賃貸管理 読了 11分

【2026年11月】防災庁が事前防災を緊急要請|不動産会社がすること

防災庁が11月2日に事前防災の緊急要請。国交省経由で不動産業界にも周知され、BCPの策定、建物の耐震化や什器の固定、備蓄、帰宅困難者対策が求められています。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
目次

防災庁は発足した2026年11月2日、「事前防災徹底のための緊急要請」を国民・地方公共団体・各府省庁あてに出しました。国土交通省は11月5日、このうち「所管分野の企業・団体等の事前防災徹底」を踏まえた対応を、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)に求め、会員各社への周知を依頼しています。全宅連は11月6日に会員向けのお知らせに掲載しました(全宅連のお知らせ・防災庁の緊急要請のページ)。この記事では、要請に書かれている中身を整理し、賃貸管理会社・仲介会社が自社と管理物件で点検しておくことをまとめます。

発表の中身

防災庁の公表ページによると、緊急要請は令和8年11月2日に、宛先ごとに次の3つの形で出されました(防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」)。

  • 国民向け:防災大臣のメッセージ「国民のみなさまへ」(防総政第4号)。国難級の災害では行政の対応に限りがあるため、一人ひとりが「自らの命は自らが守る」意識で事前防災を徹底するよう求めています。
  • 地方公共団体向け:事務次官名で都道府県知事に通知(市町村あての内容を含む)。防災人材の育成、受援体制の確保、避難生活環境の改善、災害協定、災害中間支援組織、個別避難計画、帰宅困難者対策、応急仮設住宅用地の事前選定の8項目です。
  • 指定行政機関向け:防災大臣名で各府省庁の長に依頼(防総政第6号)。各府省庁の業務継続計画(BCP)の点検・見直し、南海トラフ地震などの基本計画の目標に関わる施策の推進、所管分野の企業・団体等の事前防災の徹底の3つです。

不動産業に関わるのは、3つ目のうち「所管分野の企業・団体等の事前防災徹底」です。国土交通大臣あての文書を受けて、国土交通省不動産・建設経済局不動産業課長が11月5日付で全宅連会長あてに、この項目を踏まえて事前防災の徹底に必要な対応に努めること、都道府県協会と所属会員各社にも同様の対応が図られるよう周知することを依頼しました(国土交通省から全宅連への依頼文(PDF)・防災大臣から国土交通大臣への要請(PDF))。

依頼文は「対応に努める」よう求める形で、法令上の義務や、不動産会社ごとの報告の義務は書かれていません。

日付と宛先の一覧

項目内容
防災庁の発足・要請の日2026年11月2日
企業・団体に関わる文書防災大臣から国土交通大臣ほか各府省庁の長あて「事前防災徹底のための緊急要請」(防総政第6号・令和8年11月2日)
不動産業界への周知国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課長から全宅連会長あて(令和8年11月5日)
全宅連の掲載2026年11月6日(都道府県協会・会員各社への周知)
求められている対応要請の「3.所管分野の企業・団体等の事前防災徹底」を踏まえ、事前防災の徹底に必要な対応に努めること
府省庁の報告実施状況は本年内に報告を求める予定(各府省庁あての文書)
企業・国民の取組の点検企業の事業継続と防災の取組に関する実態調査や、防災に関する世論調査などで点検する(防災庁の公表ページ)

企業・団体に求められていること

各府省庁あての文書の第3項は、所管する企業・団体に次の取組を促すよう求めています(各府省庁あての要請(PDF))。

企業防災の徹底

従業員や顧客の生命・身体の保護を最優先にし、物的被害の軽減と重要な事業の継続・早期復旧を一体で進めることとされています。具体的な取組として挙げられているのは、建物の耐震診断・耐震化、設備・什器の転倒防止、避難経路や救命救助の確保、安否確認の体制、災害時の指揮命令の体制、教育・訓練、食料・飲料水・医薬品・トイレの備蓄、出火・落下・飛散・浸水への対策です。これらの実施状況を定期的に点検することも求めています。

BCPの策定と実効性の確保

区分政府の目標(令和17年まで)令和7年度調査の策定状況
大企業100%75.8%
中堅企業80%54.8%

BCPを作るときや見直すときは、重要な業務と、その復旧時間・復旧水準の目標を定めることとされています。着眼点として、経営の中枢機能の代わりの手段を確保すること、取引先などと連携してサプライチェーン全体で事業を続けること、拠点が使えない・人が足りない・停電するといった「結果として起きる事象」に着目して対応を考えることが挙げられています。

中小企業・小規模事業者の対策

中小企業・小規模事業者には、経済産業省の「事業継続力強化計画」(簡易版のBCP)の認定制度の活用を促すこととされています。計画を作るのが難しい場合は、まず自社の災害リスクを把握し、棚の固定や重いものの落下防止といった基本的な対策を自己点検することから始めるよう求めています。業種や規模を問わず、防災庁が作成した事業継続ガイドラインを参照することとされています。

帰宅困難者対策

首都圏などの大都市圏では、公共交通機関が止まると帰宅困難者が大量に出ることから、災害が見込まれるときは従業員に早めの帰宅や出勤の抑制を呼びかけ、従業員を一定期間事業所にとどめられるよう、物資や資機材の備蓄などの環境を整えることが求められています。

国民向けの要請(入居者に伝える材料)

防災大臣のメッセージ「国民のみなさまへ」は、次の5つを呼びかけています(国民のみなさまへ(PDF))。入居者やオーナーへの案内文を作るときに、国が示した内容としてそのまま使えます。

呼びかけ中身
家屋の耐震化と家具の固定昭和56年以前に建てられた住宅は耐震診断を受ける。費用の負担が大きければ寝室や居間など一部を補強する方法もある。固定していない家具は大地震で倒れるものと考え、固定や配置を見直す
水・食料・携帯トイレ等の備蓄最低3日分、できれば1週間分。飲料水は調理などに使う分を含め1人1日3リットルが目安。携帯用トイレやトイレットペーパーなども備える
ハザードマップと避難先の確認揺れやすさマップや津波ハザードマップで自宅や職場のリスクを知り、避難場所と避難経路を確かめておく
非常持ち出し品の準備避難生活ですぐに必要なもの・ないと困るものを洗い出し、玄関など持ち出しやすい場所に置く
防災訓練への参加地域の防災訓練で避難・安否確認・簡易トイレの利用などを体験し、近所の人との関係をつくっておく

賃貸管理の実務で何をするか

今回の依頼は努力を求めるもので、期限や提出物は示されていません。そのうえで、要請に挙げられた項目に沿って、管理会社が今のうちに点検しておけることは次の5つです。

  1. 自社のBCPに「管理業務」を重要業務として書き込む。要請は、重要な業務と復旧時間の目標を決めるよう求めています。賃貸管理なら、管理物件の被害の確認、入居者からの連絡の受付、オーナーへの報告、家賃の入金確認などのうち、どれを何日以内に再開するかを決めておきます。BCPが重すぎる場合は、要請が示す「事業継続力強化計画」から始める方法もあります。
  2. 事務所の什器の固定・備蓄・安否確認の手順を点検する。書庫や棚の固定、従業員分の水・食料・トイレの備蓄、従業員と家族の安否を確かめる連絡手段を、要請の項目と照らし合わせて確かめます。
  3. 拠点が使えないときの代わりを決める。要請は、拠点の使用不能・要員不足・停電を前提に考えるよう求めています。契約書や鍵の台帳、オーナーと入居者の連絡先を、事務所に入れない日にどこから見られるか、誰が代わりに判断するかを決めておきます。
  4. 管理物件の築年と構造を一覧にする。国民向けの要請は、昭和56年以前に建てられた住宅に耐震診断を勧めています。管理物件のうち該当する建物を一覧にしておくと、オーナーへの耐震診断の案内や、自治体の補助制度を確かめる準備になります。
  5. 入居者への案内と、家具の固定の扱いを決める。入居者に備蓄や家具の固定を案内するときは、国民向けの要請の内容を引用すると伝わりやすくなります。壁に穴を開ける固定具を使ってよいかは、賃貸借契約やオーナーの承諾にかかわるので、案内を出す前に物件ごとの扱いを決めておきます。

水害への備えは、梅雨・大雨前の賃貸物件 水害BCPチェックリストで、地震保険の補償の範囲は地震保険2026の解説で整理しています。

よくある質問

Q1. 不動産会社に、BCPを作る義務ができたのですか

いいえ。国土交通省から全宅連への依頼は、事前防災の徹底に必要な対応に「努める」よう求めるもので、法令上の義務は書かれていません。BCPの策定率の政府目標(令和17年までに大企業100%・中堅企業80%)も、個々の会社に義務を課すものとしては書かれていません。

Q2. 会社ごとに、国へ報告しなければなりませんか

要請で年内の報告を求められているのは、都道府県と各府省庁です。企業向けの取組は、企業の事業継続と防災の取組に関する実態調査などで点検するとされています。不動産会社ごとの報告の手続は、全宅連の掲載や国土交通省の依頼文には書かれていません。

Q3. 小さな管理会社は、何から始めればよいですか

要請は、計画を作るのが難しい中小企業・小規模事業者には、まず災害リスクを把握し、棚の固定や重いものの落下防止などの基本的な対策を自己点検することから始めるよう求めています。そのうえで、経済産業省の事業継続力強化計画の認定制度を使う方法が示されています。

Q4. 防災庁の勧告は、民間の会社にも出されるのですか

各府省庁あての文書は、実施状況に著しい問題がある場合に防災庁設置法第8条第5項にもとづく勧告を行うとしていますが、これは要請の宛先である府省庁についての記述です。民間の会社に勧告が出るとは書かれていません。

出典

この記事は 2026-11-07 時点の情報です。

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