共用部の電気料金を見直すときは、まず請求書を「基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金」に分けて、どこが増えたのかを確かめます。そのうえで、契約の区分と契約電力、点灯時間などの使い方、契約先の順に検討します。共用部の電気の契約名義がオーナーであれば、管理会社が切替えや共益費の改定を進める前に、管理委託契約の範囲を確かめ、書面で承諾を得ておきます。
請求書の内訳を分けて読む
共用部の電気代が上がったとき、最初にやることは「何が増えたのか」を分けることです。請求額の合計だけを前年と比べると、使用量が増えたのか、単価が上がったのか、値引きがなくなったのかが分かりません。
電気料金の請求書には、一般に次のような項目が並びます。契約によって名称や構成は異なるので、手元の請求書と料金表で確かめてください。
| 項目 | 決まり方 | 見直しの余地 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力(kW)や契約容量など、契約の大きさで決まる | 設備の実態に合わせて契約電力を見直すと変わることがある |
| 電力量料金 | 使用量(kWh)に単価を掛けて計算する | 使用量を減らす、単価の違う料金メニューを比べる |
| 燃料費調整額 | 燃料価格の変動を毎月反映する | 個別には動かせない。計算方法や上限の有無は契約ごとに確かめる |
| 再エネ賦課金 | 使用量に全国一律の単価を掛ける | 単価は動かせない。使用量を減らせば負担も減る |
| 国の支援による値引き | 対象の月の使用量に応じて値引きされる | 動かせない。前年と比べるときに値引きの有無をそろえる |
国の電気料金の支援は、時期によって有無と金額が変わります。資源エネルギー庁の「エネルギー価格の支援について」によると、2026年は7月使用分と9月使用分が低圧3.5円/kWh・高圧1.8円/kWh、8月使用分が低圧4.5円/kWh・高圧2.3円/kWhの値引きです。値引きのある月とない月をそのまま並べると増減を読み違えるので、比べるときは使用量(kWh)と、項目ごとの単価で並べます。
手元にそろえる資料は、直近12か月分の請求書(または電力会社のWebサービスの明細)と、現在の契約の料金表です。12か月分あると、季節による使用量の違いと、単価の変化を分けて見られます。
再エネ賦課金は単価が全国一律、負担は使用量に比例
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、資源エネルギー庁の説明では、電気を使うすべての人が負担するもので、単価は全国一律になるよう調整され、負担額は電気の使用量に比例します。契約先を替えても単価は変わりません。
単価は年度ごとに決まります。2025年度(2025年5月分から2026年4月分の電気料金に適用)は1kWhあたり3.98円、2026年度(2026年5月分から2027年4月分)は1kWhあたり4.18円です。2026年度の単価は2026年3月19日に経済産業省が発表し、各電力会社もお知らせで案内しています。
仮の数字で計算例を示します。共用部の使用量が月800kWhの物件では、再エネ賦課金は2025年度の単価で800×3.98=3,184円、2026年度の単価で800×4.18=3,344円です。差は月160円、12か月で1,920円になります。単価の差より、使用量そのものが負担額を大きく左右することが分かります。
燃料費調整のしくみと上限
燃料費調整制度は、原油・LNG・石炭の燃料価格(為替を反映した円建ての日本着の価格)の変動を電気料金に反映するしくみです。資源エネルギー庁の「燃料費調整制度について」によると、現在の制度では3か月分の平均燃料価格を毎月反映し、3〜5か月前の3か月平均を使います。そのため、燃料価格が動いてから請求書に表れるまでには時間差があります。
大手電力会社の規制料金(経過措置料金)では、燃料費調整の設定が義務づけられ、反映できる範囲には上限(基準燃料価格の1.5倍)があります。電気料金メニューの多くにこのしくみが取り入れられていますが、自由料金で上限があるかどうか、どの指標で計算するかは、契約先の料金表や約款で確かめます。
燃料費調整額の単価は毎月変わるので、前年同月と比べるときは「燃料費調整単価×使用量」で分けて見ます。使用量が同じなのに合計が増えている月は、単価の要因(燃料費調整、賦課金、値引きの有無)によるものと分かります。
共用部の契約区分と契約電力を確かめる
2016年4月1日の小売全面自由化で、家庭や商店を含むすべての消費者が電力会社や料金メニューを選べるようになりました。それ以前に自由に交渉できたのは、特別高圧・高圧で電気を使うビルや工場などに限られていました。また、競争が十分に進むまでの間、規制部門の料金(経過措置料金)も各地域の電力会社から引き続き提供されています。
賃貸住宅の共用部には、廊下灯や外灯などに使う電灯の契約と、エレベーターや給水ポンプなどモーターを動かす設備の動力の契約が、別々に結ばれていることがあります。まず物件ごとに、何本の契約があり、それぞれ何に使っているかを一覧にします。
動力の契約の例として、東京電力エナジーパートナーの「低圧電力」は、契約電力が原則として50kW未満で、モーターなどの動力を使う場合の契約です。基本料金はkWあたりで決まるので、契約電力の大きさがそのまま基本料金に響きます。同社の案内では、電気をまったく使わない月は基本料金が半額になります。
低圧電力の契約電力の決め方には、契約主開閉器の定格電流値にもとづいて決める「主開閉器契約」と、使う電気機器の総容量(入力)に一定の係数を掛けて決める「負荷設備契約」があります。設備を入れ替えたり撤去したりしたのに契約がそのままになっていないかを確かめます。
| 確認項目 | 見る資料 | 確かめること |
|---|---|---|
| 契約の本数と用途 | 請求書、検針票、受電設備の銘板 | 電灯と動力の契約が何本あり、どの設備に使っているか |
| 契約名義 | 請求書、契約の申込書 | 名義がオーナー個人か法人か、前所有者のままでないか |
| 契約電力・契約容量 | 請求書、電力会社への照会 | 撤去・更新した設備が契約に残っていないか |
| 料金メニュー | 料金表、約款 | 規制料金か自由料金か、燃料費調整の計算方法と上限 |
| 使用量の季節変動 | 12か月分の明細 | 点灯時間や設備の運転で説明できる変動か |
契約電力の変更には工事や申込みの手続きが関わることがあるので、具体的な手順は電力会社や電気工事店に確かめてから、オーナーに提案します。
使用量を減らすときの注意点
再エネ賦課金も電力量料金も使用量に比例するので、使用量を減らすことはどの契約でも効きます。共用部で確かめやすいのは次の点です。
- 廊下灯・外灯のタイマーや明るさセンサーの設定が、季節の日の出・日の入りに合っているか
- 人感センサーが付いた照明の点灯時間の設定が長すぎないか
- 給水ポンプやエレベーターの保守点検報告に、運転状態の異常の指摘がないか
- 空室や使っていない倉庫などで、照明や換気扇がつけたままになっていないか
ただし、誘導灯は消防法施行令第7条第4項で「避難設備」に挙げられている消防用設備です。節電のために消したり外したりする対象にはしません。照明器具の交換工事を頼むときも、一般の照明と誘導灯・非常用の照明を分けて業者と確認します。
照明器具の交換など工事を伴う見直しでは、費用の税務上の扱いも確かめます。国税庁のタックスアンサー(個人はNo.1379、法人はNo.5402)では、1つの修理などの金額が20万円未満の場合や、おおむね3年以内の周期で行われる修理などは修繕費とできるとされ、性能を高める部分などは資本的支出になります。判定は工事の内容によるので、オーナーの税理士に確かめてもらうよう伝えます。
契約先を切り替える前の確認項目
契約先や料金メニューを替える場合は、条件を書面で確かめてから判断します。資源エネルギー庁は、電力・ガスの切替え契約の際に確認すべき点として次の項目を挙げています。
| 確認項目 | 共用部での見方 |
|---|---|
| 事業者の社名・連絡先、国の登録事業者か | 資源エネルギー庁の登録小売電気事業者一覧で確かめる |
| いつから供給されるか | オーナーへの報告や送金明細の切替え月を決めておく |
| 契約期間はいつからいつまでか | 物件の売却予定や管理契約の期間と照らし合わせる |
| 契約期間満了後の手続き | 自動更新か、更新時に条件が変わるか |
| 毎月の料金と算定方法 | 基本料金、従量単価、燃料費調整の計算方法と上限の有無 |
| 標準の手続き以外にかかる費用 | 工事費などがかかるか |
| 割引の内容と期間 | 割引が終わった後の単価で比べる |
| 契約期間内に解約するときの制約 | 売却や建替えの予定があれば特に確かめる |
| 解約手数料の有無と金額 | 比較表に解約手数料の欄を設ける |
比べるときは、直近12か月の実際の使用量を、現在の契約と候補の契約の両方の料金表に当てはめて計算します。割引期間だけの単価や、季節の一部の月だけで比べると、年間の差を見誤ります。燃料費調整や賦課金は契約先を替えても同じように変動するので、比較では「どの部分が契約で変わり、どの部分は変わらないか」を分けて示します。
オーナーへの提案と承認の手順
共用部の電気契約の名義がオーナーであれば、見直すかどうかを決めるのはオーナーです。管理会社が見直しを進めるときは、管理委託契約で何を任されているかを確かめます。
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」(令和3年4月23日公表)では、管理会社が委託者を代理する業務として第14条に、敷金・家賃・共益費などの徴収、未収金の督促、入居者からの通知の受領、賃貸借契約の更新、修繕の費用負担についての入居者との協議、原状回復についての入居者との協議が挙げられています。電気の契約の変更はこの一覧にはありません。また、管理業務の内容は頭書(3)で「点検・清掃等」「修繕等」「家賃等の徴収等」「その他」に分けて定める形です。
実際の管理委託契約が標準契約書と同じとは限りません。自社の契約書で範囲を確かめ、範囲外であれば、オーナーから書面で依頼を受けてから手続きを代行します。進め方の例は次のとおりです。
- 物件ごとに契約の本数・名義・メニュー・12か月の使用量と金額を一覧にする
- 増えた要因を「使用量」「燃料費調整」「賦課金」「値引きの有無」に分けて示す
- 点灯時間などの使い方の見直しと、契約電力・料金メニュー・契約先の見直しを、別々の案として示す
- 候補の契約の条件(期間、解約手数料、算定方法)を書面で添える
- オーナーの承諾を書面(電子メールなどの記録を含む)で受ける
- 切替え後の最初の数か月は、請求書を前年同月と項目ごとに比べて報告する
賃貸住宅管理業法第20条と同法施行規則第40条では、登録を受けた管理業者は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、管理業務の実施状況などを記載した管理業務報告書を委託者に交付して説明します。共用部の電気代の推移と見直しの結果を、この報告にあわせて記録しておくと、次の提案の根拠になります。管理業法の全体像は賃貸住宅管理業法の解説にまとめています。
共益費の改定を検討するとき
電気代の上昇を共益費に反映させたいという相談もあります。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)第5条では、共益費は階段・廊下などの共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等に充てるために借主が貸主に支払うものとされています。同条第4項は、維持管理費の増減により共益費が不相当となったときは、貸主と借主が協議の上で共益費を改定することができると定めています。
つまり、標準契約書の考え方では、共益費の改定は協議によるものです。個々の契約書に別の定めがあることもあるので、物件ごとの契約内容を確かめます。入居者に説明するときは、共用部の電気代の12か月の推移と、単価の要因(燃料費調整・賦課金)と使用量の要因を分けた資料を用意し、使い方の見直しを先に行ったことも示します。
改定の時期は、更新の案内とあわせるか、別に通知するかをオーナーと決めます。入居者が合意しない場合の扱いは契約内容によって異なるので、判断に迷うときは弁護士などの専門家に相談します。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 再エネ賦課金を減らす方法はありますか。
単価は全国一律で、契約先を替えても変わりません。負担額は使用量に比例するので、減らせるのは使用量です。点灯時間や設備の運転の見直しが中心になります。
Q2. 電気の契約の切替えを管理会社が代わりに手続きしてもよいですか。
契約名義人がオーナーであれば、オーナーの判断が前提です。国土交通省の標準管理受託契約書では、電気の契約の変更は管理会社が代理する業務に挙がっていません。自社の管理委託契約の範囲を確かめ、範囲外であれば書面で依頼を受けてから手続きします。
Q3. 今の契約に燃料費調整の上限があるか分かりません。
規制料金(経過措置料金)には基準燃料価格の1.5倍の上限があります。自由料金の場合は、契約先の料金表や約款で、計算方法と上限の有無を確かめてください。
Q4. 使用量は前年と同じなのに請求額が増えています。
単価の要因が考えられます。燃料費調整単価、再エネ賦課金の単価(2026年5月分から4.18円/kWh)、国の支援による値引きの有無を、前年同月と項目ごとに比べてください。
Q5. 電気代が上がった分、共益費を上げられますか。
標準契約書(平成30年3月版)第5条第4項では、維持管理費の増減で共益費が不相当になったときは、協議の上で改定できるとしています。個々の契約書の定めを確かめ、根拠資料を用意して協議します。
出典(本文で参照している資料)
- 資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」
- 資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー(再エネ賦課金)」
- 関西電力「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価について」(2026年3月23日)
- 資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」
- 資源エネルギー庁「電力自由化で料金設定はどうなったの?」
- 資源エネルギー庁「電力・ガス自由化 切替え契約時は、ココに注意!」
- 資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」
- 東京電力エナジーパートナー「低圧電力」
- 東京電力エナジーパートナー「低圧電力における『契約電力』とは、何ですか?」
- e-Gov法令検索「消防法施行令」第7条
- 国税庁 タックスアンサーNo.1379「修繕費とならないものの判定」
- 国税庁 タックスアンサーNo.5402「修繕費と資本的支出の区分」
- 国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第20条
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」第40条
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。