賃貸管理 読了 27分

消費者庁の消費者契約法検討会が2026年9月10日に中間取りまとめを公表、9月16日から10月31日まで意見募集|「賃貸借契約なども該当し得る」と書かれた継続的契約の規律案を、更新の案内・約款の変更通知・解約受付の3か所に当てて読む

消費者庁の「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」が2026年9月10日に中間取りまとめを公表し、9月16日から10月31日まで意見を募集しています。中身は4部構成ですが、賃貸管理会社が読むべきところは決まっています。第2部の「継続的な契約関係からの離脱一般に関する規律」の注に「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる」と書かれているからです。規律案は、自動更新の前に「更新しない」と言う方法を知らせる努力義務、定型約款の重要事項を変えるときの個別通知、そして解約の申入れを受けることを拒否したり不当に遅らせたりする行為を適格消費者団体の差止請求の対象にすること。解約料については、9条1項1号の「平均的な損害」の見直しは今回行わず、説明責任を強化する方向が示されました。法案の時期も施行日もまだ決まっていません。本稿は、原文を引きながら、決まっていることと決まっていないことを分け、直すことになる3か所と、意見の出し方をまとめます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
【2026年9月】消費者契約法の見直し案が意見募集へ|賃貸の更新通知と解約受付
目次

消費者庁の「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」は2026年9月10日、中間取りまとめを公表しました。9月16日から10月31日まで意見を募集しています(e-Gov 案件番号235030052)。消費者契約法そのものの改正案ではありません。検討会が方向を示した段階で、法案の提出時期も施行日も、この中間取りまとめには書かれていません。それでも賃貸管理会社がいま読んでおく理由は、第2部「継続的な契約関係からの離脱一般に関する規律」の注に「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる。」と書かれているからです。示された規律案は3つあります。自動更新の前に「更新しない」と言う方法を知らせること、定型約款の重要事項を変えるときに現に契約している人へ個別に通知すること、そして解約の申入れを受けることを拒否したり不当に遅らせたりする行為を適格消費者団体の差止請求の対象にすること。解約料については、9条1項1号の「平均的な損害」の見直しは今回は行わないと明記されました。本稿は、原文を引きながら、決まっていることと決まっていないことを分け、決まったときに直す先である更新の案内・約款の変更通知・解約受付の3か所を先に見ておきます。

結論(90秒で読める)

  • 消費者庁の検討会が2026年9月10日に中間取りまとめを公表し、9月16日から10月31日23時59分まで意見を募集しています(e-Gov 案件番号235030052、担当は消費者庁消費者制度課)。改正法案ではなく、検討会が示した方向です。
  • 賃貸管理会社に効く理由は1行です。第2部の継続的契約の規律の注に「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる。」と書かれています。
  • 規律案①自動更新の事前通知(努力義務の案)。「事業者は、消費者契約の自動更新に際し、消費者が更新しない旨の申出をする機会を確保するため、あらかじめ、消費者に対し、更新をしない旨の申出に関して必要な情報を通知するよう努めなければならない。」
  • 規律案②定型約款の重要事項変更の個別通知(義務の案)。民法548条の4第1項第2号で定型約款を変更し、かつ契約の重要事項を変更する場合は、変更前に、現に契約関係にある消費者へ所定の事項を個別に通知しなければならない、という案です。
  • 規律案③解約妨害を適格消費者団体の差止請求の対象に。列挙されているのは、解約の判断に通常影響を及ぼす事項についての不実告知/断定的判断の提供/解約をしようとしている場所からの退去妨害/同じく不退去/解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延です。
  • 解約料は、「今回は同法第9条第1項第1号の見直しは行わず、まずは事業者の説明責任を強化することとし」と明記されました。現行9条2項(請求時に説明を求められたら算定根拠の概要を説明する努力義務)の側を広げる方向です。
  • 法案の提出時期も、施行日も、まだ決まっていません。中間取りまとめに記載がありません。今やることは、体制を変えることではなく、直す先を3か所に特定しておくことと、10月31日までに意見を出すかどうかを決めることです。

いつ・誰が・何を出したのか|日程表

出したのは消費者庁が開いている「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」です。中間取りまとめの日付は令和8年9月10日。同じ9月16日には「デジタル取引・特定商取引法等検討会中間取りまとめ」も別案件として意見募集が始まっており、締切は同じです。

日付何が起きたか/これから起きること賃貸管理会社がやること
2026年9月9日検討会 第9回
2026年9月10日中間取りまとめを公表(第1部 消費者の多様な脆弱性への対応/第2部 消費者契約の各過程に関する規律/第3部「解約料」の実態を踏まえた仕組み/第4部 横断的事項)第2部だけ読む
2026年9月16日 0時00分意見公募の受付開始(e-Gov 案件番号235030052・消費者庁消費者制度課)。同日「デジタル取引・特定商取引法等検討会中間取りまとめ」も受付開始(案件番号235060029)意見を出すか決める
2026年10月31日 23時59分意見公募の締切出すなら提出
その後法案の国会提出時期・公布日・施行日とも、中間取りまとめには書かれていませんいま日程を前提にした準備はしない

この表で大事なのは最後の行です。「いつから」が決まっていないものに対して、契約書の巻き直しや約款の作り替えを先回りで走らせるのは早すぎます。一方、意見を出せる期間には期限があり、こちらは10月31日で閉じます。急ぐ側と急がない側が逆になっている、というのがこのニュースの形です。

なぜ賃貸管理会社が読む必要があるのか

消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約に適用されます(2条3項)。「消費者」は個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く)、「事業者」は法人その他の団体と、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人です(2条1項・2項)。個人オーナーであっても、賃貸を事業として行っていれば「事業者」に当たります。入居者が個人で住むために借りているなら「消費者」です。つまり、居住用の賃貸借契約の多くは、はじめから消費者契約です。

そのうえで、今回の中間取りまとめは、継続的な契約関係からの離脱についての規律を検討する場面として、第2部の注で「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる。」と書いています。賃貸借を名指しで外していない、むしろ入り得ると書いているという点が、他の業界向けの検討会と違うところです。

もうひとつ、管理会社自身が当事者になる契約もあります。サブリース(転貸人として入居者と賃貸借を結ぶ)、入居者向けの付帯サービス契約などです。これらも相手が個人の消費者なら消費者契約です。「うちは仲介と管理だから当事者ではない」で済む契約と、済まない契約が社内に混在していることを、先に分けておくと後が楽になります。

規律案①|自動更新の前に「更新しない方法」を知らせる

中間取りまとめが示している規律の内容は次のとおりです(原文)。

事業者は、消費者契約の自動更新に際し、消費者が更新しない旨の申出をする機会を確保するため、あらかじめ、消費者に対し、更新をしない旨の申出に関して必要な情報を通知するよう努めなければならない。

読みどころは2つです。ひとつは「更新します」を知らせることではなく、「更新しないと言うには、いつまでに、どこへ、何をすればよいか」を知らせる、という向きになっていること。もうひとつは、いまのところ「努めなければならない」=努力義務の形で書かれていることです。

賃貸の実務に当てると、更新の案内書に「更新する場合」の手続きだけが書いてあり、「更新しない場合」は解約予告の期間が契約書の何条かに書いてあるだけ、という形が珍しくありません。この案がそのまま条文になれば、更新案内の1枚に解約予告の期限日(○年○月○日まで)と、届出の宛先と方法を並べて書くのが素直な対応になります。書式を1枚直すだけの話で、費用はかかりません。

借地借家法26条があるのに、なぜもう1本増えるのか

普通借家には借地借家法26条1項があります。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

ここで注意したいのは、26条1項が定めているのは「通知をしなかったらどうなるか」という効果であって、事業者に対して「借主が断る方法を事前に教えなさい」と求めるものではない、ということです。向きが違います。26条は貸主・借主どちらの側からの通知も同じ条文に載せていますが、案の①は事業者から消費者への情報提供だけを言っています。

比べる軸借地借家法26条1項(いまある規定)中間取りまとめの規律案①
誰に向けた規定か当事者双方(貸主・借主)事業者から消費者への一方向
何を定めているか通知が無かったときの効果(法定更新)更新前に情報を通知する努力義務
期間満了の1年前から6月前まで「あらかじめ」(時期は示されていない)
違反したとき更新したものとみなされる努力義務のため、案の段階では効果が示されていない
対象建物の賃貸借(事業用も含む)消費者契約(賃貸借も該当し得る、と注に記載)

つまり、片方があるから片方が要らない、という関係ではありません。26条は「結果」を決め、案の①は「手前の案内」を求めていると読むのが素直です。なお、案の①が最終的にどう書かれ、賃貸借にどう当たるのかは決まっていません。定期借家については更新そのものが無く、38条の終了通知が別に働きますので、自動更新の規律がそのまま当たる場面は普通借家とは違います。定期借家の終了通知と再契約の実務は別に整理しています。

規律案②|定型約款の重要事項を変えるときの個別通知

2つめは、定型約款の変更に関するものです。中間取りまとめが示す規律の内容は次のとおりです(原文)。

事業者は、民法第548条の4第1項第2号の規定により定型約款の変更をする場合で、かつ、契約の重要事項の変更をする場合には、当該変更をする前に、現に契約関係にある消費者に対して、所定の事項を個別に通知しなければならない。

いまの民法548条の4は、定型約款の変更ができる場合を2つに分けています。第1項第1号は「相手方の一般の利益に適合するとき」、第2号は「契約をした目的に反せず、変更の必要性・変更後の内容の相当性などに照らして合理的なものであるとき」です。そのうえで第2項は、効力発生時期を定め、変更する旨・変更後の内容・効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないとし、第3項は、第1項第2号による変更は効力発生時期までに周知をしなければ効力を生じないと定めています。

いまは「周知」で足ります。案は、そこに「重要事項なら、現に契約している人へ個別に」を重ねようとしています。「サイトに載せました」では足りなくなる、ということです。

賃貸管理でこれが当たりそうなのは、賃貸借契約書そのものというより、入居者が結ぶ付帯サービスの約款のほうです。24時間サポート、家財保険の付帯サービス、入居者専用アプリの利用規約など、更新のたびに条件が動くものがあります。定型約款に当たるかどうかは契約ごとの判断ですが、少なくとも「規約を変えるときの連絡先が分からない」状態は先に潰せます。いま社内に、入居者と結んでいる約款が何本あるか、その連絡先(メール・アプリ・郵送)がどこに保存されているかを数えておくのが、この案に対する一番安い準備です。

規律案③|解約の受付拒否・不当遅延を差止めの対象に

3つめは、適格消費者団体の差止請求の対象を広げる案です。中間取りまとめは「事業者による同様の解約妨害行為の未然防止又は拡大防止を図る必要があることから、適格消費者団体による差止請求の対象とする方向が考えられる」としたうえで、次の行為を挙げています。

  • 消費者が解約をするかどうかについての判断に通常影響を及ぼす事項についての不実告知
  • 将来における変動が不確実な事項についての断定的判断の提供
  • 消費者が解約をしようとしている場所からの退去妨害
  • 消費者が解約をしようとしている場所からの不退去
  • 消費者から解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延

賃貸管理でいちばん近いのは最後の1つです。解約の申入れは、電話・メール・アプリ・書面と入口がばらけます。「所定の解約届でないと受け付けられません」と言って電話を切る、担当者不在のまま数日置く、退去立会いの日程が決まらないうちは受付扱いにしない——こうした運用は、悪意がなくても「受けることを拒否する行為」「不当遅延」に見える形になり得ます。

ここも、案の段階です。ただ、直しておく価値は案とは無関係にあります。解約の申入れは、受けた日時と入口を記録し、書式が違っても「受けた」ことは動かさない。書式の提出は、受付の後の手続きとして案内する。この順にしておけば、差止めの話が来ても来なくても、退去精算の争いで「いつ申し入れたか」がぶれません。原状回復・退去精算の実務で毎回もめるのも、だいたいこの日付です。

解約料|「平均的な損害」の見直しは今回は行わない

第3部は「解約料」です。ここは結論がはっきり書かれています(原文)。

今回は同法第九条第一項第一号の見直しは行わず、まずは事業者の説明責任を強化することとし、具体的には下記2の「解約料」条項の説明に係る既存の制度を拡充する方向が考えられる

消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う損害賠償の予定や違約金を定める条項について、平均的な損害の額を超える部分を無効とする規定です。この「平均的な損害」をどう決めるか、誰が立証するかは長く論点でしたが、今回の中間取りまとめは、そこを動かさず、説明のほうを厚くする方向を示しました。

「既存の制度」というのは9条2項のことです。

事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない。

いまは「請求する場面で」「求められたら」説明する努力義務です。これを広げる方向、と書かれています。どこまで広げるかは決まっていません。

賃貸でこれに当たり得るのは、短期解約違約金(1年未満の解約で賃料1か月分など)、解約予告期間に足りない分の賃料相当額、定期借家の中途解約に関する定めあたりです。いま、その金額の根拠を1行で説明できる状態にあるか——これは案の行方と関係なく、9条2項がすでにある以上、聞かれたら答える話です。更新トラブルの7パターンでも、揉める場面はたいてい「なぜこの金額なのか」が出てこないときでした。

まだ決まっていないこと

ここは、はっきり書いておきます。

よく聞かれること中間取りまとめに書いてあるか
法案はいつ国会に出るのか書かれていません
改正法の公布日・施行日はいつか書かれていません
規律案①②③はそのまま条文になるのか決まっていません。「方向が考えられる」という書き方です
賃貸借契約に適用除外が置かれるのか書かれていません。第2部の注に「該当し得る」とあるだけです
更新料・原状回復特約は無効になるのか個別の条項の評価はしていません
「平均的な損害」に新しい基準ができるのか今回は見直しを行わないと明記されています

「今後こうなるだろう」という予測は、この記事には書きません。決まっていないものを決まったように書くと、オーナーへの説明がそのまま外れます。いま確実に言えるのは、意見募集が10月31日で閉じることと、直す先は3か所だと分かったことの2つだけです。

賃貸管理の現場で今週やる5つ

  1. 更新案内の書式を1枚出して、「更新しない場合」の行があるか見る。無ければ、解約予告の期限日(日付で)と届出先・方法の3つを足す。契約書の条番号を書くだけでは、案の①が求めている「必要な情報」にはなりません。
  2. 入居者と結んでいる約款を数える。賃貸借契約以外に、付帯サービス・アプリ利用規約など何本あるか。それぞれ、変更するときに「現に契約している人」へ個別連絡できる宛先を持っているか。持っていないものに印を付ける。
  3. 解約の申入れを「受けた日」の記録方法を1本に決める。電話・メール・アプリ・書面のどれで来ても、受けた日時と入口を同じ場所に残す。所定様式の提出は受付の後の手続きとして案内し、受付日は動かさない。
  4. 短期解約違約金・解約予告不足分の根拠を1行で書き出す。「賃料1か月分」がどういう費用の見積りなのか。9条2項はいまもある規定なので、聞かれたら答える話です。
  5. 10月31日までに意見を出すかを決める。出すなら、現場で実際に困る場面(たとえば入居者の連絡先が更新されておらず個別通知が届かない、解約の入口が複数ある)を具体的に書く。抽象的な賛否より、実務の事実のほうが読まれます。

ウルスタくんを使っている場合、1と3はシステム側に寄せられます。運用管理タブの契約更新の期限アラートで満了日から逆算した対象を出し、更新条件はオーナー承諾を経てから入居者へ案内する流れになっているので、案内を出した日と承諾の日が別々に残ります。更新の書面を電子サインで回している場合は、送信日と同意日がそのまま記録になります。書式の文言そのものは各社で違うので、そこは手で直してください。

意見を出したい会社がやること

意見公募の受付は、e-Gov パブリック・コメントの案件番号235030052です。受付は2026年9月16日0時00分から2026年10月31日23時59分まで。担当は消費者庁消費者制度課です。提出方法は案件ページの「意見募集要領」に書かれた宛先に従います。

同じ日に「デジタル取引・特定商取引法等検討会中間取りまとめ」も意見募集が始まっています(案件番号235060029・締切は同じ10月31日)。こちらは通信販売やダークパターンが中心で、賃貸の本業からは遠いのですが、入居者向けのオンライン申込フォームや自動更新型のサブスクを扱っている会社は、あわせて見ておく価値があります。

この中間取りまとめが言っていないこと

中間取りまとめは、業種ごとの実態調査ではありません。賃貸借契約の件数、更新料の相場、短期解約違約金の実態といった数字は出てきません。「賃貸借契約なども該当し得る」という注は、規律の対象場面を説明する文脈のもので、賃貸借を主題にした章はありません。したがって本稿の「更新案内」「約款の変更通知」「解約受付」という当てはめは、示された規律案を本稿が賃貸実務に当てて読んだものであり、中間取りまとめがそう書いているわけではありません。第1部の「配慮規定」(プリンシプル=行動規範や行動原則としての配慮を促進する仕組み)や、第4部の官民協議会についても、賃貸業への当てはめは書かれていません。本稿は個別の契約条項が有効か無効かを判断するものでもありません。

よくある質問

Q1. いまの契約書や更新案内を、急いで作り直す必要がありますか?

ありません。中間取りまとめは検討会が示した方向で、改正法ではありません。法案の提出時期も施行日も書かれていません。作り直すのは条文が決まってからで間に合います。いま費用をかけずにできるのは、更新案内に「更新しない場合」の期限日と届出先を足すことくらいです。これは案と関係なく、入居者にとって親切で、退去予告の遅れも減ります。

Q2. 個人のオーナーが貸主でも、消費者契約法は適用されますか?

賃貸を事業として行っている個人は「事業者」に当たります(消費者契約法2条2項)。入居者が個人で、事業のためでなく借りているなら「消費者」です(同1項)。この組み合わせなら消費者契約です(同3項)。戸数の多い少ないで決まるわけではなく、事業として貸しているかどうかで見ます。オーナーが事業として貸していない例外的な場合は当たりませんが、居住用の賃貸では例外のほうが少ないと考えておくのが安全です。

Q3. 更新料や原状回復の特約が無効になる、という話でしょうか?

違います。中間取りまとめは個別の条項の有効・無効を評価していません。解約料についても、9条1項1号(平均的な損害を超える部分は無効)の見直しは今回は行わないと明記されています。動いているのは、説明を厚くする方向と、解約の申入れを妨げる行為を差止めの対象にする方向です。

Q4. 「解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延」は、所定の様式を求めることも含みますか?

中間取りまとめは行為の類型を挙げているだけで、様式の要否については書いていません。判断されるのは案が条文になった後です。実務としては、様式の提出を求めること自体より、様式が出るまで申入れを受けた扱いにしない運用のほうが説明しにくくなります。受付日は申入れの日で固定し、様式は後続の手続きとして案内する形にしておくと、案の行方にかかわらず筋が通ります。

Q5. 管理会社は賃貸借契約の当事者ではないので、関係ないのでは?

賃貸借契約の当事者は貸主と借主です。ただし、サブリースで転貸人になっている場合や、入居者と付帯サービスの契約を直接結んでいる場合は、管理会社自身が事業者側の当事者です。また当事者でなくても、更新案内や解約受付を実際に動かしているのは管理会社なので、貸主が負う義務の履行は管理会社の業務として降りてきます。更新業務の組み立てを見直すときに、この順番で整理しておくと分担が決めやすくなります。

Q6. 意見を出すと、どのくらい効果がありますか?

効果を約束するものではありません。ただ、意見公募は誰でも提出でき、提出された意見は検討の材料として扱われます。業界団体を通さなくても1社で出せます。書くなら、賛否の表明よりも、現場で実際に起きる困りごと(連絡先が更新されていない入居者に個別通知が届かない、解約の入口が電話・アプリ・書面に分かれている、など)を具体的に書くほうが材料になります。締切は10月31日23時59分です。

まとめ

消費者庁の消費者契約法検討会が2026年9月10日に中間取りまとめを公表し、9月16日から10月31日まで意見を募集しています。賃貸管理会社が読む理由は、第2部の注に「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる」と書かれているからです。示された規律案は、自動更新の前に「更新しない方法」を知らせる努力義務、定型約款の重要事項変更時の個別通知、解約の受付拒否・不当遅延を含む解約妨害の差止め。解約料は9条1項1号の見直しを今回は行わず、説明責任を強化する方向です。法案の時期も施行日も決まっていません。いま動かすのは、更新案内の書式・約款の連絡先・解約受付の記録の3か所と、10月31日までに意見を出すかどうかの判断だけで足ります。

出典(本文で参照している資料)

本稿の記述は、すべて2026年9月18日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。中間取りまとめのPDFは規律案の文言を原文のまま取り出して照合し、条文はe-Gov法令検索の該当条のみを取得して読みました。

本稿で使った内容資料
中間取りまとめの公表日(令和8年9月10日)、名称、作成主体消費者庁「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会中間取りまとめの公表について」(2026年9月10日)
4部構成、第2部の注「賃貸借契約なども当該消費者契約に該当し得るものと考えられる。」、自動更新の通知の規律案、定型約款の重要事項変更の個別通知の規律案、解約妨害行為と差止請求の方向および列挙された5つの行為、「今回は同法第九条第一項第一号の見直しは行わず、まずは事業者の説明責任を強化することとし…」、「配慮規定」の説明、検討会 第9回(2026年9月9日)現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会「中間取りまとめ」(令和8年9月10日・PDF)同 検討会 会議資料
意見募集の掲載(2026年9月16日)消費者庁「『現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会 中間取りまとめ』に関する御意見募集について」(2026年9月16日)
案件名、案件番号235030052、担当(消費者庁消費者制度課)、受付開始 2026年9月16日0時00分、受付締切 2026年10月31日23時59分、提出方法は意見募集要領によるe-Govパブリック・コメント「『現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会 中間取りまとめ』に関する意見公募について」
デジタル取引・特定商取引法等検討会中間取りまとめの意見募集(案件番号235060029・締切2026年10月31日)、消費者庁の意見募集一覧消費者庁 パブリック・コメント(意見募集)一覧
2条1項(消費者)・2項(事業者)・3項(消費者契約)、9条1項1号(平均的な損害を超える部分の無効)、9条2項(算定の根拠の概要を説明する努力義務)、10条消費者契約法(平成12年法律第61号)|e-Gov法令検索
548条の4第1項1号・2号(定型約款の変更ができる場合)、2項(効力発生時期を定め、インターネットの利用その他の適切な方法により周知)、3項(1項2号の変更は周知しなければ効力を生じない)民法(明治29年法律第89号)|e-Gov法令検索
26条1項(満了の1年前から6月前までに更新をしない旨の通知が無ければ従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす。ただし期間は定めがないものとする)借地借家法(平成3年法律第90号)|e-Gov法令検索

本稿の整理:「直す先は3か所」「今週やる5つ」「26条1項と規律案①の比較表」「まだ決まっていないことの表」は、示された規律案を本稿が賃貸実務に当てて読んだものです。中間取りまとめは賃貸業への当てはめを書いていません。法案の提出時期・公布日・施行日、規律案が条文になるかどうか、賃貸借への適用除外の有無は資料に無いので書いていません。個別の契約条項が有効か無効かの判断もしていません。

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