賃貸住宅管理業者は、営業所または事務所ごとに1人以上の業務管理者を選任しなければなりません(賃貸住宅管理業法12条1項)。業務管理者になれるのは、管理業務の実務経験が2年以上(または同等以上と認められた人)で、賃貸不動産経営管理士として登録証明事業の証明を受けている人か、宅建士で指定講習を修了した人です(施行規則14条)。業務管理者が1人もいなくなった営業所では、新しく選任するまで管理受託契約を結べません(法12条2項)。この記事では、要件・職務・兼務・不在になったときの扱いを、条文と国土交通省の「解釈・運用の考え方」で確かめた範囲で整理します。
結論(要件と決まりの早見表)
| 項目 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 置く場所と人数 | 営業所または事務所ごとに1人以上 | 法12条1項 |
| なれる人 | 管理業務の実務経験2年以上(または同等以上と認められた人)で、賃貸不動産経営管理士の証明を受けている人か、宅建士で指定講習を修了した人 | 法12条4項、施行規則14条 |
| なれない人 | 登録の拒否の事由(法6条1項1号から7号)に当たる人 | 法12条4項 |
| 他の拠点との掛け持ち | 他の営業所・事務所の業務管理者にはなれない | 法12条3項 |
| いなくなったとき | 新しく選任するまで、その営業所で管理受託契約を結べない | 法12条2項 |
| 登録の審査 | 営業所ごとに業務管理者を確実に選任すると認められない者は、登録を拒否される | 法6条1項11号 |
業務管理者になれる人
要件は2つの組み合わせです。1つ目は経験で、管理業務に関し2年以上の実務経験があること、または国土交通大臣がそれと同等以上の能力があると認めた人であることです(施行規則14条)。2つ目は知識の証明で、次のどちらかに当てはまることです。
- 登録証明事業による証明を受けている人(賃貸不動産経営管理士の試験に合格して登録した人がこれに当たります)
- 宅建士で、国土交通大臣が指定する管理業務の実務についての講習(指定講習)を修了した人
国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、実務経験2年と同等以上の能力がある人として、実務経験に代わる講習を修了した人や、国・地方公共団体などで管理業務に通算2年以上従事した人を挙げています。実務経験が2年に満たない社員を業務管理者にしたいときは、まずこの講習の修了で足りるかを確かめます。
宅建士であるだけでは要件を満たしません。宅建士の場合は指定講習の修了が要ります。社内で「宅建士がいるから業務管理者も大丈夫」と扱っていないか、選任している人ごとに証明書と修了証を確かめてください。
業務管理者の職務
業務管理者は、営業所の業務について、次の事項の管理と監督を行います(法12条1項、施行規則13条)。
| 管理・監督する事項 | 関係する条文 |
|---|---|
| 管理受託契約の締結前の書面の交付と説明 | 法13条 |
| 管理受託契約の締結時の書面の交付 | 法14条 |
| 維持保全の実施と、家賃・敷金・共益費などの金銭の管理 | 施行規則13条3号(分別管理は法16条) |
| 帳簿の備付け | 法18条 |
| オーナー(委託者)への定期報告 | 法20条 |
| 秘密の保持 | 法21条 |
| 入居者からの苦情の処理 | 施行規則13条7号 |
業務管理者が自分で全部の作業をする決まりではありません。担当者が書面を作り、送金や報告をしていても、その中身と手順を業務管理者が管理・監督している状態にしておく必要があります。オーナーへの定期報告の中身は「管理業務報告書とは|オーナーへの定期報告の時期・記載事項」にまとめています。
兼務と人数の考え方
同じ人が2つの営業所の業務管理者を掛け持つことはできません(法12条3項)。拠点を増やすときは、拠点の数だけ業務管理者が要ります。
宅建士など他の職と兼ねることについて、「解釈・運用の考え方」は、兼務しても法違反にはならないとしたうえで、従業員への必要な指導・管理・監督の業務に従事できる必要があるとしています。宅建業の専任の宅建士と兼ねるときの専任性は、宅建業法の解釈・運用の考え方に従うとされています。兼務させる場合は、その人が業務管理者としての確認に実際に時間を使えるかを、担当件数と合わせて決めてください。
人数について、条文が求めるのは1営業所に1人以上です。「解釈・運用の考え方」は、従業員が行う管理業務の質を担保できるだけの人数を置くことが望ましいとしています。管理戸数や従業員が多い拠点で1人だけにしている場合は、確認が回っているかを見直します。
業務管理者がいなくなったとき
選任した業務管理者の全員が欠けたとき、または全員が欠格の事由に当たることになったときは、新しく選任するまでの間、その営業所では管理受託契約を結べません(法12条2項)。退職・異動・長期の休職で業務管理者が1人だけの拠点が空く場合は、空く日より前に後任を決めておく必要があります。
法令に違反した場合、国土交通大臣は業務改善命令(22条)や、登録の取消し・1年以内の業務停止(23条1項3号)を行うことができます。業務管理者の不在は契約の締結そのものを止めるので、新規の受託が多い時期に重ならないように予定を組みます。
会社で決めておくこと
| 決めること | 確かめる中身 |
|---|---|
| 拠点ごとの業務管理者の一覧 | 氏名、勤務する拠点、資格の種類(経営管理士か宅建士+指定講習か)、証明書・修了証の写し、実務経験の根拠 |
| 後任の候補 | 1人だけの拠点では、要件を満たす2人目がいるか。いなければ、指定講習・実務講習の受講の予定 |
| 兼務の範囲 | 専任の宅建士・店長などと兼ねる場合に、業務管理者としての確認の時間がとれるか |
| 確認の記録 | 重要事項説明・契約書面・定期報告・苦情対応を業務管理者が確認したことを、日付つきで残す方法 |
| 登録更新との関係 | 5年ごとの登録更新の申請で、拠点と業務管理者の状況を確かめる |
登録更新の手続きは「賃貸住宅管理業の登録更新|必要書類・手数料・申請期限」で確かめられます。
よくある質問
Q1. 宅建士の資格があれば業務管理者になれますか
宅建士だけでは足りません。宅建士の場合は、国土交通大臣が指定する講習(指定講習)の修了と、管理業務の実務経験2年以上(または同等以上と認められること)が要ります(施行規則14条2号)。
Q2. 実務経験が2年に満たない社員は業務管理者になれませんか
「解釈・運用の考え方」は、実務経験2年に代わる講習を修了した人を、同等以上の能力がある人として扱っています。講習の日程と申込先は、実施する団体の案内で確かめてください。
Q3. 1人で2つの店舗の業務管理者を兼ねられますか
できません。業務管理者は、他の営業所・事務所の業務管理者になれないと定められています(法12条3項)。
Q4. 管理戸数が200戸未満で登録していない会社にも業務管理者は要りますか
業務管理者の選任は、登録を受けた賃貸住宅管理業者の義務です(法12条1項)。200戸未満で登録していない会社には法の義務としてはかかりませんが、任意で登録した会社にはかかります。
関連する記事
出典(本文で参照している資料)
| 確かめた内容 | 資料 |
|---|---|
| 登録と更新(3条)、登録の拒否(6条1項11号)、業務管理者の選任・不在時・兼務の禁止・要件(12条)、業務改善命令(22条)、登録の取消し等(23条) | e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」 |
| 業務管理者の職務(13条)、業務管理者の要件(14条) | e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」 |
| 実務経験に代わる講習、国・地方公共団体での通算2年、兼務、配置する人数の考え方 | 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(PDF) |
| 制度の全体像と各条の概要 | 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「制度解説」 |

