賃貸管理 読了 14分

サブリースと管理委託の違い|賃貸経営はどっち?(2026年版)

サブリースはオーナーが業者に貸して決まった家賃を受け取る契約、管理委託は入居者に直接貸して管理だけを任せる契約です。減額請求・解約・規制の違いを比較表で整理しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
目次

サブリースは、オーナーが業者に建物を貸して、業者から決まった家賃を受け取る契約です。管理委託は、オーナーが入居者に直接貸し、管理の仕事だけを管理会社に任せる契約です。サブリースは空室の影響を受けにくい代わりに、借地借家法32条による家賃の減額請求と、オーナー側から解約するときの正当事由(28条)がついて回ります。管理委託は空室の影響をそのまま受ける代わりに、家賃と契約をオーナーが決められます。どちらが良いかは物件と目的で変わるため、本稿では国土交通省の資料と法律の条文をもとに、違いを事実として並べます。

結論(90秒で読める)

  • 違いの根っこは「オーナーが誰に貸しているか」です。サブリースではオーナーは業者に貸し、業者が入居者に又貸し(転貸)します。管理委託ではオーナーが入居者に貸し、管理会社は仕事を受けるだけです。
  • サブリースの家賃は「保証」ではありません。国交省のガイドラインは、契約期間が家賃の固定される期間ではないこと、業者が借地借家法32条で減額を請求できることを、契約前に説明するよう求めています。
  • サブリースはオーナーから簡単にやめられません。オーナーが貸主なので、更新の拒絶や解約には借地借家法28条の正当事由が必要です。管理委託は、契約書の解約条項に沿って解約できます。
  • 規制のかかり方が違います。サブリースは戸数にかかわらず広告・勧誘・説明の規制(賃貸住宅管理業法28〜32条)がかかり、管理委託は200戸以上の業者に登録と業務上の義務(3条・13〜21条)がかかります。
  • どちらを選ぶかは、空室の影響をどこまで自分で受けるか、家賃と契約の決定権をどこまで手元に残すかで分かれます。

二つの契約の仕組み

サブリース(特定賃貸借契約)

賃貸住宅管理業法では、サブリースの業者が借り上げる契約を「特定賃貸借契約」と呼びます。国交省のポータルサイトは、賃借人が「第三者に転貸する事業を営むことを目的として」結ぶ賃貸借だと説明しています(国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「サブリース事業者向け」)。ガイドラインではこれを「マスターリース契約」と呼び、業者を「特定転貸事業者」と呼んでいます。

お金の流れは、入居者が業者に転貸の家賃を払い、業者がオーナーに契約で決めた家賃を払う形です。入居者の募集、入居者との契約、家賃の回収は、業者が転貸人として行います。

管理委託(管理受託契約)

オーナーが入居者と賃貸借契約を結び、建物の維持保全や家賃の受け取りなどの管理業務を管理会社に任せる契約です。賃貸住宅管理業法では「管理受託契約」と呼びます。200戸以上を管理する業者は国土交通大臣の登録が必要で、200戸未満は任意です(国土交通省「賃貸住宅管理業法 制度解説」)。

管理会社は受け取った家賃を自社の財産と分けて管理し(16条)、管理業務の実施状況を少なくとも年1回以上オーナーへ報告します(20条。国土交通省「管理業者の業務」)。

比較表|サブリースと管理委託

国交省の制度解説・ガイドライン、借地借家法、民法をもとに、8つの軸で並べます。個別の契約では条件が変わるため、最後は重要事項説明書と契約書で確かめてください。

比べる軸サブリース(特定賃貸借)管理委託(管理受託)
契約の形オーナーがサブリース業者に建物を貸す賃貸借契約(マスターリース契約)です。業者が入居者に転貸し、オーナーと入居者の間に直接の契約はありませんオーナーが入居者と賃貸借契約を結び、管理会社には管理業務を委託します。入居者の貸主はオーナー自身です
オーナーが受け取るお金契約で決めた家賃を業者から受け取ります。空室があっても家賃は払われますが、新築当初などに支払いを免れる「免責期間」が設けられることがあります入居者が払った家賃から管理報酬を差し引いた額を受け取る形が一般的です。空室の間は、その部屋の家賃収入はありません
家賃が下がる可能性契約期間は家賃が固定される期間ではありません。借地借家法32条により、業者は契約の条件にかかわらず家賃の減額を請求できます(オーナーが必ず受け入れる必要はありません)入居者の家賃は、オーナーと入居者の間で決まります。募集家賃をいくらにするかの最終判断はオーナーにあります
オーナーから契約を終わらせるときオーナーは貸主の立場なので、更新を拒んだり解約したりするには借地借家法28条の正当事由が必要です管理受託契約は委任の性質を持つ契約で、民法651条により各当事者はいつでも解除できます。実際の手続きは契約書の解約条項(予告期間など)に従います
賃貸住宅管理業法の規制戸数にかかわらず、誇大広告の禁止(28条)、不当な勧誘の禁止(29条)、契約前の重要事項説明(30条)、契約時の書面交付(31条)、書類の閲覧(32条)が業者と勧誘者に課されます200戸以上を管理する業者は登録が必要です(3条)。重要事項説明(13条)、契約時の書面(14条)、再委託の禁止(15条)、分別管理(16条)、定期報告(20条)などの義務があります
入居者の募集と家賃の決定業者が転貸人として入居者を募集し、転貸の家賃を決めます。入居者が払う家賃とオーナーが受け取る家賃の差が業者の収入になります管理会社が募集を手伝いますが、貸主はオーナーです。募集条件はオーナーの了解のもとで決まります
修繕と原状回復の費用どの費用をどちらが負担するかは契約で決まります。国交省は、オーナー負担となる経年劣化・通常損耗の修繕費用などを重要事項として説明するよう求めています貸主として、民法606条の修繕義務はオーナーにあります。管理会社は手配や見積りの取りまとめを行い、費用はオーナーが負担するのが基本です
オーナーへの報告法律上の定期報告義務(20条)は管理受託の規定です。維持保全の内容や実施状況の報告の仕方は、重要事項説明と契約書で確かめます管理業法20条で、管理業務の実施状況(家賃の収受状況、維持保全の実施状況、入居者の苦情と対応など)を定期的にオーナーへ報告する義務があります

サブリースで国交省が説明を求めている事項

国交省の「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和5年3月31日改正)は、契約前の重要事項説明で次のことを伝えるよう求めています(国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」)。サブリースを検討しているオーナーにとっては、そのまま確認のリストになります。

確かめる事項ガイドラインが求めている説明の中身
家賃家賃の額、支払期日、改定の時期、減額される場合があること、家賃の設定の根拠、支払いを免れる免責期間
借地借家法32条契約の条件にかかわらず業者が減額を請求できること、その要件(税負担の変動、経済事情の変動、近くの相場との比較など)、オーナーが必ず受け入れる必要はないこと
契約期間と28条契約期間は家賃が固定される期間ではないこと、オーナーから更新を拒むには正当事由が必要なこと
維持保全実施する内容・回数・頻度と、実施状況の報告のしかた
費用の分担設備ごとの負担者、オーナー負担となる経年劣化・通常損耗の修繕費用
契約の終わり方更新と解除の条件、違約金、契約が終わったときに入居者との契約をオーナーが引き継ぐこと

ガイドラインは、説明から契約までに1週間程度の十分な期間を置くことが望ましいとしています。また、「○年家賃保証」と書きながら見直しや減額の可能性を離れた場所にしか書かない広告や、正当事由が必要なのに「いつでも自由に解約できます」と表示することを、誇大広告の例として挙げています。業者から委託を受けて契約を勧める建設会社・不動産会社・金融機関なども「勧誘者」として同じ規制を受け、勧誘者の違反は業者も処分の対象になります。

国交省のFAQは、業者が契約後に借地借家法32条で減額を請求するときも、当初の重要事項説明と同じ方法で、書面の交付等による説明が必要だとしています(国土交通省 賃貸住宅管理業法 よくある質問)。

向いている人

サブリースを検討する人が挙げる条件

  • 毎月の入金額の変動を小さくしたい。空室があっても契約の家賃が払われるため、ローンの返済計画を立てやすくなります。ただし減額請求の可能性は残ります。
  • 入居者とのやりとりを一切持ちたくない。入居者の貸主は業者なので、苦情や督促の窓口は業者です。
  • 家賃の水準を自分で決めることにこだわらない。転貸の家賃は業者が決め、その差が業者の収入になります。

管理委託を選ぶ人が挙げる条件

  • 家賃・募集条件・入居者の選び方を自分で決めたい。貸主はオーナーなので、最終判断がオーナーに残ります。
  • 将来、売却・建替え・自己使用・管理会社の変更をする可能性がある。サブリースはオーナーから終わらせるのに正当事由が必要です。
  • 空室の影響を受けても、満室時の家賃収入を手元に残したい。業者との家賃の差がない代わりに、空室の分はそのまま収入が減ります。

判断の分かれ目

  • 減額請求を受けたときに、返済が続けられるか。サブリースの家賃を前提にローンを組むなら、減額された場合の収支も先に計算しておきます。
  • 10年後・20年後に、物件をどうしたいか決まっているか。売却や建替えの予定があるなら、サブリースの解約に正当事由が必要なことが効いてきます。
  • 重要事項説明書の内容を、契約前に1週間ほどかけて読めるか。免責期間、修繕費の分担、違約金は、比較表の軸より大きく収支を変えることがあります。
  • 空室の多い時期に、募集の判断を自分でしたいか。管理委託では、家賃を下げるか、設備を足すかをオーナーが選べます。

近くの相場家賃を確かめる作業は、ウルスタくんの家賃査定AIでできます。管理委託でオーナーへ送る収支報告書も、ウルスタくんで作成してダウンロードできます。

よくある質問

Q1. サブリースの「家賃保証」は、契約期間中ずっと同じ額ですか。

国交省のガイドラインは、契約期間は家賃が固定される期間ではないと説明するよう求めています。業者は借地借家法32条で減額を請求でき、契約の条件にかかわらずこの請求はできるとされています。ただし、オーナーが請求を必ず受け入れる必要はありません。

Q2. サブリースをやめて管理委託に切り替えられますか。

オーナーは業者に建物を貸している立場なので、オーナーから更新を拒んだり解約したりするには、借地借家法28条の正当事由が必要です。合意で解約することはできます。契約が終わったときの入居者との契約の扱い(オーナーが引き継ぐかどうか)は、契約書の定めを確かめてください。国交省の特定賃貸借標準契約書は、契約が終わるとオーナーが転貸借の貸主の地位を引き継ぐ形にしています。

Q3. 200戸未満の小さなサブリース業者にも規制はかかりますか。

かかります。国交省のFAQは、特定転貸事業者は戸数にかかわらず、誇大広告の禁止や重要事項説明などの規制の対象になるとしています。200戸の基準は、管理業の登録義務の基準です。

Q4. 管理委託の契約前には、どんな説明がありますか。

賃貸住宅管理業法13条で、管理会社は契約前に、報酬、管理業務の内容、実施方法などを書面で説明します。国交省のFAQは、説明から契約までに1週間程度を置くことを勧めています。契約後には、別に契約内容を記した書面が交付されます(14条)。

要点をまとめます。サブリースはオーナーが業者に貸す契約で、空室の影響を受けにくい代わりに、減額請求の可能性とオーナーから解約するときの正当事由がついて回ります。管理委託はオーナーが入居者に貸す契約で、空室の影響を受ける代わりに、家賃と契約の決定権がオーナーに残ります。どちらを選ぶ場合も、契約前の重要事項説明書を時間をかけて読むことが、国交省の資料が一貫して求めていることです。

この記事は 2026-10-30 時点の情報です。

出典(本文で参照している資料)

本稿の内容は、2026年10月30日に開いて読んだ次の資料にもとづきます。

本稿で使った内容資料
登録の基準(200戸)、管理受託の義務とサブリース規制の条番号国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「制度解説」
特定賃貸借契約の定義、オーナー向けの注意点国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「サブリース事業者向け 適正化のための措置」
重要事項説明で説明すべき事項、誇大広告・不当勧誘の例、勧誘者、1週間程度の期間国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和5年3月31日改正)
管理受託の重要事項説明、分別管理、定期報告国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「管理業者の業務」
サブリース規制が戸数にかかわらずかかること、減額請求時の説明国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「よくある質問」
賃貸住宅管理業法の条文賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(国土交通省掲載PDF)
契約終了時の地位の承継国土交通省「特定賃貸借標準契約書」・「特定賃貸借契約 重要事項説明書」
オーナー向けの注意喚起国土交通省 サブリースの注意喚起リーフレット(賃貸住宅経営をお考えの方)
借地借家法28条(正当事由)・32条(借賃増減請求)e-Gov法令検索「借地借家法」
民法606条(修繕義務)・651条(委任の解除)e-Gov法令検索「民法」

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