賃貸管理 読了 25分

9月は価格交渉促進月間|賃貸管理会社は清掃・点検・工事の「発注者」で、オーナーや元請けに対する「受注者」でもある。不動産業は発注者として19位、受注者として28位。取適法と労務費指針を、うちの会社に当てはめる

毎年9月と3月は「価格交渉促進月間」です。2026年8月27日付の経済産業大臣の周知文が日管協を通じて管理会社にも届き、9月下旬からは受注側中小企業30万社へのフォローアップ調査が始まります。6月に公表された前回調査では、発注者としての「不動産業・物品賃貸業」は転嫁率52.9%で19位、受注者としては41.0%で28位、前回から8.0ポイント下がりました。賃貸管理会社は清掃・点検・工事を発注する側であり、オーナーや元請けから受託する側でもあります。2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)の対象になるかを資本金と従業員数で確かめる手順、労務費指針の12の行動、9月中にやること5つを書きました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
価格交渉促進月間 2026年9月|賃貸管理会社の発注と受注、取適法の要点
目次

毎年9月と3月は「価格交渉促進月間」です。2026年8月27日付で経済産業大臣名の周知文が関係事業者団体に出され、日本賃貸住宅管理協会は8月31日に会員向けに掲載しました。賃貸管理会社は、清掃・設備点検・原状回復工事を外注する発注者であり、同時にオーナーや元請けから業務を受ける受注者でもあります。本稿は、周知文が求める5つのこと、前回調査で「不動産業・物品賃貸業」がいる順位、2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法(取適法)が自社の外注に当てはまるかの確かめ方、労務費指針の12の行動を、中小の管理会社の実務に当てはめて書きます。

結論(90秒で読める)

  • 価格交渉促進月間は2021年9月から毎年9月と3月。今回の周知文(2026-0818中第13号・令和8年8月27日)は、発注者に受注側からの申し出を待たずに定期的な協議の場を設けること、労務費指針の活用、フォローアップ調査への回答、取適法・振興法の改正内容の周知、パートナーシップ構築宣言の5つを求めています。
  • 2026年3月分の調査(回答69,625社)では、価格転嫁率は全体で54.2%、労務費は50.0%。発注者の業種別で「不動産業・物品賃貸業」は交渉17位・転嫁率19位(52.9%)。受注者の業種別では28位(41.0%)で、前回の49.0%から8.0ポイント下がりました(本稿の計算)。管理会社の外注先であるビルメンテナンス業は今回から加わり、発注者としては32業種中31位です。
  • 取適法は、清掃や設備点検のように「他者から請け負った役務を、別の事業者に委託する」取引に掛かります。ただし建設業法上の建設工事は対象外で、資本金または従業員数の基準を満たす組み合わせだけが対象です。資本金1千万円以下・従業員100人以下の管理会社は、多くの外注で委託事業者にはなりません。それでも労務費指針と振興基準は掛かります。
  • 9月にやることは5つ。外注先の一覧に資本金・従業員数を書き足す、10月の改定に向けて発注者から協議の場を設ける、支払条件(60日以内・手形なし)を確かめる、交渉の記録を残す、オーナーへの説明に公表資料(最低賃金・消費者物価)を使う。

8月27日の周知文|発注者に求められている5つのこと

中小企業庁のページは経済産業大臣名の周知依頼(2026-0818中第13号・令和8年8月27日付・関係事業者団体代表者宛)を掲載しています。冒頭にはこうあります。「中東情勢の変化による影響もあり、原材料価格・エネルギーコスト等が上昇しているなか、価格転嫁、取引適正化の重要性が一層増しています。この9月は、2026年度下期の価格改定時期を迎える企業も多く、価格転嫁のための交渉が本格化する、大事な時期となります」。

「記」の依頼は次の5つで、日管協の掲載文も同じ5点を並べています。

#依頼誰に管理会社での意味
1価格交渉・転嫁への積極的な対応。申し出を待たずに定期的に協議の場を設ける発注者清掃・点検・工事の外注先に、こちらから声を掛ける
2「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知・活用発注者・受注者12の行動を外注先との協議とオーナー説明の両方で使う
39月下旬以降のフォローアップ調査・取引Gメンのヒアリングへの回答受注側中小企業調査票が来たら、主要な発注先について正確に答える
4中小受託取引適正化法・受託中小企業振興法の改正内容の周知・徹底発注者・受注者自社の外注が対象取引かを確かめる(次章)
5パートナーシップ構築宣言への参加発注者宣言していれば社内周知、していなければ参加を検討

調査の規模|30万社に「主要な発注企業 最大3社」を聞く

周知文の3によれば、受注側中小企業30万社を対象に、主要な発注企業(最大3社)との価格交渉・価格転嫁・支払条件を聞くアンケートと、今回から新たに、国や地方公共団体と取引がある受注側中小企業最大15万社に主な発注機関(最大5者)について聞く官公需の調査、加えて取引Gメンによるヒアリングです。回答は、結果が芳しくない発注企業への「事業所管大臣名での指導・助言、勧奨」の材料になり、10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注者は「発注者リスト」として名前が出ます。

管理会社の規模で10社以上から名指しされることは多くありませんが、自社が受注者として調査票を受け取ることはあります。サブリースの元請け、大手からのBM委託、法人オーナーからの受託。そのとき「主要な発注企業 最大3社」に何を書くかが本題です。

前回調査の数字|不動産業は発注者として19位、受注者として28位

経済産業省は2026年6月26日、2026年3月分のフォローアップ調査の結果を公表しました。調査期間は2026年4月20日から6月3日、回答企業数は69,625社(抽出される発注側企業は延べ91,233社)です。

項目2026年3月前回(2025年9月)資料の説明
価格交渉が行われた割合90.7%微増「価格交渉不要」の回答を除いた分布
価格転嫁率(コスト全体)54.2%53.5%「実際のコスト上昇分のうち、価格転嫁が実現した割合」の回答の平均値
うち原材料費55.7%55.0%上昇
うち労務費50.0%50.0%横ばい
うちエネルギーコスト48.9%48.9%横ばい
支払手段「現金のみ」87.5%82.2%取適法の手形禁止が効いている
支払期日が60日超6.6%現金2.3%・手形等4.2%

労務費については、価格交渉が行われた企業のうち72.5%で労務費も交渉され、「労務費が上昇し、価格交渉を希望したが出来なかった」企業が5.8%(前回5.9%)残っています。資料が載せる回答企業の声に「資料を揃えて労務費の交渉を申し入れたが、最低賃金の上昇分すら転嫁を認めてもらえなかった」という一文があります。取引段階では、1次請けの転嫁率55.2%に対し4次請け以上は45.5%で、4次請け以上では「全く転嫁できなかった」又は「減額された」企業が24.3%です。

発注者としての「不動産業・物品賃貸業」

調査は、受注者の回答を発注企業の業種ごとに集計してランキングにしています。資料の例は「家電メーカー(発注者)が、トラック運送業者(受注者)に運送委託するケースは、『電機・情報通信機器』に集計」。つまり「不動産業・物品賃貸業」の行は、不動産会社が発注者として外注先にどう応じているかを外注先が答えた結果です。今回から警備業とビルメンテナンス業が加わり、業種は32です(このほか「その他」)。

発注者の業種交渉の順位・平均点転嫁率の順位転嫁率(全体)原材料費エネルギー費労務費
全体— 7.39点(7.30)54.2%(53.5%)55.7%48.9%50.0%
建設3位 7.82点(7.96)18位53.0%(53.2%)53.9%48.5%50.5%
不動産業・物品賃貸業17位 7.25点(7.26)19位52.9%(51.7%)51.9%47.1%50.2%(48.3%)
ビルメンテナンス31位 6.35点31位40.2%36.0%34.2%39.9%

()内は前回2025年9月の数値。ビルメンテナンスは今回からの集計で前回値がなく、32位はトラック運送(34.5%)です。「不動産業・物品賃貸業」は交渉の平均点が全体(7.39点)より低く、転嫁率は全体より1.3ポイント低い(本稿の計算)。労務費だけは48.3%から50.2%へ1.9ポイント上がっています。なお、この分類は日本標準産業分類の大分類で、賃貸管理業だけを切り出した数字は資料にありません

受注者としての「不動産業・物品賃貸業」は28位、8.0ポイントの下落

同じ資料に、受注企業の業種ごとに集計した表もあります。「受注者として価格転嫁してもらえている業種(上位にある業種)は、発注者としても価格転嫁に応じている傾向にある」が資料の見立てです。ここで「不動産業・物品賃貸業」は28位・41.0%。前回は49.0%で8.0ポイントの下落、資料の矢印は「↓↓」(5〜9ポイント下落)です。要素別では原材料費39.7%(前回48.4%)、エネルギー費36.9%(前回50.1%・13.2ポイント減)、労務費41.4%(前回50.5%・9.1ポイント減)。減り幅は本稿の計算で、資料にその数字はありません。建設は受注者として17位・52.3%、ビルメンテナンスは26位・45.3%です。

つまり不動産会社は、法人オーナーや元請けから業務を受けているとき、コスト上昇分の6割近くを自分で吸収している。管理委託料やBM単価が長年据え置かれている会社は、この28位の中にいます。

取適法は自社の外注に当てはまるか|5つの取引と2つの基準

周知文の4は、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(旧・下請代金支払遅延等防止法。略称は取適法)と受託中小企業振興法(旧・下請中小企業振興法)の周知です。改正法は令和7年5月16日に成立し、5月23日に公布されました。管理会社にとって大事なのは自社が「委託事業者」になる取引があるかで、中小企業庁の説明どおりに当てはめます。

5つの取引|管理会社に関わるのは「役務提供委託」と「修理委託」

取適法が掛かる取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5つです。役務提供委託の定義は「他者から運送やビルメンテナンスなどの各種サービス(役務)の提供を請け負った事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託すること」。管理会社はオーナーから管理業務(清掃・設備点検・巡回など)を請け負い、その一部を清掃会社や設備会社に出します。これが役務提供委託の形です。自社が受けていない仕事を自社のために頼む(自社事務所の清掃を頼む等)のは対象外です。

一方、同じページに「ただし、建設業法に規定される建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、取適法の対象とならない」とあります。原状回復や修繕を建設業者に発注する取引は、取適法ではなく建設業法の世界です。こちらは改正建設業法の全面施行で修繕と原状回復の見積りが変わるに書きました。

中小企業庁の説明(対象の取引)

「委託事業者が中小受託事業者に物品の製造、修理、情報成果物(ソフトウェアなど)の作成又は役務(運送、情報処理、ビルメンテナンスなど)の提供、製造を請け負った製品等の運送を委託したときに適用されます。委託事業者・中小受託事業者は、①取引の内容及び②お互いの資本金額又は従業員数によって決まります。」

2つの基準|資本金か、従業員数か

取引の内容が当てはまっても、資本金または従業員数の組み合わせが基準を満たさなければ対象になりません。周知文の「従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、適用基準を追加」が今回の改正点で、中小企業庁の図は2枚に分かれています。

取引の種類委託事業者中小受託事業者(個人含む)
製造委託・修理委託・特定運送委託、情報成果物作成委託と役務提供委託のうちプログラム作成・運送・倉庫保管・情報処理資本金3億円超資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下
従業員300人超従業員300人以下
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託(清掃・設備点検・警備・デザインなど)資本金5千万円超資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下
従業員100人超従業員100人以下

清掃や点検の外注は下の段です。資本金が1千万円以下で、従業員が100人以下の管理会社は、清掃会社に清掃を出しても取適法上の委託事業者にはなりません。資本金が1千万円を超えていれば、資本金1千万円以下の清掃会社(個人を含む)への委託が対象です。逆に自社が受注者のとき、元請けが資本金5千万円超か従業員100人超なら、自社は中小受託事業者として守られる側です。

対象になったときの義務と禁止行為

委託事業者の義務は4つ。委託後直ちに給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法等を書面又は電磁的方法で明示する発注内容等の明示義務、発注書面等の作成・保存義務、支払期日を役務の提供を受けた日から60日以内で出来る限り短い期間内に定める義務、支払期日までに支払わなかった場合の年率14.6%の遅延利息です。禁止行為は12あり、今回の改正で加わったのが「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」。中小企業庁の説明では「価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定すること」です。手形の交付と、支払期日までに現金化が困難な支払手段も禁止されました。

取適法の外にいても、労務費指針は「発注者としての行動」を事業者一般に求めており、振興基準(受託中小企業振興法)は「中小受託事業者及び委託事業者のよるべき一般的な基準」で、主務大臣が必要に応じて指導・助言・勧奨を行います。周知文の「振興基準に則り、受注側中小企業からの価格交渉の申し出には遅滞なく応じ」はこちらです。法律の対象かどうかは、協議に応じるかどうかの理由にはなりません。個人事業主への発注にはフリーランス法が別に掛かります。

労務費指針の12の行動|管理会社はどちらの側でも使う

「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は内閣官房と公正取引委員会が令和5年11月29日に策定、令和8年1月1日に改正しました。発注者としての行動6つ、受注者としての行動4つ、双方共通の行動2つの12の行動です。指針は、発注者と共通の全ての行動を適切に採っている場合には「通常は独占禁止法及び中小受託取引適正化法上の問題は生じないと考えられる」と書いており、発注者にとっては「ここまでやれば問題にならない」線です。

立場#行動(指針の要旨)管理会社の場面
発注者1労務費上昇分の転嫁を受け入れる方針を経営トップが決定し、書面等で社内外に示す社長が「外注先の値上げに応じる方針」を紙で出す
2求められていなくても、1年に1回や半年に1回など定期的に発注者から協議の場を設ける清掃・点検の単価を、更新のたびに自社から聞く
3根拠資料を求めるなら公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額など)とし、それに基づく希望価格を尊重する外注先の原価表を出させない
4受注者がその先の取引先との価格を適正化すべき立場にいることを、要請額の判断に反映させる清掃会社の先の作業員・協力会社まで含めて見る
5引上げを求められたら協議のテーブルにつく。求められたことを理由に取引停止など不利益な取扱いをしない値上げを言ってきた業者を黙って切らない
6申入れの巧拙にかかわらず協議し、必要に応じ転嫁の考え方を提案する口下手な職人にも、こちらから計算式を示す
受注者1国・自治体・商工会議所などの窓口で情報を集めて交渉に臨む元請けとの単価交渉の前に、取引かけこみ寺に聞く
2根拠資料には最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額などの公表資料を用いる自社の給与台帳ではなく、答申額の一覧を出す
3定期的な交渉時期や発注者の繁忙期など、申し出やすい機会を活用する繁忙期の前、10月改定の前の9月に申し出る
4発注者の提示を待たずに希望価格を提示する。自社の発注先の労務費も考慮する元請けに「新単価」を先に書いて送る
共通1定期的にコミュニケーションをとる(3月と9月の月間を利用)年2回、外注先と単価の話をする日を決める
2価格交渉の記録を作成し、双方で保管する口頭の要請にも必ずメールで返す

指針には各行動の取組事例が業種名つきで載っており、【不動産賃貸業・管理業】が2か所に出てきます。1つは発注者としての行動3で、「『受注者が求める引上げ率≦最低賃金の上昇率』であれば、受注者が求める額を受け入れることとしている」という事例。もう1つは共通の行動2で、「受注者との交渉の都度議事録を作成し、受注者と共有している」という事例(同旨として不動産賃貸業・管理業が挙げられています)。どちらも、いまの会社でそのまま真似できる形です。別添には「価格交渉の申込み様式(例)」も付いています。

指針が公表資料として挙げる「最低賃金の上昇率」は、令和8年度分が9月3日に出そろいました。全国加重平均1,177円で、発効日は10月1日から12月2日まで都道府県ごとに違います(最低賃金 令和8年度 全国一覧)。外注先から「県の最低賃金が上がる分」を求められたら、それは指針どおりの根拠です。

9月中にやること5つ

  1. 外注先の一覧に、資本金と従業員数の列を足す。清掃・設備点検・消防点検・警備・原状回復・広告デザイン・システム。取引の種類(役務提供委託か、建設工事か、情報成果物か)と相手の資本金・従業員数を書けば、対象かどうかがその場で決まります。自社の資本金と従業員数が基準の上か下かを先に確かめること。対象なら、発注内容の明示と60日以内の支払期日が義務です。
  2. 10月の改定に向け、発注者からこちらで協議の場を設ける。周知文の1、指針の発注者としての行動2です。「値上げの要望はありますか」と聞くだけで足ります。令和9年度の概算要求には管理業者の評価制度の設計が載っており、外注先との取引の仕方はいずれ外から見られる項目になりえます。
  3. 支払条件を確かめる。役務の提供を受けた日から60日以内か、手形や現金化が困難な支払手段を使っていないか、振込手数料を受注者に負担させていないか。調査では「現金のみ」が87.5%まで来ており、60日超は6.6%です。自社がその6.6%にいないかを見る。
  4. 交渉の記録を残す。共通の行動2。口頭で言われた値上げ要請にも、必ずメールで回答する。指針の事例は「受注者ごとに交渉記録や資料を電子データで保存」です。人が替わっても前回の話から始められます。
  5. オーナーへの説明に公表資料を使う。受注者としての管理会社が、管理委託料やBM単価の改定をオーナー・元請けに求めるとき、根拠は自社の給与台帳ではなく公表資料(指針の受注者としての行動2)。最低賃金の答申額、消費者物価指数(修繕4.1%)、外注先から実際に来た値上げ通知。修繕費の説明の型は修繕費 オーナー説明 2026に書きました。

よくある質問

Q1. 個人オーナーとの管理委託契約は取適法の対象ですか?

役務提供委託は「他者から役務の提供を請け負った事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託する」取引です。個人オーナーは誰かから管理を請け負っていないので、オーナーから管理会社への委託はこの定義の形ではありません。ただし労務費指針は取引の形を問わず「発注者・受注者」の行動を書いており、公表資料に基づく説明はオーナーにも使えます。個別の判断は中小企業庁・公正取引委員会の窓口で確かめてください。

Q2. 資本金1千万円以下の管理会社は、何もしなくてよいですか?

取適法上の委託事業者にならないことと、協議に応じなくてよいことは別です。周知文は振興基準に則って「受注側中小企業からの価格交渉の申し出には遅滞なく応じ」と求めており、指針の発注者としての行動1〜6は事業者一般に向けたものです。

Q3. 原状回復工事の発注は取適法の対象ですか?

中小企業庁の説明は「建設業法に規定される建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、取適法の対象とならない」です。工事は建設業法(改正法の見積り・契約のルール)で見ます。工事に伴わない清掃や点検は役務提供委託として取適法の側です。

Q4. 「不動産業・物品賃貸業」の順位は、賃貸管理会社の順位ですか?

違います。日本標準産業分類の大分類で、売買仲介・開発・賃貸・管理・リースを含みます。賃貸管理業だけの数字は資料にありません。本稿は不動産会社が発注者のとき・受注者のときの目安として使っています。

Q5. フォローアップ調査は誰に来ますか?

周知文では、受注側中小企業30万社と、官公需取引のある受注側中小企業最大15万社が対象です。どの会社に届くかは資料に書かれていません。届いたら「主要な発注企業(最大3社)」について答えます。回答が発注者に知られないよう匿名性を確保して集計する、と中小企業庁のページにあります。

Q6. 労務費指針の「改正」で何が変わりましたか?

指針の表紙に「令和5年11月29日 改正 令和8年1月1日」とあり、本文は改正後の法律名(中小受託取引適正化法)と「協議に応じない一方的な代金決定」を前提に書かれています。改正前後の差分は本稿では突き合わせておらず、判断していません。

ウルスタくんの位置づけ

本稿は取引のルールの話です。私たちがつくっている「ウルスタくん」は賃貸管理のクラウドで、反響取込・顧客管理・書類作成・電子サイン・BB流通を1つの流れにしたものです。取適法の対象判定や、外注先との価格交渉を代行する機能はありません。本稿の「外注先の一覧に資本金と従業員数を足す」「交渉の記録を残す」は表計算とメールで足ります。まずは周知文と指針を一度、自分の目で読むこと。そこが先です。

出典(本文で参照している資料)

本稿の記述は、すべて2026年9月6日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。順位・割合と()内の前回値は資料の表記のままです。

本稿で使った内容資料
毎年9月と3月が価格交渉促進月間(2021年9月から)、調査の仕組み(アンケート・取引Gメン・匿名性)、2026年9月1日更新中小企業庁「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」
2026-0818中第13号・令和8年8月27日・経済産業大臣名、記1〜5、調査規模(30万社・最大3社・官公需最大15万社・最大5者)、発注者リスト経済産業大臣「2026年9月「価格交渉促進月間」の実施について(周知依頼)」(PDF)
2026年6月26日公表、調査期間・回答企業数69,625社・延べ91,233社、交渉90.7%、転嫁率54.2%と要素別、官公需48.4%、現金のみ87.5%経済産業省「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果を公表します」
転嫁率の定義、労務費の交渉72.5%・5.8%、回答企業の声、業種別ランキング(発注企業別・受注企業別)の順位と要素別転嫁率、集計方法の例、取引段階別、支払条件の内訳中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果」(PDF)
5つの取引の定義、建設工事の除外、資本金・従業員数の基準(図2枚)、委託事業者の義務4つと禁止行為12中小企業庁「中小受託取引適正化法」
振興法の性格(支援法)、振興基準と指導・助言・勧奨、改正法の成立(令和7年5月16日)・公布(5月23日)中小企業庁「受託中小企業振興法」
令和5年11月29日策定・令和8年1月1日改正、12の行動、取組事例【不動産賃貸業・管理業】2か所、別添の申込み様式(例)内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(PDF)
2026年8月31日の会員向け掲載、5つのポイント、参考リンク日本賃貸住宅管理協会「【国土交通省】2026年9月「価格交渉促進月間」の実施について」

本稿の「8.0ポイント」「13.2ポイント減」「9.1ポイント減」「1.9ポイント」「1.3ポイント低い」は上記の数字からの本稿の計算であり、資料にその数字はありません。「不動産業・物品賃貸業」の順位を賃貸管理業の順位と読み替えてはいません。取適法の当てはめは一般的な手順を書いたもので、個別の判断はしていません。労務費指針の改正前後の差分は突き合わせておらず、判断していません。