不動産会社の業務改善 読了 25分

閣議決定は「躊躇するな」と書いた——ただし国が効果を確認できたのはAIではない部分で、AIの検証結果は9月末に出る

国土交通省は2026年、重要事項説明に関する業務でデジタルやAIの補助ツールを使うことについて、基本的な考え方と具体例を整理して業界団体に周知しました。根拠は規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)で、そこには宅建業者が補助ツールの利用に「躊躇」しないようにという表現が入っています。ところが同じ周知に添えられた一覧を数えると、掲載44件のうちAI系の技術が書かれているのは3件だけで、契約関連書類の作成の欄に書かれているのはAPI連携です。生成AIについては3箇所すべてに「検証が必要」という留保がついています。その検証が、令和8年7月頃から9月末までの実証事業です。本稿の日付から実証終了まで42日。中小の会社が今できるのは、採択を待つことではなく、同じ測り方を自社でしておくことです。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
AIで重説を作っていいのか|国の答えは9月末に出る
目次

閣議決定の文章に「躊躇」という言葉が入っています。規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)は、重要事項説明に関する業務で宅地建物取引業者がデジタルやAIの補助ツールを使うことに躊躇しないよう、国土交通省が周知することとしました。周知は行われました。ただし、その周知に添えられた資料が実際に書いているのは、「効果が確認できたのはAIではない部分だ」ということです。AIの分は、令和8年9月末に終わる実証事業に預けられています。

「躊躇」と書いたのは閣議決定のほうだった

国土交通省の「不動産分野におけるDXの推進」のページに、規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)の該当箇所がそのまま引かれています。要旨は、宅地建物取引業者が法第35条の規定による重要事項の説明に関する業務でデジタルやAI等の技術による補助ツールを利用することに躊躇し、また新たな技術の開発に支障が生じることがないよう、購入者等の利益の保護を前提に、補助ツールの活用によって宅地建物取引士の負担軽減が図られることが期待される旨を周知する、というものです。

行政の文書で「躊躇」という語が使われるのは、めずらしいことです。使っていいのか分からないから使わない、という状態が現場に存在すると認めた上での表現だからです。同じ計画はもう一段踏み込み、書類作成や読み上げといった場面ごとに、デジタルやAI技術を用いたサービスの具体例・活用方法・留意点を整理して速やかに公表することも求めています。

これを受けて国土交通省は、補助ツールの活用に係る基本的な考え方と、媒介業務で活用されているデジタルサービスの具体例を整理し、宅地建物取引業所管団体に周知しました。業界紙は、2026年3月31日付で各業界団体の長に周知依頼が発出されたと報じています。

【要点】9月末までにやる3つ

やること根拠・数字
効果が実証済みの領域と、未検証の領域を分ける。クラウド化・電子署名・API連携は先に進めてよい。生成AIの効果は保留扱いにする国土交通省が周知に添えた資料は、生成AIについて3箇所すべてで「検証が必要」という留保を置いている
契約関連書類の作成にかかる時間を、いまのうちに実測しておく。作成・確認・記名の3つに分けて記録する実証事業が測っているのはAI導入前後の業務時間と精度。前の数字がなければ、9月末に公表される数字と自社を比べられない
AI導入を人員計画に織り込まない。時間短縮を前提にした要員削減は、検証結果が出るまで保留する実証で確認された効果のうち1つは注意書きで、業務フローの変更が必要なためサービス提供事業者のサポートが不可欠だとされている

3つの日付を並べる——閣議決定、周知、事務連絡

日付出来事本稿の日付(2026年8月19日)との関係
令和4年5月18日改正宅建業法が施行。重要事項説明書等の書面を電磁的方法で提供できるようになる1,554日前
令和7年6月13日規制改革実施計画が閣議決定。「躊躇」の一文が入る432日前
2026年3月31日国土交通省が業界団体へ周知依頼を発出(業界紙報道)141日前
令和8年6月9日国土交通省不動産業課が事務連絡「不動産分野におけるAI活用に関する実証事業へのご協力依頼について」を発出71日前
令和8年6月26日18時実証事業の応募期限(当初6月5日から21日間延長)54日前・締切済み
令和8年9月末実証期間の終了(予定)42日後

並べると、制度は約4年3か月かけて「使っていい」と言うところまで来たが、「どれだけ効くか」はまだ言っていないという形が見えます。

周知に添えられた一覧を、実際に数えてみる

周知に添えられた資料のうち1点目が「不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一覧」です。縦軸に媒介業務の流れ、横軸に集客・マッチング・顧客対応・価格査定・情報の一元化・契約業務の補助・決済業務の補助・管理業務の補助の8カテゴリーを置き、確認された主なデジタルサービスと活用されている主な技術を並べた1枚の表です。

本稿はこのPDFからテキストを抽出し、サービス名の行を数えました。合計44件です。読者が数え直せるように方法も書いておきます。数えたのは「提供が確認された主なデジタルサービス」の列に現れる項目名で、同名の項目(電子契約機能との連携)が別の業務段階に3回出てくるものは、段階ごとに1件としています。

技術欄の記載該当件数44件に占める割合
API連携23件約52.3%
クラウド化11件約25.0%
ビッグデータ活用5件約11.4%
電子署名4件約9.1%
広告作成向けノーコードツール4件約9.1%
VR3件約6.8%
AI系(自動言語処理技術・AIによる画像認証)3件約6.8%
IoT・チャットボット・不動産調査GISサービス各2件各約4.5%

技術欄には複数の技術が併記される行があるため、合計は44を超えます。それでもAI系が3件しかないという事実は動きません。内訳は自動価格査定、所有者と仲介事業者のマッチング(ともに自動言語処理技術)、3Dモデルハウス(AIによる画像認証)です。

契約関連書類の作成の欄に、AIとは書かれていない

ここが本稿でいちばん伝えたい一点です。一覧のうち「契約関連書類の作成」の段階に置かれているサービスは、契約関連書類の案文作成(一部自動入力)の1件で、その技術欄はAPI連携です。AIではありません。「媒介契約書の作成」の段階も同じで、標準契約書案文の自動入力にAPI連携が対応しています。

業務段階確認されたサービス技術欄
媒介契約書の作成標準契約書案文の自動入力API連携
契約関連書類の作成契約関連書類の案文作成(一部自動入力)API連携
重要事項説明書の交付電子契約機能との連携電子署名
重要事項説明オンライン重説ツールWEB会議ツール等
売買・賃貸借契約書の交付・締結電子契約機能との連携電子署名
募集賃料・価格査定自動価格査定自動言語処理技術・ビッグデータ活用

閣議決定が「躊躇するな」と言った対象は重要事項説明に関する業務です。ところが国が並べた一覧では、その重要事項説明のまわりに置かれている技術は、電子署名とWEB会議ツールとAPI連携でした。AIが確認されたのは査定とマッチングと画像認証で、書類作成のど真ん中ではありません。制度が許容を宣言した場所と、供給が実際に届いている場所が、まだ一致していないということです。

効果が確認できたと書かれたのは3つ。4つめには注意書きがついている

周知に添えられた資料の2点目には、不動産取引支援に向けたプラットフォームサービスについて、実証事業で確認できた効果が4項目書かれています。うち3項目には二重丸、1項目には三角がついています。

評価確認された内容実務での読み方
確認できたドキュメント作成時のヒューマンエラーを削減できた速くなったではなく、間違いが減ったという成果。品質の話
確認できた定例作業の自動化ができ、1案件あたりの対応時間を削減できた削減できたのは定例作業。判断が入る作業ではない
確認できた電子契約による紙の削減を実現できたコスト削減として最も見えやすい部分
注意書き業務フローの変更等が必要なため、サービス提供事業者によるサポートが不可欠導入は道具の購入では終わらない。会社の手順を書き換える工数が別途かかる

この4つめが、中小の会社にはいちばん重い項目です。業務フローの変更コストは、会社が小さいほど相対的に重くなります。10人の会社で手順を変えれば10人分の再教育が要り、その10人は同時に売上をつくっている人でもあるからです。比較すべきは機能ではなく、この乗り換えコストを誰がどこまで持つかです。導入の順番は中小不動産会社のDXロードマップに整理しています。

AIが出てくる3箇所には、すべて留保がついている

同じ資料のなかで生成AIやAIに言及している箇所は3つあり、3つとも「検証が必要」という趣旨の留保で終わっています。プラットフォームサービスの節では生成AIを活用したサービスの存在は確認できたが効果はさらに検証が必要とされ、今後の見通しの欄にも同じ趣旨が重ねて書かれ、住宅ローン等の提案業務の節でも一部の連携サービスでAIの活用は見られるが期待できる効果等については検証が必要とされています。

つまり国は、存在は認めた、効果はまだ言っていないという位置に立っています。線を引いておきます。「国がAIの活用を認めた」は正しい。「国がAIの効果を認めた」は、本稿が確認した公表資料からは言えません。

だから9月末なのです——実証事業の中身

効果の検証を引き受けるのが、令和8年6月9日付の事務連絡で参加が募られた「不動産分野におけるAI活用に関する実証事業」です。国土交通省不動産・建設経済局不動産業課が、株式会社NTTデータ経営研究所と協働で実施します。

項目内容
目的AI活用による不動産事業者の業務の生産性向上や消費者等の利便向上等の効果、および実務上・制度上の課題を検証する
実証の内容参加事業者の実際の書類作成業務にAIサービスを導入・活用し、導入前後の業務時間や精度についてヒアリングとアンケートに協力する
実証期間令和8年7月頃から令和8年9月末まで(予定)。最長で92日間
採択予定数約100社
応募期限令和8年6月26日18時(当初の6月5日から21日間延長)
費用AIサービスの利用にかかる費用は参加事業者の負担。ただしサービス提供企業との調整により割引または無償提供となる見込みと記載

測定項目が業務時間と精度である点に注目してください。この2つは、採択されていない会社でも同じ物差しで測れます。そのとき自社に比較対象の数字がなければ、公表値を眺めて終わりです。

参加条件のなかに「賃貸」が2回入っている

この実証は売買仲介の話だと読み流されがちですが、事務連絡の参加条件を読むとそうではありません。

参加条件内容
1重要事項説明書・売買契約書・賃貸借契約書・媒介契約書のいずれかを主業務で作成していること
2実証期間(令和8年9月末まで)の継続参加にコミットできること
3期間中のアンケート・ヒアリングへの協力に同意いただけること
4過去の売買仲介、賃貸仲介成約事例における契約関連書類に対するAIを活用したデジタルサービスの試験適用に協力できること

条件1に賃貸借契約書、条件4に賃貸仲介成約事例が明記されています。賃貸専業の会社も対象です。そして一覧のほうにも、賃貸向け与信管理、家賃保証管理、賃貸管理業務遂行に関する情報の一元化といった賃貸側の項目が並んでいます。いずれもAPI連携とクラウド化で、ここにもAIの記載はありません。

採択は約100社。費用は参加事業者の負担

事務連絡には、AIサービスの利用にかかる費用は参加事業者の負担であると明記されると同時に、サービス提供企業との調整により割引または無償提供で参加できる見込みとも書かれています。つまり公表される効果の数字は、「割引または無償で使えた前提の数字」である可能性があります。自社が定価で導入したときの投資回収は、公表値をそのまま当てはめては出ません。

採択予定数は約100社です。国土交通省がDXを進める背景として業界紙が伝えているのは、全国1,747自治体のうち宅建事業者の事務所が「ない」自治体が235自治体あるという数字で、全体の約13.5%にあたります。空き家流通等の担い手不足への懸念が、DX推進の動機に置かれています。

約100社は、業界全体から見ればごく小さな標本です。結果が出ても「100社でこうだった」という数字にとどまり、自社の数字と突き合わせて初めて使えるものになります。

補助ツールが肩代わりできない場所は、条文の側で決まっている

ここから実務の線引きです。AIがどれだけ賢くなっても動かない部分が宅建業法の条文にあり、そこは技術の進歩を待つ性質のものではありません。

工程補助ツールで代替できるか責任の所在
調査結果の収集・転記できる(API連携・クラウド化で実証済み)会社
書面の案文作成できる(一部自動入力として確認済み)会社
記載内容の正確性の確認補助はできるが、最終判断は人が持つ宅地建物取引士
書面への記名できない記名した宅地建物取引士
重要事項の説明そのもの読み上げ等の補助は想定されるが、説明義務は移らない宅地建物取引士

法35条5項と法37条3項——記名は宅建士本人にしか置けない

令和4年5月18日施行の改正で、重要事項説明書と37条書面はいずれも記名押印から記名のみに変わりました。押印はなくなりましたが、記名はなくなっていません。法35条5項は重要事項説明書に宅地建物取引士が記名しなければならないと定め、法37条3項は37条書面に宅地建物取引士をして記名させなければならないと定めています。

押印の廃止を「書面の重みが軽くなった」と読むのは誤りです。変わったのは形式であって、責任の所在ではありません。むしろ印鑑という物理的な手続きが消えたぶん、記名が責任の唯一の接点になりました。AIが案文を作り、担当者が確認し、宅建士が記名する——この3段構えのうち、最後の一段に会社の責任が全部乗ります。電子化の実務は不動産の電子契約比較2026、法的有効性は電子署名の法的有効性にまとめてあります。

電子化には承諾が要る。AIの利用は承諾の対象ではない

ここも混同されやすい点です。書面を電磁的方法で提供するには相手方の承諾が必要で、承諾がなければ紙で交付します。一方、社内で案文をどう作るかは相手方の承諾事項ではありません。ワープロでもテンプレートの自動入力でもAIの下書きでも、交付される書面の記載事項が法定要件を満たしていれば、その手段について承諾を取る仕組みは宅建業法にありません。

行為相手方の承諾備考
重要事項説明書を電磁的方法で提供する必要令和4年5月18日施行の改正で可能になった
37条書面を電磁的方法で提供する必要同上
オンラインで重要事項説明を行う相手方の同意等が前提実施マニュアルに沿った運用が必要
案文の作成にAI補助ツールを使う宅建業法上の承諾の仕組みはないただし顧客の個人情報を外部サービスに投入する場合は個人情報保護法の側の検討が別途必要

最後の行の但し書きが実務上は重要です。宅建業法が承諾を求めていないことと、何をしてもよいことは別です。事務連絡にも、契約当事者等の個人情報を含む守秘情報の取り扱いは別途相談する旨が置かれています。国の実証事業でさえ個別に相談する項目を、自社が独断で決めてよい理由はありません。

自社で同じ測り方をする——3つの時間を分けて記録する

採択されていない会社ができることは1つです。実証と同じ物差しを、いまの自社に当てておくこと。難しい仕組みは要りません。次の3つを分けて記録するだけです。

記録する時間測り方なぜ分けるのか
作成時間白紙から案文が一通りできるまで補助ツールで最も縮む部分。導入効果が出るならここに出る
確認時間案文を通しで読み、根拠資料と突き合わせて直し終わるまで補助ツールを入れると増えることがある部分。機械が作った文の検算は、自分で書いた文の見直しより時間がかかる場合がある
記名までの待ち時間案文完成から宅建士の記名が入るまで人の手配とスケジュールの問題。ツールでは縮まない。ここが長い会社は、AI以前に段取りの問題を抱えている

3つを合算した「1件あたり何分」だけを記録すると、導入前後の比較が意味を失います。作成が20分縮んで確認が15分伸びれば合計は5分しか縮みませんが、内訳を見れば「作成は効いた、確認の手順が未整備」という別の結論になり、打つ手がまったく違います。精度も同じで、差し戻しの件数と、その原因が案文側か調査側かを分けて数えます。

賃貸管理会社にとっての読み替え

賃貸管理を主業務にしている会社は、この実証を仲介の話として遠ざけないほうがよいと考えています。1つめの理由は、参加条件に賃貸借契約書と賃貸仲介成約事例が明記されていることです。制度側は最初から賃貸を含めています。

2つめは、賃貸の書面は件数が多いことです。売買の重要事項説明書は1件あたりの分量が大きいかわりに件数が限られますが、賃貸は1件あたりが軽いかわりに繁忙期に集中します。1件あたりの効果が小さくても件数で回収できる領域なので、測り方を件数ベースにしておく必要があります。

3つめは、賃貸の書面は登録番号や事業者情報のような定型項目の比率が高いことです。定型項目の転記ミスは、AI以前にAPI連携とテンプレート管理で減らせます。令和7年度の立入検査でも記載事項の不備が問題になっており、この論点は登録番号が(2)になった日に書きました。効果が実証済みの技術で取れるものを先に取ってから、AIの検証結果を待つのが順番として合理的です。手数料まわりの書面は仲介手数料と承諾の時点も併せてご覧ください。

残り42日でできること

時期やること
今週直近10件の契約関連書類について、作成・確認・記名待ちの3つの時間を洗い出す。記憶ではなく、メールとファイルの更新時刻から拾う
8月中差し戻しの件数と原因を分類する。案文の記載漏れか、調査結果そのものの誤りかを分ける
9月前半API連携とテンプレートで縮む部分を先に手当てする。ここは効果が確認済みの領域
9月末以降実証の結果が整理されて出てきたら、自社の数字と並べる。導入判断はそのあとで足りる

やりがちな誤解4つ

誤解実際
国がAIによる重説作成を認めた認めたのは補助ツールの活用で、記名と説明の義務は宅地建物取引士に残ったまま。効果については検証が必要という留保が置かれている
押印が廃止されたので書面の責任も軽くなった変わったのは形式のみ。記名義務は法35条5項・法37条3項に残っている
実証事業は売買仲介の話参加条件に賃貸借契約書と賃貸仲介成約事例が明記されている
実証に採択されなければ関係ない測定項目は業務時間と精度で、採択されていなくても同じ物差しは使える。使っておかないと公表値と比較できない

よくある質問

Q. 重要事項説明の読み上げをAIにやらせてよいのですか。

A. 規制改革実施計画は「書類作成や読み上げ等」の場面ごとに留意点を整理・公表することを求めており、読み上げも検討対象に入っています。ただし説明義務そのものが宅地建物取引士から移るという整理は、本稿が確認した公表資料からは読み取れません。補助ツールの位置づけを超える運用は所管の窓口に確認してください。

Q. 実証の結果はいつ、どこで公表されますか。

A. 実証期間は令和8年9月末までですが、結果の公表時期と公表先について、本稿が確認した事務連絡には記載がありません。推測は書きません。国土交通省の当該ページを定期的に確認するのが確実です。

Q. いま導入するとしたら、何から入るのが安全ですか。

A. 効果が確認済みと書かれている領域、つまりクラウド化・電子署名・API連携です。ヒューマンエラー削減、定例作業の自動化、紙の削減の3つは実証で確認できたと明記されています。そのうえで、業務フローの変更にサービス提供事業者のサポートが不可欠だという注意書きを契約時の条件交渉に反映させてください。比較の観点は電子契約サービス比較2026にまとめています。

Q. AIに顧客情報を入力してよいですか。

A. 宅建業法に承諾の仕組みはありませんが、それは個人情報保護法の検討を免除しません。事務連絡でも守秘情報の取り扱いは別途相談するとされています。入力してよいかではなく、どの範囲を伏せて入力するかを先に決めてください。

数字の出典と、書かなかったこと

項目出典
規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)の該当箇所、周知を行った旨、資料1から3の内容国土交通省「不動産業:不動産分野におけるDXの推進」ページおよび同ページ掲載の資料
デジタルサービス44件の項目名と技術欄、8カテゴリー、媒介業務の流れの区分国土交通省【資料1】不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一覧
実証事業で確認できた効果4項目、生成AIに関する3箇所の留保国土交通省【資料2】不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一例
実証事業の目的・内容・期間・採択予定数約100社・応募期限と延長・参加条件4項目・費用負担・NTTデータ経営研究所との協働・守秘情報の別途相談国土交通省不動産・建設経済局不動産業課 事務連絡「不動産分野におけるAI活用に関する実証事業へのご協力依頼について」(令和8年6月9日)
2026年3月31日の周知依頼の発出、全国1,747自治体のうち宅建事業者の事務所がない自治体235不動産流通研究所「R.E.port」2026年3月31日付記事
令和4年5月18日施行の改正内容、記名押印から記名への変更、電磁的方法による提供と相手方の承諾宅地建物取引業法および国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」

本稿で算出した派生値は次のとおりです。本稿の日付2026年8月19日を起点として、令和8年9月30日まで42日、令和4年5月18日から1,554日、令和7年6月13日から432日、2026年3月31日から141日、令和8年6月9日から71日、令和8年6月26日から54日。応募期限の延長幅は6月5日から6月26日で21日間。実証期間を令和8年7月1日から9月30日として92日間。事務連絡の日付から実証終了までは113日。技術欄の集計は44件を分母として、API連携23件で約52.3%、クラウド化11件で約25.0%、ビッグデータ活用5件で約11.4%、電子署名4件と広告作成向けノーコードツール4件でそれぞれ約9.1%、VR3件とAI系3件でそれぞれ約6.8%、IoT・チャットボット・不動産調査GISサービスが各2件で約4.5%。自治体の割合は235÷1,747で約13.5%、事務所がある自治体は1,747から235を引いて1,512。

書かなかったことも明示します。実証事業に採択された事業者名は書いていません。採択結果は個別にメールで通知される方式で、一覧が公表されているかを本稿では確認できていません。個社が自主的に発表しているケースはありますが、それをもって全体像を語ることはできません。

実証の結果として想定される時間短縮率も書いていません。公表資料が「検証が必要」としている段階で数字を置けば、それは推測です。個別製品名も挙げていません。国が整理した一覧は技術カテゴリーでの整理であり、特定製品の推奨ではないためです。

この記事の核心は、AIを使うべきかどうかではありません。制度が「使ってよい」と言った時点と、「どれだけ効くか」が分かる時点のあいだには時間差があるという構造です。いまはその谷間にいます。やるべきことは判断を急ぐことではなく、あとで比較できる形の記録を残すことです。42日後に数字が出たとき、自社の数字を持っている会社と持っていない会社では、同じ発表を読んでも得られるものが違います。

本稿は公表資料にもとづく一般的な整理であり、個別のツール導入の適否や法令適合性を判断するものではありません。重要事項説明や書面交付の実務は所管の窓口および国土交通省の公表資料を、個人情報の取り扱いは個人情報保護委員会の資料をご確認ください。賃貸管理と仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。