、定期借家は「期間で終えられる代わりに、手続きが決まっている契約」です。

普通借家と定期借家の比較表

借地借家法の条文と、国土交通省のサイトに掲載されている資料の比較をもとに整理しました。

比べる点普通借家定期借家
契約の方法借地借家法上の方式の決まりはない(宅建業者が関わる場合は宅建業法37条の書面の交付が要る)公正証書などの書面による契約に限る。電磁的記録による契約は書面による契約とみなす(38条1項・2項)
期間が満了したとき1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前と同じ条件で更新したものとみなす(26条1項)。通知には正当事由が要る(28条)更新はなく、期間の満了で終わる。続けるなら双方の合意で再契約する
1年未満の期間期間の定めがない賃貸借とみなす(29条1項)1年未満の期間でも結べる(38条1項で29条1項を適用しない)
貸主からの解約期間の定めがない場合、解約の申入れから6か月で終わる(27条1項)。正当事由が要る(28条)期間中に貸主から解約する決まりはない。期間の満了で終える
借主からの中途解約期間の定めがある場合は、解約できる旨の特約(解約権の留保)があれば解約できる(民法618条・617条)床面積200平方メートル未満の居住用で、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情があれば、申入れから1か月で終わる(38条7項)。それ以外は特約による
賃料の増減経済事情の変動などで不相当になれば増減を請求できる。一定期間増額しない特約は有効(32条1項)。減額しない特約の定めはない賃料の改定に関する特約があれば、32条を適用しない(38条9項)。増額・減額のどちらも特約で決められる
契約前の説明借地借家法上の事前説明の決まりはない(宅建業者が関わる場合は重要事項説明)貸主が、更新がなく期間の満了で終わることを、契約書とは別の書面を交付して説明する(38条3項)
終わらせる前の手続き更新しない旨の通知(1年前から6か月前まで)と正当事由期間1年以上なら、1年前から6か月前までに期間の満了で終わる旨を通知する(38条6項)

借主に不利な特約については、普通借家は26条から29条までに反して借主に不利な特約を無効とし(30条)、定期借家は終了の通知と中途解約の決まり(38条6項・7項)に反して借主に不利な特約を無効としています(38条8項)。

普通借家の仕組み

期間が来ても、通知と正当事由がなければ続く

期間の定めがある普通借家では、期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方へ更新しない旨(または条件を変えなければ更新しない旨)を通知しなかった場合、従前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます。このとき、更新後の期間は定めがないものになります(26条1項)。これが法定更新です。

通知をしていても、期間が満了したあとに借主が使い続け、貸主が遅れずに異議を述べなかったときも、同じように更新したものとみなされます(26条2項)。貸主からの通知には、28条の正当事由が要ります。

期間の定めがない普通借家の解約

法定更新で期間の定めがなくなった契約や、もともと期間を定めなかった契約では、貸主は解約の申入れができます。契約は申入れの日から6か月で終わります(27条1項)。この申入れにも正当事由が要ります(28条)。期間を1年未満と定めた普通借家は、期間の定めがない賃貸借とみなされます(29条1項)。

借主から解約するとき

期間の定めがある普通借家で、借主が期間の途中で出ていけるのは、契約で解約する権利を残している場合です。民法618条は、期間を定めた場合でも解約する権利を留保したときは617条を準用するとしています。実際の契約書には「1か月前に通知すれば解約できる」といった条項を置くのが通例で、この条項の中身が借主からの解約の条件になります。

賃料の増減

普通借家では、税金などの負担の増減、土地や建物の価格の変動、近くの同じような建物の賃料との比較などで賃料が不相当になったとき、当事者は将来に向けて増額または減額を請求できます(32条1項)。一定の期間は増額しない特約があれば、それに従います。条文にあるのは「増額しない」特約だけで、減額を封じる定めはありません。

定期借家の仕組み

成り立つための三つの手続き

  1. 書面で契約する:公正証書などの書面で契約します。公正証書に限られません。契約内容を記録した電磁的記録による契約も、書面による契約とみなされます(38条1項・2項)。
  2. 契約書とは別の書面で事前に説明する:貸主は、あらかじめ借主に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を交付して説明します(38条3項)。借主の承諾を得れば、この書面の内容を電磁的方法で提供でき、書面を交付したものとみなされます(38条4項)。
  3. 期間1年以上なら、終了の通知をする:期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で終わることを借主に通知します(38条6項)。

国土交通省のサイトに掲載されている資料では、宅建業者が仲介する場合、宅建業者が貸主の代理として事前説明をすることができ、重要事項説明書に事前説明の内容を併せて書いて同時に説明することもできると案内されています。宅建業者は、重要事項説明で定期建物賃貸借である旨を説明する必要があります(宅地建物取引業法施行規則16条の4の3第9号)。

期間が来たら終わり、続けるなら再契約

定期借家は更新がないため、期間が満了すれば終わります。双方が合意すれば再契約できますが、再契約は新しい契約なので、最初と同じく事前説明や書面での契約をやり直します。国土交通省の資料では、再契約の期間は最初と違ってもよく、敷金の精算は再契約のたびではなく最終的に退去するときでよいと案内されています。

借主の中途解約と賃料の特約

居住用の建物で床面積が200平方メートル未満なら、転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情で住み続けられなくなった借主は、解約を申し入れることができ、契約は申入れの日から1か月で終わります(38条7項)。これより借主に不利な特約は無効です(38条8項)。それ以外の場合は、中途解約の特約があればそれに従います。

賃料の改定に関する特約がある定期借家では、32条(賃料の増減請求)を適用しません(38条9項)。たとえば「期間中は賃料を改定しない」と決めておけば、期間中に増額も減額も請求できない契約にできます。

定期借家で手続きを誤るとどうなるか

誤りどうなるか根拠
事前説明の書面を交付しなかった、説明しなかった契約の更新がないこととする旨の定めは無効になる。普通借家として扱われる38条5項
契約を書面(電磁的記録を含む)で結ばなかった更新がない旨の定めは、書面による契約に限って認められるため、定期借家として成り立たない38条1項・2項
期間1年以上で、1年前から6か月前までに終了の通知をしなかった期間の満了による終了を借主に対抗できない。ただし、その期間が過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月を過ぎれば対抗できる38条6項
中途解約や終了通知について借主に不利な特約を置いたその特約は無効になる38条8項

国土交通省の資料では、事前説明を行わなかった場合や内容に誤りがあった場合は普通建物賃貸借として扱われる、と注意しています。満了日の管理と、事前説明の書面を契約書と分けて残すことが、定期借家を使ううえでの要になります。

普通借家から定期借家への切り替え

国土交通省の資料では、定期借家制度の施行(平成12年3月1日)より前に結ばれた居住用建物の普通借家契約を、合意で解約して同じ建物で定期借家に切り替えることは認められていないと案内されています。事業用の建物は認められています。施行後に結んだ普通借家を切り替える場合も、事前説明と書面での契約は新しく行います。借主にとっては更新のある契約を手放すことになるため、合意の経緯を記録に残しておきます。

向いているケースと、判断の分かれ目

定期借家が合いやすいケース

  • 転勤などで自宅を一定の期間だけ貸し、戻ったら自分で住む予定がある。
  • 建替えや売却の予定があり、その時期までに明け渡してもらう必要がある。
  • 期間ごとに条件を見直したい、または期間中の賃料を固定したい(38条9項の特約)。

普通借家が合いやすいケース

  • 入居者に長く住んでもらうことを重視し、明け渡しの時期を決める必要がない。
  • 再契約や終了通知の管理を増やしたくない。
  • 募集の条件として、更新できる契約を求める入居希望者を広く受け入れたい。

判断の分かれ目になる問い

  1. この物件を、いつまで貸せるか決まっているか。決まっているなら、定期借家でないと期限どおりに明け渡してもらえる保証はありません。
  2. 期間が来たときに、入居者を入れ替える選択肢を持ちたいか。普通借家では、正当事由がなければ更新を断れません。
  3. 満了日の1年前から6か月前の通知を、確実に管理できるか。管理を委託する場合は、通知を誰が出すかを管理受託契約で決めておきます。
  4. 賃料をどう見直したいか。普通借家は32条の増減請求、定期借家は特約で決められます。

どちらの契約にも長所と手間があり、物件ごとの事情で答えが変わります。立ち退きや再契約で争いになりそうなときは、弁護士などの専門家に相談してください。

契約書の雛形と、関連する記事

国土交通省は、定期借家用の「定期賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版。家賃債務保証型と連帯保証人型)を公開しています。使用は義務ではありませんが、条項を考えるときの土台になります。事前説明の書面の作り方は定期借家契約の事前説明書の雛形、普通借家の更新の実務は賃貸契約の更新トラブル防止で詳しく書いています。賃貸借契約書・重要事項説明書の作成と電子契約は、ウルスタくんの書類作成と電子契約でできます。

よくある質問

Q1. 定期借家は公正証書で結ばないといけませんか。

いいえ。借地借家法38条1項は「公正証書による等書面によって」としており、公正証書は例示です。普通の書面でも、契約内容を記録した電磁的記録でも結べます(38条2項)。

Q2. 事前説明の書面を、契約書の中に書いておけば足りますか。

38条3項は、契約書とは別に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を交付して説明するよう求めています。国土交通省の資料でも、契約書とは別の書面とされています。宅建業者が仲介する場合は、重要事項説明書に併せて書いて同時に説明することができると案内されています。

Q3. 定期借家の期間が終わったあとも入居者が住み続けたら、普通借家になりますか。

期間の満了後も住み続けた場合の扱いは条文に直接の定めがなく、事情によっては争いになることがあります。続けて貸すなら、再契約として事前説明と書面での契約をやり直します。期間1年以上の契約で終了の通知を忘れていた場合は、通知の日から6か月を過ぎるまで終了を借主に対抗できません(38条6項)。

Q4. 普通借家でも、期間中の賃料を下げない約束はできますか。

32条1項の但し書きが認めているのは、一定期間「増額しない」特約です。減額の請求を封じる定めはありません。期間中の賃料を増額も減額もしない契約にしたいなら、定期借家で賃料改定の特約を置く方法があります(38条9項)。

Q5. 借主が転勤になったら、定期借家でも途中で解約できますか。

居住用で床面積200平方メートル未満なら、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情で住み続けられなくなったとき、申入れから1か月で解約できます(38条7項)。それより借主に不利な特約は無効です。

要点は三つです。普通借家は正当事由がなければ更新を断れない契約で、定期借家は期間の満了で終わる契約であること。定期借家は書面での契約・別の書面による事前説明・期間1年以上なら終了の通知が要り、事前説明を欠くと更新しない旨の定めが無効になること。どちらを選ぶかは、いつまで貸せるか、満了の管理ができるか、賃料をどう見直したいかで決まることです。

この記事は 2026-11-03 時点の情報です。

出典(本文で参照している資料)

本稿の内容は、2026年11月3日に開いて読んだ次の資料にもとづきます。

本稿で使った内容資料
法定更新・解約申入れ・正当事由・1年未満の期間・借主に不利な特約・賃料の増減・定期建物賃貸借の要件(26条〜30条・32条・38条)e-Gov法令検索「借地借家法」(平成3年法律第90号)
期間の定めがある賃貸借で解約権を留保した場合(617条・618条)e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)
重要事項説明で定期建物賃貸借である旨を説明すること(16条の4の3第9号)e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(昭和32年建設省令第12号)
定期借家制度の概要、再契約、施行前の居住用契約の切り替え国土交通省「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)」
普通借家との比較、事前説明の代理と重要事項説明との併記、再契約時の敷金、手続きを誤った場合の扱い国土交通省サイト掲載「定期建物賃貸借契約《大家さんのための》」(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会・令和6年11月)
定期賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)国土交通省「定期賃貸住宅標準契約書」

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