賃貸管理 読了 13分

【2026年10月】No.1表示で住宅4社に課徴金|不動産会社の広告の見直し方

消費者庁が10月28日、顧客満足度No.1などと表示した住宅会社4社に計4億4116万円の課徴金納付命令。根拠とした調査の問題点と、不動産会社・管理会社が自社広告で見直す点をまとめました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
目次

消費者庁は2026年10月28日、注文住宅の広告で「顧客満足度No.1」「3冠達成」などと表示していた住宅会社4社に、景品表示法にもとづく課徴金納付命令を出したと発表しました。課徴金は4社で合計4億4116万円です。根拠とされた調査が客観的なものではなかったとして、優良誤認表示(同法第5条第1号)にあたると判断されています(消費者庁の報道発表)。本稿は発表の中身を整理し、自社サイトやチラシ、募集広告で「No.1」「業界一」などの言葉を使っている不動産会社・賃貸管理会社が確かめることをまとめます。

発表の中身|何が問題とされたか

消費者庁が2026年10月28日に公表した資料の要点は次のとおりです(消費者庁「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」、公表資料PDF)。

  • 対象は、飯田グループホールディングス株式会社と共同して注文住宅の建築請負を供給している4社(住宅情報館株式会社、一建設株式会社、株式会社飯田産業、株式会社アーネストワン)です。
  • 表示の内容は、「土地情報が豊富」「高品質なのにローコスト」「初めて住宅を建てる方におすすめ」の3項目で、自社グループの注文住宅が1位であるかのように示したものです。「顧客満足度No.1」「3冠達成」「信頼の3冠獲得 第1位」などの言葉が使われていました。
  • 媒体は、住宅情報館がポスティングチラシ、一建設と飯田産業が自社ウェブサイト、アーネストワンが自社ウェブサイトと自社で運営するサイトです。
  • 問題とされた点は、根拠とされた調査が、回答者が実際にサービスを使ったことがあるか、知見があるかを確かめておらず、比べる相手も特定の9事業者だけを選んでいたことです。消費者庁は、客観的な調査とはいえず、調査結果も正確に引用されていないとしています。
  • 課徴金の計算は、課徴金の対象期間の売上額に100分の3をかけたものです。4社とも、表示の根拠を十分に確かめていなかったとして、課徴金を課さない要件(表示が不当だと知らず、知らないことに相当の注意を怠っていなかったこと)にはあたらないとされました。
  • 納付期限は2027年5月31日です。

この表示については、消費者庁が2024年2月29日付で、飯田グループホールディングスと4社の計5社に措置命令を出しています(消費者庁「飯田グループホールディングス株式会社ほか4社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2024年3月1日公表))。今回の課徴金納付命令の対象は、そのうち4社です。

注文住宅の建築請負についての処分ですが、根拠の弱い「No.1」をうたう広告が問題とされた点は、仲介・管理の会社が自社の広告で「満足度No.1」「入居率No.1」などと書く場合にも同じように当てはまります。

4社の課徴金額と対象期間の一覧

公表資料の数字をそのまま並べます(金額は1万円未満切り捨て)。

事業者課徴金額違反行為の期間課徴金の対象期間表示した媒体
住宅情報館株式会社1億6703万円千葉県:2022年2月18日〜3月26日/群馬県・埼玉県・東京都(清瀬市):2022年3月14日〜3月26日千葉県:2022年2月18日〜9月26日/群馬県・埼玉県・東京都(清瀬市):2022年3月14日〜9月26日ポスティングチラシ
一建設株式会社1億2439万円2023年6月7日〜9月13日2023年6月7日〜2024年3月13日自社ウェブサイト
株式会社飯田産業3691万円2023年6月7日〜9月15日2023年6月7日〜2024年3月14日自社ウェブサイト
株式会社アーネストワン1億1283万円2023年6月7日〜9月20日2023年6月7日〜2024年3月19日自社ウェブサイト・自社運営サイト
4社の合計4億4116万円---

違反行為の期間(表示をしていた期間)よりも課徴金の対象期間のほうが長くなっています。景品表示法第8条第2項は、表示をやめた日から6か月を経過する日まで(その前に誤認を解消する措置をとったときはその日まで)に取引があれば、最後に取引をした日までを課徴金の対象期間に加えるとしています(3年が上限)。表示をやめた日で売上の計算が終わるわけではない点に注意が要ります。

No.1表示の根拠について消費者庁が示している考え方

消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、No.1表示の根拠となる調査に求められることを整理しています(消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」、報告書の概要PDF)。問題となるおそれがある例として挙げられているのは、次の4つの観点です。

観点問題となるおそれがある例
比較の相手市場の主要な競合を比較対象から外している
調査の対象者表示から消費者が思い浮かべる対象者(実際に使った人など)と違う人に聞いている。イメージだけを聞いた調査を、利用者の評価のように見せている(注記があっても問題になるとされる)
調査の方法自社を選択肢の一番上に固定して誘導する、目標の数字に達した時点で調査を打ち切るなど、恣意的な方法
表示と調査結果の対応表示している内容と、調査で実際に聞いたことが合っていない

報告書はこのほか、事業者が調査会社に任せきりにせず、質問項目や比較の相手を自分で確かめること、消費者が表示の根拠を確かめられるようにすること(調査の概要を示すなど)が望ましいことにも触れています。今回の4社の処分で問題とされた点(利用経験を確かめていない回答者、選んだ9社だけとの比較)は、この整理のうち「調査の対象者」と「比較の相手」に重なります。

不動産の表示規約での「業界一」「日本一」などの扱い

不動産の広告には、景品表示法にもとづく「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)もかかります。表示規約の第18条第2項は、次のような用語を、表示の内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を持っている場合を除いて使ってはならないとしています(不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」)。

号用語の種類規約に挙がっている例
第1号最上級を意味する用語最高、最高級、極、特級 など
第2号著しく安いという印象を与える用語買得、掘出、土地値、格安、激安 など
第3号全く欠けるところがないことを意味する用語完全、完ぺき、絶対、万全 など
第4号競争事業者より優位に立つことを意味する用語日本一、日本初、業界一、超、当社だけ、他に類を見ない、抜群 など
第5号一定の基準で選別されたことを意味する用語特選、厳選 など
第6号著しく人気が高く売れ行きがよいという印象を与える用語完売 など

第1号と第2号の用語は、根拠となる事実を広告に併せて書く場合に限って使えます。第4号の例に「No.1」「第1位」という言葉そのものは挙がっていませんが、他社より優位であることを示す点では同じ種類の言葉です。景品表示法の上でも、今回の処分のように、表示を裏付ける根拠が問われます。

また、物件の所在・規模・形質や、賃料などの対価について、実際より著しく優良・有利だと誤認させる表示は、宅地建物取引業法第32条(誇大広告等の禁止)でも禁じられています(宅地建物取引業法(e-Gov法令検索))。

不動産会社・賃貸管理会社の実務で何をするか

今回の処分を受けて、自社の広告を見直すときの手順を5つに分けます。

1. 自社の広告から「No.1」「1位」「業界一」などの言葉を洗い出す

自社サイト、管理受託の営業資料、オーナー向けパンフレット、ポータルサイトの会社紹介、チラシ、SNSの投稿を対象に、「No.1」「第1位」「満足度」「入居率」「業界一」「地域一番」「3冠」などの言葉を探し、一覧にします。今回の事例ではポスティングチラシも対象になっており、紙の広告も外せません。

2. それぞれの根拠資料が手元にあるかを確かめる

一覧にした表示ごとに、根拠となる調査報告書やデータを社内に保管しているかを確かめます。調査会社から「No.1」の認定を受けた場合も、比較の相手、回答者の条件(実際に利用した人か)、質問の内容、調査の時期を、報告書で自分で確かめます。確かめられないものは、使うのをやめるか表現を変えます。

3. 「入居率」「満足度」などの数字の定義を書きそろえる

自社の数字を示す場合は、いつ時点の、どの物件を母数にした数字かを社内で決めて記録しておきます。たとえば入居率なら、集計日、対象の管理戸数、空室の数え方です。広告には、調査や集計の時期と対象を併せて書くようにします。

4. 古い表示を残さない

以前の調査にもとづく表示を、根拠が古くなったあとも載せ続けていないかを確かめます。サイトの古いページやバナー、ポータルに登録した会社紹介文は見落としやすい場所です。

5. 広告を出す前の確認の担当と記録を決める

景品表示法は、事業者に表示を管理する体制を整えることを求めています(第22条第1項)。広告を出す前に誰が根拠を確かめるか、根拠資料をどこに保管するかを決め、確認した日と担当者を記録しておくと、問い合わせを受けたときにすぐ示せます。

よくある質問

Q1. 今回の処分は、賃貸の仲介や管理の会社にも関係がありますか。

処分そのものは注文住宅の建築請負についてのものです。ただ、景品表示法は商品や役務を供給するすべての事業者にかかり、仲介や管理の広告も対象です。根拠の弱いNo.1表示が優良誤認とされた考え方は、自社の広告にもそのまま当てはまります。

Q2. 課徴金はどのように計算されるのですか。

今回の公表資料では、課徴金の対象期間の売上額に100分の3をかけ、1万円未満を切り捨てて算出されています。4社の合計は4億4116万円です。

Q3. 調査会社から「No.1」と認定されていれば、表示してよいのですか。

認定を受けただけでは足りません。消費者庁の報告書は、比較の相手や調査の対象者、調査の方法、表示と結果の対応が適切かを、事業者が自分で確かめることを求めています。今回も、4社は表示の根拠を十分に確かめていなかったとされています。

Q4. 「地域一番の管理戸数」のような表示は使えますか。

表示規約では「業界一」「日本一」など他社より優位を示す用語は、合理的な根拠を示す資料を持っている場合に限って使えます。地域の範囲、比較した会社、集計の時点を資料で示せない場合は、使わないほうが安全です。判断に迷うときは、各地区の不動産公正取引協議会や弁護士に相談してください。

要点は三つです。消費者庁が2026年10月28日、根拠の弱い「No.1」表示をした住宅会社4社に合計4億4116万円の課徴金納付命令を出したこと。問題とされたのは、回答者の利用経験を確かめず、比べる相手も限った調査を根拠にしていた点であること。不動産会社・賃貸管理会社は、自社の広告にある「No.1」「業界一」などの言葉と根拠資料を、今のうちに照らし合わせておくことです。

この記事は 2026-10-29 時点の情報です。

出典(本文で参照している資料)

本稿の内容は、2026年10月29日に開いて読んだ次の資料にもとづきます。

本稿で使った内容資料
課徴金納付命令の対象・表示の内容・問題とされた点・課徴金額・期間・納付期限消費者庁「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」(2026年10月28日)、公表資料PDF
2024年2月29日付の措置命令消費者庁「飯田グループホールディングス株式会社ほか4社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2024年3月1日)
No.1表示の根拠についての考え方消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日)、概要PDF
特定用語の使用基準(第18条)不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(不動産公正取引協議会連合会)
優良誤認表示の禁止(第5条第1号)・課徴金(第8条)・管理上の措置(第22条)不当景品類及び不当表示防止法(e-Gov法令検索)
誇大広告等の禁止(第32条)宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)

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