国土交通省の「賃貸住宅管理業のあり方の検討に係る有識者会議」は、2025年9月5日に第1回を開き、4回の会合を経て2026年2月にとりまとめを公表しました。とりまとめは、管理サービス内容の透明性、業登録制度の実効性、業務管理者の質の向上、管理業の地域貢献の4つを柱に、標準的な管理業務のガイドラインや評価制度の検討を求めています。登録業者が今やることは、新しい制度を待つことではなく、業務管理者の配置(法12条)、契約前の重要事項説明(法13条)、オーナーへの定期報告(法20条)といった現行の義務を回せているかの点検です。
先に結論
- 会議の正式名称は「賃貸住宅管理業のあり方の検討に係る有識者会議」です。第1回は2025年9月5日、第4回は2026年2月12日に開かれ、2026年2月にとりまとめが公表されました。
- とりまとめの中で、法律の改正案が示されているわけではありません。中心は、業界団体が主導する標準管理業務ガイドラインと評価制度の検討(2026年度から)、登録業者のロゴマーク、業務管理者の育成などです。
- 業務管理者の要件は「当面維持」です。賃貸不動産経営管理士のルートと、宅地建物取引士が指定講習を受けるルートの2つは、当面そのまま続きます。
- 業務管理者は営業所ごとに1人以上です。法律に2人以上の選任を求める規定はありません(法12条1項)。
- 国の立入検査では、多くの会社で形式的な不備が見つかっています。重要事項説明、契約書面、定期報告の書式と運用を、今のうちに点検しておくのが現実的です。
この記事は2026年10月7日に全面的に書き直しました。以前の版にあった会議の開始時期や数字などの記載は、国土交通省の公表資料に基づいて改めています。
有識者会議の概要
国土交通省は2025年8月28日の報道発表で、有識者会議の第1回を2025年9月5日に開くと発表しました。発表文は、開催の背景を次のように説明しています。
賃貸住宅管理業法の新法施行から丸4年が経過し、本制度が定着しつつあります。その一方で、コロナ禍を経た日常の暮らし方・働き方の変化などから入居者ニーズが多様化し、管理業務も複雑化している状況がみられます。
会議は非公開で、報道関係者に限って冒頭から1つ目の議事までの傍聴などが認められました。各回の資料は国土交通省のページで公開されています。
| 回 | 開催日 | 主な資料 |
|---|---|---|
| 第1回 | 2025年9月5日 | 賃貸住宅管理業法の施行状況、主な検討事項(案) |
| 第2回 | 2025年12月1日 | 業界団体(7団体)の提出資料、令和7年度の管理業務に関するアンケート調査の概要、検討事項の現状と課題(案) |
| 第3回 | 2026年1月30日 | とりまとめ骨子(案) |
| 第4回 | 2026年2月12日 | とりまとめ(案)とその概要 |
| 公表 | 2026年2月 | 有識者会議とりまとめ |
賃貸住宅管理業法の施行状況
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)は2020年6月に成立し、登録制度を含めて2021年6月15日に全面施行されました。第1回の会議で国土交通省が示した資料「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の施行状況」には、次のような数字があります。
- 賃貸住宅管理業の登録事業者数は、2025年7月31日時点で9,987件です。
- 2024年度の全国一斉立入検査では187社を検査し、そのうち127社に是正指導を行っています(2023年度は179社を検査し、106社に是正指導)。
同じ資料は、検査の結果について次のように書いています。
検査の結果、過半数の事業者において不適正な状況を確認したが、全体的には形式的な不備が多く、全て改善が確認されているため行政指導にとどまっている。
処分に至った例ではなくても、検査を受けた会社の過半数で不適正な状況が見つかっているということです。書式や手順の「形式」を整えておくことが、中小の管理会社にとってまず取り組みやすい対策になります。
とりまとめの4つの柱
管理サービス内容の透明性
家主や入居者から見て、管理料に対してどこまでの業務をしてもらえるのかが分かりにくい、という課題が挙げられています。対策として、業界団体の主導で、基本業務とオプション業務の区別を明示した標準的な業務内容のガイドラインを策定するとしています。あわせて、サブリースを含む賃貸住宅管理の評価制度の創設に向けた検討を始めるとしています。
進め方の図では、2026年度から関係業界の検討会を設けてガイドラインと評価制度を検討し、評価制度の運用開始は2027年度以降とされています。評価の方式や、自己評価か第三者評価かといった点は、これから決まります。
業登録制度の実効性
とりまとめは、入居者の間で業登録制度の認知度が低く、登録業者であるかどうかによる管理の質の違いも知られていないと指摘しています。対策として、「登録業者を選ぶメリット」を伝える広報を国と業界団体で強化すること、業界団体の主導で登録業者のロゴマークを作って周知することが挙げられています。
登録義務のない管理戸数200戸未満の会社については、任意登録を促すインセンティブとして、管理業登録の有無によって賃貸不動産経営管理士の賠償責任保険の料率に差を設けることなどが例に挙がっています。
業務管理者の質の向上
業務管理者の要件には、賃貸不動産経営管理士として登録を受けるルートと、宅地建物取引士が国土交通大臣の指定する講習を修了するルートがあり、いずれも管理業務に関する2年以上の実務経験などが前提です(施行規則14条)。とりまとめによると、不動産業者向けの調査では、要件を賃貸不動産経営管理士に限るべきという意見が約34%、今の2ルートを残すべきという意見が約43%と分かれています。
そのうえで、業務管理者の要件は現状の2つのルートを当面維持し、宅地建物取引士向けの指定講習は内容を充実させたうえで当面続けるとしています。将来的な資格要件の見直しも視野に入れる、という書き方です。
管理業の地域貢献
戸建ての空き家やサブリース事業の活用を含め、管理業者に政策上期待される役割を明確にするとしています。業界団体が国や自治体の防災部局と連携して、災害時などの対応環境を整えることや、国がDXなどを通じた業務負担の軽減のための支援措置を検討することも挙げられています。
現行法で登録業者が守ること
とりまとめを受けた動きはこれからですが、登録業者に今かかっている義務は変わっていません。主な条文を整理します。
| 条文 | 内容 | 点検するところ |
|---|---|---|
| 3条2項 | 登録は5年ごとに更新しないと効力を失う | 登録の有効期間の満了日と、更新申請の段取り |
| 12条 | 営業所ごとに業務管理者を1人以上選ぶ | 退職や異動で業務管理者が欠けたときの手当て |
| 13条 | 管理受託契約の前に、書面を渡して重要事項を説明する | 説明の記録、電子で渡すときのオーナーの承諾 |
| 14条 | 契約を結んだら、遅滞なく契約内容の書面を渡す | 業務の実施方法、報酬、契約期間、更新・解除の定め |
| 15条 | 受託した管理業務の全部を他に再委託しない | 外注している業務の範囲 |
| 16条 | 家賃や敷金などを自社の財産と分けて管理する | 口座と帳簿の分け方 |
| 20条 | 管理業務の実施状況などを定期的にオーナーに報告する | 報告の時期と書式 |
| 21条 | 業務上知った秘密を、正当な理由なく漏らさない | 入居者情報の扱いのルール |
業務管理者の配置(法12条)
法12条1項は、営業所または事務所ごとに1人以上の業務管理者を選び、管理受託契約の内容の明確性や、維持保全の実施方法の妥当性などについて管理・監督させることを求めています。業務管理者は他の営業所の業務管理者を兼ねられません(同条3項)。営業所の業務管理者が全員欠けたときは、新しく選ぶまでその営業所で管理受託契約を結べません(同条2項)。
中小の会社で気をつけたいのは、業務管理者が1人だけの営業所です。その人が退職すると契約の締結が止まるため、資格者を2人目として育てておく、あるいは採用の段階で資格の有無を確認するといった備えが現実的です。2人以上の選任は法律の義務ではなく、あくまで欠けたときへの備えです。
契約前の重要事項説明(法13条)
法13条1項は、管理受託契約を結ぶ前に、契約の内容と履行に関する事項を書いた書面をオーナーに渡して説明することを求めています。オーナーの承諾があれば、書面の代わりに電磁的方法で提供できます(同条2項)。国土交通省は管理受託契約の重要事項説明書の様式も公表しているので、自社の書式と項目を照らし合わせておきます。
オーナーへの定期報告(法20条、施行規則40条)
施行規則40条1項は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、そして契約期間が満了したあと遅滞なく、管理業務報告書を作ってオーナーに渡し、説明することを求めています。報告書に書くのは、報告の対象期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況です。オーナーの承諾があれば、電子で提供することもできます(同条2項)。
毎月の送金明細を出していても、それだけでは苦情の発生状況や対応状況が載っていないことがあります。ウルスタくんではオーナーへの送金明細(管理料・修繕費を差し引いた明細)を作れますが、送金明細は法20条の管理業務報告書そのものではありません。報告書の記載事項は別に整えておく必要があります。
管理戸数200戸未満の会社の考え方
賃貸住宅管理業法3条1項のただし書と施行規則3条により、管理する賃貸住宅が200戸未満の会社には登録の義務がありません。ただし、任意で登録すれば、登録業者として法12条から21条などの義務がかかります。
とりまとめでは、200戸未満の会社の任意登録を促すインセンティブの検討が挙げられています。登録するかどうかは、今後のインセンティブの中身や、オーナーへの説明のしやすさ、業務管理者を確保できるかを見て判断することになります。登録しない場合でも、重要事項説明や定期報告に近い形の書面をオーナーに出しておくと、将来登録するときの移行が楽になります。
筆者は自社で賃貸住宅210戸を所有し、そのうち約100戸を管理会社を通さず自主管理しています。オーナーの立場から見ても、管理料に対してどこまでの業務をしてもらえるかが書面で分かることは、管理会社を選ぶ大きな判断材料になります。
今後の動きの追い方
- 国土交通省の有識者会議のページ:各回の資料ととりまとめが載っています。
- 国土交通省の賃貸住宅管理業法の法令・ガイドラインのページ:解釈・運用の考え方やFAQ集が載っています。FAQ集は2025年10月9日時点のものが公開されています。
- 業界団体の発表:標準管理業務ガイドラインと評価制度は業界団体の主導で検討されるため、所属する団体の案内を確認します。
ガイドラインが出る前でもできる準備として、今の管理受託契約で引き受けている業務を、基本業務とオプション業務に分けて書き出しておく方法があります。とりまとめが求めている「業務内容の明示」と同じ方向の作業なので、ガイドラインが出たときに照らし合わせやすくなります。
よくある質問
Q1. 有識者会議のとりまとめで、法律は変わったのですか?
とりまとめは今後の方向性を示したもので、それ自体で法律が変わるわけではありません。とりまとめの中で法律の改正案が示されているわけでもありません。今の義務は、賃貸住宅管理業法と施行規則のとおりです。
Q2. 業務管理者は何人必要ですか?
営業所または事務所ごとに1人以上です(法12条1項)。2人以上を求める規定はありません。ただし、業務管理者が全員欠けると、その営業所で管理受託契約を結べなくなります(同条2項)。
Q3. 業務管理者の要件は変わりますか?
とりまとめでは、現状の2つのルートを当面維持するとしています。宅地建物取引士向けの指定講習は、内容を充実させたうえで当面続けるとされています。
Q4. 定期報告はどのくらいの間隔で行えばよいですか?
管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとと、契約期間の満了後遅滞なく、です(施行規則40条1項)。これより短い間隔で報告することは問題ありません。
Q5. 標準管理業務ガイドラインはもう出ていますか?
とりまとめでは、2026年度から関係業界の検討会で検討と策定を進めるとされています。公表の状況は、国土交通省と業界団体の発表で確認してください。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省 報道発表「これからの賃貸住宅管理業のあり方について検討を行います」(2025年8月28日)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業のあり方の検討に係る有識者会議」
- 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の施行状況」(第1回資料3)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業のあり方の検討に係る有識者会議 とりまとめ」(2026年2月)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業登録制度のポイント」
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方、ガイドライン」
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(3条、12条〜16条、20条、21条)
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」(3条、14条、40条)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。