賃貸管理 読了 16分

賃貸の自主管理と管理委託の違い|費用・手間・法令上の扱いを比較表で整理(2026年版)

賃貸住宅の管理は、自主管理と管理委託に分かれます。国土交通省の家主調査では、全て自ら管理が18.5%、委託が81.5%。費用・手間・管理業法上の扱い・法定点検の義務者の4点を比較表で整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
自主管理と管理委託の違い|どっちを選ぶ?(2026年版)
目次

国土交通省が家主に聞いた調査では、全て自ら管理している人は18.5%、入居者募集から契約などを業者に委託している人は81.5%でした。委託している人が多いのは「手間」ではなく、滞納の督促・退去の精算・夜間の連絡という、時間を選べない仕事が管理の中にあるためです。一方で、建物の法定点検と報告の義務は、委託してもオーナーから消えません。この記事では、費用・手間・法令上の扱い・向いている人の4点を比較表にして、分かれ目がどこにあるかを整理します。

結論(90秒で読める)

  • 国交省の家主調査では、全て自ら管理している人が18.5%、業者に委託している人が81.5%でした。ただし委託の中身は一様ではなく、「全て業者に委託」は28.2%で、「募集から契約までを委託し、それ以外は自ら管理」も25.5%あります。全部か全部でないかの二択ではありません。
  • 費用は、同じ調査の「管理のための費用は家賃収入のどの程度か」という設問で、5〜10%未満が38.8%で最多でした。5%未満が23.4%、10〜20%未満が20.4%、払っていないが4.0%です。この設問は管理報酬に限らず管理のための費用全体を聞いているので、委託料そのものの相場ではありません。
  • 法令上の扱いは、委託した時点で相手方が賃貸住宅管理業者になり、オーナーは法律上の説明と報告を受ける立場になります。管理戸数200戸以上の業者は登録が義務で、締結前の重要事項説明、家賃の分別管理、年1回以上の定期報告などが課されます。自ら管理する場合は「委託を受けて」行うものではないため、この法律の管理業者には当たりません。
  • 消防用設備の点検報告や受水槽の検査は、委託してもオーナーの立場から消えません。消防法の報告義務者は所有者・管理者・占有者で、委託は「誰が実際に動くか」を決めるだけです。契約書に書いていなければ、どちらもやらないまま期限が過ぎます。
  • 分かれ目は、戸数ではなく「時間を選べない仕事を自分で受けられるか」です。物件が近く、戸数が少なく、平日の日中に連絡を取れるなら自主管理が成り立ちます。どれか1つでも欠けるなら、その部分だけを委託する形が現実的です。

どちらを選んでいる人が多いか

国土交通省は令和元年7月31日から8月2日に、賃貸住宅のオーナー414名へアンケートを行っています。管理の形態を聞いた設問(有効回答259名)の内訳は次のとおりです。

管理の形態割合
業者に任せず、全て自ら管理している18.5%
全て業者に委託している28.2%
入居者募集から契約までを委託し、それ以外の管理も一部委託している25.9%
入居者募集から契約までを委託し、それ以外は自ら管理している25.5%
その他の委託形態1.9%

読み取れるのは、委託している8割のうち、半分以上は「一部だけ委託」だということです。募集と契約は委託し、入居後は自分で見るという形が25.5%あります。自主管理か管理委託かは、0か100かではなく、どの仕事を渡すかの問題として扱うほうが実際に近いと言えます。

同じ調査で、委託している業務を聞いた結果は次のとおりでした。

委託している業務割合
入居時の契約支援81.0%
賃貸借契約の更新79.1%
敷金精算・原状回復70.6%
入居者からの苦情対応69.2%
建物・設備の維持管理68.7%
家賃督促64.9%
清掃61.1%

いちばん高いのは契約まわりで、いちばん低いのは清掃です。自分でできる作業ほど手元に残り、書面と期限が絡む仕事ほど渡されているという順番になっています。

比較表|自主管理と管理委託

比べる軸自主管理管理委託
毎月の費用 管理報酬は発生しません。募集の広告料、修繕の手配、法定点検の外注費は、そのつど自分で払います。国交省調査で「管理費用は払っていない」と答えた人は4.0%でした 契約で定めた管理報酬を毎月払います。国交省調査の「管理のための費用は家賃収入のどの程度か」では、5〜10%未満が38.8%で最多、5%未満が23.4%、10〜20%未満が20.4%でした(管理報酬に限らない費用全体の設問)
手間(誰が動くか) 入居者からの連絡、家賃の確認、滞納の督促、退去の立会い、業者の手配を、すべてオーナーが受けます。発生する時刻を選べません 契約で決めた範囲を管理会社が受けます。範囲外(大規模修繕の意思決定、賃料の改定、明け渡しの判断など)はオーナーに戻ります
賃貸住宅管理業法の扱い 「委託を受けて」管理業務を行う事業ではないため、同法の賃貸住宅管理業者には当たりません。登録、業務管理者の選任、分別管理、定期報告の仕組みはありません 受託する側が賃貸住宅管理業者になります。管理戸数200戸以上は国土交通大臣の登録が義務(3条)。オーナーは締結前の重要事項説明(13条)、契約時の書面交付(14条)、家賃の分別管理(16条)、年1回以上の定期報告(20条)を受ける立場になります
家賃の受け取り オーナーの口座へ直接入ります。入金の確認と記録は自分で行います 管理会社がいったん受け取り、報酬を差し引いて送金する形が一般的です。管理業法16条で、受け取った家賃は業者自身の財産と分けて管理することが義務づけられています
消防用設備の点検・報告 機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回。共同住宅は非特定防火対象物なので、報告は3年に1回です。オーナーが所有者として報告します 点検も報告も委託できますが、報告義務者は所有者・管理者・占有者なので、オーナーの立場は変わりません。どちらが報告するかを契約で決めておく必要があります
受水槽(簡易専用水道) 有効容量が10立方メートルを超える受水槽があれば、年1回以上の清掃と、登録検査機関による年1回以上の検査が必要です。設置者の義務です 手配は委託できます。義務そのものは設置者に残るため、実施記録をオーナー側でも持っておく形になります
退去時の原状回復 民法621条で、通常の使用による損耗と経年変化は借主の負担から除かれます。この線引きをオーナー自身が入居者に説明します 線引きの説明と精算を管理会社が行います。判断の基準(負担割合、特約の有無)を契約と賃貸借契約書で揃えておかないと、説明が食い違います
向いている人 物件が自宅の近くにあり、戸数が少なく、平日の日中に連絡を取れる人 物件が遠い、戸数が多い、本業があって日中動けない、または滞納・明け渡しの手続きを自分で進める想定がない人

自主管理が向いている人・管理委託が向いている人

自主管理が成り立ちやすい条件

  • 物件まで30分以内で行ける。水漏れ、鍵の紛失、設備の故障は、現地に行かないと終わらないものがあります。
  • 戸数が1棟数戸から十数戸までで、入れ替わりが少ない。退去と募集が重なる回数が、そのまま手間の量になります。
  • 平日の日中に電話とメールを取れる。業者、保証会社、自治体の窓口は、いずれも平日の日中しか動きません。
  • 家賃の入金確認を毎月決まった日に行う習慣がある。滞納は、気づくのが早いほど回収しやすくなります。
  • 法定点検の期限を自分で管理できる。消防は3年に1回の報告なので、忘れたことに気づく機会がありません。

管理委託を選ぶ人が挙げる条件

  • 物件が遠方にある、または複数の市区町村にまたがっている。
  • 本業があり、日中に電話を取れない。国交省調査で委託率が高いのは契約支援81.0%、更新79.1%と、期限が決まっていて日中にしか進まない仕事でした。
  • 滞納の督促や明け渡しの手続きを自分で進める想定がない。督促の委託率は64.9%です。
  • 相続や共有で、所有者が複数いる。連絡の窓口を1つにしたいという理由が入ります。
  • 入居者とのやりとりを記録として残しておきたい。管理業法20条の定期報告は、少なくとも年1回以上オーナーへ行うことが義務づけられています。

判断の分かれ目

比較表の軸を一本にまとめると、次の形になります。

  • 物件が近く、戸数が少なく、平日の日中に連絡を取れる——この3つが揃っているなら、自主管理が成り立ちます。1つでも欠けるなら、欠けている部分の仕事だけを委託する形が現実的です。
  • 滞納・明け渡し・原状回復のもめごとを、自分で相手と話す気があるか。ここが「ない」なら、戸数が少なくても委託する理由になります。委託率が高い業務は、どれも相手と話す必要があるものでした。
  • 法定点検の期限を、自分の手帳で3年先まで管理できるか。できないなら、点検と報告だけを切り出して委託する選択もあります。全部渡す必要はありません。

なお、どちらが得かは物件の立地、戸数、オーナー自身の時間の値段で変わります。この記事は費用と義務の置き場所を並べるところまでで、選ぶのはオーナー自身です。

委託しても消えない、オーナー側の義務

管理委託の説明でいちばん誤解されやすいのが、ここです。委託は「誰が実際に動くか」を決める契約で、法律が誰に義務を課しているかは変わりません。

義務誰に課されているか委託するとどうなるか
消防用設備等の点検結果の報告(消防法17条の3の3)所有者・管理者・占有者管理会社が管理者として報告できます。オーナーが所有者であることは変わらないので、契約でどちらが報告するかを決めます
簡易専用水道の清掃と検査(水道法34条の2)設置者手配は委託できます。義務は設置者に残ります
貸室の修繕(民法606条1項)賃貸人(オーナー)手配は委託できます。費用を負担するのはオーナーです。通知しても相当期間内に修繕されない場合や急迫の事情があるときは、借主が自ら修繕できます(607条の2)
原状回復の負担区分(民法621条)賃貸人と賃借人の関係説明と精算は委託できます。通常の損耗と経年変化を借主負担にできないという線は動きません

委託契約を結ぶときに確認しておくと食い違いが減るのは、この表の「委託するとどうなるか」の欄です。点検の実施は委託されているが報告は委託されていないという書き方になっていることがあり、その場合は期限を自分で持つことになります。

委託先を選ぶときの手がかりとして、管理業法の登録は国交省が公表しています。令和6年12月31日現在の登録は9,786件で、そのうち約3割は登録義務のない200戸未満の事業者でした。義務がなくても登録している会社がそれだけあるということで、登録の有無は規模を示す情報ではありません。業務管理者の有資格者は同日時点で101,584名です。

委託する側になると、毎月の入金の記録とオーナーへの報告が、管理の中身そのものになります。ウルスタくんでは、物件と入居者を登録すると更新が近い契約が一覧に出て、毎月の入金の記録からオーナーへの送金明細まで作れます(小規模の管理会社向けの賃貸管理ソフト)。

よくある質問

Q1. 自主管理だと賃貸住宅管理業法は関係ないのですか

同法の賃貸住宅管理業は「委託を受けて」管理業務を行う事業なので、オーナーが自分の物件を自分で管理することは当たりません。登録や業務管理者の選任は必要ありません。ただし消防法や水道法の点検・報告、民法上の修繕義務は、管理業法とは別にオーナーに課されています。

Q2. 200戸未満の会社に委託しても大丈夫ですか

管理戸数200戸未満の事業者は登録が任意です。国交省の公表では、令和6年12月31日現在の登録9,786件のうち約3割が200戸未満で、義務がなくても登録しています。登録していない場合は管理業法上の重要事項説明や定期報告の義務がかからないため、同じ内容を管理受託契約書に書いてもらうかどうかが確認点になります。

Q3. 一部だけ委託することはできますか

できます。国交省の家主調査では「入居者募集から契約までを委託し、それ以外は自ら管理している」が25.5%でした。委託する範囲は契約で決めるので、募集だけ、点検と報告だけ、督促だけという形も取れます。範囲を狭くするほど、残った部分の期限をオーナー自身が管理することになります。

Q4. 管理委託費はいくらが普通ですか

一次情報で確認できるのは、国交省の家主調査(令和元年)の「サブリース以外の賃貸住宅の管理のための費用は、家賃収入のどの程度に相当しますか」という設問で、5〜10%未満が38.8%で最多だったという分布です。この設問は管理報酬だけでなく管理のための費用全体を聞いているので、委託料の相場として読むことはできません。報酬の額は管理受託契約書の記載で確認してください。

Q5. 委託したあと、管理会社から何も報告が来ません

管理業法20条で、賃貸住宅管理業者は委託者に対して定期的に業務の実施状況を報告する義務があり、国交省は少なくとも年1回以上としています。登録している事業者であれば、報告が来ないことは義務に反します。登録していない200戸未満の事業者の場合は、契約書に報告の頻度が書かれているかを確認することになります。

出典(本文で参照している資料)

本稿で使った内容資料
管理形態の割合(自ら管理18.5% / 委託81.5%とその内訳)、管理のための費用の分布(5〜10%未満38.8%ほか)、調査の実施時期と有効回答数国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)」
委託している業務の割合(契約支援81.0%、更新79.1%、敷金精算・原状回復70.6%、苦情対応69.2%、建物・設備の維持管理68.7%、家賃督促64.9%、清掃61.1%)国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査 結果概要」
200戸未満は任意登録、登録と各義務の位置づけ国土交通省 賃貸住宅管理業ポータルサイト「制度解説」
登録(3条)、業務管理者の選任(12条)、締結前の重要事項説明(13条)、契約時の書面交付(14条)、分別管理(16条)、定期報告(20条)の条番号国土交通省「賃貸住宅管理業法 制度概要ハンドブック」
定期報告は少なくとも年1回以上、管理業者に課される義務の一覧国土交通省 賃貸住宅管理業ポータルサイト「管理業者の業務」
登録9,786件(令和6年12月31日現在)、うち約3割が200戸未満、業務管理者101,584名国土交通省「賃貸住宅管理業法の施行状況について」
機器点検6か月に1回・総合点検1年に1回、共同住宅は非特定防火対象物で報告3年に1回、報告義務者は所有者・管理者・占有者東京消防庁「消防用設備等点検報告制度(消防法第17条の3の3)」
簡易専用水道は受水槽の有効容量10立方メートル超、清掃は年1回以上、登録検査機関の検査は年1回以上名古屋市「簡易専用水道」
民法606条1項(賃貸人の修繕義務)、607条の2(賃借人による修繕)、621条(原状回復義務。経年変化と通常損耗を除く)東京都住宅政策本部「賃貸住宅の修繕と原状回復」資料

この記事は2026年10月7日時点の情報です。国土交通省の家主調査は令和元年に実施されたもので、それ以降の同種の全国調査は公表されていません。割合は調査時点の値として読んでください。

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