2027年(令和9年)1月1日以後に提出する令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票は、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に提出したものとみなされます。対象は給与を支払うすべての事業者で、不動産会社・管理会社も同じです。やることは、給与支払報告書を全員分そろえて期限までに市区町村へ出すことです。令和8年分の期限は、1月31日が日曜日のため2027年2月1日(月)になります。一方で、家賃や仲介手数料に関わる「不動産の使用料等の支払調書」などは、これまでどおり税務署へ出します。
結論(いつから・誰が・何をするか)
- いつから: 2027年1月1日以後に提出すべき、令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票からです。2026年12月31日までに提出するものは、これまでどおり税務署と市区町村の両方へ出します。
- 誰が対象か: 給与を支払う法人・個人事業者です。従業員や役員に給与を払っている不動産会社・管理会社はすべて当たります。
- 何が変わるか: 給与支払報告書を市区町村に出せば、税務署への源泉徴収票の提出は不要になります(所得税法226条6項)。あわせて、税務署へ出す範囲の金額基準(役員150万円超・一般500万円超など)がなくなり、提出範囲が給与支払報告書と同じになります。
- 何をすればよいか: 給与支払報告書を、年の中途で退職した人のうち支払金額30万円以下の人を除く全員分そろえ、令和8年分は2027年2月1日(月)までに各市区町村へ出します。従業員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。
- 変わらないこと: 不動産の使用料等・不動産等の譲受けの対価・あっせん手数料の支払調書は、この特例の対象ではありません。該当する支払があれば、合計表とともに税務署へ出します。
施行日と期限の表
| 時期 | 何が起きるか | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 2026年12月31日まで | この日までに提出すべき源泉徴収票は、従来の提出範囲で税務署へ出します。給与支払報告書は市区町村へ別に出します | 国税庁タックスアンサーNo.7411 |
| 2027年1月1日 | この日以後に提出すべき令和8年分以後の源泉徴収票について、給与支払報告書の提出をもって税務署への提出とみなす特例が始まります | 国税庁「源泉徴収のあらまし」(所得税法226条6項) |
| 2027年1月1日以後 | 令和8年の途中で退職した人の源泉徴収票も、1月1日以後に他の人の分とまとめて提出する場合は特例の対象になります | 国税庁リーフレット |
| 2027年2月1日(月) | 令和8年分の給与支払報告書と法定調書の提出期限です。本来は1月31日ですが、2027年1月31日は日曜日のため翌日になります | 国税通則法10条2項・地方税法20条の5 |
| 2027年中 | 令和7年中に提出すべき法定調書が種類ごとに30枚以上だった場合、その種類は2027年の提出をe-Tax・クラウド等・光ディスク等で行う必要があります | 国税庁「法定調書の作成と提出の手引」 |
特例は「いつの分か」だけでなく「いつ提出すべきものか」で区切られているので、2027年1月以後に出す令和8年分から一斉に切り替わる、と理解しておけば足ります。
何が変わるのか|提出範囲の見直し
これまでは、同じ給与について、税務署へ出す源泉徴収票と市区町村へ出す給与支払報告書の範囲が違っていました。税務署へ出すのは一定の金額を超える人だけで、市区町村へは原則として全員分を出すという二重の仕組みです。2027年1月以後はこれが一本になります。
| 区分 | 2026年12月31日までに提出するもの | 2027年1月1日以後に提出するもの |
|---|---|---|
| 年末調整をした法人の役員 | 年間の給与が150万円超の人だけ税務署へ | 年の中途退職者で30万円以下の人を除き、全員が提出範囲 |
| 年末調整をした弁護士・税理士等 | 250万円超 | 同上 |
| 年末調整をした上記以外の人 | 500万円超 | 同上 |
| 年の中途で退職した人(扶養控除等申告書あり) | 250万円超(法人の役員は50万円超) | 支払金額30万円以下の人を除き提出範囲 |
| 主たる給与が2,000万円超で年末調整をしなかった人 | 2,000万円超 | 同上 |
| 扶養控除等申告書を出していない人(乙欄・丙欄) | 50万円超 | 同上 |
| 市区町村への給与支払報告書 | 税務署への範囲とは別に定める | 税務署への提出範囲と同じになる |
国税庁のタックスアンサーNo.7411は、2027年1月1日以後は「年中途退職者に対して年中の支払金額が30万円以下の給与等を支払った場合を除き、すべての給与等が提出範囲」になると説明しています。表の金額基準は、2026年12月31日までに提出するものにだけ使います。
実務では、範囲が広がっても作業は増えにくい形です。給与支払報告書はもともとほぼ全員分を作っているので、税務署向けに「誰の分を出すか」を選び分ける手間がなくなります。
みなし提出の条件と、変わらないこと
税務署へ出したものとみなされる条件
条件は、その給与について給与支払報告書を市区町村へ提出することです。国税庁の案内は「給与支払報告書を市区町村に提出する場合は給与所得の源泉徴収票を税務署に提出したものとみなされるため、税務署への給与所得の源泉徴収票の提出は不要」としています。国税庁の案内では、みなし提出の条件としてeLTAXでの提出は挙げられておらず、書面や光ディスク等で出した場合に外れるのはマイナポータル連携だと説明されています(電子提出が義務になる会社は次の章)。
合計表の扱い
給与支払報告書を市区町村に出した場合、税務署への「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は不要になります。ただし、源泉徴収票以外の法定調書を税務署へ出す場合は、その調書を記載した合計表を出します。不動産会社の場合、次の章の支払調書があると合計表は残ります。
変わらないこと
| 項目 | 2027年1月以後の扱い |
|---|---|
| 従業員本人への源泉徴収票の交付 | 引き続き必要です |
| 退職所得の源泉徴収票 | この特例の対象として案内されているのは給与所得と公的年金等の源泉徴収票です。退職所得の源泉徴収票の扱いは国税庁の手引で確かめてください |
| 報酬・料金等の支払調書 | 特例の対象ではありません。従来どおり税務署へ出します |
| 不動産関係の支払調書3種 | 特例の対象ではありません。従来どおり税務署へ出します |
| 記載の正確さ | マイナンバー・氏名(カナを含む)・住所・生年月日に誤りがあると、給与情報が正しく連携されません |
eLTAXで出した令和8年分以後の給与支払報告書は、マイナポータル連携の対象になります。従業員が確定申告をするときに給与の情報を自動入力できるようになる、と国税庁と地方税共同機構は案内しています。書面や光ディスク等で出したものは連携の対象外です。
不動産会社が引き続き税務署へ出す支払調書
給与の源泉徴収票が市区町村への提出で済むようになっても、不動産に関わる次の3つの支払調書は税務署へ出します。提出期限は支払った年の翌年1月31日で、令和8年分は2027年2月1日(月)です。
| 支払調書 | 出す人 | 提出範囲 | 不動産会社で当たりやすい例 |
|---|---|---|---|
| 不動産の使用料等の支払調書 | 不動産の借受けの対価などを支払う法人と、不動産業者である個人(主として建物の賃貸借の代理・仲介を行う個人は除く) | 同一の人への年間の支払合計が15万円超 | 事務所・店舗・駐車場・社宅の賃料、権利金・礼金・更新料・承諾料の支払。法人への支払は賃借料を除く権利金・更新料等だけが対象 |
| 不動産等の譲受けの対価の支払調書 | 不動産等の対価を支払う法人と、不動産業者である個人(同上の除外あり) | 同一の人への年間の支払合計が100万円超 | 個人からの土地・建物の買取り |
| 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 | あっせん手数料を支払う法人と、不動産業者である個人(同上の除外あり) | 同一の人への年間の支払合計が15万円超 | 他社や個人への仲介手数料。紹介料・業務委託料などの名目でも実質があっせん手数料なら対象 |
使用料等の支払調書で間違えやすい点
- 支払先が個人なら家賃も対象です。法人への支払は権利金・更新料等だけが対象で、家賃のみなら提出は不要です。個人の家主へ払う家賃は、年間15万円を超えれば対象になります。
- 管理会社を通して払っていても、記載するのは物件の所有者です。国税庁の手引は、管理会社ではなく物件の所有者を記載するよう求めています。所有者の氏名・住所・マイナンバー(法人なら法人番号)を契約書等で確かめておく必要があります。
- 共有の物件は共有者ごとに作ります。持分が分からない場合の書き方も手引に定めがあります。
- 屋号だけで書かない。支払を受ける人は、契約書等で確かめた氏名または名称で書きます。
- 消費税は原則として含めて判定します。明確に区分されている場合は含めなくても差し支えないとされています。
あっせん手数料は、使用料等や譲受けの対価の支払調書の「あっせんをした者」欄に必要事項を書いて出す場合、別に作らなくてよいとされています。
電子提出が義務になる会社(30枚の判定)
前々年に提出すべき法定調書が30枚以上だった種類は、書面では出せません。2027年に出す法定調書なら、令和7年中に提出すべきだった枚数で判定します。
- 判定は法定調書の種類ごとです。源泉徴収票が30枚以上でも、不動産の使用料等の支払調書が29枚以下なら、後者は書面でも出せます。
- 令和7年中に提出すべき給与所得の源泉徴収票が30枚以上だった場合は、2027年の給与支払報告書もeLTAX等で出す必要があります。
- 電子で出す方法は、e-Tax(給与支払報告書はeLTAX)、クラウド等、光ディスク等です。
eLTAXで給与支払報告書を出すと、提出先の市区町村へ自動で振り分けられ、源泉徴収票を別にe-Taxで出す必要もありません。
年内に確かめておくこと
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 給与計算ソフトや委託先が、令和8年分の新しい扱いに対応しているか | 税務署向けの源泉徴収票を作る手順が不要になる一方、給与支払報告書の提出範囲が変わります |
| 年の途中で退職した人の一覧と支払金額 | 30万円以下の人だけが提出範囲から外れます。退職者分を1月以後にまとめて出す場合も特例の対象です |
| 従業員のマイナンバー・氏名カナ・住所・生年月日 | 誤りがあると給与情報が正しく連携されません |
| 令和8年中に払った家賃・権利金・更新料・仲介手数料・買取代金の支払先ごとの合計 | 不動産関係の支払調書は特例の対象外で、15万円超・100万円超の判定が要ります |
| 家賃を管理会社経由で払っている物件の所有者情報 | 使用料等の支払調書には所有者を書きます |
| 令和7年中に提出すべきだった法定調書の種類別の枚数 | 30枚以上の種類は2027年の提出を電子で行う必要があります |
よくある質問
Q1. 2027年1月に出す令和8年分から、本当に税務署へは何も出さなくてよいのですか
給与所得の源泉徴収票については、給与支払報告書を市区町村に出せば税務署への提出は不要です。ただし、不動産の使用料等の支払調書や報酬・料金等の支払調書など、ほかの法定調書があれば、合計表とともに税務署へ出します。
Q2. 令和8年の途中で退職した人の源泉徴収票はどうなりますか
2027年1月1日以後に、ほかの人の分とまとめて提出する場合は特例の対象になります。年の中途で退職した人のうち、その年の支払金額が30万円以下の人は提出範囲に入りません。本人への交付は必要です。
Q3. 書面で給与支払報告書を出しても、みなし提出になりますか
国税庁の案内では、みなし提出の条件としてeLTAXでの提出は挙げられていません。書面や光ディスク等で出した場合に対象外となると案内されているのは、マイナポータル連携です。前々年の枚数が30枚以上の会社は、そもそも電子での提出が必要です。
Q4. 個人の家主に社宅の家賃を払っています。何を出しますか
法人が個人に払う家賃は、同じ人への年間の支払合計が15万円を超えれば、不動産の使用料等の支払調書の対象です。給与の源泉徴収票のみなし提出とは関係なく、税務署へ出します。管理会社を通して払っている場合も、記載するのは物件の所有者です。
Q5. 提出期限は1月31日ではないのですか
法律上は翌年1月31日ですが、期限が日曜日にあたる場合は翌日が期限になります。2027年1月31日は日曜日なので、令和8年分は2027年2月1日(月)が期限です。
出典(本文で参照している資料)
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 2026年12月31日以前の提出範囲(150万円・250万円・500万円・2,000万円・50万円)、2027年1月1日以後の提出範囲(30万円以下の中途退職者を除く全員)、給与支払報告書の範囲が同一になること | 国税庁 タックスアンサーNo.7411(給与所得の源泉徴収票の提出範囲) |
| みなし提出で税務署への提出が不要になること、受給者への交付は引き続き必要なこと、提出時期(翌年1月31日)、根拠(所得税法226条1項) | 国税庁 手続案内F1-1「給与所得の源泉徴収票(同合計表)」 |
| 令和8年分以後が対象・中途退職者の扱い・合計表が不要になる場合・eLTAXとマイナポータル連携・記載誤りの注意 | 国税庁 リーフレット(源泉徴収票のみなし提出) |
| 所得税法226条6項による特例、対象が給与所得と公的年金等の源泉徴収票であること、主な法定調書の提出期限 | 国税庁「源泉徴収のあらまし」(2026年版) |
| 前々年30枚以上の判定と電子提出の義務、種類ごとの判定、給与支払報告書のeLTAX等での提出 | 国税庁「法定調書の作成と提出の手引」(2026年版・30枚以上提出した方へ) |
| 不動産の使用料等の支払調書の提出義務者・15万円超・対象の支払・所有者を記載すること・共有者ごとの作成 | 国税庁 手引(不動産の使用料等の支払調書)・タックスアンサーNo.7441 |
| 不動産等の譲受けの対価の支払調書の100万円超、あっせんをした者欄 | 国税庁 手引(不動産等の譲受けの対価の支払調書) |
| あっせん手数料の支払調書の15万円超、名目が違っても実質で判断すること、省略できる場合、提出時期と根拠(所得税法225条1項9号) | 国税庁 手引(あっせん手数料の支払調書)・国税庁 手続案内F1-6 |
| 期限が日曜日等にあたる場合の翌日への延長 | e-Gov法令検索 国税通則法(10条2項)・e-Gov法令検索 地方税法(20条の5、317条の6) |
個別の判断(退職所得の源泉徴収票の扱い、共有物件の持分の書き方、消費税の含め方など)は、国税庁の手引の該当ページか、顧問の税理士に確かめてください。
この記事は2026-10-27時点の情報です。