不動産会社の業務改善 読了 25分

「想定利回り」と書いたら、その数字の出どころを書面に書く——不動産特定共同事業法施行規則が8月21日に改正、既存事業者の猶予は11月30日まで

「想定利回り8%」と書いたら、その8%がどこから来たのかを契約前の書面に書く。令和8年8月21日に公布・施行された不動産特定共同事業法施行規則の改正は、ひとことで言えばそういう改正です。もともと不特法には「合理的な根拠を示さずに予想利回りを表示してはならない」という規制がありました。今回はそれを一歩進めて、根拠となる不動産取引の額、物件を特定する情報、取引態様、そしてその取引が本当に行われたのか・行われる見込みなのかまでを、書面の記載事項として法令に書き込んだ。対象は許可業者だけではありません。規則71条の準用により、空き家や古民家の再生でクラウドファンディングを使う小規模不動産特定共同事業者にも同じ内容が及びます。既存事業者には経過措置があり、令和8年11月30日までは従前の例によることができる。つまり実務上の期限は12月1日です。何がどう増えたのかを、書面の項目単位で整理しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
利回りを出すなら根拠まで書面に|不特法・契約前書面の改正2026
目次

「想定利回り8%」と書くなら、その8%の出どころまで書面に書く。令和8年8月21日(金)、不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令が公布され、同日施行されました。あわせて「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」と「電子取引業務ガイドライン」も改正されました。ただし現場が身構えるべき日付は12月1日です。既存の許可業者・登録業者には経過措置があり、契約前書面・財産管理報告書・ホームページ掲載事項の3点は、令和8年11月30日までは従前の例によることができるからです。

施行は8月21日。ただし現場の期限は12月1日

報道発表の「2.スケジュール」は簡潔です。公布・施行/発出・適用:令和8年8月21日(金)。続けて「※一部規定について経過措置があります」。この一行が実務の全部です。

附則を読むと日付が3つに割れています。本体は公布の日から施行。提出部数を定める第9条と第17条第2項の改正は令和8年10月1日から施行。第40条(後述の売却価格の話)は令和8年12月1日以後に締結される契約に係る対象不動産の売却等について適用。そして附則第3条が、この改正でいちばん効きます。

附則第3条は、施行の際に現に法第3条第1項の許可または法第41条第1項の登録を受けている者について、新規則第43条・第50条・第55条第1項の適用は令和8年11月30日までの間は、なお従前の例によることができるとしています。「できる」であって「する」ではない。早く対応してもよいが遅くとも11月30日まで、という書き方です。12月1日に募集を開始する商品から、新しい書面でなければ通りません。

【要点】いま押さえる3点

押さえること根拠
利回りを表示したら、その根拠となる不動産取引を1件ずつ書面に書く。「相場から」「過去実績から」では足りない新規則43条2項6号ハ。取引の額、対象不動産を特定する事項、取引態様の別、予想である旨、そしてその取引が行われた根拠または行われると見込む根拠
鑑定評価を取っていないなら、取っていない理由を書く。価格の妥当性は「書かない」という選択肢がなくなった新規則43条1項18号・2項5号。鑑定がない場合は理由に加え、近傍同種の価格水準または宅建業者が根拠を明らかにして述べた意見
期限は8月21日ではなく12月1日。既存事業者は11月30日まで従前の例によることができる命令附則第3条。許可業者と小規模不特事業者の登録業者の双方が対象

誰が対象か——小規模不特事業者も同じ土俵に立つ

「うちは不特法の許可なんて持っていない」で読み飛ばせる話ではありません。新規則第71条が第43条・第50条・第55条を含む規定を小規模不動産特定共同事業について準用すると定め、附則第3条は経過措置の対象を「法第3条第1項の許可又は法第41条第1項の登録を受けている者」と書いたうえ、括弧書きで「これらの規定を新規則第71条において準用する場合を含む」と明記しています。小規模も同じ12月1日です。

小規模不動産特定共同事業は平成29年12月に創設された登録制の枠組みです。国交省のパンフレットによる主な要件は次のとおり。

項目小規模第1号事業者
手続主務大臣または都道府県知事による登録
資本金1,000万円以上
純資産純資産 ≧ 資本金または出資の額 × 90/100
免許宅地建物取引業の免許
投資家から受けられる出資の合計額1億円以下
投資家一人あたりの出資額100万円以下(特例投資家は1億円以下)

許可制の本体側の資本金要件は第一号1億円、第二号1,000万円、第三号5,000万円、第四号1,000万円です。古民家や空き店舗の再生に小口の資金を集める文脈で小規模の登録を検討してきた会社は少なくありません(空き家側の制度は空き家の仲介手数料特例で整理しています)。今回の改正が変えたのは、その入口ではなく出す書面の中身です。

なぜ今か——一般投資家が4年で9倍近くに増えた

背景は、令和7年8月にとりまとめられた「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理」です。その概要資料の数字が動機をそのまま説明しています。運用中商品の一般投資家参加者数は2019年に3.4万人、2023年に29.7万人。うちインターネット上の契約を通じた参加者は2019年が0.7万人、2023年が20万人(国土交通省「不動産証券化の実態調査」より作成)。

対面なら疑問はその場で聞けました。画面上で申し込む形になると、書面に書いていないことは誰にも聞かれないまま契約が成立します。改正が「書面に書く事項の追加」に集中しているのはそのためです。中間整理が挙げた制度充実の方向性4つのうち、「一般投資家向けの情報開示の充実」と「対象不動産の売却価格等における公正性の確保」が今回の規則改正で形になりました。

契約前書面に足されたもの(規則43条)

法第24条第1項は、契約が成立するまでの間に相手方へ書面を交付して契約内容等を説明することを事業者に義務づけています。その説明事項を定めるのが規則第43条です。今回追加されたのは大きく7つ。

追加された事項条項
利回り等を表示した場合の、その根拠となる不動産取引の内容と蓋然性2項6号(1項22号関係)
対象不動産の価格を妥当と判断する根拠1項18号・2項5号
利害関係人取引を行う場合の、取引額・賃料額を妥当と判断する根拠1項13号ニ・ホ、2項1号〜3号
出資される金銭の使途1項20号ホ
工事完了前の物件の場合の、許可等の処分・資金計画・工期・完成時の形状構造1項16号の2
対象不動産が水害ハザードマップ上にある場合のその内容1項17号ト
建物状況調査の有効期間をRC造・SRC造の共同住宅等は2年に1項17号リ

利回りを表示したら、根拠となる不動産取引を1件ずつ書く

いちばん重い追加はここです。新規則43条2項6号ハは、勧誘に際し利回り等を表示した場合の説明事項として次を挙げます。当該利回り等とその算定方法(算式があれば算式を含む)、算定の基礎となる分配見込額とその期間、その期間が契約期間より長い場合は契約期間での分配見込額と、それに基づき算定した利回り等、当該利回り等が予想に基づくものであり不確実である旨。そして分配見込額の算定根拠となる不動産取引ごとに、取引の額、対象不動産の所在・地番・用途・土地面積・延べ床面積その他の特定に必要な事項、取引態様の別、将来行われる見込みの取引を根拠にするならその旨。

読み飛ばしやすいのが「期間が契約期間より長い場合」の条項です。年利換算の利回りを契約期間が数か月の商品に貼り付けている場合、契約期間での分配見込額とその期間での利回り等を並べて書く必要が出ます。年8%の表示が6か月の商品では4%の見込額として並記される。見え方が変わります。

なお、パンフレットにあるとおり「合理的な根拠を示さずに予想利回りを表示してはならない」という規制はもともと存在していました。今回の改正は禁止規定を増やしたのではなく、示すべき合理的な根拠の中身を書面の記載事項として具体化したものです。表示の根拠を残す発想は、賃貸の広告実務で問題になるおとり広告の防止と同じ筋にあります。

「行われる見込み」は4段階で書き分ける

2項6号ハ⑹は「⑸の不動産取引が行われたことの根拠又は行われることが見込まれると判断した根拠」を求めます。抽象的に見えますが、監督留意事項がここを具体化しました。当該取引の額が実現困難な額になっていないかを不動産取引相場など具体的な根拠で示したうえで、契約の状態を次のように区別して記載することが求められる、と例示されています。

段階状態
1当該不動産取引の額で、その取引に関する契約が締結済みである
2その額で、相手方となる予定の者が法的拘束力の無い意向表明書を作成したにとどまる
3その額で、取引の相手方を探索している状態である
4取引の相手方を探索する前の状態である

出口の売却価格を利回りの根拠にしている商品は多い。その売却が「契約済み」なのか「まだ買い手を探してもいない」のかで、投資家が受け取る印象は正反対です。4段階の書き分けは、実質的に商品設計の開示を求めるものです。

対象不動産の価格——鑑定を取らないなら、取らない理由を書く

改正前の43条1項18号は「対象不動産の価格及び当該価格の算定方法」でした。改正後は「対象不動産の価格、当該価格の算定方法……及び当該価格を妥当と判断する根拠」になります。2項5号が中身を定め、不動産鑑定士による鑑定評価の有無、受けた場合は結果・方法の概要・年月日・鑑定士の氏名、受けていない場合は「当該鑑定評価を受けていない理由」に加えて、近傍同種の売買価格・水準・公示価格・路線価・販売公表価格のいずれか、または宅地建物取引業者がその根拠を明らかにして述べた価格に対する意見を書くこととされました。

監督留意事項は、この「宅建業者の意見の根拠」について価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センター作成またはこれに準じたもの)等、他に合理的な説明がつくものが求められると明示しています。自社の査定をそのまま書くこと自体は否定されていませんが、査定の拠り所を書けない意見は使えません。

もう一点。近傍同種の売買価格・賃料等を示すときは、単に数字を並べるのではなく、それが特定の1物件の価格なのか複数物件の平均値なのかという「数字の意味」まで書くことが求められる、と留意事項にあります。

改正前の1項13号は、利害関係人との重要な取引について関係・商号・住所・取引の額・内容を1つの号に並べていました。改正後はイからホに分解され、ニ(対象不動産の取得等の場合の取引額を妥当と判断する根拠)とホ(賃貸借の場合の賃料額を妥当と判断する根拠)が新設されます。

2項2号がニの説明内容を定めます。利害関係を有しない不動産鑑定士による鑑定評価の有無。受けた場合は結果・方法の概要・年月日・氏名。受けていない場合は理由に加えて、利害関係人でない売主が過去に行った当該対象不動産の直近の売買の価格・契約締結日・売主の商号または氏名(やむを得ない事情により開示できない場合はその旨)、そして近傍同種の売買価格または水準。さらに鑑定評価額や近傍同種の水準と実際の取引額との差額があるときは、その差額と妥当と判断する理由。賃貸借は2項3号が同じ構造で賃料版を定めています。

監督留意事項は、2項2号ハ⑴〜⑶や3号ハ⑴・⑵に掲げる事項の全部またはいずれかを示していない場合には、鑑定評価を受けてその結果等を記載することが求められると明示しました。過去の売買実績も近傍同種の水準も出せないなら鑑定を取るしかない、という構造です。

出資金の使途は、項目ごとに割る

1項20号ホとして「金銭をもって出資の目的とする契約にあっては、出資される金銭の使途」が新設されました。留意事項は、不動産の取得代金、工事費用、租税公課、アップフロントフィー、積立金のような具体的な使途ごとに項目を記載することが求められると書いています。

アップフロントフィーが例示に入っている点は見逃せません。集めた出資のうちいくらが事業者側の前取り報酬に回るのかが、契約前の書面で見えます。

工事完了前の物件は、開発登録簿の中身まで

1項16号の2が新設され、対象不動産が宅地造成または建物建築の工事完了前のものであるときは、イ工事の概要、ロ必要な許可・確認・令7条各号の許可等の処分の有無とその概要・年月日、ハ資金計画、ニ着手および完了の予定時期、ホ完了時の形状・構造その他宅建業法施行規則16条に規定する事項、を書きます。

留意事項は「当該処分の概要」について、都市計画法上の開発許可を取得している場合は開発登録簿に記載の事項を含めた処分の概要が記載されていることを例示しました。許可番号と日付だけでは足りません。

建物状況調査の有効期間がRC・SRCで2年に

これは負担を減らす改正です。1項17号リ⑴の建物状況調査について、有効期間が原則1年である点は変わりませんが、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等(住宅品質確保法施行規則1条4号)にあっては2年とされました。宅建業法側の運用と揃えた形です。RC造の一棟マンションを対象不動産にする商品では、インスペクションの取り直し頻度が下がります。調査そのものの位置づけは建物状況調査(インスペクション)の実務で整理しています。

水害ハザードマップが説明事項に入った

1項17号ト(改正前はチ)が引用する宅建業法施行規則16条の4の3の範囲が、対象不動産が宅地である場合について「第1号から第3号まで」から「第1号から第3号の2まで」に広がりました。第3号の2が水害ハザードマップにおける対象不動産の所在地です。宅建業の重要事項説明では令和2年8月から義務化されている項目が、不特法の契約前書面にも入ってきた形になります。説明の手順は水害ハザードマップ説明の手順書にまとめてあります。

財産管理報告書——出したお金と、工事の進捗(規則50条)

契約前だけではありません。1年を超えない期間ごとに交付する財産管理報告書の記載事項を定める規則50条にも、第9号と第10号が新設されました。

追加された記載事項
9号金銭出資の契約について、報告対象期間において支出した金銭の額および使途
10号イ期間満了日における既に着手した工事の有無、概要、着手年月日、完了予定日または完了日
10号ロ今後着手する予定の工事の有無、概要、着手・完了の予定年月日
10号ハ期間満了日までにされた開発許可等の処分の有無、概要、年月日
10号ニ開発許可等の処分が取り消された、または効力を失った場合はその旨・年月日・理由
10号ホ期間満了日における当該工事に係る資金計画
10号ヘイからホについて、直近の財産管理報告書から変更がある場合は、変更の内容と理由

留意事項は、9号について支出された金銭を具体的な使途ごとに金額と内訳で記載すること、10号イの「既に着手した工事」とは満了日時点で既に着工している全ての工事を指し、報告対象期間より前に着工した工事も含むことを明示しました。契約前に約束した使途と実際に出したお金の対応が、毎年の報告書で追える形になります。

電子取引業務のHP掲載事項に3項目追加(規則55条)

電子取引業務、つまりクラウドファンディングを行う事業者がホームページ等で閲覧できる状態に置くべき事項を定めるのが規則55条です。改正後は43条1項の13号(利害関係人取引)、16号の2(工事完了前の物件)、22号(収益または利益の分配)が引用先に加わりました。電子取引業務ガイドラインの「10.重要事項の閲覧」も同内容で改正されています。

申込画面の中だけでなく、サイト上で誰でも閲覧できる状態に置く。掲載範囲が広がった分、募集ページのテンプレートを作り直す事業者は多いはずです。画面越しに説明を完結させる設計という点では、IT重説の実務と考え方が重なります。

12月1日から、利害関係人への売却は鑑定評価額の前後1割が事実上の枠

もう一つの柱が規則40条です。法21条の2で準用する金融商品取引法40条2号の「業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの」に当たる状況を列挙した条で、ここに第5号が新設されました。

対象不動産の売却等を行う場合(売却については利害関係人に対して売却する場合に限る)において、利害関係を有しない不動産鑑定士による対象不動産の鑑定評価の評価額に相当する額での売却等をするために必要な措置を講じていないと認められる状況——これが投資者保護に支障を生ずるおそれがある状況に加わります。

監督留意事項は、この「必要な措置」に該当しないものとして鑑定評価額を概ね1割以上上回る価格、または1割以上下回る価格での売却等を例示しました。1割を超えて安く売れば投資家の取り分が減り、高く売れば実質的な損失補填になりうる。上振れも下振れも問題にする書き方です。あわせて「利害関係人」に含まれるもの、「利害関係を有しない不動産鑑定士」に含まれないものも留意事項で明示されました。

適用は令和8年12月1日以後に締結される契約に係る対象不動産の売却等。既存商品の出口には遡及しませんが、これから組成する商品の償還設計には初日から効きます。

提出部数が写し4部から1部へ(10月1日から)

地味ですが確実に楽になる改正です。規則9条の許可申請書と添付書類の部数が「正本1部及びその写し4部」から「正本1部及び写し1部」へ。規則17条2項の廃業等届出書も同様。施行はここだけ令和8年10月1日で、9月中の申請は従来どおり写し4部が要ります。

施行日と経過措置の一覧

日付何が起きるか根拠
令和8年8月21日命令が公布・施行。監督留意事項と電子取引業務ガイドラインも同日発出・適用附則1条本文
令和8年10月1日許可申請書等の提出部数が写し1部に附則1条ただし書(9条・17条2項)
令和8年11月30日既存の許可業者・小規模不特事業者が、契約前書面(43条)・財産管理報告書(50条)・HP掲載事項(55条1項)について従前の例によることができる最終日附則3条
令和8年12月1日この日以後に締結される契約に係る対象不動産の売却等について、40条5号が適用される附則2条

なお、新規に許可・登録を受ける者に附則3条の経過措置はありません。8月21日以後に許可・登録を受けた事業者は、最初から新しい書面で始めます。

11月30日までにやること

作業見るべき条項
1現行の契約成立前書面のひな型を出し、追加7項目の受け皿があるかを1項目ずつ照合する43条1項13号・16号の2・17号ト/リ・18号・20号ホ、2項1号〜3号・5号・6号
2過去に募集した商品の「想定利回り」の算定根拠を洗い出し、4段階のどれに当たるかを整理する2項6号ハ⑸⑹、留意事項第7−7
3鑑定評価を取っていない商品について、取っていない理由と代替の根拠(近傍同種/宅建業者意見)を用意する2項5号ハ、留意事項の価格査定マニュアル
4利害関係人取引の有無を棚卸しし、取引額・賃料の妥当性根拠を作る。出せないなら鑑定の手配1項13号ニ・ホ、2項2号・3号
5出資金の使途を項目ごとに割った内訳表を作る(取得代金・工事費・租税公課・アップフロントフィー・積立金など)1項20号ホ
6財産管理報告書のフォーマットに9号・10号の欄を追加する。次回交付分から間に合うか逆算する50条9号・10号イ〜ヘ
7募集ページの掲載項目に13号・16号の2・22号を追加する55条1項、電子取引業務ガイドライン10
812月1日以後に締結する契約の償還条項について、利害関係人売却の価格の決め方を見直す40条5号、附則2条

作業の重さは2と4に偏ります。ひな型に欄を足すのは1日で終わりますが、その欄を埋める根拠を集めるのは1日では終わりません。11月末まで残り約3か月。根拠集めから着手するのが現実的です。

よくある質問

Q. 8月21日より前に募集を開始し、まだ運用中の商品はどうなりますか。

A. 契約前書面は交付済みですから遡及しません。ただし財産管理報告書(50条)は運用期間中に繰り返し交付する書面です。既存事業者は11月30日まで従前の例によれますが、12月1日以後に交付する報告書には9号・10号が必要になります。運用中商品こそ確認が要ります。

Q. 利回りを一切表示しなければ、2項6号ハは関係ありませんか。

A. 条文は「利回り等の表示をした場合にあっては」と条件付きです。表示しなければハは働きません。ただしロが分配見込額を表示した場合に同等の記載を求めています。金額で示しても率で示しても、根拠の説明からは逃げられない設計です。

Q. 鑑定評価は必ず取らなければならなくなったのですか。

A. 43条は取得を義務づけていません。取っていない場合の記載を求めているだけです。ただし利害関係人取引については、近傍同種の価格や直近の非利害関係人との売買価格などを全部またはいずれかを示していない場合には鑑定評価を受けてその結果等の記載が求められる、と留意事項が明示しています。代替の根拠を出せるかで分かれます。

Q. 40条5号の「概ね1割」は法令に書いてありますか。

A. 書かれていません。規則40条5号の条文は「鑑定評価の評価額に相当する額での売却等をするために必要な措置を講じていないと認められる状況」までです。概ね1割という数字は、監督留意事項が「必要な措置に該当しないもの」として例示した水準です。行政の監督上の目安として扱うのが正確です。

Q. 小規模不特事業者の登録を検討中です。今から申請すると経過措置は使えますか。

A. 附則3条は「この命令の施行の際現に……登録を受けている者」が対象です。8月21日時点で登録を受けていない者には経過措置がありません。これから登録する場合は、最初から新しい記載事項に対応した書面を用意することになります。

出典と、書かなかったこと

項目出典
改正の概要、5つの改正内容、施行日と経過措置の日付国土交通省 報道発表「『不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令』の公布等」(令和8年8月21日)および添付「概要(施行規則)」
各号の条文、附則1条〜4条、71条の準用同 報道発表 添付「案文(施行規則)」
概ね1割の例示、4段階の蓋然性、開発登録簿、使途の項目例、価格査定マニュアル、近傍同種の数値の意味同 報道発表 添付「概要(監督留意事項)」
HP掲載事項の追加同 報道発表 添付「概要(電子取引業務ガイドライン)」
一般投資家参加者数の推移、制度充実の4つの方向性同 報道発表 添付「不動産特定共同事業のあり方についての中間整理(概要)」
小規模不特事業の要件、予想利回り表示の既存規制国土交通省「小規模不動産特定共同事業パンフレット」(平成29年度国土交通省委託調査)
許可制の資本金要件、業務管理者、電子取引業務の体制整備国土交通省「不動産特定共同事業の許可の要件」

本稿の「実務上の期限は12月1日」は、附則3条が11月30日を経過措置の最終日としていることから導いた整理です。新旧対照表の全条項、様式の記載要領の改正、経過措置のうち様式の取り繕い使用(附則4条)の細部は書いていません。監督留意事項が明示した「利害関係人に含まれるもの」「利害関係を有しない不動産鑑定士に含まれないもの」の具体的な範囲も、概要資料に列挙がないため扱っていません。実際の判断では新旧対照表本体をご確認ください。

この改正の芯は、開示項目が7つ増えたことではありません。「その数字はどこから来たのか」に答えられない商品が、法令上そもそも書面を書けなくなるという構造です。逆に、根拠を持って値付けし出口を描いている事業者には、書く欄が増えるだけの話でもある。3か月あるうちに効くのは、ひな型の改訂ではなく根拠の棚卸しです。

本稿は公布された命令および国土交通省の公表資料にもとづく一般的な整理であり、個別の商品設計や書面の適法性を判断するものではありません。条項・様式・運用は今後も改正されます。実際の対応は最新の法令および監督留意事項をご確認ください。賃貸管理と売買仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。