2026年10月6日、東証上場の不動産会社である株式会社デュアルタップが、宅地建物取引業免許の取消処分を受けたと開示しました。報道によると、理由は社外取締役の1人が刑に処せられ、宅建業法の欠格事由に当たったことです。役員が拘禁刑以上の刑を受けると、本人が宅建業に関わっていなくても、会社の免許は行政庁の裁量なく取り消されます。会社の大きさは関係ありません。この記事では、条文の仕組み、刑の種類ごとの扱い、取り消された後にできることを整理し、中小の不動産会社が今週できる確認を5つにまとめます。
結論(90秒で読める)
- 役員のうち1人でも欠格事由に当たると、会社の免許は必ず取り消されます。宅建業法66条1項3号は「取り消さなければならない」と定めていて、行政庁が情状を見て軽くする余地はありません。
- 「役員」には社外取締役や非常勤の取締役も入ります。相談役や顧問でも、取締役と同じくらいの支配力があれば役員として扱われます(同法5条1項2号のかっこ書き)。
- 欠格になるのは「拘禁刑以上の刑」です。執行猶予がついていても、猶予の期間中は欠格です。罰金は、宅建業法違反や傷害・暴行など決まった罪のときだけ欠格になります。
- 交通事故でも起きます。過失運転致傷の法定刑には拘禁刑が含まれるので、執行猶予つきの判決でも役員なら会社の免許に響きます。2022年には、速度超過の執行猶予つき判決を会社に伝えていなかった元役員が原因で、上場グループの会社が登録を自主廃業しています。
- 取り消されても、すでに結んだ契約は最後まで進められます(同法76条)。新しい取引はできません。欠格の役員がいなくなれば免許をもう一度申請できますが、審査が終わるまでは営業できず、免許番号は「(1)」に戻ります。
- 今週できるのは、役員と顧問の一覧を作り、刑事手続きや判決を会社にすぐ伝えるルールを決めることです。賃貸住宅管理業の登録にも同じ欠格の規定があるので、同じ表で確かめられます。
何が開示されたか
株式会社デュアルタップは2026年10月6日、適時開示「宅地建物取引業免許の取消処分に関するお知らせ」を出しました。同社のトップページの「IRニュース」に、この日付と表題で掲載されています。
報道によると、処分の理由は、同社の社外取締役の1人が刑に処せられ、宅建業法の欠格事由に当たったことです。同社は投資用マンションの企画・分譲と賃貸管理を手がけていて、分譲は宅建業の免許が無ければ続けられません。
この記事では、開示の本文にしか書かれていないこと(処分をした行政庁、刑の内容、業績への影響、免許を取り直す時期)は書いていません。開示の本文は、同社のIRページで確認してください。ここから先は、会社の大小に関係なく条文どおりに起きる仕組みの話です。
| 日付 | 何があったか | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 2026年10月6日 | 株式会社デュアルタップが「宅地建物取引業免許の取消処分に関するお知らせ」を適時開示 | 同社トップページの「IRニュース」 |
| 2026年10月6日以降 | 理由は社外取締役の刑による欠格と報道 | 報道(開示本文は同社IRページ) |
| 未定 | 免許の取り直し、業績への影響 | まだ分かっていません |
なぜ役員1人の刑で会社の免許がなくなるのか
仕組みは、宅建業法の3つの条文がつながってできています。
1つ目は、免許を受けられない人の一覧(5条1項)です。このうち5号が「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者」です。2025年6月から、懲役と禁錮は「拘禁刑」にまとめられました。
2つ目は、法人への広がり(5条1項12号)です。「法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに第一号から第十号までのいずれかに該当する者のあるもの」も免許を受けられません。会社そのものに何の問題がなくても、役員のうち1人が5号に当たれば、会社が欠格になります。政令で定める使用人とは、支店長や営業所長のように、事務所の代表として契約を結ぶ権限を持つ人のことです。
3つ目は、免許を受けた後の取消し(66条1項3号)です。「法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに第五条第一項第一号から第七号まで又は第十号のいずれかに該当する者があるに至つたとき」は、国土交通大臣または都道府県知事は「当該免許を取り消さなければならない」と定めています。業務停止のように日数を選べる処分ではなく、取り消すかどうかを選ぶ余地もありません。
「役員」の範囲は5条1項2号のかっこ書きで決まっていて、「業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」に加えて、相談役や顧問など名前を問わず、取締役と同じくらい以上の支配力を持つと認められる人も含みます。社外取締役は取締役なので、当然に入ります。業務に口を出していない非常勤の取締役でも同じです。
刑の種類で分かれる|拘禁刑・執行猶予・罰金
「刑事事件で有罪になった」だけでは、欠格かどうかは決まりません。刑の種類で扱いが分かれます。
| 刑の種類 | 宅建業法の欠格に当たるか | いつまで | 条文 |
|---|---|---|---|
| 拘禁刑(実刑) | 当たる | 刑の執行を終えた日から5年 | 5条1項5号 |
| 拘禁刑(執行猶予つき) | 当たる | 猶予の期間中。期間が満了すると刑の言渡しは効力を失い(刑法27条)、欠格でなくなります | 5条1項5号 |
| 罰金(宅建業法違反、暴力団対策法違反、傷害・暴行・脅迫・背任などの罪) | 当たる | 刑の執行を終えた日から5年 | 5条1項6号 |
| 罰金(上の罪以外。道路交通法違反、過失運転致傷など) | 当たらない | — | — |
| 科料、反則金 | 当たらない | — | — |
見落としやすいのは2行目です。執行猶予がついて刑務所に入らなくても、猶予の期間中は「拘禁刑に処せられた者」です。本人も周りも「実刑ではなかったから大丈夫」と考えがちですが、宅建業法の上では欠格になります。
交通事故でも起きる|2022年の前例
役員の刑というと会社の不正を思い浮かべますが、実際には交通事故や交通違反が入り口になることがあります。
自動車の運転で人にけがをさせたときの過失運転致傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)は、法定刑が「七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」です。罰金で終われば欠格ではありませんが、拘禁刑が選ばれれば、執行猶予がついていても欠格になります。
前例があります。株式会社レーベンコミュニティ(当時のタカラレーベンのグループ会社)は2022年10月31日、元非常勤役員が道路交通法違反(速度超過)で執行猶予つきの有罪判決を受けていたのに会社へ報告しておらず、それが登録の欠格事由に当たったとして、マンション管理業登録などの許認可を自主的に廃業したと公表しました。判明は2022年9月15日、その役員の辞任は翌16日で、再申請の準備を進めるとしていました。
この前例で分かるのは、欠格は会社の業務と関係のない私生活の出来事からも起き、本人が言わなければ会社は気づけないということです。
取り消されたら何ができて、何ができないか
| 項目 | 取消し後の扱い | 条文 |
|---|---|---|
| すでに結んだ契約 | 取引を最後まで終える目的の範囲では、なお宅建業者とみなされます。引渡しや決済は進められます | 76条 |
| 新しい売買・媒介・代理 | できません。免許なしで宅建業を営むことになります | 12条 |
| もう一度の申請 | 欠格の役員がいなくなれば申請できます。取消し後5年の申請制限(5条1項2号)は、不正な手段で免許を受けた場合や業務停止に違反した場合など(66条1項8号・9号)の取消しだけが対象です | 5条1項2号 |
| 申請から免許まで | 審査が終わるまでは営業できません。新しい免許なので、免許番号のかっこ内の更新回数は「(1)」に戻ります | 3条 |
| 賃貸住宅管理業の登録 | 賃貸住宅管理業法にも、拘禁刑以上の刑の欠格(6条1項4号)と、役員に欠格者がいる法人の欠格(同8号)があります。宅建業とは別に確認が必要です | 賃貸住宅管理業法6条 |
免許番号のかっこ内の数字は、取引の相手が「この会社は何年営業しているか」を見る目安にもなっています。取消しは、営業できない期間だけでなく、この見た目の信用にも響きます。
中小の不動産会社が今週できる5つ
欠格の多くは、本人が会社に伝えないことで見つかるのが遅れます。仕組みで防げるのは「早く知ること」です。
1. 役員と「準ずる者」の一覧を作る
登記簿の取締役だけでなく、非常勤の取締役、社外取締役、相談役・顧問のうち経営に強い影響を持つ人、支店長などの政令で定める使用人まで、1枚の表にします。宅建業の免許申請や変更届に書いた役員の氏名と照らし合わせて、漏れが無いかを見ます。
2. 刑事手続きを会社にすぐ伝えるルールを決める
逮捕・起訴・判決のどの段階でも、役員本人が会社に連絡するルールを、就任時の誓約書と社内規程に入れます。交通事故や交通違反も対象にすることを、はっきり書いておきます。2022年の前例は、本人が伝えなかったことで起きています。
3. 年に1回、全員に確認する
決算や株主総会の時期など、毎年決まった時期に、一覧の全員へ「拘禁刑以上の刑、または欠格の対象になる罪の罰金を受けていないか」を書面で確認します。社外の人ほど、会社の許認可への影響を知らないことがあります。
4. 役員が変わったら30日以内に届け出る
役員の氏名は免許の記載事項で(4条1項2号)、変わったときは30日以内に変更の届出が必要です(9条)。社外取締役の交代も対象です。届出が遅れていると、いざというときに誰が役員だったかの説明に手間がかかります。
5. 疑いが出たら、先に免許行政庁へ相談する
欠格に当たるかもしれないと分かったら、自己判断で動く前に、免許を出した国土交通省の地方整備局または都道府県の担当課に相談します。あわせて、宅建業以外の登録(賃貸住宅管理業、マンション管理業など)も同じ一覧で確認します。登録ごとに欠格の規定が別にあるためです。
まだ分かっていないこと
- 今回の処分をした行政庁(国土交通大臣か都道府県知事か)と、処分の日付。開示の本文で確認してください。
- 同社が免許を取り直す時期と、それまでの業績への影響。
- 同社の賃貸管理の業務(賃貸住宅管理業の登録)への影響の有無。
この記事では、決まっていないことを予想では書きません。新しい発表があれば、出典を確かめてから追記します。
よくある質問
Q1. 社外取締役は業務に関わっていないのに、なぜ会社が欠格になるのですか
宅建業法5条1項12号が、役員の中に欠格者が1人でもいれば法人を欠格としているためです。役員が業務に関わっているかどうかは問われません。社外取締役も取締役なので、役員に入ります。
Q2. 執行猶予がつけば大丈夫ではないのですか
猶予の期間中は欠格です。拘禁刑に処せられたことに変わりはないためです。猶予の期間が取り消されずに満了すると、刑の言渡しは効力を失うので(刑法27条)、その後は欠格でなくなります。
Q3. 交通違反の罰金でも欠格になりますか
なりません。罰金で欠格になるのは、宅建業法違反や暴力団対策法違反、傷害・暴行・脅迫・背任などの決まった罪に限られます(5条1項6号)。ただし、交通事故や悪質な違反で拘禁刑が選ばれると、執行猶予つきでも欠格になります。
Q4. 取消し後に結んでいた売買契約はどうなりますか
取引を最後まで終える目的の範囲では、なお宅建業者とみなされるので(76条)、引渡しや決済は進められます。新しい契約を結ぶことはできません。
出典(本文で参照している資料)
条文は、2026年10月7日に e-Gov 法令検索の法令データで確認しました。上場企業の開示は、同社のIRニュースに掲載されている表題と日付を確認しています。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 2026年10月6日の適時開示の表題と日付 | 株式会社デュアルタップ(トップページの「IRニュース」) |
| 免許の基準(5条1項2号・5号・6号・12号)、免許の記載事項(4条)、変更の届出(9条)、免許の有効期間(3条)、無免許事業の禁止(12条)、免許の取消し(66条1項)、取消し後の取引の結了(76条) | 宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索) |
| 賃貸住宅管理業の登録の拒否(6条1項4号・8号) | 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(e-Gov 法令検索) |
| 過失運転致傷罪の法定刑(5条) | 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(e-Gov 法令検索) |
| 執行猶予期間の経過の効果(27条) | 刑法(e-Gov 法令検索) |
| 2022年の前例(元非常勤役員の速度超過による執行猶予つき判決、登録の自主廃業、判明日・辞任日) | 株式会社レーベンコミュニティ「当社におけるマンション管理業登録及びその他の許認可について」(2022年10月31日) |
この記事は2026年10月7日時点の情報です。