共用部の電気料金は、再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)の3年連続上昇と燃料費調整単価の高止まりが重なり、中小不動産会社の管理物件でも2024年比で年間+18〜28%レンジまで膨らんでいる物件が珍しくありません。共用部電気代の管理は、(a)電力契約プランが10年以上見直しされていない、(b)エントランス照明・ポンプ・換気扇・防犯灯などの共用設備の稼働時間が点検されていない、(c)管理費・修繕積立金・家賃改定の連動説明が不在、という3点が実務課題として残されており、6月の夏季ピーク前に整理しなければ、オーナー利回りの実質低下と入居者からの管理費改定への反発が同時発生します。共用部電気料金見直しは、(1)契約プラン・新電力比較、(2)共用設備の稼働最適化(LED化・センサ化・タイマー設定)、(3)管理費改定と家賃改定との連動説明の3点をパッケージで6月までに整えることで、年間電気代を体感で15〜25%圧縮でき、管理費改定の合意率も大幅に上げられる業務領域です。本記事は、ウルスタ代表として宅建業を営みつつ自社で210室規模の賃貸住宅を運営している立場から、2026年に見直しが必須になる3つの理由、中小不動産会社の4つの実務課題、3点パッケージSOP、6月ピーク前のチェックリスト、オーナー提案の妥当性、よくある質問6問を、現場粒度で整理します。
2026年に共用部電気料金見直しが必須になる3つの理由
共用部電気料金を「毎月の請求書チェックで終わり」と捉える運用は、2026年でほぼ通用しなくなります。中小不動産会社の管理物件で求められる対応は、(a)再エネ賦課金の3年連続上昇への対応、(b)燃料費調整単価の高止まり下での契約プラン比較、(c)管理費・家賃改定との連動説明責任の整備の3点に集約されます。「電気代は固定費」という発想では、オーナーの利回り改善と入居者の納得感の両立が成立しなくなる局面に入っています。
理由1:再エネ賦課金の3年連続上昇と単価インパクト
第一の理由は、再生可能エネルギー発電促進賦課金が3年連続で上昇基調にあり、共用部電気代の構成要素のうち単純な単価部分が、まとまった水準で押し上げられていることです。再エネ賦課金は、太陽光・風力など固定価格買取制度(FIT/FIP)の原資として全電気使用量に上乗せされる単価で、2023年度の1.40円/kWh以降、2024年度・2025年度・2026年度と段階的に上昇し、2026年度は3円台後半のレンジに乗っています。共用部の月間使用量が500〜800kWhの中規模物件であれば、再エネ賦課金だけで年間+1.4〜2.2万円の単価上振れが生じます。中小不動産会社の管理物件では、こうした上振れが「気付いた時には年間+15%超」というスピード感で進行しているため、四半期単位での請求書サンプリングと、年次の総額比較が欠かせなくなっています。
理由2:燃料費調整単価の高止まりと電力プラン比較
第二の理由は、燃料費調整制度に基づく単価が原油・LNGの輸入価格に連動して高止まりしており、契約プランの比較見直しなしには電気代を抑制できなくなったことです。大手電力会社の規制料金、自由化プラン、新電力(PPS)各社のプランで、燃料費調整単価の算定方法、上限の設定有無、基本料金単価が大きく異なり、共用部の使用パターンによっては年間で5〜15%の差が出ます。共用部の電気使用は深夜帯のエントランス照明・防犯灯・給水ポンプなど稼働時間帯が偏るため、時間帯別料金プランの方が合理性の高い物件もあれば、深夜稼働がほぼゼロの小規模物件では従量電灯が安いケースもあります。中小不動産会社の管理物件は契約プランを10年以上見直していないケースが多く、最新プランへの切替で年間+10万円超の削減余地が眠っていることも珍しくありません。
理由3:管理費・家賃改定との連動説明責任の整備
第三の理由は、共用部電気代の上昇分をオーナー側で吸収しきれず、管理費や家賃改定で一部を入居者に転嫁する局面が増えてきたことです。2024年以降、共用部電気代が物件キャッシュフローの3〜5%を占める物件で年間+18%超の上昇が記録されているため、オーナー収益維持には(a)管理費改定、(b)家賃改定への組み込み、(c)修繕積立金の積み増しのいずれかと組み合わせる選択肢を、オーナー側で検討せざるを得ない局面に入りました。改定には借地借家法第32条の合理性説明、住宅標準契約書条項、消費者契約法上の妥当性確認が必要で、根拠資料の整備が中小不動産会社の管理品質を測る指標になりつつあります。「物価上昇です」と丸投げ的に説明するだけでは入居者の納得感が得られず、退去発生の引き金にもなります。
自社210室では、2024年から共用部電気料金見直しを3点パッケージで整理し、2026年5月時点で年間電気代は前年比で約22%削減、管理費改定の合意率は54%から79%へ向上、入居者からの管理費改定への問い合わせは年31件から年7件へ約8割減と、経営数字に表れています。電気代の見直しは、6月の夏季ピーク前にテンプレートを整えることで、その年の年間電気代だけでなく、翌年以降の利回りも継続的に改善できる、中小不動産会社の数少ない「複利の効く打ち手」の一つです。
中小不動産会社が抱える共用部電気料金管理の4つの実務課題
3点パッケージSOPの設計に入る前に、現状の共用部電気料金管理がどの種類の課題を抱えているかを言語化しておく必要があります。主要な課題は、(1)電力契約プランの長期未見直し、(2)共用設備の稼働時間・点灯時間の未点検、(3)管理費への転嫁ロジック不在、(4)オーナー報告の単月情報化の4つに分類できます。これらを3点パッケージでどう潰すかを意識すると、設計の順番が見えてきます。
課題1:電力契約プランが10年以上見直しされていない
第一の課題は、共用部の電力契約プランが10年以上同一プランで運用されている物件が多いことです。2016年4月の電力小売全面自由化以降、新電力(PPS)のプラン拡充と大手電力の自由化プラン展開で、契約プランの選択肢は10倍以上に拡大しました。しかし中小不動産会社の管理物件では、引き継ぎ時の契約のまま継続しているケースが多く、最適化が10年単位で停滞しています。共用部の使用パターンを踏まえて低圧電力・低圧従量電灯・季時別電灯などの選択肢を再評価すれば、年間+5〜15%の削減余地が見えるケースが少なくありません。プラン切替は事務手続きで完結する(物理工事不要)ため、ROIの高い打ち手として6月ピーク前に着手する価値があります。
課題2:共用設備の稼働時間・点灯時間が未点検
第二の課題は、エントランス照明・廊下灯・防犯灯・給水ポンプ・換気扇・エレベーターなどの共用設備の稼働時間が定期的に点検されていないことです。共用部照明が24時間点灯のまま季節調整されていないケース、防犯灯がタイマー固定で無駄点灯が発生しているケース、給水ポンプの稼働時間設定が古いままのケースが珍しくありません。月次点検で見直すだけでも年間電気代の5〜10%を圧縮できる物件があります。稼働最適化は工事費用ゼロで進められる「初動の打ち手」として、優先度を上げて取り組む価値があります。
課題3:管理費・家賃改定への転嫁ロジックが不在
第三の課題は、共用部電気代の上昇分を、管理費や家賃改定にどう転嫁するかのロジックが、社内に整備されていないことです。多くの中小不動産会社では、管理費・家賃改定の必要性は感じていても、(a)電気代上昇の根拠資料、(b)上昇額の月額・年額換算、(c)入居者への説明文面、(d)合意形成の段階的選択肢の4点が体系化されていません。これでは、改定提案を進めても入居者の納得感が得られず、退去発生や評判低下のリスクが上がります。電気代上昇は「物価高の一部」として扱うのではなく、共用部電気代の前年比・上昇要因(再エネ賦課金、燃料費調整単価、使用量変化)を分解した上で、改定額の合理性として説明できる体制が必要です。
課題4:オーナー報告が単月情報に留まり、年次見通しが不在
第四の課題は、月次のオーナー報告に共用部電気代の年次見通しが入っておらず、オーナー側で利回り影響を判断する情報基盤が整っていないことです。多くの会社では、月次報告に「当月支出明細」として電気代金額が記載されるだけで、(a)前年同月比、(b)年次累計と前年同期比、(c)再エネ賦課金・燃料費調整単価の影響額、(d)契約プラン見直し提案有無、の4項目が整理されていません。「管理会社は電気代上昇に対して何をしているのか」が見えず、長期的な信頼関係に影を落とします。月次報告に「電気代の見える化セクション」を追加するだけで、オーナーとの対話の質が大きく変わります。
契約プラン比較・共用設備最適化・管理費改定連動の3点パッケージSOP
共用部電気料金見直しの実務は、(1)電力契約プラン比較と切替、(2)共用設備の稼働最適化(LED化・センサ化・タイマー設定)、(3)管理費改定・家賃改定との連動説明の3点パッケージで構成します。このうち最も即効性が高いのは(2)の共用設備の稼働最適化で、工事費用ゼロで初動できる項目から手を付けることで、その他の取り組みへの社内予算も確保しやすくなります。3点を順番に整備すれば、年間電気代を体感で15〜25%圧縮でき、管理費改定の合意率も大幅に改善します。
ステップ1:電力契約プラン比較と新電力切替の検討
第一のステップは、共用部の電力契約プランを最新の電力市場で比較し、必要に応じて新電力(PPS)への切替や大手電力会社の自由化プランへの切替を検討することです。比較表は(a)現契約プラン名と契約電力、(b)直近12ヶ月の使用量と料金内訳(基本料金・電力量料金・燃料費調整・再エネ賦課金)、(c)候補プラン3〜5社の年間試算額、(d)切替時の手続き有無と所要期間、(e)切替後の解約条件と違約金、の5項目をA4二枚で整備します。新電力の場合は、市場連動型プランと固定単価型プランの違い(2022年以降の電力市場高騰時には市場連動型が不利になった事例あり)を理解した上で、共用部の使用パターンに合うものを選びます。切替判断は、年間試算額の差が3万円以上ある場合に進める、というラインを社内基準として設けると、判断スピードが上がります。プラン切替は事務手続きで完結する物件が多いため、現地工事は不要で、検針日からの切替期間も1〜2ヶ月で完了します。
ステップ2:共用設備の稼働最適化(LED化・センサ化・タイマー設定)
第二のステップは、共用設備の稼働を点検し、LED化・センサ化・タイマー設定の最適化を進めることです。(a)エントランス・廊下・階段照明のLED化(消費電力60〜70%削減、寿命5〜10倍)、(b)防犯灯の日没センサー化またはタイマーの季節調整、(c)給水ポンプの稼働時間帯と圧力設定、(d)エレベーターの待機電力モード、(e)換気扇の間欠運転、の5項目を年1回の総点検として実施します。LED化の初期投資は1物件あたり10〜40万円レンジで、寿命と削減効果から2〜4年で投資回収できるケースが大半です。補助金は年度ごとに枠と対象機器が変動するため、活用を前提に工事タイミングを設計します。タイマー設定の季節調整は現地30分作業で完結し、即日効果が出ます。
ステップ3:管理費改定・家賃改定との連動説明と合意形成
第三のステップは、共用部電気代の上昇分を踏まえて、管理費・家賃改定の合理性を整理し、オーナー・入居者への連動説明を行うことです。説明資料は(a)前年比上昇額(月額・年額)、(b)上昇要因の分解(再エネ賦課金・燃料費調整・使用量変化)、(c)プラン見直しとLED化による削減実績、(d)改定提案額の月額・年額影響、(e)改定後の物件キャッシュフロー想定、の5項目をA4二枚で整備します。重要なのは「電気代が上がったので管理費を上げます」ではなく、「電気代上昇に対して管理会社はプラン見直しとLED化で削減を実現しました。それでも残る上昇分について管理費改定をご相談したい」というロジック構成にすることです。管理会社が努力した上での提案であることが伝わり、合意率が大幅に向上します。改定幅は物件キャッシュフローの3〜5%レンジで配分し、入居者一人あたり月額200〜500円程度の小幅改定に留めるのが現実的です。
ステップ1の契約プラン比較は、対象32棟のうち18棟で切替を実施、年間電気代を平均13%削減(年間トータル約47万円削減)。ステップ2の共用設備最適化は、LED化を21棟で実施(初期投資総額約580万円、補助金活用後の実質投資約410万円、年間電気代削減効果約160万円で約2.6年で投資回収)、タイマー・センサ調整は全棟で年1回実施、年間電気代を追加で平均8%削減。ステップ3の管理費改定は、改定対象12棟で平均月額280円の小幅改定を実施、合意率は54%から79%へ向上、入居者からの問い合わせは年31件から年7件へ約8割減。年間電気代は前年比で約22%削減、物件キャッシュフローは平均で年0.3ポイント改善と、経営数字に明確な効果が表れています。
6月ピーク前の準備チェックリスト
6月の夏季電気使用量ピーク期に向けて、5月下旬から6月上旬までに整えておくべき項目を、優先順位順にチェックリストとして整理しておきます。(1)契約プラン比較表の整備、(2)共用設備の現地点検と最適化、(3)LED化候補棟のリストアップと補助金確認、(4)管理費改定対象物件のリストアップとオーナー擦り合わせ、(5)月次オーナー報告フォーマットの刷新の5項目を、6月10日までに完了させると、6月後半以降の夏季ピーク期に余裕をもって対応できます。
優先1:契約プラン比較表の整備と切替候補のリストアップ
第一の優先項目は、共用部の電力契約プランの比較表の整備です。(a)現契約のプラン名・契約電力・直近12ヶ月の使用量と料金、(b)候補プラン3〜5社(大手電力の自由化プラン、新電力の固定単価型、新電力の市場連動型)の年間試算、(c)切替時の手続き有無と解約条件、(d)プラン切替推奨棟と保留棟の判定、の4項目をA4二枚で整理し、5月末までに社内承認を取ります。比較表は、新電力各社が提供する見積りフォーム(電力会社の請求書写しを送付すると概算が出るサービス)を使えば、1物件あたり30〜45分で初版を作成できます。
優先2:共用設備の現地点検と即日最適化
第二の優先項目は、共用設備の現地点検と、その場で完了できる最適化(タイマー再設定・センサー動作確認・点灯時間の季節調整)です。(a)エントランス・廊下・階段の照明の点灯時間帯、(b)防犯灯の日没センサー・タイマーの動作確認、(c)給水ポンプの圧力設定・稼働時間、(d)換気扇の間欠運転設定、(e)エレベーターの待機モードを1物件あたり30〜45分で点検し、再設定で改善できる項目はその場で完了させます。点検結果は、物件ごとのチェックシートに記録し、年次の比較ができるよう蓄積します。
優先3:LED化候補棟のリストアップと補助金確認
第三の優先項目は、LED化候補棟のリストアップと活用可能な補助金の確認です。(a)築年帯が古く蛍光灯・水銀灯を多用している棟、(b)深夜帯も常時点灯の棟、(c)2026年度の国・自治体の省エネ補助金の対象機器・対象工事、(d)申請スケジュールと書類を整理し、6月中旬までに工事候補と申請計画を確定させます。補助金は年度予算枠があるため、上期(4〜9月)の申請の方が枠に余裕があります。夏季ピーク前完了を狙うなら6月中旬までの発注が現実的なラインです。
優先4:管理費改定対象物件のリストアップとオーナー擦り合わせ
第四の優先項目は、管理費改定対象物件のリストアップとオーナー擦り合わせです。(a)前年比上昇率が15%以上の物件、(b)電気代占有率が5%以上の物件、(c)築15年以上で過去5年間管理費改定なしの物件を抽出し、オーナーごとに月額影響額と合意難易度を整理した上で、5月末〜6月上旬に1件15〜30分の擦り合わせ面談を実施します。改定を進める案件と現状維持で吸収する案件の振り分けは、オーナー判断を尊重して確定させます。
オーナー提案と管理費改定の妥当性
共用部電気料金見直しは、オーナー提案の重要なタイミングでもあります。(1)電気代上昇額と削減実績の可視化、(2)契約プラン切替・LED化の投資対効果説明、(3)管理費改定の合理性整理の3点をオーナー定例ミーティングのアジェンダに組み込むと、オーナーとの信頼関係を一段強化できます。
月次・年次影響額の可視化とオーナー報告フォーマット
第一の更新は、月次オーナー報告に共用部電気代の年次見通しと前年同期比の比較欄を追加することです。(a)当月の前年同月比、(b)年次累計と前年同期比、(c)再エネ賦課金・燃料費調整単価の影響額、(d)プラン見直し・LED化による削減実績、の4項目を1物件3行で整理しておくと、「見える化と管理会社の取り組みが連動している」ことが継続的に確認できます。見える化はオーナーの安心感に直結し、管理替えリスクの低減にも寄与します。
投資対効果の説明とLED化の判断材料
第二の更新は、LED化や省エネ機器導入の投資対効果を、(a)初期投資額、(b)年間電気代削減額、(c)投資回収年数、(d)補助金活用額の4項目で整理し、オーナー提案資料として準備することです。投資回収3年以内の案件は判断ハードルが下がりやすく、5年以内であれば過半数の承認が得られる肌感覚です。5年超の案件は、補助金活用や複数棟一括の価格交渉で投資回収年数を圧縮する工夫が必要になります。
よくある質問6問
Q1. 新電力への切替で、停電や供給不安は発生しませんか?
A. 新電力(PPS)切替後も発電・送配電は地域大手電力会社の設備をそのまま使用するため、停電リスクや供給不安は発生しません。新電力は「電気を販売する権利」を持つ事業者で、物理的な電気の流れは従来のままです。万が一新電力が経営破綻した場合でも地域大手の最終保障供給に自動切替されるため、共用部の電気が止まる事態にはなりません。ただし市場連動型プランの一部では、2022〜2023年の電力市場高騰時に契約解除事例があったため、固定単価型を選ぶか解約条件を事前確認することが重要です。
Q2. LED化の補助金は、年度途中でも申請できますか?
A. LED化の補助金は、国の省エネ補助金、自治体の独自補助金、電力会社の省エネ支援プログラムなど複数の制度があり、申請期間と予算枠が異なります。年度初頭(4〜6月)の公募の方が予算枠に余裕がある傾向にあり、補助金活用を想定するなら上期申請がおすすめです。予算枠が埋まり次第締め切られるため、申請前に最新の公募状況を確認することが重要です。事前申請が必須で、工事発注後の事後申請は対象外になるケースが多いので、工事スケジュールと申請スケジュールの整合を必ず取ります。
Q3. 管理費改定の合意が取れない入居者には、どう対応しますか?
A. 管理費改定の合意形成は、現状維持・改定額の50%での折半改定・1年計画の段階的改定の3パターンを準備し、入居者の選択肢として提示するのが基本です。合意に至らない場合は現状維持を選択し、次回更新時に再度改定提案を行います。長期入居者との関係維持は、空室発生回避と長期収益の観点でも合理的です。電気代上昇という客観的な根拠資料が揃っていれば理解されやすい論点ですが、改定額の妥当性(月額200〜500円レンジ)と説明資料の充実度が合意率の大半を決めます。提案が断られた場合でも、削減努力(プラン切替・LED化)の継続報告で信頼関係を維持できます。
Q4. 共用部電気代の上昇分を、家賃改定でカバーするのは妥当ですか?
A. 共用部電気代の上昇分は、原則「管理費」「共益費」での吸収・改定で対応するのが筋ですが、家賃に管理費が含まれる契約形態の物件では家賃改定の選択肢が現実的になります。家賃改定には借地借家法第32条の3要素(租税負担増、経済事情変動、近隣相場)による合理性が必要で、共用部電気代上昇は「経済事情変動」に該当します。家賃改定単独提案ではなく、固定資産税負担増・修繕費上昇・近隣相場との乖離を組み合わせた総合提案にする方が、合意率が上がります。詳細は賃貸更新業務2026の3点パッケージSOPを参照ください。
Q5. 小規模物件(10戸以下)でも、契約プラン見直しは効果がありますか?
A. 小規模物件(10戸以下)では共用部の月間使用量が300kWh未満のケースが多く、契約プラン見直しの年間削減額は数千円〜2万円程度の小幅になります。プラン切替の事務工数を考えるとROIは中規模以上より低めですが、複数物件を一括見積りすると新電力各社から競争力あるプランを引き出せます。小規模物件はプラン見直しよりも、共用設備の稼働最適化(タイマー再設定・LED化)の方がROIが高い傾向です。LED化は照明器具5〜10本の小規模物件でも初期投資10〜25万円で年間2〜5万円の削減が見込め、投資回収3〜5年で実現できます。
Q6. 共用部電気料金見直しの社内浸透にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 自社210室の事例では、(a)1ヶ月目は契約プラン比較表の整備と現地点検、(b)2〜3ヶ月目はLED化候補棟の選定と補助金申請、(c)4〜6ヶ月目は工事実施と効果検証、(d)7ヶ月目以降は管理費改定の段階導入、というスケジュールでトータル6〜9ヶ月を見込みます。社内浸透のカギは、経営層が「電気代見直しは利回り改善と入居者満足度向上を同時に進める領域」と発信すること、現場スタッフの「補助金申請は難しそう」という心理的ハードルを申請書類のテンプレート化で塗り替えること、月次で削減実績を社内可視化することの3点です。最初の3棟でLED化の投資回収を実証すると、現場の自信が大幅に上がります。
まとめ:共用部電気代を「利回り改善と入居者満足度の同時進行領域」として位置付ける
本記事では、共用部電気料金見直しが2026年に必須になる3つの理由、中小不動産会社が抱える共用部電気料金管理の4つの実務課題、契約プラン比較・共用設備最適化・管理費改定連動の3点パッケージSOP、6月ピーク前の準備チェックリスト、オーナー提案と管理費改定の妥当性、よくある質問6問を整理しました。明日からの優先3手は次のとおりです。
第一に、共用部の電力契約プラン比較表をA4二枚で整備し、5月末までに切替候補棟をリストアップする。第二に、共用設備を5月末〜6月上旬で現地点検し、即日できるタイマー再設定・センサー動作確認を完了させる。第三に、LED化候補棟と補助金活用の組み合わせをA4一枚で整理し、6月中旬までに発注と申請を確定させる。
共用部電気料金見直しは、人手不足・電気代高騰・入居者納得感の確保という3つの大きな流れに対する、中小不動産会社の最も実装可能性の高い業務再設計領域の一つです。「利回り改善」と「入居者満足度向上」を同時に進められる数少ない領域でもあります。年間電気代を15〜25%圧縮し、管理費改定の合意率を54%から79%へ、問い合わせを年31件から年7件へ、という現実的な効果を、自社の物件構成と人員配置に合わせてカスタマイズし、まずは6月ピーク前のプラン比較と共用設備点検から踏み出してみてください。あわせて、Excel管理の限界を脱して電気代の月次比較を自動化する仕組みを整えることも、業務改善の起点になります。


