賃貸管理 読了 17分

連帯保証人の極度額とは|民法465条の2・465条の4と更新時の扱いを賃貸実務で整理

個人の連帯保証人には、上限額である極度額を書面で定めないと保証契約が無効になります。書き方の例、国土交通省の参考資料の数字、保証人や借主の死亡で保証が締め切られるしくみ、改正前の契約を更新するときの扱いを条文と公的資料で整理しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
連帯保証人の極度額とは|民法465条の2・465条の4と更新時の扱いを賃貸実務で整理
目次

個人が賃貸借契約の連帯保証人になる場合、保証人が負う上限額である「極度額」を書面(または電磁的記録)で定めていないと、その保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。2020年4月1日より前に結ばれた契約には原則として改正前の民法が適用されますが、施行日後に合意で更新した契約には改正後の民法が適用されます。この記事では、条文と法務省・国土交通省の資料をもとに、極度額の書き方、保証が締め切られる場面(元本の確定)、更新時の扱い、管理会社の確認手順を整理します。

極度額とは|個人の根保証につける上限額

賃貸借の連帯保証は、契約の時点では金額が決まっていない債務をまとめて保証する契約です。毎月の賃料、滞納したときの遅延損害金、退去時の原状回復費用などが対象になり、いくらになるかは後にならないと分かりません。民法は、このように一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」と呼び、保証人が法人でないものを「個人根保証契約」と呼んでいます(民法465条の2第1項)。

個人根保証契約の保証人は、元本、利息、違約金、損害賠償などの全部について、「極度額」を限度として責任を負います(同項)。つまり極度額は、保証人が支払う可能性のある金額の上限です。上限が決まっていれば、保証人は契約の時点で最大いくらの責任を負うのかを知ることができます。

このルールは、民法の改正(債権法改正)により、2020年4月1日から賃料の保証のような根保証にも適用されています。法務省のパンフレット「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」でも、子どもがアパートを借りるときに親が賃料などを保証する場面が、根保証の例として挙げられています。

極度額を定めないと保証契約は無効|民法465条の2

民法465条の2第2項は、「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めています。極度額の欄が空白のまま保証人が署名した契約書は、保証契約として効力がありません。借主が滞納しても、保証人に請求する根拠がなくなります。

さらに同条3項は、保証契約を書面でしなければならないとする民法446条2項・3項を、極度額の定めにも準用しています。極度額は口頭で伝えるだけでは足りず、書面か、内容を記録した電磁的記録(電子契約)で定める必要があります。電子サインで保証契約を結ぶ場合も、極度額が画面上の契約内容に入っているかを確認します。

この規定が適用されるのは、保証人が個人の場合です。家賃債務保証会社のような法人が保証する場合は、民法465条の2の「個人根保証契約」には当たりません。

極度額の書き方|金額か、賃料の何か月分か

国土交通省の標準契約書の形

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版・連帯保証人型)では、頭書(6)に連帯保証人の住所・氏名・電話番号と並んで「極度額」の欄が設けられています。第17条では、連帯保証人は借主と連帯して契約から生じる借主の債務を負担し、契約が更新された場合も同様とすること、その負担は頭書(6)と記名押印欄に書く極度額を限度とすることが定められています。同条には、借主または連帯保証人が死亡したときに元本が確定すること、連帯保証人から請求があれば貸主が支払状況などの情報を提供することも書かれています。

書き方の例

国土交通省の「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」では、極度額の書き方として、次のような例が示されています。

書き方記載例確認すること
金額と月数を併記○○円(契約時の月額賃料の○か月相当分)金額と月数の計算が合っているか
月数と賃料額を明記契約時の月額賃料(○○円)の○か月分「契約時の」と賃料額が書かれ、金額が一つに決まるか
金額のみ○○円保証人が読んで上限額が分かるか

気をつけたいのは、「賃料の○か月分」とだけ書き、どの時点の賃料かが分からない書き方です。上限額が一つに決まらず、極度額を定めたといえるかで争いになるおそれがあります。同じQ&Aでは、保証契約を結んだ後に賃料が増減しても極度額は変わらず、契約時の額が適用されるとしています。金額で書いておくのが分かりやすい方法です。

金額を決めるときの参考資料

極度額をいくらにするかについて、法律上の決まりはありません。国土交通省は2018年3月30日に「極度額に関する参考資料」を公表しています。この資料には、家賃債務保証業者の損害額の調査、家賃滞納の発生状況の調査、裁判所の判決で連帯保証人に負担が命じられた額の調査がまとめられています。

判決の調査は、民間賃貸住宅の賃貸借で連帯保証人に負担を命じた判決91件(裁判年月が1997年11月から2016年10月のもの)が対象です。負担額を月額家賃で割った値は、平均が約13.2か月分、中央値が12か月分、最小が2か月分、最大が33か月分でした。資料では、具体的な極度額は貸主と連帯保証人などの関係者で十分に話し合って決めることが必要だとしています。

国土交通省が2021年3月にまとめた「改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集」には、宅建業者の団体の会員に行ったアンケートの結果があります(2020年8月20日から9月30日、回答458社)。極度額の表し方は「実額○円」が41.0%、「賃料等○か月分」が38.8%、「両方併記」が14.3%でした(n=307)。月数で設定している回答では「13か月以上24か月以下」が51.4%で最も多く、「6か月以下」と「7か月以上12か月以下」がそれぞれ19.7%でした(n=173)。

仮の数字で計算例を示します。契約時の月額賃料が65,000円で、極度額を賃料の12か月分とする場合、65,000円×12か月=780,000円です。契約書には「780,000円(契約時の月額賃料65,000円の12か月相当分)」のように、金額と根拠を両方書いておくと、後で読み返したときにも誤解が生じにくくなります。高すぎる極度額は保証人が引き受けにくくなり、低すぎると滞納や原状回復費用をまかなえないことがあるため、物件の賃料や構造に応じて貸主と決めます。

元本確定事由|保証が締め切られる場面(民法465条の4)

根保証では、ある出来事が起きると、その時点で保証の対象となる元本が確定します。確定した後に発生する賃料などは、保証の対象に入りません。民法465条の4第1項は、個人根保証契約の元本が確定する場合として、次の3つを定めています。

確定する場面条文実務で起きること
債権者が保証人の財産に強制執行や担保権の実行を申し立てたとき(手続が開始したときに限る)465条の4第1項1号貸主が保証人の財産を差し押さえると、それ以後の賃料は保証の対象外になる
保証人が破産手続開始の決定を受けたとき同項2号保証人の破産を知ったら、新しい保証人か保証会社への切り替えを借主に相談する
借主または保証人が死亡したとき同項3号保証人の相続人は、死亡時点で確定した元本の範囲で責任を引き継ぐ。死亡後の賃料は保証の対象外

同条2項は、借主の財産への強制執行や借主の破産も確定事由としていますが、これは「個人貸金等根保証契約」(貸金などの債務の根保証)に限った規定です。賃料の保証には2項は適用されないため、借主が破産しても、それだけでは保証の元本は確定しません。

実務で特に多いのは、長く住んでいる借主の保証人が高齢で亡くなる場面です。保証人の死亡を知らないまま契約を続けていると、その後に滞納が起きても、保証人の相続人には請求できません。国土交通省の標準契約書Q&Aでも、連帯保証人が死亡した後も賃貸借が続く場合は、新たな連帯保証人を立てる必要があるとしています。更新のときに保証人が健在かを確かめ、亡くなっていれば新しい保証人を立ててもらうか、家賃債務保証会社への加入を借主に相談します。契約書に、保証人が欠けたときに借主が新しい保証人を立てる旨の条項があるかも確認しておきます。

改正前の契約と更新の扱い|経過措置と合意更新

改正後の民法がどの契約に適用されるかは、改正法の附則(経過措置)で定められています。法務省のパンフレット「2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」(2019年2月)は、次のように説明しています。

  • 賃貸借や保証などの契約は、原則として、施行日(2020年4月1日)より前に結ばれた契約には改正前の民法、施行日以後に結ばれた契約には改正後の民法が適用される。
  • 施行日後に当事者が合意によって賃貸借契約や保証契約を更新したときは、当事者は新しい民法が適用されると予測していると考えられるため、改正後の民法が適用される。
  • 施行日前に結ばれた保証契約が、更新後の賃貸借の債務も保証する趣旨のもので、保証について合意による更新がされていない場合は、施行日後も、その保証契約には改正前の民法が適用される。

国土交通省の「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」でも、施行前に結ばれた契約の連帯保証が、改正民法の施行によって直ちに無効になるわけではないと説明されています。

場面保証契約に適用される民法極度額の定め
2020年4月1日以後に新しく契約した改正後必要(ないと無効)
施行日前の契約で、施行日後に保証人とも合意して保証契約を更新した改正後必要(ないと無効)
施行日前の保証契約が更新後の債務も保証する内容で、保証について合意更新をしていない改正前改正前の民法のまま

実務で迷いやすいのは、更新のたびに保証人から更新契約書に署名をもらっている場合です。保証人が署名する形の更新は、保証契約の合意更新に当たると考えられるため、施行日後の更新では極度額を書いた書面で保証契約を結び直します。古い契約書の保証欄をそのまま使い回して保証人の署名だけをもらうと、極度額の定めがない保証契約になってしまいます。

法務省のパンフレットは、法定更新(期間満了時に更新の合意がなく、借地借家法の規定で更新されたものとみなされる場合)について個別には触れていません。施行日前の契約で、法定更新が続いている物件の保証をどう扱うかは、契約書の文言にもよるため、判断に迷う場合は弁護士に確認します。

保証人への情報提供|民法458条の2と465条の10

保証人から求められたとき(民法458条の2)

保証人が借主の委託を受けて保証した場合、保証人から請求があれば、貸主は遅滞なく、元本や利息、違約金、損害賠償などについて、不履行の有無、残額、そのうち弁済期が来ている額の情報を提供しなければなりません(民法458条の2)。標準契約書の第17条4項にも、連帯保証人の請求があったときは、貸主が賃料や共益費の支払状況、滞納額、損害賠償の額などの情報を提供する旨が書かれています。管理会社が貸主に代わって窓口になる場合は、問い合わせを受けたときの回答の範囲と、本人確認の方法を決めておきます。

事業用の賃貸で保証を頼むとき(民法465条の10)

事業のために負担する債務の保証を個人に頼むとき、借主は保証を頼む相手に、財産と収支の状況、ほかの債務の有無と額・返済状況、ほかに担保を出しているかを説明しなければなりません(民法465条の10第1項)。法務省の保証のパンフレットでは、融資だけでなくテナント料などの保証にも適用されると説明されています。借主が説明をしなかったり事実と違う説明をしたりして、保証人が誤解して保証を引き受けた場合、貸主がそのことを知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます(同条2項)。店舗や事務所の賃貸で個人の保証人を立てるときは、借主が説明したことを確認する書面を用意しておくと、後の争いを防ぎやすくなります。

家賃債務保証会社との併用

個人の連帯保証人を立てる代わりに、あるいは個人の保証人に加えて、家賃債務保証会社を使う契約もあります。保証会社は法人なので、極度額のルール(民法465条の2)や元本確定のルール(民法465条の4)は適用されません。保証の範囲や上限は、保証会社との保証委託契約の内容で決まります。

個人の保証人と保証会社を併用する場合は、どちらがどの範囲を保証するのか、保証会社が代わりに支払った後に個人の保証人へ求償するのかを、契約書で確認しておきます。個人の保証人が負う部分には、極度額の定めが必要です。保証会社の選び方は「賃貸保証会社の選び方」で、登録制度や契約条項の見方を整理しています。

管理会社の確認表|契約・更新・退去の場面ごとに

場面確認すること根拠
新規契約保証欄に極度額が金額で書かれ、保証人が署名(または電子サイン)しているか民法465条の2、446条2項・3項
新規契約「賃料の○か月分」だけでなく、契約時の賃料額か金額が書かれているか国土交通省 標準契約書Q&A
事業用の新規契約借主が保証人に財産・収支などを説明したことを書面で確認したか民法465条の10
更新保証人が署名する形の更新か。施行日後なら極度額を書いた書面で保証契約を結び直すか法務省パンフレット(経過措置)
更新保証人が健在か、連絡先が変わっていないか民法465条の4第1項3号
保証人の死亡・破産を知ったとき元本が確定した日を記録し、新しい保証人か保証会社への加入を借主に相談したか民法465条の4第1項2号・3号
保証人からの問い合わせ本人確認をしたうえで、不履行の有無・残額・弁済期が来ている額を遅滞なく回答したか民法458条の2
退去・精算保証人への請求額が極度額の範囲内か民法465条の2第1項

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理と更新が近い契約の一覧で、更新時期が近い契約を早めに確認できます。賃貸借契約書などの書類は電子サインにも対応しているため、更新時に保証契約を結び直すときにも使えます。極度額の金額そのものは、物件ごとに貸主と相談して決めてください。

更新の手続全体の流れは「賃貸契約の更新トラブルを防ぐ」も参考にしてください。

よくある質問

Q1. 極度額の欄が空白の契約書は、すべて無効ですか。

2020年4月1日以後に結ばれた個人の連帯保証は、極度額の定めがなければ保証契約として効力を生じません(民法465条の2第2項)。施行日前に結ばれ、その後保証について合意更新をしていない契約には、原則として改正前の民法が適用されます。いつ、どの形で保証契約を結んだかを確認してください。

Q2. 極度額は賃料の何か月分にすればよいですか。

法律上の基準はありません。国土交通省の参考資料では、連帯保証人に負担を命じた判決91件の平均が月額家賃の約13.2か月分、中央値が12か月分でした。物件の賃料や原状回復費用の見込みを踏まえて、貸主と決めます。

Q3. 賃料を値上げしたら、極度額も上がりますか。

国土交通省の標準契約書Q&Aでは、保証契約を結んだ後に賃料が増減しても極度額は変わらず、契約時の額が適用されるとしています。極度額を変えたい場合は、保証人と改めて合意する必要があります。

Q4. 保証人が亡くなったら、相続人に請求できますか。

保証人が亡くなると元本が確定します(民法465条の4第1項3号)。相続人は、亡くなった時点で確定した元本などについて、極度額の範囲で責任を引き継ぎます。亡くなった後に発生した賃料は保証の対象になりません。

Q5. 家賃債務保証会社にも極度額が必要ですか。

民法465条の2は保証人が個人の場合の規定なので、法人である保証会社には適用されません。保証の範囲や上限は、保証会社との契約内容で確認します。

まとめ

個人の連帯保証では、極度額を書面で定めることが保証の前提になります。金額で書き、契約時の賃料額と月数を添えると誤解が生じにくくなります。保証人や借主が亡くなると元本が確定し、それ以後の賃料は保証の対象外になるため、更新のたびに保証人の状況を確かめます。施行日前の契約を更新するときは、保証人と合意更新するかどうかで適用される民法が変わるため、更新書類の保証欄を見直してください。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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