賃貸の仲介手数料は「家賃1か月分が上限」——この覚え方は、半分しか合っていません。居住用建物の貸借の媒介で依頼者の一方から受け取れる報酬は、承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.55倍(税込)までです。1か月分をもらうには、承諾が要ります。そして承諾を取る時点は「契約日」ではありません。
2026年8月9日、全国賃貸住宅新聞の電子版に、グッドルームが仲介手数料を家賃の0.5か月分(税別)で提供し始めたという記事が載りました。キャンペーンではなく常設のサービスです。半額が常設化した市場では、「うちは1か月です」の一言が今まで以上に説明を求められます。そのとき最初に点検すべきなのは、値付けではなく手続きです。
【要点】3行で
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 借主から1か月分 | 受け取れる。ただし媒介の依頼を受けるに当たって承諾を得ていることが条件。得ていなければ上限は借賃の1月分の0.55倍(税込) |
| 承諾の時点 | 契約日に交わした承諾書では遅いと判断された裁判例がある。物件を案内する前に置くのが安全 |
| 半額常設化への対応 | 値下げの前に、承諾の取得時点・承諾書の様式・広告料との線引きを点検する。手続きが崩れていると、値付けの議論に入る前に返還請求のリスクが残る |
告示1552号が定めている数字を、正確に置く
根拠は宅地建物取引業法第46条と、昭和45年10月23日建設省告示第1552号です。第46条は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる」と書き、超過して受け取ることを禁じています。金額の中身は告示にあります。
貸借の媒介について、告示は次のように定めています。
| 区分 | 上限(税込) | 税別換算 |
|---|---|---|
| 依頼者の双方から受ける報酬の合計額 | 借賃の1月分の1.1倍 | 1か月分 |
| 居住用建物の貸借で、依頼者の一方から受ける額 (承諾がない場合) | 借賃の1月分の0.55倍 | 0.5か月分 |
| 同上(媒介の依頼を受けるに当たって承諾がある場合) | 合計1.1倍の枠内で配分自由 | 最大1か月分 |
| 貸借の代理で受ける報酬 | 借賃の1月分の1.1倍 | 1か月分 |
1.1倍・0.55倍という係数は、消費税10%を織り込んだ数字です。税率が8%だった時期の告示は1.08倍・0.54倍でした。古い書式をそのまま使い続けている会社は、ここの数字が合っているかを見てください。
「承諾を得ている場合を除き」の一文が、実務のすべて
条文で実務を縛っているのは、金額ではなく次の一句です。
「当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き」
読み方を分解します。
| 語 | 意味するところ |
|---|---|
| 当該媒介の依頼を受けるに当たって | いつ取るか。媒介の依頼を受ける時点、つまり媒介契約が成立する時点まで |
| 当該依頼者の | 誰から取るか。1か月分を負担させる相手本人から。貸主の承諾は借主の承諾の代わりにならない |
| 承諾を得ている | 何を取るか。0.5か月分を超える額を負担することへの了解。金額が特定されている必要がある |
金額の話ではなく、時点・相手・内容の3点セットで管理する話だと分かります。3つのうち1つでも欠けると、原則の0.55倍に戻ります。
双方合計の枠は、誰から取っても1.1倍
ここを取り違えている会社がまれにあります。借主から1か月分(1.1倍)を受け取ったなら、貸主から報酬を受け取る余地はゼロです。合計の枠が借賃1月分の1.1倍だからです。
元付と客付に分かれる取引でも同じです。1つの取引で業者側が受け取る報酬の総額が、借賃1月分の1.1倍に収まっている必要があります。元付が貸主から0.55倍、客付が借主から0.55倍——これが承諾なしで成立する標準形です。
居住用建物かどうかで、規制の形が変わる
0.55倍の制限がかかるのは居住の用に供する建物の貸借だけです。店舗・事務所・倉庫といった非居住用の建物や、土地の貸借では、この制限はありません。
| 物件の種類 | 一方からの上限 | 双方合計 |
|---|---|---|
| 居住用建物 | 0.55倍(承諾があれば枠内で自由) | 1.1倍 |
| 事業用建物(店舗・事務所等) | 制限なし | 1.1倍 |
| 土地 | 制限なし | 1.1倍 |
事業用の場合は、権利金の授受があるときに権利金を売買代金とみなして計算する方法も選べます(有利なほうを採用できる)。居住用ではこの計算は使えません。
実務で迷うのはSOHO利用や事務所兼住宅です。判断の軸は用途であって契約書のタイトルではありません。居住の用に供する部分が主であれば居住用として扱うのが安全側の運用です。迷ったら安全側に倒す、を社内ルールにしてください。
承諾の時点 — 契約日では遅いと判断された裁判例
「媒介の依頼を受けるに当たって」がいつを指すのか。これを正面から判断したのが、東京地方裁判所 平成25年1月25日判決です。控訴審の東京高等裁判所も、この判断を支持しました。
争点は単純でした。賃借人が支払った家賃1か月分の仲介手数料について、承諾を取った時点が遅すぎたのではないか。裁判所は遅すぎたと判断し、0.5か月分を超える部分の返還を命じました。
事件の経緯を、日付で追う
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2012年12月28日 | 賃借人が入居申込書を提出 |
| 2013年1月8日 | 賃借人が契約する意思を担当者に伝える |
| 2013年1月10日 | 担当者から「1月20日に契約を締結する」と連絡 |
| 2013年1月20日 | 賃貸借契約を締結。この日に手数料1か月分の承諾書を取得 |
業者側は「契約日に承諾書をもらっているのだから問題ない」と主張しました。裁判所はこれを退けています。
裁判所が引いた線は「媒介契約が成立した時点」
裁判所は、遅くとも契約締結日を連絡した1月10日には媒介契約が成立していたと認定しました。「媒介の依頼を受けるに当たって」の承諾は、その時点までに得られていなければならない。1月20日の承諾書は、成立後に取った書面にすぎない、という筋です。
申込書を受け取り、案内をし、条件を詰め、契約日を伝える——この一連の流れのどこかで、媒介契約はすでに成立しています。契約日に机の上で交わす承諾書は、その後始末でしかありません。
実務への含意は明快です。承諾は、案内に出る前に取る。それ以外に安全な置き場所はありません。
自社の業務フローの、どこに承諾を置くか
反響から契約までを段階に分け、それぞれの時点で承諾を取った場合にどう評価されうるかを整理します。
反響から契約までの各段階と、承諾取得の可否
| 段階 | 承諾の有効性 | コメント |
|---|---|---|
| 反響受付・初回ヒアリング時 | 最も安全 | まだ媒介契約は成立していない。ここで説明し書面を残すのが本筋 |
| 内見予約の確定時 | 安全 | 案内という具体的な業務に入る前。実務上いちばん組み込みやすい |
| 内見の当日、現地に着く前 | おおむね安全 | ただし「案内してから話す」運用になりやすく、現場の裁量に依存する |
| 申込書の受領時 | 危うい | この時点で媒介契約成立と評価される余地が十分にある |
| 審査通過の連絡時 | 危うい | 裁判例の事案では、これに近い時点で成立と認定された |
| 重要事項説明・契約締結日 | 遅い | 裁判例で否定された時点。ここだけで運用している会社は要見直し |
推奨は「内見予約の確定時までに、書面で」です。反響直後は情報が足りず金額を特定しづらい一方、内見予約の時点なら対象物件と賃料が決まっており、金額を書けます。
承諾書に書くこと、書かないこと
| 書くこと | 理由 |
|---|---|
| 報酬の額(賃料の1か月分+消費税、または具体的な金額) | 「上限まで」では金額が特定されない |
| 0.5か月分が原則である旨と、それを超えて負担することへの承諾 | 何に同意しているのかが本人に伝わっていない書面は弱い |
| 対象物件(または「当社の媒介により成約に至った物件」) | どの取引の話かを特定する |
| 承諾した日付と署名 | 時点の立証がここにかかる |
| 書かないこと | 理由 |
|---|---|
| 「一切異議を申し立てない」等の包括的な放棄条項 | 消費者契約法上の問題を招く。承諾の有効性とは別の争点を増やすだけ |
| 報酬以外の費用を混ぜた総額表示 | 鍵交換代や保証料と混ぜると、報酬額が特定されない |
| 日付欄の空欄 | 後から埋める運用は、時点の立証をむしろ壊す |
口頭の承諾は有効か
告示は書面を要求していません。理屈のうえでは口頭の承諾も承諾です。ただし、争いになったときに「その時点で承諾があった」ことを立証するのは業者側です。口頭では立証手段がありません。
加えて、宅地建物取引業法第37条の2以下の書面交付義務とは別の話であることにも注意してください。媒介契約書(34条の2書面)は売買・交換について義務づけられたもので、貸借の媒介には交付義務がありません。だからこそ、貸借では承諾書が唯一の記録になります。義務がないことと、残さなくてよいことは違います。
申込書の裏面に紛れ込ませた一文は、承諾になるか
結論から言えば、勧められません。理由は3つあります。
1つめ、時点が遅い。申込書の受領時は、すでに媒介契約が成立していると評価される余地があります。
2つめ、認識が伴わない。裏面の約款に紛れた一文について、本人が「0.5か月分を超える負担に同意した」と認識していたかは、争えば争点になります。
3つめ、説明の機会を失う。これが実務的にはいちばん大きい。承諾を取る場面は、自社が1か月分をもらう理由を伝えられる唯一のタイミングでもあります。裏面に隠せば、その機会ごと捨てることになります。
貸主から受け取る場合の整理
借主から0.55倍を超えて受け取らない運用にするなら、残りは貸主から受け取ることになります。このとき確認すべきは次の3点です。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 合計枠 | 貸主・借主から受ける報酬の合計が借賃1月分の1.1倍を超えないこと |
| 貸主側の承諾 | 貸主から0.55倍を超えて受け取るなら、貸主本人の承諾が必要(居住用建物の場合) |
| 管理受託との区別 | 管理料や更新事務手数料は媒介報酬ではない。混同した請求書は、後で説明できなくなる |
広告料(AD)と報酬の線引き
実務でいちばん曖昧に運用されているのがここです。告示は、報酬とは別に受け取れるものを限定しています。
受け取れるのは、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額と、依頼者の特別の依頼により支出を要する特別の費用で、事前に依頼者の承諾があるものです。この2つに当たらない金銭は、名目が何であれ報酬とみなされ、上限規制がかかります。
受領できるもの、できないもの
| 名目 | 扱い | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 貸主の依頼で出した個別広告の実費 | 報酬とは別に受領可 | 依頼に基づく広告料金に当たる |
| 貸主の依頼による遠隔地への出張費 | 報酬とは別に受領可 | 特別の依頼による特別の費用に当たる(事前承諾が要る) |
| 通常のポータル掲載費用 | 報酬に含まれる | 依頼の有無にかかわらず日常的に行う営業活動 |
| 名目だけ「AD」とした成約謝礼 | 報酬に含まれる | 広告の実施と対応していない |
| 借主から受け取る「事務手数料」「書類作成料」 | 報酬に含まれる | 媒介業務そのものの対価 |
借主から0.55倍の報酬を受け取り、さらに「事務手数料」を上乗せしている場合、それは合算して0.55倍の枠で判定されます。枠を超えていれば超過受領です。名目を分けても枠は分かれません。
元付と客付で枠を分け合うときの決め方
合計1.1倍という枠は、業者の数で増えません。元付と客付が入る取引では、この枠を2社で分けることになります。実務では次の3パターンに収れんします。
| 配分 | 元付が受ける報酬 | 客付が受ける報酬 | 成立条件 |
|---|---|---|---|
| 標準形 | 貸主から0.55倍 | 借主から0.55倍 | 承諾は不要 |
| 客付が1か月 | 0 | 借主から1.1倍 | 借主の承諾が必要 |
| 元付が1か月 | 貸主から1.1倍 | 0(ADで受ける) | 貸主の承諾が必要。客付が受けるADは、広告の実施と対応している必要がある |
3つめの形で、客付が受け取る金銭を「AD」と呼びながら実際には広告を出していない場合、それは報酬とみなされます。元付が貸主から1.1倍を受け取っているなら、枠はすでに埋まっています。埋まった枠の上に乗せた金銭は、超過受領です。
自社が客付に回ることが多い会社は、受け取っているADについて「どの媒体に、いつ、いくらで出稿したか」を記録に残せるかを点検してください。記録がないなら、それは報酬です。
更新料・更新事務手数料は、この枠の外にある
混同されやすいので分けておきます。告示1552号が規制しているのは媒介・代理の報酬であり、賃貸借契約の更新に関する事務はこれに当たりません。更新事務手数料は媒介報酬の上限規制の対象外です。
ただし、規制の外にあることと、いくらでも取ってよいことは違います。更新事務手数料は借主との合意(契約条項)が根拠になるため、賃貸借契約書または管理受託契約に定めがなければ請求できません。金額の妥当性についても、消費者契約法上の争いになった事例があります。
| 金銭 | 告示の上限規制 | 根拠になるもの |
|---|---|---|
| 仲介手数料(媒介報酬) | かかる | 宅建業法46条・告示1552号の枠内での合意 |
| 更新料(貸主が受ける) | かからない | 賃貸借契約の特約 |
| 更新事務手数料(業者が受ける) | かからない | 賃貸借契約または管理受託契約の定め |
| 鍵交換代・室内消毒代 | かからない | 個別の合意。実費と役務の対応が要る |
長期の空き家なら、貸主から2.2か月分まで届く
2024年7月1日施行の告示改正で、長期の空家等の貸借の媒介については、貸主から受け取れる報酬を借賃の2月分の1.1倍(2.2か月分相当)まで引き上げられるようになりました。ただし、媒介契約に際してあらかじめ依頼者に説明し、合意しておく必要があります。ここでも先に置くのは手続きです。詳細は低廉な空家等の媒介報酬特例を施行2年の実務から整理した記事にまとめています。
借主から1か月分をもらうことに神経を使うより、対象になる物件で貸主側の枠を正しく使うほうが、収益にも説明のしやすさにも効きます。
半額常設化を、損益の組み替えとして読む
グッドルームが打ち出したのは値引きではありません。損益計算書の組み替えです。
| 項目 | 従来型 | 半額常設型 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 家賃1か月分(税別) | 家賃0.5か月分(税別) |
| 接客 | 店舗来店が前提 | オンライン相談とチャットに集約 |
| 内見 | 件数の上限なし | 事前入力ですり合わせ、最大2件 |
| ストック収益 | なし | 月額980円(税込)の会員制 |
フロー収益を半分に落とし、削った固定費とストック収益で埋める。値引き合戦なら体力勝負でいつか終わりますが、構造の組み替えは終わりません。ここが身構えるべきところです。
家賃10万円で、入居者の財布はいくら違うのか
| 家賃 | 1か月分(税込1.1倍) | 0.5か月分(税込0.55倍) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 7万円 | 77,000円 | 38,500円 | 38,500円 |
| 8万円 | 88,000円 | 44,000円 | 44,000円 |
| 10万円 | 110,000円 | 55,000円 | 55,000円 |
| 13万円 | 143,000円 | 71,500円 | 71,500円 |
差額は家賃の0.55か月分です。鍵交換代や保証委託料と並べたとき、初期費用の明細の中でいちばん金額が大きく、いちばん説明を求められる項目になります。
家賃そのものが上がり続けている局面であることも、この話を重くしています。首都圏では全エリア・全面積帯で募集賃料が前年を超えました(2026年春繁忙期の総括と首都圏の空室不足)。家賃が上がった分、初期費用の絶対額も膨らんでいます。
中小仲介が取れる3つの構え
1つめ、手数料を下げないなら、理由を1行に落とす。内見に同行して現地で日当たりと騒音を確かめる、管理会社としてその建物の修繕履歴を知っている、審査が落ちたときに次の保証会社へ即座に組み替える。どれもオンライン完結では提供しづらい価値ですが、言語化していないものに値札は付きません。営業トークとして口が回るかではなく、募集図面と申込時の説明に一行として書けるかで判断してください。
2つめ、値下げより先に支払いの柔軟さで戦う。初期費用が用意できずに流れる申込は、審査落ちより多い月があります。カード決済や後払いの案内を整えるだけで、賃料も敷礼も傷つけずに歩留まりが上がります(賃貸初期費用のキャッシュレス決済対応2026)。手数料を半分にするより、ずっと安く効きます。
3つめ、無駄な内見を自分たちも減らす。これは相手の勝ち筋をそのまま借りる話です。反響を受けた時点で条件と予算と入居希望日を押さえ、案内を3件以内に絞る。1件成約あたりの内見回数を数えている会社はまだ少数です。数えれば下がります。
「なぜ1か月なんですか」に、何と答えるか
答えてはいけない答えが3つあります。
| 言ってはいけない | なぜ |
|---|---|
| 「相場です」 | 相場は理由ではない。半額の会社が現れた時点で相場も動く |
| 「法律で1か月までと決まっているので」 | 上限は上限であって、請求してよい根拠ではない。原則は0.55倍だと知っている相手には逆効果 |
| 「大家さんから取れないので」 | 自社の都合であって、借主が負担する理由にならない |
代わりに置くのは、その物件・その顧客に対して自社が何をするかの具体です。「この建物は当社が管理しており、退去のときの原状回復の基準も当社の基準で判断します」「入居後の設備不具合は当社の窓口が一次対応します」。1か月分の対価は、契約までの手間ではなく入居後まで含めた関わりで説明するほうが通ります。
やってはいけない4つ
| やってはいけないこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 契約日に承諾書を交わして済ませる | 裁判例で否定された時点。0.55倍を超える部分の返還を求められうる |
| 「事務手数料」で報酬の枠を回避する | 名目を分けても枠は分かれない。合算して超過受領と評価される |
| 広告の実施を伴わないADを受け取る | 報酬に含まれ、合計1.1倍の枠を圧迫する |
| 半額の告知だけ先に出し、対象物件を絞る | 今回の報道が問題視した「不透明な半額」そのもの。景品表示法上の問題にも発展しうる |
今週やること
1. 承諾書を取っている時点を、実際の書類で確かめる。直近10件の承諾書の日付と、賃貸借契約書の日付を並べてください。同日なら、運用を変える必要があります。
2. 借主から受け取っている金銭を、全部書き出す。仲介手数料、事務手数料、書類作成料、更新事務手数料。報酬に当たるものの合計が0.55倍を超えているなら、承諾がなければ超過受領です。
3. 直近3か月で他社に流れた申込の理由を並べる。「手数料が高い」と言われた件が何件あったか。ゼロならまだ猶予があります。1件でもあれば、それは先行指標です。
1つめをやると、2つめと3つめの優先順位が自動的に決まります。
よくある質問
Q. 承諾書がない過去の契約は、全部返還しなければいけませんか。
A. 自動的にそうなるわけではありません。承諾の有無は個別に判断されますし、請求されて初めて争いになります。ただし、これから締結する契約について運用を直さない理由にはなりません。
Q. 借主が「半額の会社があるから下げてほしい」と言ってきました。
A. 下げるかどうかは経営判断です。ただし、その場で下げると、同じ物件・同じ月の他の入居者との間で説明がつかなくなります。下げるなら条件を決めて全件に適用する。個別対応にすると、担当者ごとに値段が違う会社になります。
Q. 事業用の物件なら、借主から1か月分もらっても承諾は不要ですか。
A. 居住用建物ではないので0.55倍の制限はかかりません。ただし双方合計1.1倍の枠は同じです。貸主からも受け取っているなら、合計で判定してください。
Q. 電子的な承諾(メールやフォームの同意)でも構いませんか。
A. 告示は方式を定めていません。時点と内容が記録として残るなら、電子でも問題ありません。むしろ日時が自動で残る分、紙より立証はしやすくなります。
出典
| 事項 | 出典 |
|---|---|
| 報酬額の上限、承諾の要件 | 宅地建物取引業法第46条、昭和45年10月23日建設省告示第1552号 |
| 長期の空家等の貸借に係る特例 | 同告示の令和6年改正(令和6年7月1日施行) |
| 承諾の時点に関する判断 | 東京地方裁判所 平成25年1月25日判決(控訴審も同旨) |
| 半額の常設サービス | gooddaysホールディングス/グッドルームのプレスリリース(2026年6月17日)、全国賃貸住宅新聞の報道(2026年8月) |
本稿の数値のうち、家賃別の差額は税込係数1.1倍・0.55倍を用いて筆者が計算した派生値です。実際の請求額は消費税の端数処理の方法により1円単位で前後します。
また、承諾の有効性に関する判断は事案ごとの個別事情に左右されます。本稿は一般的な整理であり、個別の案件については顧問弁護士または所属団体の相談窓口にご確認ください。賃貸仲介と管理の実務については、ウルスタのコラムで継続的に書いています。


