建築士法第22条の3の3の改正で、設計・工事監理の受託契約を書面で相互に交付する義務から「延べ面積300㎡超の新築」の要件がなくなり、2027年(令和9年)4月1日から建築士が行う契約すべてが対象になります。施行期日を定める政令は2026年10月6日に閣議決定され、10月9日に公布される予定です。重要事項説明(第24条の7)は、もともと面積を問わず必要です。
いつから施行されるか|契約の部分は2027年4月1日
建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)は、2026年7月31日に公布されました。施行は2段階で、契約の適正化に関する部分は公布から1年以内、資格要件の見直しは公布から3年以内の、それぞれ政令で定める日とされていました。
国土交通省は2026年10月6日、「建築士法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」と「建築士法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されたと発表しました。改正法附則第1条第2号に掲げる規定の施行期日を令和9年4月1日とするもので、公布は10月9日の予定です。発表資料は、建築士が行う設計又は工事監理に係る全ての設計受託契約又は工事監理受託契約の書面契約義務化と、見積書作成の努力義務化等が施行されるとしています。
| 内容 | 主な条文 | 施行日 |
|---|---|---|
| 書面の相互交付の対象を、面積を問わず全ての設計・工事監理受託契約に拡大 | 第22条の3の3 | 2027年4月1日 |
| 発注者が見積書の内容なども考慮して適正な委託代金で契約するよう努める | 第22条の3の4 | 2027年4月1日 |
| 建築士事務所の開設者が報酬の算定根拠を示す見積書を作るよう努める | 第24条の10(新設) | 2027年4月1日 |
| 一級・二級・木造建築士の資格要件の見直し、建築設備士の登録制 | 第2条第5項、第4条、第14条、第15条 | 公布から3年以内の政令で定める日(2026年10月7日時点で未定) |
第22条の3の3で何が変わるか
現行の第22条の3の3は、見出しが「延べ面積が三百平方メートルを超える建築物に係る契約の内容」で、第1項は延べ面積が300㎡を超える建築物の新築に係る設計受託契約又は工事監理受託契約の当事者に、書面の相互交付を求めています。増築・改築・大規模の修繕などは、第3項で新築とみなして同じ扱いにしています。
改正法は次のように改めます。
- 見出しを「設計受託契約等の内容」に変える。
- 第1項から「延べ面積が三百平方メートルを超える建築物の新築に係る」を削り、契約に「建築士が行う設計又は工事監理に係るものに限る」という限定を加える。
- 新築とみなす第3項を削る。
国土交通省の概要は、対象を「面積等を問わず、設計又は工事監理の委託を受けることを内容とする全ての契約に拡大」と説明しています。300㎡以下の建物の設計や、規模の小さい改修の設計・工事監理も、建築士が行うものであれば書面の相互交付が必要になります。
書面に書く6項目
記載事項は第22条の3の3第1項各号で、改正後も同じ6項目です。書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付します。相手方の承諾を得れば、電磁的方法で提供することもできます。
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 設計受託契約の場合は、作成する設計図書の種類 |
| 2 | 工事監理受託契約の場合は、工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法 |
| 3 | 設計又は工事監理に従事する建築士の氏名、資格の別、構造・設備の専門資格の有無 |
| 4 | 報酬の額及び支払の時期 |
| 5 | 契約の解除に関する事項 |
| 6 | その他国土交通省令で定める事項 |
重要事項説明(第24条の7)と300㎡の関係
「300㎡以下なら重要事項説明は要らない」と受け取られることがありますが、そうではありません。第24条の7は、建築士事務所の開設者が設計受託契約又は工事監理受託契約を建築主と締結しようとするときに、あらかじめ管理建築士等に書面を交付して説明させることを求めています。条文に面積の要件はありません。
面積の要件があったのは第22条の3の3の「契約書面の相互交付」で、今回なくなるのもこの部分です。3つの書面を整理すると次のとおりです。
| 書面 | 条文 | 現行 | 2027年4月1日以後 |
|---|---|---|---|
| 契約前の重要事項説明書 | 第24条の7 | 面積を問わず必要 | 変わらない |
| 契約書面の相互交付 | 第22条の3の3 | 延べ300㎡超の新築等に限る | 建築士が行う設計・工事監理の契約すべて |
| 契約締結後の書面交付 | 第24条の8 | 面積を問わず必要 | 相互交付をした場合は不要(第22条の3の3第5項) |
第22条の3の3第5項は、第1項の書面を相互に交付した場合は第24条の8第1項を適用しないと定めています。改正後は相互交付の対象が広がるため、建築士が行う契約では、相互交付した契約書面が第24条の8の書面を兼ねる形が基本になります。改正法の条文に、第24条の7と第24条の8を改める規定は見当たりません。
重要事項説明の際は、管理建築士等が建築士免許証又は免許証明書を提示します(第24条の7第2項)。
施行前に結んだ契約はどうなるか
改正法附則第4条は、改正後の第22条の3の3を、附則第1条第2号の規定の施行の日以後に締結される設計受託契約又は工事監理受託契約に適用し、同日前に締結された契約は従前の例によるとしています。
2027年3月31日までに結ぶ300㎡以下の案件の契約は、現行の扱いのままです。4月1日以後に結ぶ契約から新しい扱いになります。年度をまたぐ発注は、契約日がどちらになるかを先に確認してください。
違反したときの扱い
現行の第26条第2項第1号は、第22条の3の3第1項から第4項まで又は第24条の2から第24条の8までの規定に違反したときを、建築士事務所の監督処分の事由にしています。処分は、戒告、1年以内の期間を定めた事務所の閉鎖命令、登録の取消しです。名宛人は建築士事務所の開設者です。
相互交付は双方が署名又は記名押印して渡し合う形なので、発注者が書面のやり取りに応じなければ整いません。発注する側の段取りも問われます。
見積書の努力義務(第24条の10)と発注者の努力義務(第22条の3の4)
新設の第24条の10は、建築士事務所の開設者が設計等の業務に係る契約を締結しようとするときは、報酬の算定の根拠を明らかにするための見積書を作成するよう努めなければならないとしています。努力義務です。
対象は「設計等の業務」で、第22条の3の3の設計・工事監理より広く、第23条第1項の設計等の業務(建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査・鑑定、建築に関する法令に基づく手続の代理など)を含みます。耐震診断や劣化調査、確認申請の代理などを依頼するときも、見積書の提示を受ける場面が増えると考えられます。
第22条の3の4は、設計等の委託をしようとする者に対し、報酬の基準に準拠するだけでなく、見積書の内容その他の契約に係る事情を考慮して適正な委託代金で契約を締結するよう努めることを求める形に改められます。発注者側にも努力義務がかかります。
報酬の基準
ここでいう報酬の基準は、令和6年国土交通省告示第8号(令和6年1月9日)です。平成31年国土交通省告示第98号に代わるもので、技術的助言(令和6年1月9日 国住指第307号)が出ています。算定方法は、実費を積み上げる実費加算方法と、略算表を使う略算方法の2つです。見積書を受け取ったら、どちらの考え方で積算されているかを確認すると、内容を比べやすくなります。
資格要件の見直し(公布から3年以内)
担い手の確保に向けた資格要件の見直しは、公布から3年以内の政令で定める日に施行されます。2026年10月7日時点で施行日は決まっていません。
| 項目 | 改正の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 一級建築士試験 | 卒業見込みで指定科目を修得した在学中の受験を可能にする | 第14条第2号 |
| 二級建築士から一級建築士の免許 | 二級建築士としての実務経験4年を2年に短縮 | 第4条第2項第4号 |
| 二級・木造建築士試験 | 在学中の受験を可能にする。建築学科を卒業していない人の受験に必要な実務経験を7年から2年に短縮 | 第15条第2号・第4号 |
| 二級・木造建築士の免許 | 実務経験7年を4年に短縮 | 第4条第4項第4号 |
| 建築設備士 | 国土交通大臣が定める機関への登録を要件にする。受験時の実務経験は不要に | 第2条第5項 |
施行までに発注側で準備すること
不動産会社や管理会社が建物の改修設計、大規模修繕の工事監理、耐震診断などを発注する場合の、手順の例です。
| 順番 | やること | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 発注の棚卸し | 設計、工事監理、耐震診断、劣化調査、確認申請の代理などを、相手先と規模ごとに一覧にする |
| 2 | 書面なしの発注を数える | 見積書と注文書だけで進めている設計・工事監理を洗い出す |
| 3 | 署名・押印の決裁を決める | 誰がどの金額まで契約書面に署名できるかを決めておく |
| 4 | 電磁的方法を使うか決める | 電子契約で交わす場合は、相手方の承諾を得る手順を決める |
| 5 | 設計図書の種類を言葉にする | 「いつもの一式」ではなく、どの図面を作ってもらうかを書けるようにする |
| 6 | 見積書の見方をそろえる | 令和6年告示第8号の考え方で、業務量と報酬の関係を確認する担当を決める |
新たに書面が必要になる発注の例
建築士が行う設計・工事監理であることを前提にした例です。
| 発注の例 | 現行 | 2027年4月1日以後の契約 |
|---|---|---|
| 延べ面積が300㎡以下の木造アパートの間取り変更の設計 | 相互交付の義務なし(重要事項説明は必要) | 相互交付が必要 |
| 延べ面積が300㎡以下の店舗の内装改修の設計 | 相互交付の義務なし(重要事項説明は必要) | 相互交付が必要 |
| 延べ面積が300㎡を超える建物の新築の設計 | 相互交付が必要 | 相互交付が必要 |
| 建築士が関わらない設計 | 対象外 | 対象外 |
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このテーマの全体像は「不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法」にまとめています。
よくある質問
Q1. 建築士法第22条の3の3の改正はいつからですか。
2027年(令和9年)4月1日です。2026年10月6日に施行期日を定める政令が閣議決定され、10月9日に公布される予定です。施行日以後に締結される契約に適用されます。
Q2. 300㎡以下でも重要事項説明は必要ですか。
必要です。第24条の7の重要事項説明には、現行でも面積の要件がありません。今回なくなるのは、第22条の3の3の契約書面の相互交付にあった300㎡超の要件です。
Q3. 施行前に結んだ契約も書き直す必要がありますか。
改正法附則第4条で、施行日前に締結された契約は従前の例によるとされています。2027年3月31日までに結んだ契約は、現行の扱いです。
Q4. 建築士でない人に設計を頼んだ場合も対象ですか。
改正後の第22条の3の3は、建築士が行う設計又は工事監理に係る契約に限っています。建築士が関わらない契約は、この条文の対象外です。
Q5. 設計料が上がるということですか。
法律は報酬の額を決めていません。改正は、見積書で算定の根拠を示し、発注者もそれを考慮して適正な委託代金で契約するよう努める仕組みです。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省 報道発表「改正建築士法の施行に伴う関係政令を閣議決定」(2026年10月6日)
- 建築士法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令 案文・理由
- 国土交通省「建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)について」
- 国土交通省「建築士法の一部を改正する法律」の概要
- 建築士法の一部を改正する法律(附則第1条、第4条)
- 国土交通省「設計、工事監理等に係る業務報酬基準について」
- 建築士法(第22条の3の3、第22条の3の4、第23条、第24条の7、第24条の8、第26条)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。