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賃貸の連帯保証人「極度額」実務2026|個人根保証は極度額を書面で定めないと無効・民法465条の2と465条の4、合意更新と保証会社併用を中小不動産の実務目線で整理

連帯保証人の極度額は、金額を書面で定めて初めて有効になります。極度額の書き方と目安、保証人の死亡による元本確定、施行前契約が合意更新で改正民法に入る落とし穴、家賃債務保証会社との併用を、中小不動産の現場目線で解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
賃貸の連帯保証人「極度額」実務2026|個人根保証は極度額を書面で定めないと無効・民法465条の2と465条の4、合意更新と保証会社併用を中小不動産の実務目線で整理
目次

賃貸借契約で連帯保証人を立てるとき、契約書の保証の欄に極度額という金額を書いていますか。この一行が空欄だったり、上限の定めがなかったりすると、保証人が個人である場合、その保証契約は法律上、初めから無効になります。個人が連帯保証人になる契約に極度額の設定を義務づけた改正民法が施行されたのは令和2年4月1日で、いまや丸六年が経ちました。施行の前に結ばれた古い契約が、合意更新のタイミングで次々と改正民法の世界に入っていきます。一方で、身内に保証人を頼めない単身の高齢者や外国籍の入居者は年々増え、家賃債務保証会社を使うのが当たり前になりました。本記事は、ウルスタ代表として宅地建物取引業を営む立場から、連帯保証人の極度額のしくみ、定めを欠いた保証が無効になる理由、保証人の死亡による元本確定、家賃債務保証会社との併用までを、宅地建物取引士の目線で実務に即して整理します。

なぜいま連帯保証人の極度額が中小不動産の実務論点なのか

連帯保証人の極度額は、目新しい制度ではありません。個人が根保証をするなら上限の金額を定めなければならないという民法465条の2のルールは、令和2年4月1日の改正民法の施行とともに始まりました。それでもいま、この論点が改めて中小不動産の現場で問われているのには、はっきりした理由があります。施行から六年が経ち、施行の前に結ばれた古い賃貸借契約とその保証契約が、合意更新の局面を迎えているからです。国土交通省の賃貸住宅標準契約書の解説によれば、施行前の保証は、施行後に初めて合意更新されるまではそのまま有効ですが、いったん合意更新されれば改正民法が適用され、極度額の設定が必要になります。更新の一手を打つたびに、その契約が古い世界から新しい世界へ移っていくわけです。

もうひとつの背景は、保証人そのものが立てにくくなっているという入居者側の変化です。単身の高齢者や来日して間もない外国籍の入居者が増え、頼れる連帯保証人を確保できない申込みが珍しくなくなりました。国土交通省の調査では、賃貸借契約の九割を超える割合で何らかの保証が求められ、そのうち六割ほどが家賃債務保証会社を利用しているとされます。保証会社が主流になった一方で、身内の連帯保証を併せて求めるか、併せるならその極度額をどう置くかという設計は、依然として貸主と管理会社の判断にゆだねられています。極度額は、単なる契約書の穴埋めではなく、貸主のリスクと入居のしやすさの両方を左右する一行なのです。

【要点】連帯保証人の極度額を一枚で

細部に入る前に、制度の骨格を俯瞰します。押さえるべきは、極度額の意味、定めを欠いたときの効果、書き方と目安、元本が確定する場面、合意更新での扱い、そして保証会社との関係、この六つの論点です。

論点内容実務の勘所
極度額の意味個人の連帯保証人が負う責任の上限額。未払賃料、原状回復費、損害賠償などを合算した総額の天井賃貸借の連帯保証は根保証にあたるため、上限の金額が要る
定めを欠いた効果個人が保証人の場合、極度額を書面で定めなければ保証契約は無効。民法465条の2欄が空欄なら保証は初めから効かない。督促の前提が崩れる
書き方金額で書くか、契約時の月額賃料の何か月分に相当する金額で書く。契約後に賃料が動いても金額は変わらない賃料の何か月分だけでなく、その時点の具体的な金額も併記すると確実
元本の確定保証人の死亡、保証人の破産、保証人の財産への強制執行の申立てで元本が確定。民法465条の4保証人が亡くなればそこで締め切られ、相続人はその時点までの分を上限内で承継
合意更新施行前の契約は合意更新まで有効。合意更新や新たな保証契約では改正民法が適用され極度額が要る更新時に保証人へ連絡しないあいまいな運用は、後日のトラブルの火種
保証会社との関係賃貸借の九割超で保証を要求、うち六割ほどが家賃債務保証会社を利用個人保証と会社保証を併用するか、切り替えるかを方針として決める

この六つは、ばらばらの知識ではなく一本の線でつながっています。賃貸借の連帯保証は額の定まらない債務を保証する根保証だから上限が要り、その上限を書面で定めなければ保証は無効になる。保証人が亡くなればそこで保証は締め切られ、古い契約は合意更新のたびにこのルールの中へ入っていき、現場では個人保証と保証会社をどう組み合わせるかという設計が残る。極度額は契約書のささいな一行ではなく、保証という仕組み全体を動かす起点なのです。

極度額とは——個人根保証につけられた責任の上限

極度額とは、連帯保証人が負う責任の上限としてあらかじめ定めておく金額のことです。なぜ賃貸借の連帯保証にこの上限が要るのかは、保証する債務の性質から説明できます。賃貸借契約の連帯保証人は、毎月の家賃だけを保証しているのではありません。滞納賃料はもちろん、退去時の原状回復費、契約違反による損害賠償、明渡しの遅れによる遅延損害金まで、契約から生じるさまざまな債務を保証し、しかも、いつ、いくら発生するかは契約の時点では定まっていません。一定の範囲に属する不特定の債務をまとめて将来にわたって保証する契約を根保証と呼び、額が定まらないからこそ、青天井にならないよう上限、すなわち極度額を定めておく必要があるのです。

この極度額は、保証人が支払う可能性のある金額の総額に対する天井です。国土交通省の解説によれば、極度額には、元本だけでなく、利息や違約金、損害賠償、遅延損害金など、その保証で生じうるすべてが含まれます。たとえば極度額を賃料の十二か月分に相当する金額と定めたなら、滞納賃料も原状回復費も遅延損害金も、すべて合算してその金額までしか保証人は負いません。上限を超える部分は保証人に請求できず、その分は貸主が負うリスクとして残ります。だからこそ、いくらに置くかが実務の勘所になります。

極度額を定めないと保証契約は無効——民法465条の2

ここが本記事のいちばんの要点です。民法465条の2は、個人が根保証契約の保証人になる場合、極度額を定めなければその保証契約は効力を生じないと定めています。しかも、その極度額は書面または電磁的記録によって定めなければなりません。つまり、口約束はもちろん、契約書の保証の欄が空欄だったり、上限の金額が書かれていなかったりすれば、その連帯保証は初めから無効です。無効とは、金額を超えた部分だけが効かないのではなく、保証そのものが成り立たないという意味です。いざ滞納が起きて保証人に請求しようとしたとき、極度額の定めがないという一点で、その保証をあてにできなくなります。

注意したいのは、この無効の効果が個人の保証人にだけ及ぶという点です。家賃債務保証会社のような法人が保証人になる場合には、極度額の定めは要件になっていません。したがって、身内の個人に連帯保証を頼む契約でこそ、極度額の記載を絶対に落としてはならないのです。中小不動産の現場では、長年使ってきた契約書のひな型に極度額の欄がないまま運用が続いていたり、欄はあっても記入されないまま製本されていたりすることが実際に起こります。滞納が起きてから空白に気づいても、後から埋めれば有効になるというものではなく、締結するその時点で金額を書面に定めておく必要があります。自社のひな型に極度額の欄があるか、締結時に必ず金額が入る運用になっているか、まずそこを確かめることが出発点です。

極度額の書き方——金額か、賃料の何か月分か

では、極度額はどう書けばよいのでしょうか。国土交通省の賃貸住宅標準契約書の解説は、いくつかの表記の例を示しています。金額そのものを円で書く方法、契約時の月額賃料の何か月分に相当する金額として書く方法、あるいはその両方を併記する方法です。実務では、賃料の何か月分という書き方が使われることが多いのですが、ここには落とし穴があります。極度額は、保証契約を結んだ後に賃料が上がっても下がっても変わらず、契約の時点の金額で固定されるという点です。つまり、賃料の何か月分と書いたとしても、それは契約時の賃料を基準にした一定の金額を意味し、その後の賃料改定では動きません。であればなおのこと、契約時の具体的な金額を併せて書いておくほうが、後日の解釈のずれを防げます。

いくらに置くかについては、法律に明文の上限規制はありません。ただし、家賃や保証の目的、保証人の資力に比べて極端に大きな極度額は、公序良俗に反するとして無効になる可能性があります。国土交通省は平成30年3月に極度額に関する参考資料を公表し、家賃債務保証会社の損害額や滞納の実態、判決で連帯保証人が実際に負担した金額などを調査しています。そこから読み取れるのは、賃料の何十か月分といった過大な金額ではなく、現実に発生する滞納や原状回復費の水準を踏まえた金額に落ち着かせるのが妥当だということです。実務では賃料の十二か月分から二十四か月分程度に相当する金額を目安に、物件の賃料水準や保証人の状況を見ながら個別に決めるのが穏当でしょう。

極度額の設定でつまずきやすい点
極度額をめぐって現場で迷いやすい論点を、国土交通省の解説にそって整理します。第一に、保証人が一部を支払った場合、極度額はその分だけ目減りし、残った金額を上限として保証が続きます。第二に、学生の子の賃貸で親が連帯保証人になり、毎月の家賃を親が振り込んでいるケースでも、その支払は契約者本人によるものとして扱われるのが原則で、連帯保証人としての極度額は目減りしないと考えられます。第三に、賃料の何か月分という表記でも、契約時の賃料から金額が特定できれば有効ですが、後の解釈を避けるためにも具体的な金額の併記が確実です。

元本確定事由——保証人の死亡・破産で保証は締め切られる(民法465条の4)

極度額と並んで押さえておきたいのが、元本の確定という考え方です。根保証は将来の不特定の債務を保証する契約ですが、ある出来事が起きると、その時点で保証する元本が確定し、以後に発生する債務は保証の範囲から外れます。民法465条の4は、個人根保証契約の元本が確定する事由として、主に三つを定めています。第一に、債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立て、その手続が開始したとき。第二に、保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。第三に、主たる債務者、すなわち借主、または保証人が死亡したときです。とりわけ賃貸借の実務で重いのは、保証人の死亡です。

連帯保証人が亡くなると、その時点で元本が確定します。相続人は、亡くなった時点までに発生していた債務を極度額の範囲内で承継しますが、亡くなった後に新たに発生する賃料や損害までは保証しません。つまり、保証人が亡くなったのに賃貸借契約だけがそのまま続いていると、その先に生じる滞納や原状回復費について、保証が空白になってしまうのです。国土交通省の解説も、連帯保証人を求めている契約で保証人が亡くなった場合には、借主と協議のうえ新たな連帯保証人を立て、合意した金額を極度額として設定するよう促しています。連帯保証人の訃報に接したら、単なる連絡先の更新ではなく、保証の空白が生じたと受け止めて新たな手当てを進める。保証人の生死や連絡可能性を契約の台帳で折に触れて確かめておくことが、いざというときの空白を防ぎます。

合意更新という分かれ道——施行前契約が改正民法に入る瞬間

施行から六年が経ったいま、もっとも実務的な論点が合意更新の扱いです。国土交通省の解説によれば、令和2年4月1日の施行より前に結ばれた賃貸借契約とその保証契約は、施行後に初めて合意更新されるまでは、極度額の定めがなくてもそのまま有効です。ところが、更新にあわせて保証契約も合意更新された場合や、新たに保証契約が結ばれた場合には改正民法が適用され、そこで初めて極度額の設定が必要になります。ここで見落としやすいのが、合意更新かどうかがあいまいな運用です。更新の時期が来ても連帯保証人には連絡をとらず、保証意思の確認もしないまま賃借人との間だけで契約を続けているケースは少なくありませんが、国土交通省の解説は、こうしたあいまいな取扱いが後々のトラブルを招きかねないと注意し、合意更新をするなら連帯保証人にも連絡して保証意思を確認し、協議のうえ合意した金額を極度額として設定するようすすめています。合意更新の席は、古い保証を新しいルールに載せ替える貴重な機会です。更新のたびに保証を点検し、極度額を明記した書面を取り交わす一手を運用に組み込めるかどうかで、数年後に保証をあてにできるかどうかが変わります。

情報提供義務——保証人に支払状況を伝える(民法458条の2)

もう一つ、改正民法が保証人のために設けた仕組みが、情報提供義務です。民法458条の2は、保証人から請求があったときは、債権者、賃貸借でいえば貸主は、主たる債務者の債務の履行状況、つまり借主が家賃をきちんと払っているかどうかについて、遅滞なく情報を提供しなければならないと定めています。保証人からの請求に応じる義務なので、借主本人の了解を得る必要はありませんが、情報の取扱いに不安があれば、契約の時点で、どのような場合にどの情報を保証人へ提供することになるのかを、借主に説明しておくとよいでしょう。

この義務は単なる形式ではありません。国土交通省の解説は、古い最高裁の判例に触れながら、借主が継続的に滞納しているのに貸主が保証人に何も知らせず、いたずらに契約を更新させ続けているような場合には、後になって保証債務の履行を求めても、信義則に反するとして請求が認められないことがありうると注意しています。滞納をため込んでから一気に保証人へ請求するのではなく、早い段階で状況を伝えておくことが、保証人保護のためであると同時に、貸主自身が保証を確実にあてにするための備えでもあります。保証契約を結ぶときに、借主の滞納が一定の月数を超えたら保証人へ通知するといった特約を入れておくと、通知の運用が明確になり、双方にとって見通しがよくなります。

保証の設計は、契約・極度額・更新期日・滞納状況をひとつながりで管理してこそ回る
ウルスタは、中小不動産会社の物件・顧客・取引の進行と対応履歴を一元管理できる業務クラウドを提供しています。どの契約に連帯保証人が付いているか、極度額はいくらで定めたか、施行前の古い契約か、次の更新はいつで保証の載せ替えが要るか、滞納は何か月分たまっているか。連帯保証の管理は、こうした情報が契約の記録とひとつながりになって初めて、抜けなく回せます。担当者が代わっても保証人の意思確認と極度額の設定が引き継がれ、更新の席で保証を新しいルールに載せ替える段取りが漏れなく回る。入居者の安心と貸主のリスク管理を、記録と仕組みで支える。詳しくは https://ulsta.jp をご覧ください。

家賃債務保証会社との併用——個人保証と会社保証をどう設計するか

いまや賃貸借の実務では、家賃債務保証会社の利用が主流です。国土交通省の調査では、賃貸借契約の九割を超える割合で何らかの保証が求められ、そのうち六割ほどが保証会社を利用しているとされます。保証会社が保証人になる場合は法人であるため、極度額の定めは要件になりません。そこで実務では、保証会社を必須としたうえで、身内の個人連帯保証を併せて求めるかどうかが方針の分かれ目になります。単身の高齢者や外国籍の入居者など、個人の連帯保証人を確保しにくい申込みが増えるなかで、保証会社に一本化する運用も広がっています。併用する場合、保証会社は家賃の立替えと回収を担い、個人の連帯保証は原状回復や損害賠償など保証会社がカバーしきれない範囲を補う位置づけになります。ここで大事なのは、保証会社を併用していても、個人が連帯保証人になるなら、その個人保証には極度額の定めが必要だという点です。保証会社があるから極度額はいらないという誤解は現場で起こりがちですが、極度額を書面で定めなければ、その個人保証は無効になります。

現場メモ——更新の席で極度額の空欄に気づいた話

数年前、当社で管理を引き継いだある物件で、施行前から続く古い賃貸借契約の更新を進めていたときのことです。書類をそろえている段で、旧管理会社から引き継いだ契約書の保証の欄に、連帯保証人の署名はあるものの、極度額の記載がまったくないことに気づきました。施行前の契約なので、そのままなら保証は有効に続いていますが、ここで従来どおりに合意更新をして保証契約も更新の形にすれば、改正民法が適用され、極度額の定めがなければ保証が無効になりかねない局面でした。そこで更新の段取りをいったん止め、連帯保証人であるご親族に連絡をとり、契約更新の趣旨と、極度額を明記した新しい保証の書面を取り交わす必要があることを説明しました。

幸い、連帯保証人の方は事情を理解してくださり、賃料と原状回復費の実勢を踏まえて協議した金額を極度額として明記し、更新の書面を整えることができました。もしあのとき欄の空白を見落としたまま更新を通していたら、数年後に滞納や退去のトラブルが起きたとき、保証をあてにできない事態になっていたかもしれません。この一件以来、当社では更新業務のチェックリストに、連帯保証人への連絡と保証意思の確認、そして極度額の明記という項目を必ず入れるようにしました。更新は、賃借人との条件を整えるだけの作業ではなく、保証という守りを新しいルールに載せ替える機会でもある。空欄の一行が、数年後の回収の可否を左右するのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 契約書に極度額を書き忘れていました。後から金額を書き足せば有効になりますか。
個人の連帯保証は、極度額を書面で定めて初めて効力を生じます。締結の時点で金額の定めがなければ保証契約は無効で、後から一方的に書き足しても有効にはなりません。改めて連帯保証人と協議し、極度額を明記した保証の書面を取り交わす必要があります。トラブルが起きてからでは手当てが難しいため、締結時に必ず金額が入る運用にしておくことが肝心です。

Q2. 極度額は、賃料の何か月分にすればよいという決まりはありますか。
法律に明文の上限規制はありません。ただし、家賃や保証の目的、保証人の資力に比べて極端に大きい極度額は、公序良俗に反するとして無効になる可能性があります。国土交通省の参考資料が示す滞納や判決の実態を踏まえると、賃料の十二か月分から二十四か月分程度に相当する金額を目安に、物件や保証人の状況を見て個別に決めるのが穏当です。

Q3. 家賃債務保証会社を使っているので、個人の連帯保証人には極度額はいらないですよね。
いいえ。保証会社は法人なので極度額の定めは要件になりませんが、個人が連帯保証人になるなら、保証会社を併用していても極度額を書面で定めなければ、その個人保証は無効です。保証会社があるから極度額はいらないという誤解は、いざというときに個人保証をあてにできない結果を招きます。併用の場合も、個人保証には必ず極度額を明記してください。

Q4. 連帯保証人が亡くなりました。相続人にその後の家賃も請求できますか。
連帯保証人が亡くなると、民法465条の4により元本が確定します。相続人は、亡くなった時点までに発生していた債務を極度額の範囲で承継しますが、亡くなった後に新たに発生する賃料や損害までは保証しません。賃貸借が続くなら、借主と協議して新たな連帯保証人を立てるか、保証会社への切り替えを検討し、保証の空白をふさぐ必要があります。

Q5. 施行前から続いている古い契約は、更新のときに何をすればよいですか。
施行前の契約は、合意更新まではそのまま有効です。ただし、更新にあわせて保証契約も合意更新する場合や新たに結ぶ場合には改正民法が適用され、極度額が必要になります。合意更新かどうかがあいまいな運用はトラブルの元です。更新の際には連帯保証人にも連絡して保証意思を確認し、協議のうえ合意した金額を極度額として明記した書面を取り交わしましょう。

Q6. 保証人から借主の滞納状況を教えてほしいと言われました。答えてよいのですか。
民法458条の2により、保証人から請求があったときは、貸主は借主の債務の履行状況を遅滞なく情報提供する義務があります。保証人の請求に応じる義務なので、借主本人の了解を得る必要はありません。情報の取扱いに不安があれば、契約時に、どの情報をどの場合に保証人へ提供するのかを借主へ説明し、契約書に条項として盛り込んでおくと運用が明確になります。

まとめ:極度額の一行が、数年後の保証をあてにできるかを分ける

賃貸借の連帯保証は、将来の不特定の債務を保証する根保証だからこそ、個人が保証人になる場合には極度額という上限の金額を書面で定めなければ、その保証契約は初めから無効になります。これは民法465条の2が定める要件で、空欄の一行が、いざというときに保証をあてにできるかどうかを分けます。極度額は金額で、あるいは契約時の賃料の何か月分に相当する金額で定め、過大でも過小でもない水準に置く。保証人が亡くなれば民法465条の4により元本が確定して保証は締め切られ、施行前の古い契約は合意更新のたびに改正民法の中へ入っていく。保証会社を併用しても、個人保証には極度額が要ります。自社が預かる賃貸借契約のうち、極度額の記載がない契約、施行前から続く契約、連帯保証人が高齢の契約を書き出し、契約書のひな型と更新の段取りに保証の点検を組み込むところから始めてみてください。入居者の安心と貸主の守りは、極度額を取りこぼさない記録と、更新のたびに保証を確かめる運用に支えられます。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向けの実務メディアを運営する傍ら、自社で宅地建物取引業を営み、賃貸住宅の管理・客付けと売買仲介、オーナー・借主・保証人の相談に携わる。本記事は、個人の連帯保証人に極度額の設定を義務づけた改正民法が令和2年4月1日に施行されてから六年が経ち、施行前の契約が合意更新の局面を迎えていることをふまえ、2026年7月時点の公開情報と自社での実務経験に基づき整理したものである。極度額の具体的な金額や、個別の契約における保証の有効性、元本確定や合意更新の取扱いの細部は、契約の内容や事案によって異なる場合がある。個別の判断にわたる事項は、弁護士や司法書士などの専門家にご確認いただきたい。本記事は特定の物件や事業者を勧めるものではなく、判断の材料を整理することを目的としている。

参考: 民法465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等・極度額を書面で定めなければ効力を生じない旨)、民法465条の4(元本の確定事由・保証人の死亡や破産手続開始の決定等)、民法458条の2(履行状況に関する情報の提供義務) / 国土交通省——民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書のQ&Aおよび極度額に関する参考資料(極度額の表記方法、契約時の金額で固定される点、一部履行による目減り、施行前契約が合意更新まで有効である点、合意更新時の極度額の設定、平成30年3月公表の調査) / 国土交通省——家賃債務保証の利用状況に関する調査(賃貸借契約の九割超で保証を要求、うち約六割が家賃債務保証会社を利用) / 法務省——保証に関する民法改正の解説 / いずれも2026年7月時点の公開情報および自社の不動産実務をもとに整理