電子契約は、サービスを契約しただけでは運用が決まりません。対象書面、確認担当、相手方への案内、交付と保存の確認方法を決めてから、小さな範囲で試しましょう。
この記事では導入の手順を扱います。サービスを選ぶ段階では電子契約サービスの比較と試用項目、すでに使っている会社では電子契約を見直す7項目と説明・引き継ぎの雛形が役立ちます。
最初に、電子書面とIT重説を分ける
国土交通省は、2022年5月18日から、相手方の承諾を得たうえで重要事項説明書や契約締結時書面等を電磁的方法で提供できると案内しています。画面越しに重要事項を説明するIT重説と、書面を電子で交付することは別の確認事項です。署名が完了したことだけで、必要な説明や交付もすべて済んだとは判断できません。
導入を進める6段階
1. 対象書面を棚卸しする
重要事項説明書、契約締結時書面、媒介契約書面、その他の申込・同意書類を一覧にします。取引ごとに必要な書面と根拠を確認し、最初から一つのPDFにまとめて済ませようとしないことが出発点です。改訂者、最終版、添付資料も記録します。
2. 担当者と確認者を決める
書面作成、内容確認、送信、説明、交付確認、保存確認を誰が担当するか決めます。担当者が休んだ場合の代行者も置きます。共用アカウントに依存せず、実際に使う権限で確認・送信・出力ができるかを試してください。
3. 相手方の承諾と利用環境を確認する
電子で提供する書面、提供方法、保存・閲覧の方法を案内し、必要な承諾を得ます。国土交通省の承諾書の例と実施マニュアルを参照し、自社の手順を確認します。メールアドレスや端末があるだけで、承諾を得た扱いにはしません。
相手方が紙を希望する場合や、操作が難しい場合の連絡先・切替方法も用意します。途中で方法を変更したときは、どの版をどの方法で交付したかが追える記録を残します。
4. 練習用の書類で一通り試す
実際の顧客情報を使わない練習用データで、案内、承諾、送信、閲覧、説明、署名、交付、保存まで確かめます。宛先間違い、期限切れ、書面訂正、紙への切替も試し、困ったときの連絡手順を残します。試行後はデータの削除・保存方針も確認してください。
5. 交付と保存を確認する
送信者側の完了表示だけで判断せず、相手方が書面を確認・保存できたかを確かめます。自社でも、契約を探して開けること、必要な証跡を出力できること、サービス解約時の取り出し方を確認します。保存の要件は書面や関連法令によって整理し、一律の年数を置かないようにします。
6. 振り返って対象を広げる
少数の対象から始め、未完了の交付、再送、問い合わせ、紙への切替を振り返ります。完了の判定をそろえ、引き継ぎ先が同じ記録を読めることを確かめてから対象を広げます。「電子化した件数」だけで導入の良否を評価しないことが大切です。
本番で使う前の確認表
| 確認すること | 残すもの |
|---|---|
| 対象書面・手順 | 適用する書式、確認担当、最終版 |
| 相手方への案内 | 案内内容、承諾の記録、希望する交付方法 |
| 試行で見つかった問題 | 再現手順、対応者、再確認日 |
| 完了・引き継ぎ | 交付確認、保存先、未完了事項、代行者 |
詳しい確認には電子契約の書面・署名・保存チェックを使えます。資料は以下から直接保存できます。
登録不要です。テキスト形式の空欄シートなので、保存後に自社の条件を記入できます。
よくある質問
Q1. すべての取引を電子化する必要がありますか?
相手方の承諾や希望、対象書面の要件に合わせて運用します。紙を併用する場合も、同じ取引の最終版と交付状況が分かる記録を残します。
Q2. IT重説をすれば電子交付も済んだことになりますか?
別の確認事項です。説明を実施した記録と、書面の交付・閲覧・保存の確認を分けて管理します。
Q3. サービスの法令対応表示だけで使い始めてよいですか?
自社の書面、利用する機能、承諾・交付・保存の運用が対象要件を満たすか、公式資料と実際の試用で確かめます。
Q4. 導入に何日かかりますか?
対象書面、承認経路、利用者数で変わります。まず棚卸しと試行を行い、解決が必要な問題を把握してから日程を決めます。
出典・確認日
確認日:2026年9月10日。制度の説明は以下の公的資料に基づきます。記録方法と確認シートは編集部の提案です。
訂正履歴
2026年9月10日:旧サービス比較記事を導入手順の記事へ改訂しました。比較社数の不一致、重複FAQ、汎用PDFへの案内を解消し、比較記事と運用記事への案内を整理しました。URLと従来の節リンクは維持しています。