家賃保証会社の審査基準は会社ごとに違い、管理会社や仲介会社からは中身が見えません。できるのは、申込書類の不備をなくして審査を早く終わらせることと、通らなかったときの代替手段を先に用意しておくことです。この記事では、国土交通省の家賃債務保証業者登録制度、民法465条の2(個人根保証の極度額)、2025年10月1日施行の改正住宅セーフティネット法で設けられた認定家賃債務保証業者の制度をもとに、申込から契約までの実務を整理します。
先に結論
- 保証会社の審査基準は、各社の判断です。国の登録制度は、契約前の説明や書面、取り立ての方法といった業務のルールを定めるもので、審査の基準をそろえるものではありません。
- 管理会社が減らせるのは「書類の不備による遅れ」です。本人確認、収入、勤務先、緊急連絡先の4つを申込の時点でそろえると、差し戻しが減ります。
- 通らなかったときの手段は、主に4つです。別の保証会社への申込、連帯保証人への切り替え、条件の見直し、住宅確保要配慮者向けの制度(認定家賃債務保証業者、居住サポート住宅、自治体の助成)です。
- 連帯保証人を立てるなら、極度額を金額で定めます。個人が保証人になる根保証は、極度額を定めないと効力を生じません(民法465条の2第2項)。
- 否決の理由は推測で伝えません。入居希望者には、結果と次に取れる手段だけを伝えます。
なお、「保証会社の審査が厳しくなった」という話を聞くことがあります。この記事を書くにあたって国土交通省などの公表資料を確認しましたが、審査が全体として厳しくなったことを示す統計は見つかりませんでした。審査の基準や必要書類は、保証会社ごとに改定されることがあります。提携先の申込要領が変わっていないかを、定期的に確認するのが確実です。
家賃債務保証業者登録制度とは
家賃債務保証業者登録制度は、国土交通省が告示で設けた制度です。根拠は「家賃債務保証業者登録規程」(平成29年国土交通省告示第898号)で、2017年10月25日に施行されました。最終改正は2025年7月18日(令和7年国土交通省告示第543号)です。
この登録は任意です。国土交通省のページでも、登録しなくても家賃債務保証業を営むことはできると説明されています。そのうえで、一定の要件を満たす会社を国が登録して情報を公表し、賃貸人や管理会社が保証会社を選ぶときの判断材料にする、という位置づけです。
国土交通省の「登録家賃債務保証業者一覧」には、2026年9月30日時点で125者が載っています。一覧では事業者名、本社所在地、登録番号を確認でき、各社の詳細情報(営業地域、保証の範囲、登録の有効期間など)もPDFで見られます。
登録業者が守るルール
登録業者は、登録規程の次のようなルールに従って業務を行います。提携先を選ぶときや、入居希望者から保証会社について聞かれたときの基礎知識になります。
| 登録規程 | 内容 |
|---|---|
| 3条 | 登録は5年ごとに更新を受けなければ、効力を失う |
| 6条 | 純資産額が1,000万円に満たない者などは登録されない |
| 11条 | 賃借人などの私生活や業務の平穏を害するような言動をせず、適正に業務を行う |
| 17条 | 契約を結ぶ前に、保証期間、保証の範囲、保証の限度額、保証委託料、求償権の行使に関する事項などを書いた書面を渡して説明する |
| 18条 | 契約を結んだときにも、内容を書いた書面を渡す |
| 19条 | 求償権を行使して支払いを求めるときの書面に、業者の名称や請求する金額、苦情の窓口などを書く |
| 24条 | 受け取った家賃などのお金を、自社の財産と分けて管理する |
| 25条 | 事業年度が終わってから3か月以内に、業務と財産の状況を国土交通大臣に報告する |
17条の説明は、保証会社が契約の相手方となる入居者に対して行うものです。仲介や管理の担当者が申込の場で保証プランを案内することはあっても、保証の範囲や委託料の返還といった細かい条件を担当者が自分の言葉で言い換えると、誤った説明になりかねません。保証会社の説明書面をそのまま渡し、細かい質問は保証会社の窓口につなぐのが安全です。
また、登録は一定の要件とルールを満たしていることを示すもので、個々の会社の審査の通りやすさや対応の良し悪しを示すものではありません。
提携先を選ぶときの見方
- 国土交通省の登録業者一覧に載っているか、登録の有効期間はいつまでか
- 保証の範囲(家賃のほか、共益費、原状回復費用、残置物の撤去費用などを含むか)
- 保証の限度額と保証期間
- 申込の方法(書面かWebか)と、審査に必要な書類
- 滞納が起きたときの請求の手順と期限、必要な書類
- 相談や苦情の窓口
このうち保証期間、保証の範囲、保証の限度額などは、登録規程17条で契約前の書面に書くとされている項目と重なります。提携を決める前に、各社の説明書面と約款を取り寄せて並べると、違いが分かりやすくなります。
審査に出す前にそろえるもの
どの書類が必要かは、保証会社ごとに違います。そのうえで、申込で求められる情報は、おおむね次の4つに分けて整理できます。受付の時点でこの4つがそろっているかを確かめると、差し戻しや再提出による遅れを減らせます。
| 区分 | 書類や情報の例 | 受付で確認すること |
|---|---|---|
| 本人確認 | 運転免許証、在留カードなど顔写真付きの本人確認書類 | 申込書の氏名、住所、生年月日と一致しているか |
| 収入 | 源泉徴収票、確定申告書の控え、給与明細、内定通知書など | 書類の年度や日付が新しいか、申込書に書いた年収と食い違っていないか |
| 勤務先 | 勤務先の名称、所在地、電話番号、勤続年数 | 在籍確認の電話がつながる番号か |
| 緊急連絡先 | 氏名、続柄、電話番号 | 本人から、緊急連絡先になる人の了承を得ているか |
個人情報の提供は申込書で同意をとる
申込書の情報を保証会社に渡すことは、個人データの第三者提供に当たる場合があります。個人情報保護法27条1項は、法令で定める場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。申込書に「審査のため、記載した情報を保証会社に提供すること」への同意欄を設け、署名や電子サインをもらってから送ります。緊急連絡先として名前を書く人についても、本人から事前に了承を得てもらうよう案内します。
差し戻しを減らすための確認
- 氏名の表記(旧字体やミドルネーム)を、本人確認書類のとおりに書いているか
- 勤務先の電話番号が、在籍確認の連絡先として使える番号か
- 転職直後や内定の段階なら、内定通知書や雇用契約書を添えられるか
- 個人事業主なら、確定申告書の控えなど収入を確かめられる書類があるか
- 入居者と契約者が違う場合(親が契約者になるなど)、誰の収入で審査するかを保証会社に確認したか
審査で見られやすい点と、管理会社が確認できること
保証会社の審査の中身は、管理会社からは見えません。ただ、申込書で尋ねられる項目を見れば、保証会社が何を手がかりに判断しているかはおおよそ読み取れます。
家賃と収入の釣り合い
申込書で年収や勤務先を尋ねられることから、家賃が収入に比べて重すぎないかは判断材料の1つと考えられます。ただし、家賃が収入の何割までなら通るといった目安は会社ごとに違い、公的な基準はありません。担当者が「この年収なら大丈夫です」と言い切るのは避けます。
収入の続きやすさと申告の一致
勤務形態や勤続年数、収入の書類が新しいものかどうか、本人確認書類と申込書の内容が食い違っていないかも、確認の対象になります。書類と申告の不一致は、管理会社の受付で気づける部分です。
連絡のつきやすさ
本人と緊急連絡先に連絡がつかないと、審査が止まります。申込を受けた時点で、確認の電話が入ることを本人に伝えておくと、行き違いが減ります。
参照される情報の範囲
保証会社が審査で参照する情報の範囲は、各社の約款や申込書の同意条項に書かれています。提携先ごとに同意条項を読み、入居希望者から聞かれたときに該当の箇所を示せるようにしておきます。
管理会社にできるのは、この中で「書類と申告の食い違い」「連絡がつかない」といった、申込の側で防げる理由をつぶしておくことです。家賃と収入の釣り合いが厳しいと感じたときは、申込の前に家賃の低い部屋も合わせて提案しておくと、否決のあとでやり直すより時間がかかりません。
通らなかったときの代替手段
別の保証会社に申し込む
保証会社ごとに審査の基準が違うため、1社で通らなくても、別の会社で通ることがあります。提携先を2社以上持っておき、1社目で通らなかったときに2社目へ回す手順と、入居希望者から改めて同意をもらう書式を決めておきます。同じ申込を同時に複数社へ出すかどうかは、各社の規約と入居希望者の同意を確かめてから判断します。
連帯保証人に切り替える
オーナーが了承すれば、保証会社の代わりに、または保証会社に加えて、個人の連帯保証人を立てる方法があります。この場合は、次の章で説明する極度額の定めが必要です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)にも、連帯保証人型と家賃債務保証業者型の2種類が用意されています。
条件を見直す
家賃の低い部屋に切り替える、収入のある家族を契約者にする、収入の書類がそろってから申し込み直す、といった見直しもあります。どれを選べるかはオーナーの方針によるため、管理会社だけで決めずにオーナーに確認します。
住宅確保要配慮者向けの制度を使う
2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法で、認定家賃債務保証業者の制度ができました。住宅確保要配慮者が使いやすい保証会社として、登録家賃債務保証業者などのうち一定の要件を満たす会社を国土交通大臣が認定するものです。認定の基準は住宅セーフティネット法72条1項に書かれていて、たとえば次の内容があります。
- 認定住宅の賃貸借契約を結ぼうとする住宅確保要配慮者から保証の申込みがあったとき、正当な理由なく拒まないこと(1号)
- 保証契約を結ぶ条件として、親族などの連絡先の提供を求めないこと(2号)
あわせて、居住支援法人などが大家と連携して、安否確認や見守り、福祉サービスへのつなぎを行う「居住サポート住宅」の制度も始まりました。国土交通省の資料では、居住サポート住宅に入居する要配慮者については、認定保証業者が家賃債務保証を原則として引き受けると説明されています。高齢の方や頼れる親族がいない方の申込で保証会社が見つからないときは、物件所在地の自治体の住宅部局や居住支援法人に相談する道があります。
自治体によっては、保証会社の利用料の一部を助成する制度もあります。たとえば東京都中野区は、高齢者のいる世帯や障害のある方のいる世帯などで、保証人や緊急連絡先を確保できない人を対象に、保証会社の初回費用などを助成する案内を出しています。制度の有無や条件は自治体ごとに違うため、物件所在地の自治体で確認します。
連帯保証人を立てるときの極度額
賃貸借契約の連帯保証は、家賃や原状回復費用など、将来どれだけ発生するか決まっていない債務をまとめて保証する「根保証」に当たります。2020年4月1日に施行された改正民法で、個人が保証人になる根保証のルールが変わりました。法務省のパンフレットでも、子どもがアパートを借りるときに親が家賃などをまとめて保証するケースが、根保証の例として挙げられています。
極度額を金額で定める
民法465条の2第1項は、個人根保証契約の保証人は、元本、利息、違約金、損害賠償などの全部について、極度額を限度として責任を負うと定めています。同条2項は、極度額を定めなければ個人根保証契約は効力を生じないとしています。また同条3項で民法446条2項・3項が準用されるため、極度額の定めは書面か電磁的記録で行います。
法務省のパンフレットは、極度額は「○○円」などと明瞭に定めなければならないと説明しています。契約書には、金額がはっきり読み取れる形で書いておくのが安全です。
極度額の目安はあるか
法律に極度額の上限や目安はありません。国土交通省は、極度額を決めるときの参考として「極度額に関する参考資料」(2018年3月30日)を公表しています。この資料では、民間賃貸住宅で借主の未払い家賃などを連帯保証人の負担として確定させた裁判所の判決91件を調べ、確定した額が平均で家賃の約13.2か月分だったことが示されています。
ただし、これは過去の判決を集計したもので、極度額をこの水準にすべきという基準ではありません。極度額を高くしすぎると保証人を引き受けてくれる人が見つかりにくくなり、低くしすぎると保証で補える範囲が狭くなります。オーナーと相談して決め、決めた理由を記録しておくと、あとで説明しやすくなります。
保証人から問い合わせがあったとき
民法458条の2により、入居者から頼まれて保証人になった人から請求があったときは、賃貸人は遅滞なく、家賃などの不払いの有無や残額などの情報を提供しなければなりません。管理会社が窓口になっているなら、オーナーとの間で誰が答えるかと、本人確認の方法を決めておきます。
また民法465条の4第1項3号により、入居者か保証人が亡くなったときは、個人根保証の元本が確定します。その後に生じる家賃などは保証の対象外になるため、入居者や保証人の死亡を知ったときの手順(オーナーへの連絡、保証人への確認)を決めておきます。
入居希望者への説明の仕方
募集の段階で条件を示す
保証会社の利用が契約の条件なら、募集図面や物件ページに「保証会社の利用が条件」と書き、指定の保証会社があれば会社名も示します。申込のあとで初めて条件を知らせると、入居希望者の不信感につながります。
保証の内容は保証会社の書面で説明する
先に触れたとおり、保証の範囲や委託料の返還などは、登録業者が契約の前に書面で説明する事項です(登録規程17条)。担当者は書面のどこに何が書いてあるかを示す程度にとどめ、細かい質問は保証会社の窓口につなぎます。
否決を伝えるとき
保証会社が否決の理由を示さないこともあります。担当者が理由を推測して「収入が足りなかったようです」などと伝えると、事実と違ったときに説明がつきません。伝えるのは次の3点にとどめます。
- 今回の保証会社では承認が得られなかったこと
- 別の保証会社や連帯保証人など、次に取れる手段
- 申込を続けるかどうか、いつまでに返事が必要か
文面は短くします。例を示します。
〇〇様 お申込みいただいた〇〇号室について、保証会社の審査で今回は承認が得られませんでした。別の保証会社でもう一度お申込みいただくことができます。ご希望の場合は〇日までにご連絡ください。
入居審査全体の進め方は、入居審査マニュアルの記事も参考にしてください。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 保証会社と連帯保証人の両方を求めてもよいですか?
両方を求めることを一律に禁じる法律の規定は、この記事で確認した範囲では見当たりませんでした。求めるかどうかはオーナーの方針によります。連帯保証人を付けるなら極度額の定めが必要です(民法465条の2)。入居希望者の負担が重くなるため、募集の段階で条件として示しておきます。
Q2. 審査に落ちた理由は教えてもらえますか?
理由を示すかどうかは保証会社の方針によります。理由が示されないときに担当者が推測で伝えるのは避け、次に取れる手段を案内します。
Q3. 国に登録していない保証会社と提携しても問題ありませんか?
家賃債務保証業者の登録は任意で、登録しなくても家賃債務保証業は営めます。ただし、登録業者には登録規程のルール(契約前の書面と説明、求償時の書面、分別管理など)が適用されます。提携先を選ぶときの判断材料として、登録の有無を確認しておくとよいでしょう。
Q4. 極度額はいくらにすればよいですか?
法律に金額の基準はありません。国土交通省の「極度額に関する参考資料」には、判決で連帯保証人の負担として確定した額が平均で家賃の約13.2か月分だったという集計があります。これを参考にしつつ、家賃や原状回復で見込まれる費用を踏まえて、オーナーと決めます。
Q5. 高齢の方の申込で保証会社が見つからないときは、どうすればよいですか?
認定家賃債務保証業者や居住サポート住宅の制度、自治体の保証料の助成が使えないかを確認します。物件所在地の自治体の住宅部局や居住支援法人が相談先になります。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」
- 国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」
- 家賃債務保証業者登録規程(平成29年国土交通省告示第898号)
- 国土交通省「改正住宅セーフティネット法」
- 国土交通省「認定家賃債務保証業者制度」
- 国土交通省「居住サポート住宅」の説明資料(国土交通省・厚生労働省の共管制度)
- e-Gov法令検索「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(72条)
- e-Gov法令検索「民法」(446条、458条の2、465条の2、465条の4)
- 法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」
- 国土交通省「極度額に関する参考資料」(2018年3月30日)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(27条)
- 中野区「保証料・契約料助成のご案内」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。
