賃貸管理 読了 28分

総務省統計局は2026年9月20日、65歳以上人口3624万人(29.6%・過去最高)、65歳以上の就業者943万人(22年連続増・過去最多)、65〜69歳の就業率54.5%、非正規76.1%を公表した|就業収入は期限付き、年金は終身。65歳以上の申込は「年金だけになっても払える家賃か」で見る。賃貸管理会社の審査の型と今週やる5つ

総務省統計局は2026年9月20日、敬老の日にちなんだ統計トピックスを公表しました。65歳以上人口は3624万人で総人口の29.6%と過去最高、65歳以上の就業者は943万人で22年連続の増加、65〜69歳の就業率は54.5%、65歳以上の雇用者の76.1%が非正規です。不動産業・物品賃貸業は就業者の29.0%が65歳以上で、農業・林業に次ぐ高さでした。賃貸管理会社にとってこの数字は、65歳以上の入居申込を「年金だけ」で見るのも「今の給料」で見るのも外れることを意味します。就業収入は高年齢者雇用安定法の70歳までの努力義務で切れる期限付き、年金は終身。普通借家は収入が減っても更新を断れない(借地借家法28条)ので、「年金だけになっても払える家賃か」を確かめられるのは入居審査の1回だけです。年金額改定通知書の見方、令和8年度の年金額(老齢基礎年金 満額 月70,608円)から出す家賃負担率、契約の設計、オーナーへの説明、今週やる5つ、報告書に足す2行までをまとめます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
65歳以上の就業者943万人|「年金だけ」の入居審査を今週やめる
目次

総務省統計局は2026年9月20日、敬老の日(9月21日)にちなんだ統計トピックスNo.149「統計からみた我が国の高齢者」を公表しました。65歳以上人口は3624万人で総人口の29.6%と過去最高、65歳以上の就業者は943万人で22年連続の増加、65〜69歳の就業率は54.5%、65歳以上の雇用者の76.1%が非正規です。毎年この時期に出る資料ですが、今年の数字を賃貸管理の目で読むと、ひとつの結論が出ます。65歳以上の入居申込を「年金だけ」で審査するのも、「今の給料」で審査するのも、どちらも外れるということです。65〜69歳は2人に1人が働いていて、その4人に3人がパートや契約社員です。就業収入は高年齢者雇用安定法が定める70歳までの努力義務で切れる期限付きの収入、年金は終身の収入。普通借家は収入が減っても更新を断れないので、「年金だけになっても払える家賃か」を確かめられるのは入居審査の1回だけです。本稿は、9月20日の数字、年金額改定通知書の見方、令和8年度の年金額から出す家賃負担率、契約の設計、オーナーへの説明の雛形、今週やる5つ、報告書に足す2行までをまとめます。

結論(90秒で読める)

  • 65歳以上人口は3624万人(総人口の29.6%)で過去最高。75歳以上は2168万人で前年から43万人増え、80歳以上は1288万人で3万人減りました。増えているのは75〜79歳です。
  • 65歳以上の就業者は943万人で、就業者総数6828万人の13.8%。およそ7人に1人が65歳以上です。就業率は65〜69歳が54.5%、70〜74歳が36.2%、75歳以上が12.6%で、いずれも過去最高です。
  • 65歳以上の雇用者(役員を除く)586万人のうち、正規は140万人(23.9%)、非正規は446万人(76.1%)。うちパート・アルバイトが309万人です。10年前に比べて非正規は178万人増えました。
  • 各産業の就業者に占める65歳以上の割合は、農業・林業の50.6%に次いで不動産業・物品賃貸業が29.0%。これは入居者の話であると同時に、管理会社の自社の話です。
  • 65歳以上の申込を「年金だけ」で見ると、働いている過半数を落とします。「今の給料」で見ると、その給料が70歳前後で切れることを見落とします。就業収入は期限付き、年金は終身。審査は「年金だけになっても払える家賃か」を軸にし、就業収入は上乗せとして見ます。
  • 令和8年度の老齢基礎年金は満額で月70,608円、標準的な夫婦の年金額は月237,279円です。年金額は6月に届く年金額改定通知書で確かめられ、ねんきんネットからPDFでも出せます。
  • 今週やるのは、審査書式に年金額の欄を足す、就業収入の期限(契約期間・定年)を聞く欄を足す、管理戸数のうち65歳以上の契約者を数える、更新が近い戸の収入を確かめる、報告書に2行を足す、の5つです。

9月20日に公表された数字|3624万人・29.6%・943万人

総務省統計局は毎年、敬老の日の直前に「統計からみた我が国の高齢者」を出します。今年は9月20日の公表で、人口推計(2026年9月15日現在)と労働力調査(2025年)から高齢者の人口と就業をまとめたものです。管理会社が押さえる数字を表にします。

項目2026年(9月15日現在)前年との差読み方
総人口1億2262万人▲59万人人口は減っている。65歳以上は増えている
65歳以上3624万人(29.6%)+2万人(+0.2ポイント)過去最高。1985年に10%、2005年に20%を超え、2026年に29.6%
70歳以上2911万人(23.7%)+8万人4人に1人に近づいた
75歳以上2168万人(17.7%)+43万人(+0.5ポイント)今年いちばん増えた層。第1次ベビーブーム世代がすべて75歳以上になった
80歳以上1288万人(10.5%)▲3万人減った。増えているのは75〜79歳
男女の差男性1571万人(26.3%)・女性2054万人(32.6%)65歳以上では女性100人に男性76.5人。単身の高齢入居者は女性のほうが多い前提で考える
将来(社人研 中位推計)2040年 34.8%・2050年 37.1%第2次ベビーブーム世代(1971〜1974年生まれ)が65歳以上になる2040年に3人に1人を超える

人口の表で管理会社が見るのは「75歳以上が43万人増えて、80歳以上が3万人減った」の行です。今年増えたのは75〜79歳で、この層は見守りの運用が要る年齢に入りかけている一方、就業率はまだ12.6%あります。「高齢者」と一括りにせず、65〜69歳、70〜74歳、75歳以上で分けて見るのが、この資料の読み方です。

65〜69歳は2人に1人が働き、4人に3人が非正規

就業の側の数字は、入居審査に直接つながります。2025年の65歳以上の就業者は943万人で、2004年以降22年連続で増え、過去最多です。就業者総数6828万人に占める割合は13.8%で、およそ7人に1人が65歳以上です。年齢階級別の就業率と、雇用形態の内訳を並べます。

年齢階級就業率(2025年)役員を除く雇用者のうち正規同 非正規審査で前提にすること
65〜69歳54.5%76万人(10年前比+15万人)213万人(+32万人)働いているほうが多数。ただし4人に3人が非正規で、契約期間は1年以内が多い
70〜74歳36.2%37万人(+16万人)142万人(+76万人)3人に1人が働いている。10年前から非正規が倍増した層
75歳以上12.6%27万人(+15万人)91万人(+71万人)8人に1人が働いている。就業収入を前提にした審査はここでは成り立たない
65歳以上 計26.0%140万人(23.9%)446万人(76.1%)非正規のうちパート・アルバイトが309万人(52.7%)

この表から言えるのは三つです。一つ目、65〜69歳の申込者が「働いています」と言うのは例外ではなく多数派だということ。二つ目、その仕事の4人に3人は非正規で、雇用契約に期限があること。三つ目、75歳を超えると働いている人は8人に1人になり、就業収入を前提にした審査がそこで成り立たなくなることです。従業上の地位で見ると、65歳以上の就業者943万人のうち役員を除く雇用者が586万人(62.7%)、自営業主・家族従業者が239万人(25.6%)、会社などの役員が109万人(11.7%)です。自営業と役員を合わせた4人に1人強は、雇用契約の期限という考え方がそのまま当てはまらないので、確定申告書や役員報酬の額で別に見ます。

不動産業は就業者の29.0%が65歳以上|自社の話でもある

資料の最後に、産業別の数字があります。65歳以上の就業者数は「卸売業,小売業」が131万人で最も多く、「医療,福祉」122万人、「サービス業(他に分類されないもの)」108万人、「農業,林業」88万人と続きます。各産業の就業者に占める65歳以上の割合では、「農業,林業」が50.6%で最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が29.0%、「サービス業(他に分類されないもの)」22.4%、「生活関連サービス業,娯楽業」18.7%です。

不動産業で働く人の10人に3人が65歳以上。これは中小の管理会社なら実感に近い数字だと思います。宅建士の資格を持って定年後に仲介に入った人、自社物件を持つ役員、パートで内見と鍵の受け渡しを担う人。この数字を「うちの会社も高齢化している」と読むだけでは足りません。65歳以上の申込者の収入を、65歳以上の担当者が審査しているのが、この業界の現場です。だからこそ、審査の基準を担当者の感覚に置かず、書面で確かめる型にしておく必要があります。担当者が「自分も年金と給料の両方で暮らしているから分かる」と通すのも、「年金だけでは無理でしょう」と落とすのも、どちらも基準ではなく感覚です。

「年金だけ」でも「今の給料」でも外れる理由|収入の期限

65歳以上の申込で、収入の見方は大きく二通りに分かれます。年金だけを見る会社と、今の収入の合計を見る会社です。どちらにも外れがあります。

年金だけを見ると、65〜69歳の過半数が持っている就業収入を無視することになります。月70,608円の老齢基礎年金だけで審査すれば、家賃負担率30%として2万円強の部屋しか通らず、実際には給料と合わせて家賃を払える人を落とします。一方、今の収入の合計を見ると、就業収入がいつまで続くかを見落とします。高年齢者雇用安定法は、事業主に対して65歳までは雇用確保措置を義務(9条1項:定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれか)とし、65歳から70歳までは就業確保措置を努力義務(10条の2第1項)としています。つまり制度上、70歳までの就業は「確保するよう努めなければならない」であって、70歳を超えて続く保証はどこにもありません。統計もそれを映しています。就業率は65〜69歳の54.5%から70〜74歳の36.2%へ、75歳以上の12.6%へと段階的に下がります。

整理すると、就業収入は期限付きの収入、年金は終身の収入です。66歳で入居した人の就業収入は、普通借家で2回目の更新を迎える70歳前後に切れている可能性が高い。その時点で家賃を払えるかどうかは、年金の額で決まります。だから審査の軸は「年金だけになっても払える家賃か」に置き、就業収入は入居当初の余裕として上乗せで見る。これが本稿の結論です。

年金額改定通知書で見る|令和8年度の年金額と家賃負担率

年金の額は申込者の申告ではなく、書面で確かめます。日本年金機構は毎年6月、4月分からの年金額を知らせる「年金額改定通知書」と、振込額を知らせる「年金振込通知書」を受給者全員に送ります。令和8年分は6月3日から10日にかけて発送され、ねんきんネットに登録している人は画面からPDFで保存・印刷できます。申込者に「6月に届いたはがき」か「ねんきんネットのPDF」を求めれば、年金の額は1枚で確かめられます。

令和8年度の年金額は、令和7年度から国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引上げです。日本年金機構が示している例と、そこから本稿が計算した家賃の目安を表にします。

年金の型月額(令和8年度)家賃負担率25%家賃負担率30%備考
老齢基礎年金のみ(満額・1人)70,608円17,652円21,182円昭和31年4月1日以前生まれは70,408円。自営業だった人の多くはここに近い
厚生年金あり・単身(本稿の計算)166,671円41,668円50,001円夫婦の標準的な年金額から基礎年金1人分を引いた本稿の計算。資料にこの数字は無い
厚生年金あり・夫婦(標準的な年金額)237,279円59,320円71,184円平均標準報酬45.5万円で40年就業した夫と、基礎年金の妻の2人分

家賃負担率の25%・30%は慣行上の目安で、法律の数字ではありません。表の意味は、基礎年金だけの単身者と、厚生年金のある夫婦とでは、年金だけで払える家賃が3倍以上違うということです。「65歳以上だから年金は少ない」でも「年金があるから大丈夫」でもなく、通知書の額で見る。それだけで、感覚の審査から書面の審査に変わります。

もう一つ、働いている申込者で見落としやすいのが在職老齢年金です。令和8年4月から、賃金と老齢厚生年金の合計が月65万円(令和7年度までは51万円)を超えると年金の一部が支給停止になる仕組みに変わりました。役員報酬が高い人は年金額改定通知書に支給停止額が出ているので、「年金だけになったら」の額は通知書の年金額ではなく、支給停止が解けた後の額で見ます。通知書の「支給停止額」の欄に金額があれば、その分は退職後に戻る、と読みます。

普通借家は収入が減っても更新を断れない|借地借家法28条

「入居後に収入が減ったら更新のときに考えればよい」という考え方は、普通借家では成り立ちません。借地借家法28条は、貸主からの更新拒絶の通知や解約の申入れは、貸主と借主が建物の使用を必要とする事情、賃貸借の従前の経過、建物の利用状況と現況、立退料の申出を考慮して「正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」と定めています。借主の収入が減ったことは、ここに挙がっていません。家賃を払っている限り、収入が年金だけになったことを理由に更新を断ることはできません。

だからこそ、収入を確かめられる場面は入居審査の1回だけです。ここで「年金だけになっても払える家賃か」を見ておかないと、その後は滞納が起きてから動くことになります。滞納は起きてからでは遅く、入居6か月の支払履歴で兆しが分かるとしても、収入の構造が変わる時期を入居時に知っておくほうが先です。

年金だけでは家賃に届かない申込者を、それでも受け入れる方法はあります。連帯保証人を立てる場合は極度額を書面で定めること、保証会社を使う場合は年金収入をどう扱うかを保証会社に確かめること、家賃が年金の範囲に収まる部屋を提案することの三つです。単身高齢者の受け入れの制度面(居住サポート住宅、認定家賃債務保証、残置物の処理)は「改正住宅セーフティネット法2025と単身高齢者の入居受け入れ」に書きました。本稿はその手前の、収入をどう見るかの話です。

65歳以上の申込を受けるときの審査の型

審査書式に足す欄と、確かめる書面、判断の順番を表にします。年齢で扱いを変えるのではなく、収入の種類ごとに見る型です。

順番確かめること書面判断
1年金の月額(終身の収入)年金額改定通知書(6月発送のはがき)またはねんきんネットのPDF。支給停止額の欄も見るこの額だけで家賃負担率を出す。25〜30%に収まれば、就業収入が切れても払える
2就業収入の額と期限(期限付きの収入)給与明細3か月分または源泉徴収票、雇用契約書の契約期間、定年・継続雇用の上限年齢1で足りない分をここで補う。ただし契約期間が1年以内なら、更新2回目(4年目)まで続く前提にしない
3自営業・役員の場合確定申告書の控え、役員報酬の額が分かる書面雇用の期限の考え方は当てはまらない。事業を続ける年数を本人に聞き、1の年金だけの負担率も併せて見る
41で足りないときの補い方連帯保証人(極度額を書面で)、保証会社の年金収入の扱い、家賃が年金に収まる別の部屋「断る」の前に三つの補い方を並べる。断る場合は年齢ではなく、収入と家賃の差で説明する
5緊急連絡先と、収入が変わったときの連絡親族・知人の連絡先。就業収入が切れたら管理会社に知らせてもらう約束更新は断れないので、収入の変化を早く知る仕組みを入居時に作る

もう一つ、家賃の引落し日の話をしておきます。日本年金機構の案内では、令和8年4月分の年金は6月15日に支払われます。年金は2か月分をまとめて偶数月に受け取る仕組みなので、年金だけで暮らす入居者の口座は、奇数月の末日に残高が薄くなります。引落し日を月末から15日以降に動かせる契約なら、それだけで残高不足の引落し不能が減ります。審査の型ではありませんが、年金の入る日と家賃の出る日を揃えるのは、管理会社ができる小さな設計です。

オーナーに説明するときの言い方(雛形)

65歳以上の申込があったとき、オーナーから「大丈夫なのか」と聞かれます。年齢で答えず、収入の構造で答えます。

〇〇号室に申込が入りました。申込者は67歳の単身の方で、パート勤務です。総務省の9月20日の公表では、65〜69歳は2人に1人が働いていて、その4人に3人がパートや契約社員です。この方も同じ型です。

審査では、年金額改定通知書で年金の月額を確かめ、年金だけで家賃負担率が〇%に収まることを確認しました。パートの収入はそれに上乗せで、契約期間は1年です。70歳前後で仕事を辞めたとしても、年金だけで家賃を払える額です。

緊急連絡先は〇〇(続柄)の方で、収入が変わったときは当社に知らせていただく約束をしています。以上の内容で、承諾をお願いできますでしょうか。

この雛形で大事なのは、「年金だけで払える」を先に言い、「働いている」を後に言う順番です。逆にすると、オーナーは「仕事を辞めたらどうなるのか」と聞きます。先に答えておけば、その質問は出ません。

中小不動産会社が今週やる5つ

やること具体的になぜ今週か
1. 審査書式に「年金の月額」の欄を足す年金額改定通知書の年金額と支給停止額を写す欄。書面の種類(はがき/ねんきんネットPDF)も書く今の書式に年金の欄が無いと、担当者ごとに見たり見なかったりする
2. 「就業収入の期限」の欄を足す雇用契約の期間、定年・継続雇用の上限年齢、自営業なら続ける予定の年数65〜69歳の申込者の4人に3人は非正規で、期限が書面に書いてある
3. 管理戸数のうち65歳以上の契約者を数える契約者の生年月日から65〜69歳、70〜74歳、75歳以上に分けて戸数を出す総人口の29.6%が65歳以上。自社の管理戸数で何戸かを知らないと、オーナーに聞かれて答えられない
4. 更新が半年以内の65歳以上の戸で、収入の変化を聞く更新は断れないので、収入が年金だけになったかを確かめ、引落し日の調整や部屋の住み替えを先に提案する滞納が起きてからでは選択肢が減る
5. 報告書に2行を足す次の章の2行。統計の事実と、自社の管理戸数の数字敬老の日の翌週に届く報告書に何も書いていないと、「知らないのか」と読まれる

オーナー報告書に足す2行

今月の報告書に足すのは次の2行です。

1行目:「総務省の9月20日の公表で、65歳以上は総人口の29.6%、65〜69歳の2人に1人が働いており、その4人に3人が非正規です。当社の65歳以上の申込は、年金の月額を年金額改定通知書で確かめ、年金だけで家賃を払えることを基準に審査しています。」

2行目:「本物件の契約者〇戸のうち65歳以上は〇戸(65〜69歳〇戸、70〜74歳〇戸、75歳以上〇戸)です。更新が近い〇戸について、収入の変化を確かめ、必要な場合は引落し日の調整をご相談します。」

「高齢化が進んでいます」だけの1行は、ニュースと同じです。オーナーが管理会社に求めるのは、自分の物件の戸数と、審査の基準です。

この資料が言っていないこと

  • 賃貸住宅に住む高齢者の数や割合は、この資料にはありません。人口と就業の統計であって、住まいの形は扱っていません。
  • 高齢者の収入の額も書かれていません。就業率と雇用形態までです。年金額は日本年金機構の令和8年度の例で、個人の額は通知書で確かめます。
  • 「単身の標準的な厚生年金 166,671円」は、夫婦の標準的な年金額から基礎年金1人分を引いた本稿の計算で、資料の数字ではありません。
  • 家賃負担率25%・30%は慣行上の目安で、法律にも資料にもありません。
  • 70歳で就業収入が切れるとは資料に書いていません。高年齢者雇用安定法の努力義務が70歳までであることと、就業率が年齢とともに下がることから、本稿がそう置いています。
  • 年金の支払日について、資料が示しているのは令和8年4月分が6月15日に支払われることで、「偶数月にまとめて」は仕組みの説明です。

よくある質問

Q1. 65歳以上の申込は、年金の額だけで審査すればよいですか。

年金だけで家賃を払えるかを軸にしますが、就業収入を無視するのではありません。65〜69歳は2人に1人が働いています。年金だけで負担率が収まるなら就業収入は余裕、収まらないなら就業収入の期限(契約期間・定年)を確かめたうえで、連帯保証人・保証会社・部屋の変更のどれで補うかを決めます。

Q2. 年金の額はどの書面で確かめますか。

日本年金機構が毎年6月に送る年金額改定通知書と年金振込通知書です。令和8年分は6月3日から10日に発送されました。ねんきんネットに登録している人は、画面からPDFで保存・印刷できます。支給停止額の欄に金額があれば、その分は退職後に戻る額として読みます。

Q3. 「年齢が高いので断る」と言ってよいですか。

本稿では、年齢を理由にした断り方はしません。断る場合は、年金だけの家賃負担率と家賃の差、就業収入の期限、補い方が無いこと、という収入の理由で説明します。65歳以上の申込者の過半数が働いている現状で、年齢だけで落とすと、払える人を落とします。

Q4. 入居後に収入が年金だけになったら、更新を断れますか。

普通借家では断れません。借地借家法28条の正当事由に、借主の収入の減少は挙がっていません。家賃が払われている限り、更新は続きます。だから収入を確かめられるのは入居審査のときだけで、入居後は収入の変化を早く知る仕組み(連絡の約束、引落し日の調整)で備えます。

Q5. 働いている高齢者は年金が減ると聞きました。審査ではどう見ますか。

在職老齢年金の仕組みで、令和8年4月から賃金と老齢厚生年金の合計が月65万円を超えると年金の一部が支給停止になります。対象になるのは役員報酬などが高い人で、年金額改定通知書に支給停止額が出ます。「年金だけになったら」の額は、支給停止が解けた後の額で見ます。

Q6. 不動産業の就業者の29.0%が65歳以上というのは、何を意味しますか。

入居者の高齢化と同時に、審査する側の高齢化です。担当者の感覚で通す・落とすが起きやすいので、年金の欄と就業収入の期限の欄を書式に置き、誰が審査しても同じ結果になる型にします。採用の面では、65〜69歳の就業率54.5%は、定年後の宅建士や経験者を迎える余地が大きいことも意味します。

要点は四つです。65歳以上は総人口の29.6%で、65〜69歳の2人に1人が働き、その4人に3人が非正規であること。就業収入は期限付き、年金は終身で、審査の軸は「年金だけになっても払える家賃か」に置くこと。年金の額は年金額改定通知書で確かめること。普通借家は収入が減っても更新を断れないので、確かめられるのは入居審査の1回だけであること。制度面の受け入れ方は「改正住宅セーフティネット法2025と単身高齢者の入居受け入れ」、世帯の側の数字は「東京都住宅マスタープラン都の考え方」をご覧ください。

出典(本文で参照している資料)

本稿の記述は、すべて2026年9月20日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。統計トピックスは全体版PDF(10ページ)を全文取得して読み、年金額と通知書の発送日は日本年金機構のページから写し、条文はe-Gov法令検索で該当条のみ取得して読みました。

本稿で使った内容資料
65歳以上人口3624万人(29.6%・前年比+2万人)、70歳以上2911万人(23.7%・+8万人)、75歳以上2168万人(17.7%・+43万人)、80歳以上1288万人(10.5%・▲3万人)、男性1571万人(26.3%)・女性2054万人(32.6%)、65歳以上の人口性比76.5、1985年に10%・2005年に20%、2040年34.8%・2050年37.1%(社人研 令和5年推計 中位)、39か国中最高。65歳以上の就業者943万人(22年連続増・過去最多)、就業者総数6828万人・13.8%、就業率26.0%・65〜69歳54.5%・70〜74歳36.2%・75歳以上12.6%、役員を除く雇用者586万人(62.7%)・自営業主・家族従業者239万人(25.6%)・役員109万人(11.7%)、正規140万人(23.9%)・非正規446万人(76.1%)・パート・アルバイト309万人(52.7%)、年齢階級別の正規・非正規の人数と10年前比、産業別の就業者数(卸売業,小売業131万人・医療,福祉122万人・サービス業108万人・農業,林業88万人)と割合(農業,林業50.6%・不動産業,物品賃貸業29.0%・サービス業22.4%・生活関連サービス業,娯楽業18.7%)総務省統計局 統計トピックスNo.149「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」全体版(2026年9月20日・PDF)
公表日(令和8年9月20日)、要約と本文PDFの構成、資料の出所(人口推計 2026年9月15日現在、労働力調査 基本集計、World Population Prospects、OECD.Stat)総務省統計局「統計トピックスNo.149 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」(概要ページ)
令和8年度の年金額:国民年金(基礎年金)1.9%・厚生年金(報酬比例部分)2.0%の引上げ、老齢基礎年金(満額)月70,608円(昭和31年4月1日以前生まれは70,408円)、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)月237,279円(平均標準報酬45.5万円・40年就業)、令和8年4月分は6月15日支払日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(更新日2026年4月1日)
年金額改定通知書・年金振込通知書の発送(令和8年6月3日〜6月10日)、ねんきんネットでの確認とPDF保存・印刷(6月9日から)、在職老齢年金の基準額が月51万円から65万円に引上げ(令和8年4月)、支給停止額欄の表示日本年金機構「令和8年4月分からの年金額をお知らせする『年金額改定通知書』、『年金振込通知書』の発送を行います」(更新日2026年6月3日)
9条1項(65歳未満の定年を定める事業主は、定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年の廃止のいずれかを講じなければならない)、10条の2第1項(65歳以上70歳未満の定年等を定める事業主は、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない)e-Gov法令検索 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第9条・第10条の2
28条(貸主による更新拒絶の通知・解約の申入れは、双方が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、現況、立退料の申出を考慮して正当の事由があると認められる場合でなければできない)e-Gov法令検索 借地借家法(平成3年法律第90号)第28条

本稿の計算:標準的な夫婦の年金額237,279円から老齢基礎年金2人分(141,216円)を引いた報酬比例部分96,063円に基礎年金1人分を足した「単身の標準的な厚生年金」166,671円、家賃負担率25%・30%の各金額、943÷6828=13.8%、446÷586=76.1%、309÷586=52.7%は、資料の数値から本稿が計算したものです。「就業収入は期限付き、年金は終身」「審査の軸は年金だけになっても払える家賃か」「70歳前後で就業収入が切れる前提」は本稿の読みです。審査の型、オーナー説明の雛形、今週やる5つ、報告書の2行は本稿の整理です。

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