賃貸管理 読了 25分

セーフティネット専用住宅の改修費補助は「10年間の使い方」と引き換えです——令和8年度の締切は12月11日、実質の期限はその1か月前

空室が埋まらない物件を、補助金で直す。その入口として毎年動いているのが、スマートウェルネス住宅等推進事業の「セーフティネット専用住宅改修事業」です。令和8年度の募集は4月15日に始まり、12月11日17時で締め切られます。補助率は3分の1、限度額は基本62万円/戸、バリアフリー改修などを含めれば125万円/戸、エレベーターを設置すれば143万円/戸、車椅子使用者に必要な空間を確保した便所と浴室を整えれば250万円/戸。数字だけ見れば大きな制度です。ただしこれは改修費の3分の1を配る制度ではありません。10年間その住戸を住宅確保要配慮者専用として登録し続けることと引き換えに、改修費の一部が出る制度です。締切から逆算した現実的なスケジュール、交付決定前着工という一発アウトの落とし穴、そして10年後まで続く義務を、オーナー提案の順序に翻訳しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
空室改修に最大250万円/戸|セーフティネット住宅改修費補助の実務
目次

この補助金は、改修費の3分の1を配る制度ではありません。10年間その住戸を住宅確保要配慮者専用として登録し続けることと引き換えに、改修費の一部が出る制度です。令和8年度のセーフティネット専用住宅改修事業は4月15日に募集が始まり、令和8年12月11日(金)17時で締め切られます。本稿の日付は2026年8月22日ですから、残りは111日。ただし手を動かせる期間はもっと短い。交付事務局は「遅くともこの1か月以上前からメールによる事前審査を開始してください」と書いています。実質の期限は11月11日ごろ、残り81日です。

締切は12月11日。ただし実質の期限は11月11日ごろ

交付事務局(一般財団法人住宅保証支援機構)のページに、募集期間が書かれています。令和8年4月15日(水)から令和8年12月11日(金)17時まで。ただし直下に条件が付く。「この期限は、事前審査が終了した後の正式な交付申請書をメールにて提出いただく期限です。遅くともこの1ヶ月以上前からメールによる事前審査を開始してください」。

12月11日は、事前審査を終えた完成品を出す日です。書類を作り始める日ではありません。要領にも「書類の不足、記入内容の齟齬、費用根拠の訂正など、幾度かにわけて修正・再提出をお願いすることがあります」と書かれています。

そして、「最終的に必要書類が揃った時点をもって、事前審査の開始となります」。ここが効きます。8月に電話で相談したことは開始日にカウントされません。図面、見積書、登録通知の写し、建築士の適合確認書。これらが揃って初めて時計が動きます。

【要点】提案の前に押さえる3点

押さえること要領に書かれていること
交付決定より前に工事を始めたら、補助は出ない。「先に直して、あとから申請」は成立しない「補助事業の着手は、交付決定通知日以後可能となります。当該通知日よりも前に着手した事業については、補助対象となりません」
10年間、要配慮者専用の登録を続ける義務がつく。途中で普通の賃貸に戻すには手続きが要る「当事業による補助を受けた専用住宅として10年以上登録するものであること」。早期に中止した場合は補助金返還などの対象
家賃は自由に決められない。改修して高く貸すという発想は使えない家賃の上限額=79,000円×50/65×市町村立地係数。住戸床面積75㎡以上の一戸建て・長屋建てに限り、この額の1.5倍まで

補助額の全体像——補助率3分の1、限度額は62万円から250万円まで

位置関係を先に置きます。国交省のスマートウェルネス住宅等推進事業の中に「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅等改修事業」があり、令和7年10月1日の改正住宅セーフティネット法施行を受けて、これがセーフティネット専用住宅改修事業と居住サポート住宅改修事業の2本に分かれています。募集期間も窓口も同じですが、交付申請要領は別々です。本稿は前者の令和8年度要領(令和8年7月版)を軸にします。

補助率は、すべての補助対象工事等について3分の1。工事の種類で変わりません。変わるのは限度額です。

実施する工事補助限度額上限に届く工事費(税抜)
チ〜カのみ(省エネ、安否確認設備、防音・遮音、調査設計計画ほか)62万円/戸186万円/戸
イ〜トのいずれかを実施(バリアフリー、耐震、用途変更、間取り変更、子育て世帯対応、防火・消火、交流スペース)125万円/戸375万円/戸
バリアフリー改修のうちエレベーターを設置143万円/戸429万円/戸
バリアフリー改修のうち車椅子使用者に必要な空間を確保した便所・浴室等を整備250万円/戸750万円/戸
子育て世帯対応改修に加えて耐震・間取り変更・省エネのいずれかを実施それぞれの限度額の合計(250万円を超える場合は250万円)
子育て支援施設の併設工事1,250万円/施設(加算)
居住支援法人が見守り等を行う住宅として運営するための改修に伴う準備費用家賃3か月分(一定の要件を満たす場合、最大12か月分)

右端は本稿で計算した派生値です。補助率が3分の1ですから、限度額の3倍の工事費を投じて、ようやく上限に届きます。ここを先に共有しないと「62万円出るなら62万円の工事を」という誤解が生まれます。実際に出るのは約20万円です。なお消費税等は補助対象外で、見積書の税抜額で計算します。

「イ〜ト」と「チ〜カ」の線引きが、上限を倍にする

記号工事限度額
バリアフリー改修工事(外構は道路境界または駐車スペースから建物出入口までの主たる通路に限る)125万円/戸
耐震改修工事(昭和56年5月31日以前に着工した建築物が対象)
共同居住用住居に用途変更するための改修工事
間取り変更工事
子育て世帯対応改修工事(子育て支援施設の併設を含む)
防火・消火対策工事
交流スペースを設置する工事(同一敷地内に限る)
省エネ改修工事(開口部または躯体の断熱改修に限る)62万円/戸
安否確認のための設備の改修工事
防音・遮音工事
居住のために最低限必要な改修工事(被災者向け住居として自治体に事前登録等された住宅に限る)
調査において居住のために最低限必要と認められた工事(従前の用途が賃貸住宅以外のものに限る)
居住支援協議会等が必要と認める改修工事
上記工事に係る調査設計計画(インスペクションを含む)

実務でいちばん現実的なのがイのバリアフリー改修です。手すりの設置、段差解消、廊下や出入口の幅の拡張、浴室・便所の改良、階段の勾配緩和、滑りにくい仕上材への改修。手すり1本の設置でも「イ」に該当し、その住戸の限度額は125万円に上がります。省エネだけを積み上げるより、バリアフリーを1項目入れるほうが枠が倍になります。

なおチの省エネ改修には特例があり、「既にセーフティネット専用住宅として登録を受けているものも補助対象とします」。他は登録に向けた改修が前提ですが、省エネだけは既存の登録住宅の追い焚きが認められています。断熱改修の費用対効果は省エネ性能ラベルと賃貸の空室で扱っています。

250万円/戸は、寸法で定義されている

最も大きい250万円/戸は「車椅子使用者に必要な空間を確保した便所及び浴室等を整備する場合」に適用されます。この「必要な空間」は感覚的な表現ではなく、住宅品確法の評価方法基準にある高齢者等配慮対策等級5として寸法で定義されています。

部位満たすべき基準
便所床が段差のない構造(5mm以下を含む)/立ち座りのための手すり/出入口の幅員800mm以上
短辺が内法1,300mm以上、または便器後方の壁から便器先端までの距離+500mm以上。かつ便器が腰掛け式
浴室床が段差のない構造(5mm以下を含む)/出入り・浴槽出入り・立ち座り・姿勢保持・洗い場のための手すりがすべて設置/出入口の幅員800mm以上
短辺が内寸法1,400mm以上、かつ面積が内寸法2.5㎡以上

一般的な木造アパートの1Kでは物理的に届きません。浴室の短辺1,400mm以上で面積2.5㎡以上は、1616サイズのユニットバスに近い寸法です。250万円は独り歩きしがちですが、取りにいけるのは戸建てや広めの住戸に限られます。現況の浴室短辺と便所の出入口幅を実測しておけば、その日のうちに射程が判定できます。

家賃上限は計算式で決まる

家賃の上限額 = 79,000円 × 50/65 × 市町村立地係数
79,000円は家賃算定基礎額(収入分位が40%を超え50%以下の場合を想定)、50/65は規模係数、市町村立地係数は要領の別紙2による。

市町村立地係数を1.00と置くと、上限は約6万769円。例外として、住戸床面積75㎡以上の一戸建て・長屋建てに限り1.5倍、係数1.00なら約9万1,153円まで認められます。主要都市の上限家賃額は別紙3に一覧があります。

補助を使って改修した住戸は、地域の相場が高くても上限を超える家賃では貸せません。そしてそれが10年続く。都心部で相場8万円の1Kを持つオーナーに、6万円台で10年運用してくださいという話になります。逆に、相場が上限を下回る地域や、埋まらずに収入0円になっている空室では、この制約はほぼコストになりません。制度が刺さるのはこちらです。

入居者は17類型。高齢者は60歳から

類型定義のポイント
高齢者60歳以上の者。65歳ではない
低額所得者収入が国土交通省令で定める金額(15万8千円)を超えない者
子どもを養育している者18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者を養育している者
被災者発生日から3年を経過していない災害により住宅が滅失・損傷した者等
DV被害者一時保護等の終了日または保護命令の効力発生日から5年を経過していない者
供給促進計画に定める者都道府県計画または市町村計画で自治体が追加した類型(新婚世帯など)

ほかに障害者、外国人、中国残留邦人、児童虐待を受けた者、ハンセン病療養所入所者等、拉致被害者、犯罪被害者等、更生施設退所者等、困難な問題を抱える女性、生活困窮者、激甚災害の被災者が並び、全17類型です。

注意したいのが高齢者の定義が60歳以上であること。65歳と思い込んでいる担当者は珍しくありません。60歳からということは、母集団は想像よりかなり広いということです。低額所得者の15万8千円も公営住宅法に基づく政令月収の考え方で、額面の月収そのものではありません。受入れの実務は改正セーフティネット法と単身高齢者の受入れにまとめています。

事業要件は7つ。うち1つは全国でクリア済み

#要件誰が満たすか
1住宅確保要配慮者専用の住宅として登録されるものであること申請者
2補助を受けた専用住宅として10年以上登録するものであること
3家賃の額が上限額を超えないこと
4入居者が17類型のいずれかに該当すること
5自治体の空家等対策計画等に、空家の要配慮者円滑入居賃貸住宅への有効活用等の推進が位置づけられていること自治体
6居住支援協議会等が情報提供・あっせんを行う等、自治体が居住支援協議会等との連携に係る取組を行っていること
7賃貸住宅供給促進計画を策定している自治体の管内の登録住宅として登録予定であること

5から7は申請者の努力でどうにかなる条件ではなく、物件が所在する自治体の状況で決まります。

ただし要件7については朗報があります。要領に掲載された策定済み自治体の一覧(2025年6月30日時点)には、47都道府県すべてが並んでいます。また「『都道府県』単位で賃貸住宅供給促進計画が策定されている場合、補助要件を満たすこととなります(『市町村』単位での計画の策定は不要です)」と補足されている。市町村単位の22市町は上乗せです。残る変数は要件5と6だけ。初回訪問の前にこの2つを役所へ電話確認するのが、実質的な一次スクリーニングになります。

サブリース業者も申請できる。ただし3者見積りの壁がある

補助を受ける者は、原則として改修工事等の発注者であり、かつ登録事業者に限られます。要領は「専用住宅の所有者である賃貸人のほか、サブリース業者が、登録、申請、工事発注を行い、補助金を受給することも可能です」と明示しています。ただし「改修工事を行う部分について、補助を受ける者が権利を有し、責任を負う必要があります」。賃貸事業者と所有者が異なる場合は「所有者・転貸人確認書」の添付が必要で、オーナーの承諾は書面で残ります。

関係会社等から調達する場合、3者以上からの見積り結果の提出が必要になります。関係会社等には、100%同一資本のグループ企業のほか、補助事業者の役員またはその親族(配偶者、一親等の血族および姻族)が役員に就任している法人、および役員や親族である個人事業主が含まれます。系列のリフォーム会社に出す、社長の親族が営む工務店に頼む。よくある形ですが、そのままでは通りません。調達しない場合も、その旨の宣誓書が必要です。

交付決定前に着工したら、そこで終わり

「補助対象となる事業に着手(工事を実施する場合は工事着工、調査設計計画・インスペクションを実施する場合は委託契約等の締結)する前に、交付申請を行い、補助金の交付決定を受けてください。交付決定前に事業に着手した場合には、補助対象外となります。」

着手の判定は明快です。工事なら着工、調査設計計画なら委託の契約行為。契約書に判を押した時点で着手とみなされます。そして交付決定後には証明を求められます。

  • 交付決定日後1週間以内に、着工していないことを証明する現場写真を提出する。撮影日が判る新聞等を持って撮影する必要があり、画質等が悪く撮影日が判断できない場合は補助金が交付されないことがある
  • 着手したら、工事着工を証する現場写真を(調査設計計画なら契約書等の写しを)速やかに提出する
  • 令和8年度中に着手に至らない場合は、交付決定が無効になる

新聞を持って撮影する運用は古典的ですが、知らずに2週間経ってから撮ると間に合いません。交付決定通知が届いたその日に現場へ行く担当者を、先に決めておいてください。

10年の管理義務と、年1回の定期報告

義務内容
登録の継続10年以上、専用住宅として登録された状態が継続する必要がある。早期に中止すれば補助金返還などの対象
入居者の限定要配慮者以外に賃貸する場合は、専用住宅としての登録の廃止手続きが必要
財産処分の制限取得価格および効用の増加した価格が単価50万円以上のものは、国土交通大臣の承認なしに、目的に反して使用し、譲渡し、貸し付け、担保に供することができない
譲渡時の誓約書譲渡するときは、譲受人と、残管理期間において本事業の要件を遵守する旨の誓約書を取り交わす必要がある
書類の保存補助金の交付を受けた年度終了後10年以上、契約関係書類・請求書・領収書等を整理・保存する

重いのは担保設定です。抵当権や質権の設定にも大臣承認が要る。10年の間に借換えや追加融資を考えるオーナーには必ず伝えてください。承認を得て処分し収入があった場合は、交付した補助金の額を限度として、その全部または一部の納付を求められることがあります。

加えて、実施後10年以上の間、年1回程度の定期報告調査が行われます。登録された連絡先にメールが届き、WEB調査のURLから回答する形です。要領の記述は容赦がありません。「調査にご協力いただけない場合は、当該補助金の返還を求めることとなります」。

急所はメールアドレスです。担当者個人のアドレスを登録して、その人が退職すれば届かなくなり、未回答が続けば返還の話になります。登録するのは個人名ではなく、部門で受ける共有アドレスにしてください。今日から実行できて、最も費用対効果の高い予防策です。

補助対象外の費目——壁掛けエアコンは出ない

区分補助対象外となるもの
建物工事費でないもの調査費・設計料・申請費(調査設計計画費の交付申請を行う場合を除く)、床暖房工事、管理人室等の設置費、サンルーム、独立広告・太陽光パネル等
伴わない仕上げ本補助対象工事に伴わない外壁等の内外装仕上の修繕や更新等
家具・家電・消耗品ベッド、収納家具、カーテン、家電製品として販売される壁掛け式エアコン、簡易タイプの給湯器、消火器、卓上食器洗浄機、卓上コンロ
自社施工自社設計・自社施工の場合の間接経費、自社社員の人件費(補助対象工事現場での工務を除く)
支払いの証明第三者により公的に支払済みであることを証明できる書類のない工事費用(例:現金で支払った工事費用

注記が実務的です。「壁や床までの給排水設備および天井までの換気設備等は、建築物に属するものとして補助対象となりえます」。境界は建物に固定されているかどうかで引かれています。そして最後の行が地味に怖い。現金払いの工事費は、証明できないという理由で対象外です。小口の職人払いを現金で処理している会社は、振込に切り替えてください。

逆算すると、12月11日申請では年度内入金は厳しい

「令和8年度内に支払われるためには、令和9年1月29日(金)までに完了実績報告書を提出する必要があります(この場合、令和9年3月末支払予定)。」

完了実績報告は、①補助対象工事が竣工していること、②補助対象工事費の支払いが完了していること、この両方が満たされて初めて提出できます。工事が終わっただけでは出せません。

期日内容8月22日からの日数
令和8年11月11日ごろ事前審査の開始(締切の1か月以上前)81日
令和8年12月11日(金)17時交付申請書の正式提出期限111日
令和9年1月29日(金)完了実績報告の提出期限(年度内支払いを受ける場合)160日
令和9年3月末補助金の支払予定

12月11日に申請して1月29日に完了実績報告を出すなら、その間はわずか49日。この49日に交付決定の審査、通知、着工前写真の提出、着工、竣工、施工会社への支払い、完了実績報告の事前審査がすべて入ります。現実的ではありません。

したがって判断はこうなります。いま8月から動くなら、9月から10月に交付申請を出し、年内に工事を終える計画を組む。間に合わないなら、令和8年度は要件確認と登録申請だけ済ませ、工事は令和9年度の募集に回す。令和8年度中に着工に至らない事業は、交付決定が無効になります。なお補助金の精算額は交付決定額を上限とし、超えることができません。完了実績報告で工事費が増えても、増えた分は出ません。

居住サポート住宅改修事業との使い分け

比較軸セーフティネット専用住宅改修事業居住サポート住宅改修事業
住宅の位置づけ要配慮者専用として都道府県等に登録居住支援法人等と連携する住宅として認定
求められるもの住宅としての登録基準を満たすこと日常の安否確認、訪問等による見守り、状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎ
サポートの担い手社会福祉法人・NPO法人・管理会社等でも可能(居住支援法人以外でも可)
令和8年度の募集期間両事業とも令和8年4月15日〜12月11日17時(交付申請要領は別)

判断の軸は「安否確認と福祉のつなぎを、誰かが継続的に担えるか」です。注目したいのは、サポートを行う者が居住支援法人に限られず、管理会社等でも可能とされている点。すでに単身高齢者の見守りを実質的に行っている管理会社にとっては、いま無償でやっている業務が制度上の位置づけを持つという読み方ができます。安否確認の運用は単身高齢入居者の見守りSOP、改正法の全体像は居住サポート住宅の認定制度にまとめました。

オーナーに提案するときの順序

順番やることここで落ちたら
1物件所在自治体に、要件5(空家等対策計画等への位置づけ)と要件6(居住支援協議会との連携)を電話確認するその物件では使えない。訪問前に判定できる
2市町村立地係数から家賃上限を計算し、想定賃料と比べる上限を大きく下回るなら、10年分の逸失賃料が補助額を超えうる
3浴室の短辺と便所の出入口幅を実測し、125万円枠か250万円枠かを見立てる限度額が確定し、工事費の上限が逆算できる
410年の登録継続・入居者限定・担保設定の大臣承認・定期報告を先に説明するここで断られるなら、早いほうがよい
5要配慮者専用住宅としての登録申請を行い、登録通知を受け取る交付申請には登録申請書(写)と登録通知(写)が必須
6建築士に改修前後図面と工事等に係る適合確認書を依頼し、3者見積りを揃える事前審査の開始は「必要書類が揃った時点」
7交付決定通知を受け、その日のうちに着工前写真を撮影して1週間以内に提出するここを逃すと補助が出ないことがある

4番を後回しにしないこと。金額から話すと、オーナーは「もらえるお金」として理解します。実際には10年分の運用の自由と交換している。先に対価を説明して、それでも進めると言われた案件だけが最後まで走ります。なお交付申請には建築士の免許証(写)等が必須で、インスペクションを補助対象とする場合は既存住宅状況調査技術者証を有する建築士が行う場合に限られます。実務は建物状況調査(インスペクション)の実務で扱っています。

よくある質問

Q. すでに空室の改修工事を始めてしまいました。あとから申請できますか。

A. できません。交付決定通知日より前に着手した事業は補助対象外です。着工前の現場写真を交付決定日後1週間以内に提出することが求められている以上、事後の申請は構造的に成立しません。

Q. 10年経つ前に建物を売却することになったらどうなりますか。

A. 国土交通大臣の承認手続きが必要です。承認にあたっては、原則として譲受人と、残管理期間において本事業の要件を遵守する旨の誓約書を取り交わす必要があります。承認を受けずに譲渡した場合は補助金の返還を求められることがあります。

Q. インスペクションだけ先に補助申請できますか。

A. できます。調査設計計画と改修工事の交付申請および契約は別々に行い、両者を合計した金額が補助上限額以内となります。ただしインスペクションの結果、補助対象となる改修工事が発生しない場合は補助対象外で、原則として額の確定通知日から6か月以内に工事着手がない場合は返還を求められます。

Q. 交付申請の連絡窓口は複数登録できますか。

A. できません。事務担当者1名を選定して委任し、登録するメールアドレスは1つとされています。事務担当者以外からの問い合わせには原則応じられません。

数字の出典と、書かなかったこと

項目出典
補助率と限度額、補助対象工事イ〜カ、高齢者等配慮対策等級5の寸法、家賃上限の計算式、入居者17類型、事業要件7項目、策定済み自治体、サブリース業者の申請、3者見積り、交付決定前着工と着工前写真、補助対象外の費目、定期報告、財産処分、完了実績報告と支払い時期一般財団法人住宅保証支援機構「令和8年度 セーフティネット専用住宅改修事業(住宅確保要配慮者専用賃貸住宅等改修事業)交付申請要領」(令和8年7月)
令和8年度の募集期間、事前審査を1か月以上前から開始すること、10年間の変更手続き、定期報告の運用、居住サポート住宅改修事業の位置づけ一般財団法人住宅保証支援機構「セーフティネット専用住宅改修事業」「居住サポート住宅改修事業」(交付事務局ページ)
改正住宅セーフティネット法の令和7年10月1日施行、居住サポート住宅の定義とサポートの担い手国土交通省「住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~」

本稿で算出した派生値は次のとおりです。79,000円×50/65は約6万769円、その1.5倍は約9万1,153円。補助率3分の1から逆算した上限到達工事費は、62万円で186万円、125万円で375万円、143万円で429万円、250万円で750万円。日数はいずれも2026年8月22日を起算日としています。なお、市町村立地係数の数値と主要都市ごとの上限家賃額、そして居住サポート住宅改修事業の限度額は書いていません。

この記事の核心は金額ではありません。この補助は改修費の値引きではなく、10年間の運用の自由との交換だ、という構造です。普通に募集すれば埋まる物件では、交換条件が割に合いません。逆に、相場が上限を下回る地域や長期空室の住戸では、失うものがほとんどない。制度が効くかどうかは、補助額の大小ではなく、その住戸が10年後にどうなっていそうかで決まります。

本稿は交付申請要領および国土交通省・交付事務局の公表資料にもとづく一般的な整理であり、個別の申請可否や補助額を判断するものではありません。要件・様式・期限は年度ごとに改正されます。実際の手続きは最新の交付申請要領をご確認ください。賃貸管理と売買仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。