共有不動産は、変更には共有者全員の同意、管理には持分の価格の過半数が必要で、話し合いがまとまらなければ、各共有者はいつでも共有物の分割を請求し、最後は裁判所に分割を求めることができます(民法251条・252条・256条・258条)。2023年4月1日に施行された改正民法で、共有物の管理のルールが整理され、所在が分からない共有者の持分を裁判所の手続で取得・譲渡する制度(同法262条の2・262条の3)もできました。この記事では、条文と法務省の資料をもとに、共有のルール、所在等不明共有者への対応、共有物分割の方法、相続で生まれた共有の扱い、不動産会社の進め方を整理します。
共有のルール|使用・変更・管理・保存
1つの不動産を複数人で持つ状態が共有です。相続人が複数いるときは、遺産分割が終わるまで相続財産は相続人の共有になります(民法898条1項)。共有の不動産では、誰が何をするのにどれだけの同意が必要かが、民法で決められています。
| 行為 | 必要な同意 | 例(法務省の資料など) | 条文 |
|---|---|---|---|
| 使用 | 各共有者が持分に応じて全部を使用できる | 自分の持分を超えて使う共有者は、別段の合意がなければ他の共有者に対価を償還する義務を負う | 民法249条 |
| 変更(形状・効用の著しい変更を伴うもの) | 共有者全員の同意 | 農地を宅地に造成する | 同法251条1項 |
| 軽微な変更・管理 | 持分の価格の過半数 | 砂利道のアスファルト舗装、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕、共有者の中から使用者を1人に決める | 同法251条1項かっこ書・252条1項 |
| 短期の賃借権等の設定 | 持分の価格の過半数 | 建物は3年、山林以外の土地は5年を超えないもの | 同法252条4項 |
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる | 条文は「保存行為」とだけ定めているため、当たるかどうかは個別に確認する | 同法252条5項 |
持分の過半数で決めた内容が、それまでの決定にもとづいて共有物を使っている共有者に特別の影響を及ぼすときは、その共有者の承諾が必要です(民法252条3項)。また、共有者は持分の過半数で共有物の管理者を選ぶことができ、管理者は管理に関する行為をすることができます(同法252条の2)。
賃貸の実務で気をつけたいのは、共有の建物を貸すときの同意です。持分の過半数で設定できる建物の賃借権等は、3年を超えないものに限られます(民法252条4項3号)。これを超える期間の賃貸借や、更新の扱いによって実質的に長く続く賃貸借を、どの範囲の同意で結べるかは個別の判断になるため、迷うときは弁護士に確認します。
所在等不明共有者・賛否を示さない共有者がいるとき
相続を重ねた共有不動産では、共有者の一部の行方が分からない、連絡しても返事がない、ということが起こります。改正民法は、こうした場合に裁判所の手続で前に進める方法を用意しました。
| 制度 | 条文 | できること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 所在等不明共有者がいる場合の変更 | 民法251条2項 | 裁判所の裁判を得て、その共有者以外の共有者全員の同意で変更を加えられる | 共有者を知ることができない、または所在を知ることができないことが必要 |
| 所在等不明共有者・賛否不明共有者がいる場合の管理 | 同法252条2項 | 裁判所の裁判を得て、残りの共有者の持分の過半数で管理事項を決められる | 賛否不明の場合は、相当の期間を定めて催告しても賛否を明らかにしないことが必要 |
| 所在等不明共有者の持分の取得 | 同法262条の2 | 裁判所の裁判で、請求した共有者がその持分を取得する | 不動産が対象。時価相当額の供託が必要。相続財産の持分は相続開始から10年を経過しないと使えない |
| 所在等不明共有者の持分の譲渡 | 同法262条の3 | 他の共有者全員が持分の全部を特定の者に譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を得る | 不動産全体を第三者に売るときに使う。相続財産の持分は10年の制限がある |
持分の取得の裁判は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所が扱います(非訟事件手続法87条1項)。裁判所は、申立てがあったことなどを公告し、異議の届出などの期間(いずれも3か月以上)が過ぎてからでなければ裁判をすることができません(同条2項)。申立人は、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を供託しなければなりません(同条5項)。所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対し、取得された持分の時価相当額の支払を請求できます(民法262条の2第4項)。
持分の取得は、ほかの共有者から共有物分割の請求や遺産分割の請求があり、かつ異議の届出があると、裁判をすることができません(民法262条の2第2項)。共有者の間で争いがある場合は、共有物分割の手続のほうで解決を図ることになります。
これらの手続の前提は、共有者の所在を調べ尽くしたことです。登記事項証明書で共有者を確かめ、住民票や戸籍の附票で住所を追うといった調査の記録を残しておきます。手続の申立ては弁護士や司法書士に相談します。
共有物分割請求|協議から裁判へ
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項)。ただし、5年を超えない期間内は分割しないという契約をすることができ、更新もできます(同条1項ただし書・2項)。
分割の方法は、まず共有者の協議で決めます。協議がまとまらないとき、または協議ができないときは、裁判所に分割を請求できます(民法258条1項)。裁判所が命じられる分割の方法は次のとおりです。
| 方法 | 内容 | 条文 | 不動産での例 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 共有物そのものを分ける | 民法258条2項1号 | 1筆の土地を分筆して、それぞれの単独所有にする |
| 賠償分割(価格賠償) | 共有者の一部に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる | 同項2号 | 住み続ける共有者が単独で取得し、他の共有者に代金を支払う |
| 競売による分割 | 上の方法で分割できないとき、または分割で価格が著しく減るおそれがあるときに競売を命じる | 同条3項 | 建物付きの土地で分けようがなく、取得を希望する共有者もいない |
裁判所は、分割の裁判の中で、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行などの給付を命じることもできます(民法258条4項)。
競売では、売却の時期や価格などの条件を共有者が決めることはできません。裁判に進む前に、共有者全員で第三者に売る、ある共有者が他の持分を買い取る、といった協議の選択肢を一つずつ確かめておく意味があります。
相続で生まれた共有と「10年」のルール
相続で生まれた共有は、遺産分割で解消するのが原則です。共有物の全部またはその持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、共有物分割の手続(民法258条)で分けることはできません(同法258条の2第1項)。
ただし、共有物の持分が相続財産に属する場合で、相続開始の時から10年を経過したときは、共有物分割の手続で相続財産の持分も分けられます(民法258条の2第2項)。相続人が異議を申し出たときはこの限りでなく、異議は裁判所から通知を受けた日から2か月以内にしなければなりません(同条2項ただし書・3項)。
もう一つの10年は、遺産分割での相続分です。相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分の規定が適用されず(民法904条の3)、法務省の資料では、法定相続分または指定相続分によって画一的に分けることになると説明されています。10年以内に家庭裁判所に遺産分割を請求した場合などは例外です。
相続人どうしの共有をそのままにしておくと、次の相続で共有者が増え、所在の分からない共有者が出やすくなります。相続の相談では、遺産分割の段階で単独所有にできないかを最初に検討します。亡くなった人の不動産を洗い出す方法は、所有不動産記録証明制度の記事で説明しています。
分割・売却の選択肢と税の基本
主な選択肢
- 全員で全体を売る:共有者全員がそれぞれの持分を同じ買主に売ります。売却代金を持分に応じて分けます。
- 共有者の一人が買い取る:住み続けたい共有者や、管理を引き受ける共有者が他の持分を買い取ります。裁判では賠償分割に当たる形です。
- 分筆して分ける:土地が広く、分けても使える場合の方法です。接道や面積の条件で分けられないこともあります。
- 所在等不明共有者の持分を手続で処理する:民法262条の2・262条の3の手続を使い、取得または全体の売却につなげます。
土地を分ける場合は境界の確定が前提になります。分けた後の土地が建築基準法の接道義務を満たすかも確かめます。再建築できない土地の売却については再建築不可物件の記事で整理しています。
税の扱いの基本
国税庁の所得税基本通達33-1の7は、個人が他の者と土地を共有している場合に、その共有に係る一の土地について持分に応ずる現物分割があったときは、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱うとしています。
一方で、国税庁の質疑応答事例「共有物の分割」では、相続で共有になった2つの不動産を、共有者の一方がA不動産、他方がB土地をそれぞれ取得する形で分けた場合について、持分に応ずる現物分割ではないため、持分の交換として課税関係が生じると回答されています(要件を満たせば固定資産の交換の特例の適用を検討する)。分け方によって税の扱いが変わるため、方針を決める前に税理士に確認します。
不動産会社が相談を受けたときの手順
共有不動産の相談は、売却の相談として持ち込まれることが多くあります。共有者の間の争いについて代理して交渉することは弁護士の領域なので、不動産会社は事実の確認と選択肢の整理、売却や賃貸の実務を担います。手順の例を示します。
- 登記で共有者と持分を確かめる。登記事項証明書で、共有者全員の氏名・住所・持分、抵当権などを確かめます。登記名義人が亡くなっている場合は、相続人が誰かも整理します。
- 共有になった経緯を聞く。相続か、共同購入か。相続なら遺産分割が終わっているか、相続開始からの年数を確かめます。
- 全員の意向を確かめる。売りたい、住み続けたい、貸して収入を得たい、といった意向を共有者ごとに聞きます。連絡がつかない共有者がいれば、その事実を記録します。
- 必要な同意の範囲を示す。やりたいことが変更・管理・保存のどれに当たるか、全員の同意か過半数かを表で示します。
- 専門家につなぐ。協議がまとまらない、所在が分からない共有者がいる場合は、弁護士・司法書士に相談し、裁判所の手続を検討します。税の扱いは税理士に確認します。
借地上の建物を共有している場合や、底地が共有になっている場合は、借地権・底地の売却の記事もあわせて読んでください。
このテーマの全体像は「不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法」にまとめています。
よくある質問
Q1. 共有者の一人が反対していても、共有の家を貸せますか。
建物について3年を超えない賃借権等の設定は、持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項・4項3号)。ただし、それまでの決定にもとづいて使っている共有者に特別の影響を及ぼすときは、その承諾が必要です(同条3項)。
Q2. 共有者の一人と連絡が取れません。不動産を売れますか。
所在を知ることができない共有者がいる場合、裁判所の裁判を得て、その持分を他の共有者が取得する方法(民法262条の2)や、全体を第三者に譲渡する権限を得る方法(同法262条の3)があります。相続財産の持分は、相続開始から10年を経過していないと使えません。
Q3. 共有物分割を裁判所に請求すると、どのように分けられますか。
現物分割、賠償分割(一部の共有者が持分を取得して代金を支払う)、競売による分割のいずれかです(民法258条2項・3項)。どの方法になるかは裁判所が事案に応じて判断します。
Q4. 相続で共有になった土地に、すぐ共有物分割を請求できますか。
遺産分割をすべき段階では、共有物分割の手続では分けられず、遺産分割によります(民法258条の2第1項)。相続開始から10年を経過すると、相続財産の持分についても共有物分割の手続が使える場合があります(同条2項)。
Q5. 土地を持分どおりに分筆して分けると、税金はかかりますか。
所得税基本通達33-1の7は、一の土地について持分に応ずる現物分割があったときは、譲渡はなかったものとして取り扱うとしています。分け方が持分どおりでない場合や、複数の不動産を分け合う場合は扱いが変わるため、税理士に確認してください。
出典(本文で参照している資料)
- 民法(249条〜252条の2、256条、258条、258条の2、262条の2、262条の3、898条、904条の3)
- 非訟事件手続法(87条)
- 法務省 令和3年民法・不動産登記法改正の概要資料(共有制度の見直し)
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
- 国税庁 所得税基本通達33-1の7(共有地の分割)
- 国税庁 質疑応答事例「共有物の分割」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。