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国土利用計画法の提言が2026年8月7日に出た——面積の引き下げより重いのは、届出が取引の一回で終わらなくなることと、利用段階に命令が入ることです

2026年8月7日、国土交通省の有識者会議が提言を公表しました。見出しになりやすいのは届出対象面積の引き下げですが、実務への影響が大きいのはそこではありません。提言は、利用目的を変えたときの再届出を求めるべきだと書き、相続や無償譲渡も届出対象に加えることが考えられると書き、国外に住む取得者には国内連絡先や国内に居住する管理者・保証人の登録を求める方策を検討すべきだと書きました。さらに、これまで取引段階だけだった指導監督を利用段階にも広げ、被害が生じるおそれがある場合には利用行為の差し止めや変更の命令、緊急的な行政代執行まで可能とすることも考えられるとしています。届出は一回で終わる手続きではなくなる、というのが本稿の読みです。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
土地の届出は「買った時」で終わらなくなる|8月7日の提言
目次

届出は、買った時の一回で終わらなくなります。国土交通省の「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の提言が、令和8年8月7日に公表されました。報じられやすいのは届出対象面積の引き下げですが、提言を最後まで読むと、面積の話は四つある柱のうちの一つの、そのまた一項目にすぎません。より重いのは、利用目的を変えたら再度届け出るという発想と、これまで取引段階だけだった指導監督が利用段階まで伸びるという発想です。

8月7日に出たのは、面積の話だけではなかった

国土交通省が令和8年3月に設置した「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」は、計5回の議論を経て提言をとりまとめ、令和8年8月7日に公表しました。座長は中井検裕・東京科学大学名誉教授で、構成員は令和8年7月31日時点で8名です。宅地建物取引業の団体からは全国宅地建物取引業協会連合会の専務理事が、不動産業側からは不動産協会の企画委員会委員長が入っています。

提言の柱は四つあります。①土地利用の在り方に係る基本的考え方の提示、②土地利用に係る情報把握の強化、③不適切な土地利用等への対応、④国・都道府県・市町村の役割分担と支援体制。届出対象面積の引き下げは、このうち②の一項目です。面積要件については当メディアでも国土利用計画法の届出面積引き下げ2026で扱いました。本稿はその先、つまり提言が新しく引いた線のほうを読みます。

【要点】売買仲介と賃貸管理で見ておく3点

見ておくこと提言に書かれていること
届出を「一回で終わる手続き」として案内しない。利用目的が変わる可能性のある取引では、その旨を記録に残す利用目的の変更に際して再度の届出を求めるようにすべき、とされている。加えて定期的な報告等を求めることも考えられる、とある
相続・贈与・使用貸借の相談を、取引と別枠にしない。オーナーからの相続相談も届出の射程に入りうる現行制度のように有償取引のみに限定するのではなく、相続や無償譲渡などについても届出対象として追加することが考えられる、とある
買主が国外居住の案件では、国内連絡先の確認を段取りに入れる。いまは任意でも、制度化の検討対象になっている国内連絡先や国内に居住する管理者・保証人の登録を土地取得者に対して求めるなど、必要な場合に指導監督を円滑に行えるようにする方策も検討する必要がある、とある

提言はどう出てきたか——5回の会議と133日

会議の開催日は明示されています。第1回が令和8年3月27日(土地取引の主な制度、土地利用の実態について)、第2回が5月12日(現状及び検討の視点について)、第3回が5月26日(取りまとめの方向性について)、第4回が6月11日、第5回が7月31日で、8月7日に提言公表です。第1回から公表まで133日、会議の第1回から第5回までは126日で、4つの間隔の平均は31.5日。月に一度のペースで、5か月弱で結論まで運んだ計算になります。

本稿の日付は2026年8月19日ですから、提言の公表から12日が経過した時点で書いていることになります。制度の姿はまだ確定していません。そのことは後段でもう一度はっきり書きます。

157万件と1.9万件——この2つが全体像を決めている

提言の冒頭近くに、この議論全体の前提になる数字が置かれています。土地の取得の状況について、不動産の所有権移転登記ベースでは全国で約157万件の取引があるところ、国土利用計画法に基づく大規模土地取引の届出ベースでは約1.9万件。前者に占める割合は約1.2%で、経年で見ても概ね1%前後です。出典は国土交通省の「土地取引規制基礎調査概況調査」および「土地取引規制実態統計」で、いずれも令和6年の実績値と注記されています。

区分件数全体に占める割合
所有権移転登記ベースの取引約157万件100%
国土利用計画法の届出約1.9万件約1.2%
届出の外にある取引(差引)約155.1万件約98.8%

1.9を157で割ると約1.21%です。行政が土地取引の情報を届出という経路で得られているのは、件数でいえば100件のうち1件強にすぎない。これが提言の出発点にある事実で、面積要件の議論もデータベース整備の議論も、ここから派生しています。

件数1.2%、面積は約3割。この差が示すもの

同じ注記に、もう一つ数字があります。面積ベースでは約3割。件数では1.2%しか捕捉できていないのに、面積では3割が届出の網に入っている。当たり前といえば当たり前で、届出は大規模な取引に限られているからです。

ただし、この差の読み方を間違えないでください。面積で3割押さえているから十分だ、という結論には提言は進んでいません。提言が挙げた実際の事案は、住宅地に近接する土地での廃棄物や土砂の積み上げ、スクラップヤードの建設、大型車両の駐車場としての利用、許可等の手続を経ない大規模な森林伐採です。周辺住民に影響が出る土地利用は、面積が大きいから起きるわけではありません。面積で3割を押さえていても、件数で98.8%が見えていなければ、問題は見えないところで起きます。

いま届出が要る面積を、坪に直しておく

現行の届出対象面積は、市街化区域2,000平方メートル、市街化区域以外の都市計画区域5,000平方メートル、都市計画区域外1ヘクタール以上です。オーナーや売主と話すときは坪のほうが通じるので、換算を並べておきます。

区域面積要件坪換算(概算)
市街化区域2,000平方メートル以上約605坪
市街化区域以外の都市計画区域5,000平方メートル以上約1,512坪
都市計画区域外1ヘクタール(10,000平方メートル)以上約3,025坪

提言は、この面積要件について「土地利用の実態や申請側・行政側双方の負担も考慮した上で、可能な範囲で引き下げる方向で見直すことを検討すべき」としています。引下げは全国一律で行うことを基本としつつ、地方公共団体の意向により更に引き下げることを可能とする方策も併せて検討すべき、という二段構えです。つまり、制度が変わった後は、同じ会社が扱う取引でも自治体によって閾値が違う、という状態が起こりえます。

平成10年に何が変わったか——事前から事後へ

いまの届出制度の形は、平成10年の法改正で決まりました。提言はその経緯をこう整理しています。国土利用計画法は制定時からバブル期に至るまで投機的取引・地価高騰対策としての充実が図られてきたが、平成10年の改正では、バブル崩壊後の地価下落局面にあったことを背景に、地価抑制から土地の有効活用へ政策目的を転換し、届出制度は価格の事前審査に重きを置いた事前届出制を一部残しつつ、中心を利用目的の事後審査に重きを置いた事後届出制へ移しました。

1998年から2026年まで28年です。「地価が下がっている前提で作られた制度を、地価も土地需要も別の局面にある2026年に使っている」——提言が制度見直しの必要性を語るときの土台は、この時間差にあります。

第一の線:利用目的を変えたら、もう一度届け出る

ここからが本稿の主題です。提言はまず、現行制度の穴をこう書きます。取引時点で届け出た後に届出事項に変更があっても、変更届を提出する必要はない。だから、届出時に利用目的を「未定」とした場合や、届出後に利用目的が変わった場合には、実際の利用目的を捕捉できません。

そのうえで、「土地利用を継続的にモニタリングし、実際の利用目的を確実に把握できるよう、利用目的の変更に際して再度の届出を求めるようにすべきである」と結論しています。さらに、モニタリングを徹底する観点からは、再届出に加えて届出者に対し定期的な報告等を求めることも考えられる、とも書かれています。

実務の言葉に直すとこうなります。いまは「契約したら14日以内に一回」で完結する手続きが、制度改正後は「その後、目的を変えたらまた」になる可能性がある。届出義務者は権利取得者、つまり買主ですから、会社が代わりに義務を負うわけではありません。ですが、後日「そんな話は聞いていない」と言われる場面を減らしたいなら、契約時の説明記録にこの見通しを残しておくのが安全です。

第二の線:相続と無償譲渡が視野に入った

現行の国土利用計画法の届出は、有償の取引が対象です。相続で取得した土地は、それだけでは届出の対象になりません。提言はここに手を入れることを提案しています。

提言の言葉はこうです。相続後に特段の取引を行うことなく相続人自身が従前と異なる土地利用を行うケースや、土地を無償で取得したり借り上げたりするケースもあることから、現行制度のように有償取引のみに限定するのではなく、相続や無償譲渡などについても届出対象として追加することが考えられる。ただし、と留保も付いています。土地の権利取得が積極的な土地利用の意思を持たずに行われる場合も含めて届出対象とすべきかについては、同様の仕組みを規定する他法令も参照しつつ、その是非を検討する必要がある、と。

ここは中小の会社にとって射程が広い部分です。相続の相談は、売買の話になる前に来ます。空き地・空き家の相続、農地や山林を含む一括相続、法人への無償譲渡。いま届出の話をしなくてよい場面が、制度改正後は「面積次第では届出が要る」場面に変わりうる。相続土地国庫帰属制度住所等変更登記の義務化と同じ引き出しに入れておくべき論点です。

第三の線:国外に住む取得者には国内連絡先を求める

提言は、土地取得者が国外に居住する場合に国内居住者よりも連絡がとりにくくなるリスクを挙げ、日本語による円滑なやりとりが可能となるよう、国内連絡先や国内に居住する管理者・保証人の登録を土地取得者に対して求めるなど、必要な場合に指導監督を円滑に行えるようにする方策も検討する必要があるとしています。

実務上、国外居住の買主に国内連絡先を確認する会社は少なくありません。ただしそれは各社の運用であって、制度上の要求ではありませんでした。提言はそれを制度の側に取り込む方向を示しています。非居住者の取得については別の制度も動いています。並べ方は外国人・非居住者の不動産取得と外為法の実務2026にまとめました。

第四の線:利用段階に命令と行政代執行が入る

提言のなかで、実務上いちばん重い変化がここです。現行の国土利用計画法は、取引段階で把握した利用目的が土地利用基本計画その他の計画に適合するかを審査し、不適合なら利用目的の変更等を勧告し、勧告に従わない場合には公表の措置を講じる——ここまでです。土地の利用段階に入った後は個別法の出番、という整理でした。

提言はこの線を動かします。不適切な土地利用に対しては、土地の取引段階のみならず土地の利用段階においても、必要に応じ勧告等の指導監督を行うことが考えられる。そして、その土地利用によって災害の発生や著しい環境悪化など周辺の土地利用に特段の被害が生じ、又は生じるおそれがある場合には、勧告等の緩やかな措置だけではなく、利用行為の差し止めや変更等の命令、義務者が命令に従わない場合における緊急的な行政代執行といった措置を可能とすることも考えられる、としています。

現行提言が示す方向
対象の段階取引段階のみ取引段階+利用段階
手段勧告 → 従わない場合は公表勧告に加えて、差し止め・変更等の命令、緊急的な行政代執行
罰則現行水準抑止力を高める観点から強化を検討。悪質な事業者への罰則は近年の立法例も参考に

勧告と公表の世界と、命令と代執行の世界は、重さが違います。買った土地の使い方が後から止められうる、という前提は、売買の説明の温度を変えます。

「不適切な土地利用」という言葉の定義を正確に読む

提言は「不適切な土地利用」という語を、一般名詞としてではなく定義語として使っています。定義は明快です。土地利用関連法では必ずしも禁止されておらず、法規制の「隙間」に存在するが、周辺地域に悪影響を生じさせるような土地利用。

提言は注記でさらに念を押しています。この用語は「個別法で禁止されている土地利用」を含まない概念として用いられている、と。提言は指導監督の対象を「個別法で禁止されている土地利用」と「不適切な土地利用」の二つに要素分解しており、後者だけを新語で呼んでいるわけです。

ここを読み違えると、話が逆になります。問題にされているのは、違法だと分かっている行為ではありません。個別法に照らせば違法とは言えないのに、周辺に悪影響が出ている行為です。提言が挙げた具体例は、周辺地域における災害発生のリスクがあるもの、安全面で著しい支障を及ぼすもの、周辺住民の生活環境や自然環境に著しい悪影響を及ぼすもの、行政が定めた計画・施策の方向性等に反しているもの。盛土規制法のような個別法の外側を、一般法で拾いにいく設計です。

指導監督の根拠は、都道府県の土地利用基本計画になる

では、何が不適切かは誰が決めるのか。提言の答えは都道府県の土地利用基本計画です。この計画はいま、県土全域を都市・農業・森林・自然公園・自然保全の5地域に区分することを主眼としており、概括的な内容にとどまるため指導監督の根拠になりにくい、というのが提言の現状認識です。

そこで記載事項を拡充し、都道府県がより具体的な内容を書き込めるようにすべきだとしています。留意点も具体的です。どこでどのような行為が指導監督の対象となるのかを、地域住民や事業者が客観的に判断できる程度に明示する必要がある。また、住民の生活や適正な事業活動に必要不可欠な施設であっても周辺住民にとっては望ましくない施設が存在することを踏まえ、そうした施設を一律に排除するような計画にしない必要がある、とも書かれています。

実務への含意は単純です。制度改正後、土地の使い方の可否は、都道府県の計画を読まないと分からなくなります。いまは条例と要綱を見に行きますが、そこに土地利用基本計画が加わります。

無届は登記情報との照合で洗い出される

提言は無届事案への対応も強化すべきだとしています。方法まで書かれています。届出対象面積以上の取引であるにもかかわらず届出を行わない事案について、登記情報など他の取引情報と照合すること等により洗い出しを行い、報告徴収や現地調査等により利用目的等を把握するとともに、必要な指導監督を行う。

面積要件が下がり、登記との突合が始まれば、届出漏れが表に出る確率は上がります。届出義務者は買主ですが、面積要件を満たす取引を扱いながら届出の案内をしていなかった、という事実は仲介の信用の問題になります。

台帳の閲覧——住民が見に来る可能性がある

もう一つ、見落とされやすい項目があります。都道府県において届出情報を整理した台帳を整備し、関係する部局・機関が必要に応じ参照できるようにすること、そして地域住民等から請求があった場合には台帳の閲覧を可能にすることの検討です。

提言はここに強い留保を付けています。届出情報には個人の機微な情報や土地の取引価格等が含まれており、これらがオープンになれば個人のプライバシーの保護や事業者の事業活動等に支障を及ぼす可能性がある。ウェブサイト上で誰でも容易に常時アクセスできる状態で公開されれば、その支障の度合いが大きくなることも考えられる。だから、閲覧できる対象や請求できる者の範囲、閲覧の請求・実施に係る方法等について検討が必要だ、と。

取引価格が閲覧の対象に含まれるかどうかは、提言の段階では決まっていません。ここは推測を書くべきではないので、決まっていないとだけ書きます。

国は届出の中身を読めていない、と書いてある

提言のなかで、行政が自らの制度についてここまで書くのは珍しい、という部分があります。届出の内訳について、近年は利用目的を「生産施設」(電気・ガス等供給施設、工場、倉庫、資材置場等)とするものの割合が増えているが、この一つの分類に多くの利用類型が包含されており、しかも近年増加している太陽光発電関係を「生産施設」として扱うケースと「その他」として扱うケースが混在しているため、利用目的の的確な把握ができない状況となっている、と。

加えて、利用目的を「資産保有・転売等目的」とするものが一定数あり、届出後の具体の土地利用の動向が把握できないことが懸念される、とも書かれています。

だから提言は、利用目的の分類や記入方法についても見直しが必要だとしています。届出書の書式が変わる、ということです。いま届出を代行的に案内している会社は、様式変更に備えて手順書のどこを直すかを見ておくと後が楽になります。

外国人の話として読むと、半分外します

この議論は外国人による土地取得への懸念をきっかけの一つとしており、提言の背景説明にもそう書かれています。ただし提言は、続けて明確に留保しています。違反行為をするのは外国人・外国法人に限られないことに留意が必要だ、と。

そのうえで、当事者が外国人・外国法人の場合には、連絡がつかなかったり、取引の存在自体が把握できなかったりする等の指摘もある、と書いています。取引の存在が把握できない理由についても注記があり、制度について十分な認識を持たない者どうしで法令上の手続を行わずに取引が行われることなどにより、行政が取引の存在を確認できないことによる、とされています。

つまり、問題として書かれているのは国籍ではなく、連絡可能性と手続認識です。だから対応策も国籍要件ではなく、国内連絡先の登録という形になっています。この記事を国籍の話として読むと、実務の準備を間違えます。

賃貸管理会社にとっての読み替え

売買仲介の話に見えますが、賃貸管理にも接点があります。三つ挙げます。

場面接点
オーナーの相続相談相続や無償譲渡が届出対象に追加される可能性がある。面積次第で手続きが増える
駐車場・資材置場への転用相談提言が挙げた実例には「住宅地に近接する土地が大型車両の駐車場として利用される」ケースが含まれる。利用段階の指導監督の射程に入りうる
遊休地の借上げ提案「土地を無償で取得したり借り上げたりするケース」が届出対象の検討範囲に明記されている

いずれも今日の手続きが変わるという話ではありません。変わるのは、オーナーに「これは届出が要りますか」と聞かれたときに、要らないと即答できる範囲です。その範囲が狭くなる方向に議論が進んでいる、と理解しておけば十分です。

やりがちな誤解4つ

誤解提言に照らすと
「8月7日に法律が変わった」変わっていません。公表されたのは有識者会議の提言で、法改正のスケジュールは提言に書かれていません
「面積が下がるだけの話」面積は四つの柱のうち②の一項目です。再届出・相続の対象化・利用段階の命令はいずれも別項目です
「不適切な土地利用=違法な土地利用」定義が逆です。個別法で禁止されている土地利用を含まない概念として定義されています
「届出は仲介会社の義務」届出義務者は権利取得者、つまり買主です。ただし案内をしていなかったという事実は、信用の問題として残ります

よくある質問

Q. いつ法律が変わりますか。

A. 本稿が確認した提言および報道発表資料に、法改正の時期は書かれていません。推測は書きません。国土交通省の当該ページと報道発表を定期的に確認するのが確実です。

Q. 届出対象面積は、どこまで下がりますか。

A. 具体的な数値は提言に書かれていません。書かれているのは「可能な範囲で引き下げる方向で見直すことを検討すべき」という方向性と、全国一律の引下げに加えて地方公共団体の意向による更なる引下げを可能とする方策も検討すべき、という二段構えです。

Q. いま、社内で何か変えるべきですか。

A. 手続きを変える段階ではありません。変えるとすれば記録の残し方です。面積要件に近い規模の取引について、届出の案内をした事実と、買主が利用目的をどう説明したかを残しておく。制度が変わったときに遡って確認できる形になっていれば十分です。

Q. スクラップヤードは、この提言で規制されるのですか。

A. 別の法律です。提言の注記に、スクラップヤードに関する許可制の創設等の規制強化を盛り込んだ廃棄物処理法等の一部を改正する法律が第221回国会(特別会)において成立しており、施行に向けた準備が進められていると書かれています。国土利用計画法の見直しは、その外側の「隙間」を扱う議論です。

数字の出典と、書かなかったこと

項目出典
提言の公表日(令和8年8月7日)、四つの柱、有識者会議の設置時期・回数・座長・構成員国土交通省 報道発表「『土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議』提言 がとりまとめられました」および別紙1(概要)
約157万件・約1.9万件・約1.2%・面積ベース約3割同 別紙2(提言)。原典は国土交通省「土地取引規制基礎調査概況調査」及び「土地取引規制実態統計」の令和6年実績値
再届出、相続・無償譲渡の対象化、国内連絡先の登録、台帳と閲覧、無届事案の洗い出し、罰則強化、利用段階の命令・行政代執行、「不適切な土地利用」の定義同 別紙2(提言)Ⅱ.2
現行の届出対象面積、平成10年改正の経緯、土地利用基本計画の5地域区分、生産施設・太陽光発電関係の分類混在、資産保有・転売等目的同 別紙2(提言)Ⅰ.および別紙1
スクラップヤードに係る廃棄物処理法等改正法が第221回国会(特別会)で成立同 別紙2(提言)脚注

本稿で算出した派生値は次のとおりです。1.9万件÷157万件=約1.21%。157万件から1.9万件を引いて約155.1万件、全体に対して約98.8%。有識者会議の第1回(令和8年3月27日)から提言公表(同年8月7日)まで133日、第1回から第5回(同年7月31日)まで126日で、4つの間隔の平均は31.5日。提言公表から本稿の日付2026年8月19日まで12日。平成10年(1998年)の法改正から本稿まで28年。面積の坪換算は1坪=約3.305785平方メートルとして、2,000平方メートルで約605坪、5,000平方メートルで約1,512坪、10,000平方メートルで約3,025坪。

書かなかったことも明示します。引き下げ後の届出対象面積の具体的な数値は書いていません。提言に数値がない以上、置けば推測になります。法改正の時期も書いていません。提言にも報道発表資料にも記載がありません。個別の自治体が今後どこまで独自に引き下げるかも書いていません。提言は自治体による更なる引下げを可能とする方策の検討を求めた段階で、実際の運用は制度が固まってからの話です。

この記事の核心は、面積の数字ではありません。届出という手続きが、取引の一点を切り取る仕組みから、取引から利用まで続く線を見る仕組みへ変わろうとしている、という構造です。一点なら手続きは一回で終わります。線になれば、終わりません。売買仲介にとっては説明の範囲が延び、賃貸管理にとってはオーナー相談の射程が広がります。制度が固まる前にできるのは、いまの取引で何をどう記録しているかを見ておくことだけです。

本稿は公表された提言および報道発表資料にもとづく一般的な整理であり、個別の取引における届出の要否や適法性を判断するものではありません。国土利用計画法に基づく届出の実務は土地の所在する市町村および都道府県の窓口を、制度見直しの動向は国土交通省の公表資料をご確認ください。賃貸管理と売買仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。