賃貸管理 読了 13分

住所等変更登記の義務化(2026年4月施行)|期限・過料・スマート変更登記と管理会社の実務

2026年4月1日から、住所や氏名が変わった日から2年以内の変更登記が義務になりました。施行前の変更は2028年3月31日が期限です。過料までの流れ、スマート変更登記、自分で申請する方法、管理会社とオーナーが進める確認の手順を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
住所等変更登記の義務化(2026年4月施行)|期限・過料とスマート変更登記
目次

2026年4月1日から、不動産の所有者は住所や氏名・名称が変わった日から2年以内に変更の登記を申請する義務を負い、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります。施行日より前の変更も対象で、その場合の期限は2028年3月31日です。法務局に「検索用情報」などを申し出ておけば、法務局が職権で登記を変える「スマート変更登記」を使えます。この記事では、不動産登記法の条文と法務省の案内をもとに制度を整理し、オーナーと賃貸管理会社が進める実務の手順をまとめます。

住所等変更登記の義務化の要点

所有者が引っ越しても、登記簿の住所は自動では変わりませんでした。法務省は、相続登記の未了と住所等変更登記の未了を所有者不明土地の主な発生原因としています。これに対応するため2021年に不動産登記法が改正され、変更登記の申請が義務になりました。

項目内容
根拠不動産登記法76条の5
施行日2026年4月1日
対象所有権の登記名義人の氏名・名称・住所の変更(個人も法人も対象)
期限変更があった日から2年以内
施行日前の変更変更登記をしていなければ義務化の対象。2028年3月31日までに申請が必要
過料正当な理由なく申請を怠ったときは5万円以下(不動産登記法164条2項)

条文は「所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない」と定めています。結婚や離婚で氏が変わった場合も、氏名の変更として対象になります。

過料が科されるまでの流れと「正当な理由」

法務省のQ&Aでは、過料までの流れを次のように説明しています。

  1. 登記官が義務違反を把握したら、義務を負う人に登記をするよう催告する(催告書を送る)
  2. 催告の期限内に申請がなければ、登記官が裁判所に通知する
  3. 裁判所が過料を科すかどうかと金額(5万円以下)を決める

法務省の案内では、次のような場合は「正当な理由」に当たるとされています。

  • 検索用情報の申出や会社法人等番号の登記がされているのに、登記官の職権による変更がまだされていない
  • 行政区画の変更などで住所が変わった
  • 重病などの事情がある
  • DV被害者等で、生命・身体に危害が及ぶおそれがある
  • 経済的に困窮している

1つ目が実務上は重要です。スマート変更登記の申出を済ませておけば、職権での変更が終わっていなくても正当な理由として扱われます。

スマート変更登記(検索用情報の申出・会社法人等番号)

不動産登記法76条の6は、登記官が職権で氏名・名称・住所の変更登記をできると定めています。ただし、登記名義人が個人の場合は、本人の申出があるときに限られます。法務省はこの仕組みを「スマート変更登記」と呼び、かんたんな申出を一度しておけば、法務局が住所等の変更を確認して登記をすると案内しています。

個人の場合:検索用情報の申出

  • 申し出る内容:氏名、住所、氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレス、国籍など
  • 2025年4月21日から、所有権の保存・移転などの登記を申請するときは、検索用情報を申請書に書いて申し出ることが必要になっている
  • すでに所有している人は、オンライン(かんたん登記・供託申請)または申出書を管轄の登記所に出す方法で申し出られる。単独で申し出る場合、登録免許税などの費用はかからない
  • 法務局は2年に1回程度、検索用情報をもとに住基ネットに照会し、変更の有無を確認する。変更があれば本人に意思確認の通知(メールまたは書面)を送り、1か月以内の回答を経て登記する

海外に住んでいる人は、住基ネットで変更後の住所や氏名を確認できないため、個人のスマート変更登記の対象になりません(法務省Q&A)。

法人の場合:会社法人等番号の登記

法人は、所有権の登記事項として会社法人等番号が登記されていれば、商業・法人登記で本店や商号を変更したときに、不動産登記にも職権で反映されます。会社法人等番号が登記されていない法人は、オンラインまたは書面で「会社法人等番号の申出」をすれば登記されます。法務省のQ&Aでは、吸収合併は対象外とされています。

自分で申請するときの書類と費用

スマート変更登記を待たず、すぐに登記を直したい場合は自分で申請します。法務省民事局の手続案内では、次のように説明されています。

  • 申請先:不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)。書面(持参または郵送)かオンラインで申請できる
  • 添付書類:登記簿上の住所(移転前の住所)と現在の住所、住所移転の日が書かれた住民票の写し。何度も引っ越していて住民票だけでつながらない場合は、戸籍の附票の写しなどで登記簿上の住所から現在の住所までの経緯を証明する
  • 住民票コードを申請書に書くと、住民票の写しの提出を省略できる場合がある
  • 登録免許税:不動産(土地または建物)1物件につき1,000円

土地と建物を両方持っていれば2物件です。区分所有マンションでは敷地権の扱いがあるため、物件の数え方は登記事項証明書と法務局の案内で確認します。

相続登記の義務化との違い

項目相続登記住所等変更登記
施行日2024年4月1日2026年4月1日
根拠不動産登記法76条の2不動産登記法76条の5
期限相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内変更があった日から2年以内
施行前の分2027年3月31日まで2028年3月31日まで
過料10万円以下(164条1項)5万円以下(164条2項)
簡易な方法相続人申告登記スマート変更登記(検索用情報の申出、会社法人等番号の登記)

名義人が亡くなっている不動産は、住所の変更ではなく相続登記の問題です。登記簿を確認したときに名義人が亡くなった方のままであれば、相続登記の期限も一緒に確認します。

管理会社とオーナーが進める実務の手順

過料の金額よりも実務で困るのは、登記上の住所が古いままだと、売却や借入れ、相続の場面で手続が増えることです。賃貸管理会社は、オーナーの情報をいちばん多く持っている立場なので、次の順で確認を手伝えます。

1. オーナー台帳と登記の突き合わせ

管理物件の登記事項証明書(または登記情報提供サービスの登記情報)を取り、所有者欄の氏名・住所と、管理会社が把握している現住所を比べます。法人オーナーは、本店や商号の変更がないかもあわせて見ます。比べた日付と結果を記録しておくと、次に確認するときの手間が減ります。

2. オーナーへの案内

違いが見つかったオーナーには、義務化の概要、期限(施行前の変更なら2028年3月31日)、スマート変更登記という方法があることを短い文書で伝えます。違いがないオーナーにも、今後引っ越したときのために検索用情報の申出を案内しておくと、将来の申請漏れを防げます。

3. 司法書士への紹介

登記の申請の代理や、法務局に出す書類の作成を業として行えるのは司法書士です(司法書士法3条1項1号・2号、73条1項)。管理会社が代わりに申請書を作ることはできないため、オーナーの依頼先として司法書士を紹介します。紹介料を受け取るかどうかや費用の負担は、オーナーに事前に説明しておきます。

4. 法人オーナーと自社名義の物件

法人は個人のような住基ネットによる確認ができないため、会社法人等番号の登記がされているかを確認します。管理会社自身が所有している物件や、本店移転をした自社の不動産も同じように見直します。

5. 海外に住むオーナー

海外在住のオーナーは個人のスマート変更登記を使えません。住所が変わるたびに自分で申請する必要があるため、変更の連絡をもらう仕組みと、手続を頼む司法書士を早めに決めておきます。

6. 契約書類の住所表記をそろえる

管理受託契約書や賃貸借契約書の貸主の住所と、登記上の住所が違っていても契約が無効になるわけではありません。ただ、売却時や相続時に同一人物であることの確認に手間がかかります。契約の更新や書類の作り直しのタイミングで、現住所の確認を習慣にしておくと後が楽になります。

オーナーの現住所や確認日は、顧客管理にまとめておくと担当者が変わっても引き継げます。ウルスタくんの顧客管理と物件・入居者の管理を使えば、オーナーごとの物件と連絡先をまとめて記録しておけます。

状況別の対応の整理

オーナーから相談を受けたときに迷わないよう、本文の内容を状況別にまとめます。

オーナーの状況必要な手続使える方法
国内で引っ越した個人変更の日から2年以内に住所の変更登記(施行前の変更は2028年3月31日まで)自分で申請(1物件1,000円)、または検索用情報の申出によるスマート変更登記
結婚・離婚などで氏が変わった個人氏名の変更登記自分で申請、または検索用情報の申出によるスマート変更登記
本店移転・商号変更をした法人名称・住所の変更登記会社法人等番号が登記されていれば職権で反映。未登記なら会社法人等番号の申出
海外に住む個人住所の変更登記個人のスマート変更登記は対象外のため、自分で(または司法書士に依頼して)申請
名義人が亡くなっている相続登記(取得を知った日から3年以内、施行前の相続は2027年3月31日まで)遺産分割がまとまらないときは相続人申告登記

オーナーへの案内文の例

案内は短く、手続の選択肢と期限が分かる形にします。例:「2026年4月から、不動産の登記簿の住所や氏名が変わったときは、2年以内に変更の登記をすることが義務になりました。2026年3月以前の変更は2028年3月31日が期限です。登記簿のご住所が現在と違っていたため、お知らせします。法務局への申出(費用はかかりません)で、今後は法務局が変更を反映する方法もあります。手続は司法書士をご紹介できます。」

よくある質問

Q1. 2026年4月より前に引っ越していた場合も対象ですか。

対象です。施行日前の変更で登記をしていない場合は、2028年3月31日までに変更登記をする必要があります(法務省の案内)。

Q2. スマート変更登記の申出をしておけば、過料の心配はありませんか。

法務省は、検索用情報の申出や会社法人等番号の登記がされているのに職権による変更がまだされていない場合を「正当な理由」の例に挙げています。申出を済ませておくことが、いちばん手間の少ない対策です。

Q3. 法人の本店移転も対象ですか。

対象です。名称(商号)や住所(本店)の変更も2年以内の申請義務があります。会社法人等番号が登記されていれば、商業・法人登記の変更が職権で不動産登記に反映されます。

Q4. 海外に住んでいるオーナーはどうすればよいですか。

住基ネットで確認できないため、個人のスマート変更登記の対象外です。住所が変わったら自分で(または司法書士に依頼して)変更登記を申請します。

Q5. 管理会社が代わりに申請してもよいですか。

登記の申請の代理や申請書類の作成を業として行うことは、司法書士でない者には認められていません(司法書士法73条1項)。管理会社は、登記の状況の確認とオーナーへの案内、司法書士の紹介までを担うのが適切です。

Q6. 自分で申請すると費用はいくらかかりますか。

登録免許税は不動産1物件につき1,000円です(法務省民事局の手続案内)。このほか住民票の写しなどの取得費用がかかります。スマート変更登記の単独の申出には登録免許税などの費用はかかりません。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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