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セーフティネット住宅の改修補助2026|補助率1/3・上限62万〜250万円/戸の要件、申請の注意点と改正住宅SN法

空室をセーフティネット専用住宅に改修すると、国から工事費の1/3(1戸あたり上限62万円、工事の内容により125万・143万・250万円)の補助を受けられます。令和8年度の募集期間、10年以上の登録や家賃の上限などの要件、交付決定前の着手は対象外になる点を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
セーフティネット住宅の改修補助2026|1/3・上限62万〜250万円/戸の要件と注意点
目次

空室をセーフティネット専用住宅に改修する場合、令和8年度の国の補助は工事費の1/3以内で、1戸あたりの上限は62万円(工事の内容によって125万円、143万円、250万円)です。ただし、交付決定の前に工事に着手すると補助の対象外になり、専用住宅として10年以上登録し続けることや、家賃の上限を守ることが条件です。この記事では、交付申請要領で確かめられる要件と期限を整理し、2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法の居住サポート住宅との関係、オーナーに提案するときの順番を示します。

セーフティネット住宅と改修補助の仕組み

住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)に基づく制度です。高齢者、障害者、子どもを育てる世帯、低額所得者など、住まいを借りにくい人(住宅確保要配慮者)の入居を受け入れる賃貸住宅を、建物ごとに都道府県知事などに登録します(同法8条)。

登録された住宅のうち、入居者を住宅確保要配慮者に限るものを「専用住宅」と呼びます。改修補助は、この専用住宅にするための工事が対象です。

補助には2つの流れがあります。国土交通省の資料によると、国が事業者に直接補助する「スマートウェルネス住宅等推進事業」では国が1/3、地方公共団体を通じて補助する「社会資本整備総合交付金等」では国1/3と地方1/3です。地方公共団体を通じた補助は、その自治体が制度を設けている場合に限られるため、物件のある市区町村に確かめます。この記事では、主に国の直接補助(セーフティネット専用住宅改修事業)を説明します。

補助率と1戸あたりの上限

令和8年度の交付申請要領(令和8年7月版)では、補助金の額は、専用住宅の整備のための改修工事の費用の1/3以内で、補助の対象になる戸数に次の金額を掛けた額が上限です。

工事の内容1戸あたりの上限
下の3つに当たらない場合62万円
イからトの工事(バリアフリー改修、耐震改修、共同居住用への用途変更、間取り変更、子育て世帯対応、防火・消火対策、交流スペースの設置)を行う場合125万円
イ(バリアフリー改修)でエレベーターを設置する場合143万円
車椅子を使う人に必要な空間を確保した便所と浴室などを整備する場合250万円

上限はあくまで「1/3以内」と「戸数×上限額」の小さいほうです。仮の数字で計算例を示します。

  • 例1: 1戸でバリアフリー改修(イ)に300万円かかる場合、1/3は100万円、上限は125万円なので、補助の上限は100万円です。
  • 例2: 1戸で省エネ改修だけに150万円かかる場合、1/3は50万円、上限は62万円なので、補助の上限は50万円です。
  • 例3: 1戸でバリアフリー改修(イ)に600万円かかる場合、1/3は200万円ですが、上限は125万円なので、補助の上限は125万円です。

どの費用が補助の対象になるか(消費税の扱いを含む)は、交付申請要領で確かめてください。

補助の対象になる工事

交付申請要領は、補助の対象になる工事として、次のものを挙げています(抜粋)。

  • イ バリアフリー改修工事
  • ロ 耐震改修工事
  • ハ 共同居住用住居に用途変更するための改修工事
  • ニ 間取り変更工事
  • ホ 子育て世帯対応改修工事
  • ヘ 防火・消火対策工事
  • ト 交流スペースを設置する工事
  • チ 省エネ改修工事
  • リ 安否確認のための設備の改修工事
  • ヌ 防音・遮音工事
  • ル 居住のために最低限必要な改修工事

このほかの区分や、それぞれの工事の細かい条件、調査設計計画(インスペクションなど)の扱いは要領に書かれています。上限が62万円か125万円かは、イからトの工事を含むかどうかで変わるため、見積りの段階で工事の区分を分けて書いてもらうと、申請の準備がしやすくなります。

主な要件(登録期間・家賃・入居者)

10年以上の登録

補助を受けた住宅は、専用住宅として10年以上登録し、登録された状態を続ける必要があります。国土交通省の資料でも、管理期間は10年以上とされています。途中で売却する場合や、住宅確保要配慮者でない人を入居させる場合の扱いは要領で決まっているため、オーナーの売却の予定を先に聞いておきます。

家賃の上限

要領では、家賃の上限額を「79,000円×50/65×市町村立地係数」で計算します。市町村立地係数は地域ごとに別紙で示されています。住戸の床面積が75㎡以上の一戸建て・長屋建てに限り、この額の1.5倍までです。仮に市町村立地係数が1.0の地域なら、上限は約60,769円です。主要都市の上限家賃額も別紙で公表されています。

今の募集家賃が上限を超えている物件では、家賃を下げることになります。補助額と、10年間の家賃の差を比べてからでないと、オーナーにとって得かどうかは判断できません。

入居者の範囲

入居者は住宅確保要配慮者に限られます。要領では、たとえば低額所得者は月収15.8万円を超えない人、高齢者は60歳以上の人とされています。このほか、障害者、子どもを養育する人、被災者などが含まれます。入居のときに、要配慮者であることを確かめる書類の例も要領の別紙で示されています。

地域の要件

国土交通省の資料では、賃貸住宅供給促進計画を定めている自治体の区域にある住宅であることなどが要件に挙げられています。物件のある地域が当てはまるかは、事前に交付事務局や自治体に確かめます。

令和8年度の募集期間と期限

項目日付出典
募集の開始2026年4月15日交付事務局の案内
募集の締切2026年12月11日 17時交付事務局の案内
事前の確認(メール)締切の1か月以上前から始める交付事務局の案内
令和8年度内に支払いを受けるための完了実績報告の期限2027年1月29日交付申請要領

締切は12月11日ですが、事前の確認を1か月以上前から始めるよう案内されています。さらに、年度内に補助金を受け取るには、工事を終えて2027年1月29日までに完了実績報告を出す必要があります。締切の近くに申請すると、交付決定から工事の完了と報告までの期間がとても短くなります。工事の期間を考えると、秋までに申請の準備を終える計画が現実的です。

交付事務局は「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅等改修事業 交付事務局」です。予算の状況によって受付の扱いが変わることもあるため、最新の案内を確かめてください。

申請から支払いまでの流れ

交付事務局の案内と要領をもとに、おおまかな流れを示します。細かい手続きと様式は、事業の種類(専用賃貸住宅、共同居住型、調査設計計画)ごとに分かれています。

  1. 物件と工事の内容を決め、見積りを取る(関係会社に頼むなら3者以上)。
  2. 交付事務局にメールで事前の確認をする(締切の1か月以上前から)。
  3. 交付申請書を出し、交付決定を受ける。
  4. 交付決定の後に工事に着手する。
  5. 工事の完了後、完了実績報告書を出す(年度内に支払いを受けるには2027年1月29日まで)。
  6. 補助金の額が確定し、支払いを受ける。
  7. 専用住宅として登録を続け、要配慮者の入居を受け入れる(10年以上)。

申請や完了実績報告で求められる写真や書類は、様式の記入要領で確かめ、工事会社と申請の前に共有しておきます。

申請で失敗しやすい点

交付決定の前に着手しない

要領は、補助の対象になる事業に着手する前に交付申請を行い、交付決定を受けるよう求めています。工事であれば工事の着工、調査設計計画やインスペクションであれば委託契約などの締結が「着手」に当たり、交付決定の前に着手すると補助の対象外です。空室を早く埋めたいオーナーほど先に工事を始めがちなので、最初に伝えておきます。

関係会社に発注するときは3者以上の見積り

要領は、関係会社などから調達する場合、交付申請のときに3者以上からの見積りの結果を出すよう求めています。オーナーの親族の会社や、管理会社のグループ会社に工事を頼む予定なら、早めに見積りを集めます。

10年の義務を説明しておく

補助を受けると、10年以上の登録、家賃の上限、入居者の範囲が続きます。補助で取得した財産の処分にも決まりがあります。オーナーが10年の間に売却や建替えを考えているなら、補助を使わない選択も含めて相談します。

改正住宅SN法と居住サポート住宅

住宅セーフティネット法は、令和6年法律第43号で改正され、2025年10月1日に施行されました。国土交通省の案内では、主な内容として次のものが挙げられています。

  • 居住サポート住宅の創設
  • 家賃債務保証業者の認定の仕組み
  • 終身建物賃貸借の手続きの簡素化
  • 残置物の処理などの業務の位置付け
  • 居住支援協議会に関する見直し

居住サポート住宅(法律上は居住安定援助賃貸住宅)は、居住支援法人などが、入居者の安否確認や見守り、必要に応じた福祉サービスへのつなぎを行う賃貸住宅です。事業者は居住安定援助計画を作り、市の区域では市長、福祉事務所を置く町村では町村長、それ以外の区域では都道府県知事の認定を受けます(同法40条)。

令和8年度は、セーフティネット専用住宅改修事業と並んで「居住サポート住宅改修事業」も同じ期間(2026年4月15日から12月11日17時まで)で募集されています。補助の額や要件は居住サポート住宅改修事業の要領で決まっているため、どちらの事業が物件に合うかは、両方の要領を見比べて判断します。

オーナーに提案するときの順番

補助の話から入ると、オーナーは補助額だけを見て判断しがちです。次の順番で確かめると、後から「こんなはずではなかった」となりにくくなります。

  1. 10年の間に売却や建替えの予定がないか確かめる。
  2. 家賃の上限を計算し、今の募集家賃との差を出す。
  3. 物件のある地域が要件に当てはまるか、自治体の補助(地方1/3)があるかを確かめる。
  4. 工事の内容を決め、イからトの工事を含むかで上限の区分を確かめる。
  5. 関係会社に頼むなら3者以上の見積りを集める。
  6. 交付事務局に事前の確認をし、交付決定を受けてから着工する。
  7. 入居者の募集では、住宅確保要配慮者であることを確かめる手順と、居住支援法人など相談先を決めておく。

補助額と、10年間の家賃の差や入居者の範囲の制限を並べて示すと、オーナーが自分で判断しやすくなります。

よくある質問

Q1. すでに始めた工事も補助の対象になりますか。

交付申請要領は、交付決定の前に事業に着手した場合は補助の対象外としています。これから行う工事について、交付決定を受けてから着手してください。

Q2. 10年たつ前に物件を売ることはできますか。

売ること自体を禁じる定めではありませんが、補助を受けた住宅は10年以上の登録が条件で、財産の処分や引継ぎには要領と国土交通省の通知による決まりがあります。売却の予定があるなら、申請の前に交付事務局に確かめてください。

Q3. 管理会社やサブリース会社が申請できますか。

要領には、所有者・転貸人の確認書の様式があり、所有者でない事業者が申請する場合の手続きが用意されています。誰が申請者になれるかの条件は要領で確かめてください。

Q4. 家賃の上限はどこで確かめられますか。

交付事務局が、市町村立地係数と主要都市の上限家賃額を別紙で公表しています。計算式は「79,000円×50/65×市町村立地係数」です。

Q5. 居住サポート住宅とセーフティネット専用住宅は、どちらを選べばよいですか。

入居者への見守りなどの支援を居住支援法人などと組んで行えるなら居住サポート住宅、支援の仕組みはなく入居者を要配慮者に限るなら専用住宅、という分け方が1つの目安です。補助の要件はそれぞれの要領で異なるため、両方を見比べてください。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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