賃貸管理 読了 11分

【2026年10月】マンション管理業者に指示処分|預り金の管理を見直す

2026年10月14日、関東地方整備局がマンション管理業者に指示処分。従業員による管理組合財産の着服が理由です。公表内容と、賃貸管理の預り金で見直す5つを整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
目次

国土交通省関東地方整備局は2026年10月14日、マンション管理業者に対し、マンション管理適正化法第81条にもとづく指示処分を出したと公表しました。理由は、管理事務を受託している管理組合で、その会社の従業員が管理組合の財産を着服し、管理組合に損害を与えたことです(関東地方整備局の発表資料)。業務停止ではなく、再発防止の措置を求める処分です。賃貸管理会社も家賃や敷金という他人のお金を預かっています。本稿は、公表された内容と、賃貸管理の預り金で今週見直せる5つを整理します。

発表の中身

関東地方整備局が2026年10月14日に公表した「マンション管理業者に対する監督処分について」によると、処分を受けたのは東京都新宿区のユニオン・シティサービス株式会社(登録番号 国土交通大臣(5)第030004号)です。処分の種類は指示処分で、根拠はマンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、適正化法)第81条です。公表資料では、同条第1号に該当するとしています。

違反の事実として公表されたのは、被処分者が管理事務を受託している管理組合において、被処分者の従業員が管理組合の財産を着服し、当該管理組合に損害を与えたことです。着服の金額や期間、対象となった管理組合の数は、公表資料には書かれていません。本稿でも、公表された範囲だけを扱います。

関東地方整備局は、再発防止のために次の4点について必要な措置を講じるよう指示しています。違反行為の内容と処分の内容を役職員に速やかに周知すること、法令遵守を社内で徹底し研修・教育計画を作って継続的に行うこと、日常業務の調査・点検を行い業務管理体制の整備に努めること、適切な再発防止策を作って継続的に行うことです。

処分の内容と期限

公表資料に書かれている事項を表にしました。

項目公表された内容
発表日・処分日2026年10月14日(令和8年10月14日)
処分庁国土交通省 関東地方整備局長
処分の種類指示処分(業務停止や登録取消ではありません)
被処分者ユニオン・シティサービス株式会社(東京都新宿区西新宿)、登録番号 国土交通大臣(5)第030004号
根拠条文マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第81条(公表資料では同条第1号に該当)
違反の事実管理事務を受託している管理組合で、被処分者の従業員が管理組合の財産を着服し、その管理組合に損害を与えた
措置の報告期限講じた措置を2026年11月16日までに文書で報告
実施状況の報告期限2027年4月14日まで
公表されていないこと着服の金額、期間、対象の管理組合の数(公表資料に記載がありません)

適正化法の監督処分には、軽いほうから指示(第81条)、業務停止命令(第82条)、登録取消(第83条)があります。業務停止命令は1年以内の期間を定めて命じられるもので、今回はそこまでの処分ではありません。国土交通省の中部地方整備局が作っている適正化法の解説資料でも、この3段階が説明されています(中部地方整備局の解説資料)。

指示の4項目を自社に置き換える

今回の指示の4項目は、そのまま預り金を扱う会社の点検表になります。左が公表された指示の内容、右がそれを賃貸管理会社に置き換えたときに確かめることです。右の列は本稿の整理で、行政が賃貸管理会社に求めたものではありません。

指示の内容賃貸管理会社が自社に置き換えて確かめること
違反行為と処分の内容を役職員に速やかに周知する預り金の扱いの社内ルールを、全員が読める形で持っているか
法令遵守を徹底し、研修・教育計画を作って継続的に行う分別管理と定期報告の研修を、年に何回、誰に行うか決まっているか
日常業務の調査・点検を行い、業務管理体制を整える入出金の照合を、担当者以外の人が毎月見ているか
適切な再発防止策を作り、継続して行う通帳・印鑑・ネットバンキングの権限が一人に集まっていないか

マンション管理と賃貸管理の分別管理の違い

今回の処分はマンション管理業についてのものです。賃貸住宅管理業には別の法律(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律、以下、賃貸住宅管理業法)があり、預り金の分別管理も別に定められています。主な違いを並べます。

区分マンション管理業(適正化法)賃貸住宅管理業(賃貸住宅管理業法)
預かるお金修繕積立金、管理費など管理組合の金銭家賃、敷金、共益費その他の金銭
分別管理の定め法第76条・施行規則第87条(収納口座・保管口座などの方法、保証契約、管理組合名義の口座の印鑑等を業者が保管しないこと)法第16条・施行規則第36条(固有財産の口座と明確に区分し、どの管理受託契約の金銭か帳簿で直ちに判別できる状態で管理)
報告毎月の会計の収支状況の書面を翌月末日までに交付(規則第87条第5項)、事業年度終了後の管理事務の報告(法第77条)管理受託契約の締結日から1年を超えない期間ごとなどに管理業務報告書を交付して説明(規則第40条)
監督処分指示(法第81条)、業務停止命令(法第82条)、登録取消(法第83条)業務改善命令(法第22条)、登録取消・業務停止(法第23条)、処分の公告(法第25条)

賃貸住宅管理業法の施行規則第36条は、家賃や敷金などを管理する口座を自己の固有財産を管理する口座と明確に区分すること、そしてその金銭がどの管理受託契約にもとづくものかを自己の帳簿で直ちに判別できる状態で管理することを求めています。帳簿は電磁的記録でもかまいません(施行規則を改正する省令)。マンション管理業のように「業者が印鑑等を保管してはならない」という定めは、賃貸住宅管理業法の施行規則にはありません。そのぶん、権限を一人に集めないことは会社が自分で決める必要があります。

賃貸管理の実務で何をするか

今回の公表には着服の手口は書かれていません。そのため、ここに挙げるのは手口への対策ではなく、預り金を扱う会社が法令と照らして日ごろから確かめておく5つです。

1. 預り金の口座と自社の口座が分かれているかを確かめる

家賃・敷金・共益費を受け取る口座が、会社の運転資金の口座と分かれているかを通帳または取引明細で確かめます。分かれていても、預り金口座から自社の経費を直接払っていれば分けた意味が薄れます。管理料を差し引くときの移し方(いつ・いくら・誰の承認で)を書面にしておきます。

2. 帳簿でオーナーごとの残高がすぐ出るかを試す

施行規則第36条の「直ちに判別できる状態」を、実際に試します。任意のオーナーを1人選び、その人の預り金が今いくらあるかを、帳簿からその場で出せるかを見ます。口座の残高合計と、オーナーごとの残高の合計が一致するかも確かめます。ずれがあれば、まずその理由を突き止めます。

3. 通帳・印鑑・ネットバンキングの権限を一人に集めない

出金の操作をする人と、承認する人を分けます。ネットバンキングなら、振込の作成と承認を別のIDにできるかを銀行の設定で確かめます。担当者が休みの日にだけ別の人が触る、という運用では、毎月の点検になりません。

4. 毎月の入出金照合を担当者以外が見る

入金の消込とオーナーへの送金額の計算を担当者が行い、通帳の動きとの照合は別の人が行うようにします。照合した日と照合した人を記録に残します。入金の記録と消込、オーナーへの収支報告書の作成は、ウルスタくんの入金管理と収支報告書でできます。

5. オーナーへの定期報告を期限どおりに出す

賃貸住宅管理業法では、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごと、そして契約期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を作ってオーナーに交付し説明します(施行規則第40条)。毎月の送金明細とは別に、この報告を期限どおりに出しているかを契約ごとに一覧にしておくと、漏れに気づけます。

よくある質問

Q. 指示処分と業務停止命令は何が違いますか。

A. 指示処分は、行政が業者に是正や再発防止の措置を命じるものです。業務停止命令は、1年以内の期間を定めて業務の停止を命じるものです。今回の処分は指示処分で、公表資料には業務停止の記載はありません。

Q. 賃貸管理会社で同じことが起きた場合も処分の対象になりますか。

A. 賃貸住宅管理業法にも監督処分があり、業務改善命令(第22条)、登録の取消しや1年以内の業務停止(第23条)が定められています(日本賃貸住宅管理協会の法律解説)。ただし、どの事実がどの処分になるかは個々の事案ごとに行政が判断するもので、本稿で一律には言えません。

Q. 着服された金額はいくらですか。

A. 関東地方整備局の公表資料には、金額・期間・対象の管理組合の数は書かれていません。

Q. 過去の処分はどこで調べられますか。

A. 国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で、宅地建物取引業者や賃貸住宅管理業者、マンション管理業者の処分歴を検索できます(ネガティブ情報等検索サイト)。

出典

本稿の記述は、2026年10月28日に開いて読んだ次の資料にもとづきます。

本稿で使った内容資料
発表日・処分日、被処分者、登録番号、処分の種類、根拠条文、違反の事実、指示の4項目、報告期限国土交通省関東地方整備局「マンション管理業者に対する監督処分について」(2026年10月14日、PDF)
記者発表の一覧(2026年10月の掲載)関東地方整備局 記者発表(建設産業)
適正化法の財産の分別管理(第76条・規則第87条)、管理事務の報告(第77条)、監督処分(第81条〜第83条)国土交通省中部地方整備局 マンション管理適正化法の解説資料(PDF)
賃貸住宅管理業法 施行規則第36条(財産の分別管理)・第40条(委託者への定期報告)賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年国土交通省令第34号、PDF)
賃貸住宅管理業法の監督処分(第22条・第23条・第25条)、第16条の分別管理公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「罰則・監督処分」
処分歴の検索国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト

この記事は 2026-10-28 時点の情報です。

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