賃貸管理 読了 22分

家賃は、上がっていますか——東京都区部の民営家賃は2.0%、全国は0.7%。8月に出た消費者物価指数を、賃料改定の根拠に使う読み方

8月21日に全国7月分、8月28日に東京都区部8月分の消費者物価指数が公表されました。この月から2025年基準です。民営家賃の前年同月比は、全国0.7%、東京都区部2.0%。総合はどちらも1.9%です。全国では家賃が物価全体の3分の1しか上がっていないのに、設備修繕・維持は4.1%上がっています。オーナーの収支は、家賃より先に修繕費で痩せます。賃料改定の根拠として、どの数字を、どの順番で見せるかをまとめます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
消費者物価 家賃 2026年8月|東京都区部2.0%・全国0.7%
目次

総務省統計局が、8月21日に全国の7月分、8月28日に東京都区部の8月分(中旬速報値)の消費者物価指数を公表しました。この7月分から、指数の基準が2020年から2025年基準に切り替わっています。総合指数は全国が前年同月比1.9%、東京都区部が1.9%。ここまでは新聞の見出しどおりです。賃貸の実務で見るべきなのは、その内訳の「家賃」です。民営家賃の前年同月比は、全国で0.7%、東京都区部で2.0%でした。同じ「1.9%の物価上昇」の下で、家賃の動きは地域で3倍近く違います。そして全国では、家賃が0.7%しか上がっていないあいだに、設備修繕・維持は4.1%上がっています。

8月に出たのは2本。7月分から基準が2025年に変わりました

消費者物価指数は、全国分が翌月下旬、東京都区部分が当月下旬に「中旬速報値」として出ます。東京都区部は全国に先立つ先行指標です。8月に出た2本を並べます。

公表日対象総合生鮮食品を除く総合家賃民営家賃
8月21日全国 2026年7月分102.0(+1.9%)102.1(+1.8%)100.5(+0.5%)100.7(+0.7%)
8月28日東京都区部 2026年8月分(中旬速報値)102.4(+1.9%)102.3(+1.8%)102.1(+1.9%)102.3(+2.0%)

指数は2025年=100、カッコ内は前年同月比です。全国の7月分から「2025年基準指数へ切替え」と公表予定表に明記されており、東京都区部の8月分も2025年基準です。基準が変わると、指数の水準(100.0 前後の数字)は前の基準の数字とそのまま比べられません。前年同月比(%)は比べられます。本稿は前年同月比を軸に読みます。

【要点】家賃まわりの数字だけを抜き出す

2本の冊子から、賃貸の実務に関係する項目だけを抜き出しました。数値はすべて前年同月比です。

項目全国(7月)東京都区部(8月・速報)
総合1.9%1.9%
住居1.0%1.9%
家賃0.5%1.9%
民営家賃0.7%2.0%
 民営家賃(木造)0.2%1.4%
 民営家賃(非木造)0.8%2.1%
持家の帰属家賃0.4%1.9%
公営・都市再生機構・公社家賃0.8%1.5%
設備修繕・維持4.1%2.0%
電気代-0.1%-2.4%
都市ガス代-1.1%-1.6%
家事用消耗品6.3%9.4%

民営家賃の全国0.7%は、木造0.2%と非木造0.8%を合わせた値です。東京都区部の2.0%は、木造1.4%と非木造2.1%です。どちらも非木造のほうが上がり方が大きい——ここは後で戻ります。

全国の民営家賃は0.7%。総合1.9%の3分の1です

全国の総合指数は前年同月比1.9%です。上昇の中身は食料(3.5%)、交通・通信(2.6%)、教養娯楽(2.6%)が引っ張っています。民営家賃は0.7%。総合の上がり方の3分の1ほどです。7月の前月比は0.1%で、月に0.1ポイントずつ積み上がるくらいの速さです。

この0.7%は、全国の平均です。総合の1.9%に対する家賃全体(持家の帰属家賃を含む)の寄与度は0.08ポイントで、物価上昇1.9%のうち家賃が押し上げた分は0.08ポイントしかありません。物価は上がっているが、家賃はほとんど上げていない——全国の平均像はこれです。

「物価が上がっているのだから家賃も上げたい」というオーナーの気持ちは自然ですが、全国の数字だけを持って行くと、入居者側から「家賃は0.7%しか上がっていない」と返されます。全国平均は、家賃を上げる根拠にはなりにくい数字です。使うなら、次の東京都区部のように地域の数字を見ます。

東京都区部の民営家賃は2.0%。総合を追い越しています

東京都区部の8月分(中旬速報値)では、総合が1.9%、家賃が1.9%、民営家賃が2.0%です。東京都区部では、家賃が物価全体と同じ速さで上がっており、民営家賃に限れば総合をわずかに上回っています。寄与度で見ると、総合1.9%のうち家賃の寄与は0.46ポイント。東京都区部の物価上昇の約4分の1は家賃です(0.46 ÷ 1.9 = 約24%。本稿の計算)。

冊子の「総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳」にも、住居の欄に「家賃 1.9%(0.46)……民営家賃 2.0%(0.08)など」と書かれています。外食や生鮮魚介と並んで、家賃が名指しで挙げられています。

東京都区部・民営家賃の前年同月比2026年7月分2026年8月分(速報)
民営家賃1.8%2.0%
 木造0.4%1.4%
 非木造1.9%2.1%
持家の帰属家賃を除く家賃1.8%2.0%

7月分から8月分にかけて、民営家賃は1.8%から2.0%へ広がっています。特に木造が0.4%から1.4%へ動いており、8月の木造の前月比は1.1%です。速報値なので、確報で改定される可能性があります。全国の8月分は9月18日に公表される予定で、東京都区部の8月分の確報もそのときに出ます。

木造と非木造で、上がり方が違います

全国でも東京都区部でも、民営家賃は非木造のほうが上がっています。

民営家賃の前年同月比木造非木造
全国(7月)0.2%0.8%0.6ポイント
東京都区部(8月・速報)1.4%2.1%0.7ポイント

消費者物価指数の家賃は、木造・非木造の別で集計されています。管理物件の構造で分けて、自社の改定実績とこの数字を並べておくと、オーナーごとの説明に使えます。木造アパートのオーナーに「東京都区部の民営家賃は2.0%上がっている」とだけ言うと、そのオーナーの物件の平均像(木造1.4%)より大きい数字を見せることになります。構造別の数字まで下りて話すほうが、あとで齟齬が出ません。

家賃は0.7%、設備修繕・維持は4.1%。オーナーの収支は修繕から痩せます

住居の中分類には「家賃」のほかに「設備修繕・維持」があります。全国7月分では、この設備修繕・維持が前年同月比4.1%です。冊子の「寄与した主な内訳」には、住居の欄に「設備修繕・維持 4.1%(0.13)……外壁塗装費 7.8%(0.04)など」と書かれています。

全国(7月分)前年同月比総合への寄与度
民営家賃0.7%0.01
設備修繕・維持4.1%0.13
 うち外壁塗装費7.8%0.04
家事用消耗品6.3%0.07

全国では、家賃の上がり方(0.7%)に対して、修繕の上がり方(4.1%)が約6倍です(4.1 ÷ 0.7 = 5.9。本稿の計算)。この2つは、オーナーの収支の「収入」と「支出」にそのまま対応します。家賃を据え置いたまま外壁塗装や設備更新の見積もりだけが上がっていけば、収支は確実に痩せます。賃料改定の話をオーナーに切り出すとき、いちばん通じるのは「物価が上がったから」ではなく、「修繕の単価が家賃の6倍の速さで上がっている」という並べ方です。

東京都区部では設備修繕・維持が2.0%で、民営家賃の2.0%と同じ率です。東京都区部は家賃が修繕に追いついているが、全国はまったく追いついていない——同じ資料を地域で読み分けると、こうなります。

5年で見ると、総合14.5%に対して住居は4.4%です

前年同月比だけでは、ここ数年の積み上がりが見えません。冊子の第1表には年平均の指数が載っています。2025年=100として、2021年平均は全国の総合が89.1、住居が96.7。2026年7月は総合102.0、住居101.0です。

全国・2025年=1002021年平均2026年7月上昇率(本稿の計算)
総合89.1102.014.5%
住居96.7101.04.4%
東京都区部・2025年=1002021年平均2026年8月(速報)上昇率(本稿の計算)
総合89.9102.413.9%
住居97.1102.15.1%

5年ほどで物価全体は14〜15%上がっているのに、住居は4〜5%です。「家賃はこの5年、物価の3分の1しか上がっていない」というのが、資料から言える範囲の事実です。ただし「住居」は家賃と設備修繕・維持を合わせた費目で、家賃だけの5年分の指数は冊子には載っていません。本稿は住居で代用しています。この2つの表は指数から本稿が割り算した値で、冊子に「14.5%」「4.4%」という数字が書かれているわけではありません。社内資料に写すときは、元の指数(89.1 と 102.0 など)を添えてください。

「家賃」はCPIの18.6%。ただし民営家賃は2.2%です

消費者物価指数は品目ごとに「ウエイト(万分比)」を持ちます。全国の家賃のウエイトは1,861、つまり総合の18.6%です。ここで注意が要ります。家賃1,861のうち1,634は「持家の帰属家賃」で、実際に払われている民営家賃は217、総合の2.2%にすぎません。

ウエイト(万分比)全国東京都区部
家賃(合計)1,861(18.6%)2,441(24.4%)
 持家の帰属家賃1,634(16.3%)2,048(20.5%)
 民営家賃217(2.2%)383(3.8%)
 公営・都市再生機構・公社家賃10(0.1%)10(0.1%)

持家の帰属家賃とは、持ち家に住んでいる人が「もし借りていたら払うはずの家賃」を推計したものです。実際の支払いはありません。「家賃はCPIの2割を占める」という言い方は、この帰属家賃を含めた数字です。賃貸管理の実務で見る「入居者が実際に払う家賃」は民営家賃で、全国では総合の2.2%、東京都区部でも3.8%です。ニュースで「家賃がCPIを押し上げている」と聞いたときは、帰属家賃の話か、民営家賃の話かを分けて読んでください。

借地借家法32条の「経済事情の変動」に、この指数をどう当てるか

建物の賃料の増減は、借地借家法第32条に根拠があります。条文はこうです。「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」。ただし書きで、一定期間増額しない特約があればそれに従う、とあります。

条文に「経済事情の変動」とある以上、消費者物価指数は増額請求の説明材料になります。ただし、指数が上がっていれば増額が認められる、という条文ではありません。「不相当となったとき」が要件で、増減請求は将来に向かってのみ効きます。協議が調わないときは、請求を受けた側は「相当と認める額」を払えばよく、裁判が確定して不足があれば年1割の利息を付けて払う——これが第2項です。

実務での当て方を整理します。

32条の要素この指数で示せることこの指数では示せないこと
経済事情の変動総合1.9%、5年で14.5%(全国)。民営家賃2.0%(東京都区部)その物件の家賃が不相当かどうか
租税その他の負担の増減設備修繕・維持4.1%、外壁塗装費7.8%(全国)固定資産税の実額(別途、納税通知書)
近傍同種の建物の借賃示せない(指数は平均の動き)周辺の成約事例、募集事例(別途、自社データ)

消費者物価指数が受け持つのは3つの要素のうち「経済事情の変動」と「負担の増減」の傍証で、決め手になる「近傍同種の借賃」は自社の成約データでしか示せません。指数だけで通知書を書くと、相手方から「うちの家賃が不相当だという根拠は」と返されて止まります。通知書の書き方と交渉の流れは賃料増額・賃料改定マニュアル 2026にまとめています。

オーナー報告で並べる順番

オーナーに賃料改定を提案するとき、数字を出す順番で伝わり方が変わります。本稿の勧める順番は次のとおりです。

順番出す数字言い方
1設備修繕・維持 4.1%、外壁塗装費 7.8%(全国7月分)支出側が先に上がっている
2民営家賃 0.7%(全国)/2.0%(東京都区部)収入側は追いついていない、または追いつき始めた
3自社の管理物件の直近1年の改定実績(構造別)市場平均と自社の差
4その物件の近傍同種の成約事例この部屋の相場
5更新時期の一覧と、改定の候補いつ・どの部屋に切り出すか

1と2は公表資料の数字なので、誰が見ても同じです。3以降は自社にしかない数字です。公表資料で「動いている」ことを示し、自社データで「この部屋は」を示す。この順番だと、オーナーは「一般論」と「自分の物件」を分けて聞けます。逆に4から始めると、「その事例は条件が違う」という話に入りやすく、全体の流れが見えなくなります。

家賃10万円の部屋で、いくらの話なのか

率の話を、金額に直しておきます。家賃10万円の部屋を例にします。

前年同月比月額の差年額の差あてはまる数字
0.7%700円8,400円全国・民営家賃(7月)
1.4%1,400円16,800円東京都区部・民営家賃(木造・8月速報)
2.0%2,000円24,000円東京都区部・民営家賃(8月速報)
4.1%4,100円49,200円全国・設備修繕・維持(家賃10万円に当てはめた仮の値)

すべて本稿の計算です。全国平均の0.7%は、10万円の部屋で月700円。東京都区部の2.0%で月2,000円、年24,000円です。最後の行は「修繕費が家賃と同額なら」という仮定を置いた比較で、実際の修繕費の額とは関係ありません。率の差を金額の差として見せるためだけの行です。

月700円の増額を更新のたびに通知するのは、手間と摩擦のわりに実入りが小さい、という判断もありえます。逆に月2,000円なら2年更新で48,000円で、更新事務手数料より大きい額です。率で決めず、金額と更新の手間で決める——この表はそのためのものです。

9月と10月にやること

時期やること使う資料
9月上旬管理物件を木造・非木造で分け、直近1年の改定実績を並べる自社の契約データ
9月上旬オーナー報告のひな形に「民営家賃」「設備修繕・維持」の2行を足す全国7月分・東京都区部8月分の冊子
9月18日全国8月分と東京都区部8月分の確報を確認し、速報値との差を見る統計局の公表ページ
9月中年末〜年度末に更新期日が来る部屋を洗い出し、改定候補に印を付ける更新期日の一覧
10月2日東京都区部9月分(中旬速報値)を確認統計局の公表ページ
10月〜更新6か月前の部屋から、オーナーに改定の可否を確認する本稿の並べ方

公表予定は冊子の末尾に載っています。全国の8月分は9月18日、9月分は10月23日。東京都区部の9月分(中旬速報値)は10月2日、10月分は10月30日です。月に2回、決まった日に数字が更新されるので、オーナー報告の月次に組み込めます。

やりがちな誤解5つ

1.「物価が1.9%上がった」を「家賃が1.9%上がった」と読む。全国の民営家賃は0.7%です。東京都区部ではたまたま民営家賃も2.0%で総合と並びますが、全国では3分の1です。

2.2020年基準の指数の水準と、2025年基準の水準を並べる。7月分から基準が変わりました。100前後の水準は基準ごとに違います。並べるなら前年同月比です。

3.「家賃はCPIの2割」を、民営家賃の話だと思う。2割の大半は持家の帰属家賃です。実際に払われる民営家賃は全国で2.2%、東京都区部で3.8%です。

4.東京都区部の8月分を確定値として社内資料に写す。中旬速報値です。確報は9月18日に出ます。速報と書いてから写してください。

5.指数の上昇だけで増額通知を出す。借地借家法32条は「不相当となったとき」が要件で、指数は「経済事情の変動」の傍証です。近傍同種の借賃は自社の成約データで示す必要があります。

よくある質問

速報値と確報で、どのくらい変わりますか

本稿では断定できません。東京都区部の中旬速報値は「全国結果に先立ち、先行指標として東京都区部(中旬時点)のみの結果を速報として公表するもの」と冊子に書かれています。確報は全国の公表日(8月分なら9月18日)に出ますので、そこで見比べてください。

地方の数字はありますか

冊子には全国と東京都区部しか載っていませんが、統計局のページから「都市階級・地方・都道府県庁所在市別指数」のエクセル表に行けます。本稿はそこまで開いていないので、地方別の数字は書いていません。

民営家賃の指数は、新規契約の家賃ですか、継続中の家賃ですか

本稿で開いた2冊子には、その説明は載っていません。指数の作り方は統計局の解説資料に書かれていますが、本稿はそれを開いていないので、ここでは書きません。

家賃を上げるとき、消費者物価指数を通知書に書いてもよいですか

書けます。ただし、それだけでは足りません。借地借家法32条は「不相当となったとき」を要件にしており、近傍同種の建物の借賃との比較が要ります。指数は「経済事情の変動」を示す資料として添える位置づけです。

次はいつ数字が出ますか

全国の8月分が9月18日、東京都区部の9月分(中旬速報値)が10月2日です。冊子末尾の公表予定表に、2027年3月分まで載っています。

出典

本稿の記述資料
全国7月分の総合1.9%・民営家賃0.7%(木造0.2%・非木造0.8%)・設備修繕・維持4.1%・外壁塗装費7.8%・家事用消耗品6.3%・ウエイト(家賃1,861・帰属家賃1,634・民営家賃217)・年平均指数(2021年 総合89.1・住居96.7)・公表予定表2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分(総務省統計局・PDF)
全国7月分の公表日(8月21日)・ポイント3点消費者物価指数 全国(最新の月次結果の概要)(総務省統計局)
東京都区部8月分(中旬速報値)の総合1.9%・家賃1.9%(寄与度0.46)・民営家賃2.0%(木造1.4%・非木造2.1%)・7月分の民営家賃1.8%・設備修繕・維持2.0%・ウエイト(家賃2,441・帰属家賃2,048・民営家賃383)・年平均指数(2021年 総合89.9・住居97.1)・先行指標としての位置づけ2025年基準 消費者物価指数 東京都区部 2026年(令和8年)8月分(中旬速報値)(総務省統計局・PDF)
東京都区部8月分の公表日(8月28日)消費者物価指数 東京都区部速報(最新の月次結果の概要)(総務省統計局)
総務省としての報道資料(令和8年8月21日)2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分(総務省・報道資料)
借地借家法第32条の条文(借賃増減請求権・第2項)借地借家法(e-Gov法令検索)

上記6本は、本稿の執筆時にすべて実際に開いて内容を確認しています。2本のPDFは「最新月の冊子」のURLで、次の公表日以降は新しい月の冊子に置き換わります。本稿が引いた7月分・8月分の冊子は、統計局の公表ページの「過去の結果」または e-Stat から辿れます。上昇率(14.5%・4.4%・13.9%・5.1%)、倍率(約6倍)、寄与の割合(約24%)、家賃10万円の金額換算は、資料の数値から本稿が計算したもので、資料には載っていません。本文中では「本稿の計算」と明記しています。

書かなかったこと

家賃が上がる理由を書いていません。冊子は指数と寄与度を示すだけで、要因の分析は載っていません。新築供給や建築費との関係を推測して書くと、それが事実として読まれます。

2020年基準と2025年基準の指数の水準を並べていません。基準が変わった月なので、水準の比較はできません。前年同月比だけを使っています。

地方別・都道府県庁所在市別の家賃を書いていません。冊子には載っておらず、エクセル表を開いていないためです。

民営家賃の指数が新規契約と継続契約をどう扱っているかを書いていません。本稿で開いた資料の範囲外です。

「何%上げるべきか」を書いていません。指数は市場平均の動きで、個々の部屋の家賃が不相当かどうかは近傍同種の借賃との比較で決まります。

最後に、この2冊子を一行にしておきます。物価は全国でも東京都区部でも1.9%上がった。家賃は東京都区部で2.0%、全国で0.7%。修繕は全国で4.1%。家賃を据え置いたままにすると、先に痩せるのは修繕の側です。オーナーに切り出すなら、家賃の数字より先に、修繕の数字を出してください。

賃料改定の通知書と交渉の流れは賃料増額・賃料改定マニュアル 2026に、既存住宅の取引量の月次は既存住宅販売量指数 令和8年5月にまとめています。本稿は総務省統計局の公表資料にもとづく一般的な整理であり、個別の賃料改定の可否や額を保証するものではありません。賃貸管理と売買仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。