不動産会社の業務改善 読了 25分

店舗・事務所の賃貸で、保証人が個人なら——貸主側にも取消しのリスクがある。民法465条の10の情報提供義務を、契約書1枚の運用に落とす

賃料の上昇が続き、法人契約や店舗・事務所の案件を扱う機会が増えています。ところが事業用の賃貸借には、居住用にはない保証のルールがあります。民法465条の10——事業のために負担する債務の保証を個人に委託するとき、借主は自分の財産と収支の状況を保証人に伝えなければならない。伝えなかったことを貸主が知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約そのものを取り消せます。契約書の様式ではなく、契約前の会話に穴があるという話です。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
事業用賃貸の個人保証は取り消されることがあります|民法465条の10の情報提供義務と店舗・事務所の保証実務2026
目次

店舗や事務所の賃貸借で、保証人が個人のとき、その保証契約は後から取り消されることがあります。取り消す権限を持っているのは保証人です。取り消される原因を作るのは借主です。それなのに、損をするのは貸主と、契約をまとめた仲介・管理会社です。

全国賃貸住宅新聞は2026年8月8日号で「知らないと損をする『事業用保証』の実務」という連載を載せました。同紙の8月3日号は、賃料の上昇を背景にシェアハウスへ法人需要が向かっているとも伝えています。住居系の賃料が上がり続けるなかで、法人契約と事業用物件を扱う機会は中小の会社にも増えています。そのとき、居住用の契約書と居住用の段取りをそのまま持ち込むと、保証だけが空洞になります。

【要点】3行で

論点結論
事業用×個人保証借主は保証人に財産・収支の状況などを提供する義務がある(民法465条の10)。怠ったことを貸主が知り、または知ることができたときは、保証人が保証契約を取り消せる
貸主・管理会社の対応契約前に情報提供を受けた旨の確認書を保証人から取る。取っていれば「知ることができた」に当たりにくくなる
極度額事業用は原状回復がスケルトン戻しになりうる。居住用の「賃料12か月分」の感覚では足りない。滞納+明渡し+原状回復の3層で積む

居住用と事業用で、保証のルールは同じではない

賃貸の保証というと、極度額と保証会社の話に収れんしがちです。しかし事業用建物の賃貸借には、居住用には出てこない条文がひとつ効いてきます。まず全体の違いを並べます。

論点居住用建物事業用建物(店舗・事務所・倉庫)
個人根保証の極度額(民法465条の2)必要必要
保証契約の書面性(民法446条2項)必要必要
委託時の情報提供義務(民法465条の10)適用されない適用される
保証意思の公正証書(民法465条の6)不要不要(貸金等債務ではないため)
宅建業法の報酬規制一方から0.55倍まで(承諾があれば枠内で配分自由)一方からの制限なし。双方合計1.1倍は同じ
原状回復ガイドライン(国土交通省)対象対象外
造作買取請求権(借地借家法33条)特約で排除可特約で排除可

表のうち、実務でいちばん見落とされているのが3行目です。ここだけが「事業用のときにだけ現れる義務」で、しかも義務を負うのは借主なのに、不利益をかぶるのは貸主側という構造をしています。

民法465条の10 — 事業用に固有の、取消しリスク

条文の骨格はこうです。

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証(またはその債務が含まれる根保証)の委託をするときは、委託を受ける者に対し、一定の情報を提供しなければならない。

そして第2項が効きます。主債務者が情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したために、委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証の意思表示をした場合において、そのことを債権者が知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます。第3項で、保証人が法人であるときは適用されません。

賃貸借に置き換えると、登場人物はこうなります。

条文の言葉賃貸借での中身
主たる債務者借主(テナント)。法人でも個人事業主でも同じ
委託を受ける者保証人になってくれと頼まれた個人。代表者本人、親族、取引先の社長など
債権者貸主(オーナー)。管理会社が代理・受託している場合は、その認識も評価の対象になりうる
主たる債務賃料、共益費、原状回復費、遅延損害金など、賃貸借から生じる債務

取消権を持つのは保証人です。行使されるのは、たいてい滞納が起きて保証履行を請求した後です。つまりいちばん回収したい局面で、保証そのものが崩れるという形で表面化します。

店舗の賃料は「事業のために負担する債務」に入るのか

入ります。ここを「事業のために負担する債務=銀行借入」と読んでしまう誤解が根強いのですが、条文は債務の種類を限定していません。事業を行うにあたって生じる債務全般が対象で、買掛金、外注費、そして事務所や店舗の賃料が例として挙げられます。

迷いやすい線引きを表にします。

ケース465条の10理由
飲食店が店舗を借りる。保証人は代表者個人適用事業のために負担する債務。保証人が個人
法人が事務所を借りる。保証人は保証会社のみ不適用保証人が法人(3項)
法人が社宅として居住用を借りる。保証人は代表者個人判断が分かれる居住用建物だが、法人が事業活動として負担する債務にあたるという整理もありうる。安全側で対応する
個人が自宅を借りる。保証人は親族不適用事業のために負担する債務ではない
個人事業主が自宅兼事務所を借りる。保証人は親族判断が分かれる事業用の性格がある。安全側で対応する

3行目と5行目のような「灰色」は現場によく出ます。確認書を1枚多く取るコストは数分、取らなかったコストは保証全体です。迷ったら取るを社内ルールにしてください。

渡すべき情報は3つ。渡すのは借主、受け取るのは保証人

条文が挙げる情報は3つです。

提供する情報賃貸借での具体物
財産および収支の状況直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)、個人事業主なら確定申告書。開業前なら事業計画と自己資金
主たる債務以外に負担している債務の有無、その額および履行状況借入金の残高一覧、リース債務、他店舗の賃料、買掛金。延滞の有無
他に担保として提供し、または提供しようとするものがあるときは、その旨と内容不動産への抵当権、売掛債権の譲渡担保、代表者の別の連帯保証

注意したいのは、渡すのは借主であって貸主ではないという点です。貸主や管理会社が保証人に決算書を見せる義務はありません。義務者は借主です。

ただし貸主の側から見ると「借主がちゃんと渡したかを気にしなければならない」という形になります。渡していないことを知っていた、あるいは注意すれば分かったのに放っておいた——そのときに取消しが通ります。

取り消されるのは、貸主が「知ることができた」とき

第2項の要件を分解します。取消しが成立するには、次の4つがそろう必要があります。

要件内容貸主側が手を打てるか
1借主が情報を提供しなかった、または事実と異なる情報を提供した直接は打てない
2保証人がその事項について誤認した直接は打てない
3その誤認によって保証の意思表示をした直接は打てない
4債権者(貸主)がそのことを知り、または知ることができたここだけは打てる

4つ目だけが貸主側の領域です。逆にいえば、実務でできることは「4を否定できる状態を、契約前に作っておく」に尽きます。

「知ることができた」は過失の問題です。何もしていなければ、後から「保証人に決算書が渡っているか、一度も確認しなかったのか」と問われます。確認した記録があること自体が防御になります。

公正証書は要らない — 465条の6と混同しない

ここで必ず出る質問があります。「事業用の保証なら、公正証書で保証意思を確認しないといけないのでは」。

不要です。公正証書による保証意思宣明を求めているのは民法465条の6ですが、その対象は事業のために負担した貸金等債務の個人保証に限られます。貸金等債務とは金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務のことで、賃料債務は含まれません。

条文対象範囲店舗賃貸借の保証
465条の6(公正証書)事業のために負担した貸金等債務の個人保証対象外。公正証書は不要
465条の10(情報提供)事業のために負担する債務全般の個人保証対象。義務がある

2つの条文は範囲が違います。「公正証書が要らない=事業用の特則は関係ない」と読み違えるのが、いちばんよくある事故の入口です。

貸主側が取るべき形 — 確認書を1枚挟む

やることは単純です。保証契約を結ぶ前に、保証人本人から、借主から情報提供を受けたという確認を書面で取ります。借主から取るのではありません。誤認するのは保証人だからです。

段取りを時系列で置きます。

順番やること誰が
1申込時に「保証人は個人か法人か」を確定する仲介・管理
2個人なら、借主に3項目の情報提供を依頼する(依頼した記録を残す)仲介・管理
3借主が保証人に資料を渡す借主
4保証人から確認書を受領する(署名または記名押印)仲介・管理
5確認書の受領を確認したうえで、保証契約を締結する貸主
6確認書を賃貸借契約書と同じ綴りで保管する管理

順番が大事です。確認書は契約締結より前に取ります。契約日にまとめて署名させる運用は、賃貸の仲介手数料における承諾書と同じ問題を抱えます。時点が後ろにずれるほど、書面の意味が薄くなります。この論点は仲介手数料1か月分の承諾の記事で詳しく扱いました。

確認書に書くこと、書かないこと

書く書かない
保証人の氏名・住所・借主との関係資料の内容そのもの(貸主が保管する必要はない)
民法465条の10第1項の3項目について、借主から情報の提供を受けた旨「情報の正確性を保証する」といった保証人への追加の負担
提供を受けた日「本条に基づく取消権を放棄する」旨の条項
提供を受けた方法(書面の交付・提示・口頭の説明など)借主の決算数値の転記
保証の対象となる賃貸借契約の特定(物件・賃料・期間)極度額以外の金額の記載

3行目に注意してください。取消権をあらかじめ放棄させる条項は入れないのが安全です。465条の10は保証人保護の規定なので、事前の放棄が有効と扱われる保証はありません。むしろ、そういう条項を入れていること自体が「貸主は情報提供が不十分だと分かっていた」という評価につながりかねません。

資料そのものを預かるかは判断が分かれます。確認書だけを取り、資料は預からないのが、情報管理の負担とのバランスでは扱いやすい形です。

法人の代表者が保証人になる場合も、適用される

「代表者は自社の財務を知っているのだから、誤認しようがない」——気持ちは分かりますが、条文は保証人の属性で適用を切り分けていません。切り分けているのは「保証人が法人かどうか」だけです。代表者は個人ですから、適用されます。

実質的には、代表者が自社の財産・収支を誤認したと主張するのは難しいでしょう。ただしそれは争いになった後の話です。確認書は代表者保証でも同じように取ります。作業は同じ1枚です。むしろ気をつけるべきは、親族や取引先の社長といった、借主の財務を知らない個人が保証人になるケースです。誤認の余地が実際にあります。

保証人の立場誤認の現実的な余地確認書の優先度
借主法人の代表取締役小さい取る(形式を揃えるため)
借主法人の役員(非代表)中程度必ず取る
代表者の親族(財務に関与しない)大きい必ず取る
取引先・知人大きい必ず取る。加えて面談で意思を確認する

保証人が保証会社なら、この条文は働かない

465条の10第3項は、保証人が法人であるときは第1項・第2項を適用しないと定めています。家賃債務保証会社は法人ですから、保証会社だけで保証を組む限り、この取消しリスクは発生しません。

そのため、実務の解としてはこうなります。

構成465条の10のリスクその他の論点
保証会社のみなし保証範囲と免責条項の確認が主戦場になる
保証会社+代表者個人の連帯保証個人部分にありいちばん多い形。確認書が要る
個人の連帯保証のみあり極度額の設計が特に重要

2行目が現実にはもっとも多い構成です。併用しているなら、個人部分には465条の10が生きています。

極度額 — 事業用は居住用の物差しでは足りない

個人が保証人になる賃貸借契約は個人根保証契約にあたり、民法465条の2により極度額を定めなければ効力を生じません。書面(または電磁的記録)で定める必要があります。ここは居住用と共通で、詳しくは連帯保証人の極度額の記事で扱いました。

事業用で違うのは、金額の桁です。居住用の感覚で「賃料の12か月分」と置くと、原状回復の局面で足りなくなります。

費目居住用の相場観事業用の相場観
滞納賃料(明渡しまで)賃料6〜10か月分賃料6〜12か月分
明渡し訴訟・強制執行の費用数十万円数十万円〜(残置物の量に比例)
原状回復賃料1〜3か月分程度スケルトン戻しなら賃料6か月分を超えることがある
遅延損害金年14.6%前後の約定が多い同左

飲食店の造作解体、厨房設備の撤去、給排水とダクトの復旧。極度額を「賃料の何か月分」という一律の係数で置く運用は、事業用では合いません。

極度額を、金額で置いてみる

月額賃料30万円・共益費3万円・保証金6か月の飲食店舗を例にします。数字は考え方を示すための試算で、物件と業態により大きく変わります。

積算金額
滞納賃料(30万+3万)×10か月330万円
明渡しの手続費用訴訟費用・執行費用・残置物処分80万円
原状回復スケルトン戻し(想定坪単価×面積)250万円
遅延損害金滞納額に対する約定利率分40万円
小計700万円
保証金の充当(6か月=180万円)控除▲180万円
極度額の目安520万円

賃料の月数に直すと約15.8か月分です。居住用で使われがちな12か月分では届きません。

ただし高く置けばよいものでもありません。高すぎる極度額は保証人が署名をためらう原因になります。積算の根拠を説明できる金額にしておくと、「なぜこの額か」に答えられます。

民法458条の3 — 2か月以内に通知しないと、遅延損害金が消える

もうひとつ、事業用に限らず個人保証全般に効く条文です。主債務者が期限の利益を喪失したとき、債権者はそれを知った時から2か月以内に、個人の保証人へ通知しなければなりません。

通知を怠ると、期限の利益を喪失した時から実際に通知するまでに生じた遅延損害金について、保証債務の履行を請求できなくなります(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)。保証人が法人のときは適用されません。

項目内容
起算点債権者が期限の利益の喪失を知った時(喪失した時ではない)
期限2か月以内
怠った場合喪失時から通知時までの遅延損害金を請求できない
対象個人の保証人のみ。保証会社には適用されない

賃貸借の実務では、契約書に「賃料を◯か月分滞納したときは期限の利益を失う」といった条項が置かれていることがあります。分割払いの合意をした後の不履行も同じです。滞納が一定の段階に達したら、保証人へ通知するという工程を、滞納管理のフローに組み込んでおきます。滞納初動の設計そのものは家賃滞納の初期督促SOPの記事で扱いました。

あわせて民法458条の2も押さえてください。委託を受けた保証人から請求があれば、債権者は不履行の有無と残額を遅滞なく回答する義務があります。こちらは保証人が法人でも適用されます。保証会社からの照会に「個人情報だから答えられない」と返すのは誤りです。

事業用の保証会社は、居住用の保証会社と別物として選ぶ

居住用で付き合いのある保証会社が、そのまま店舗・事務所を引き受けてくれるとは限りません。引き受けても、条件が別建てになるのが普通です。

比較項目居住用事業用
初回保証料賃料の50〜100%が中心賃料の80〜100%以上。業態で変動
更新保証料年1万円前後の固定が多い年額または賃料連動。負担が大きい
審査資料本人確認・収入証明決算書2〜3期、事業計画、代表者の個人信用
代表者の連帯保証不要とする商品が多い求められるのが標準
保証範囲に原状回復を含むか商品による上限付きで含む商品と、除外する商品が分かれる
審査期間即日〜2営業日3営業日〜1週間

選定で見るべき軸は、居住用とは順番が変わります。保証料率より、保証範囲と免責条項が先です。とくに次の3点は契約前に書面で確認してください。

確認項目なぜ効くか
原状回復費用が保証対象か、上限はいくらか事業用でいちばん金額が大きい費目。除外なら個人保証で埋めるしかない
明渡し訴訟費用・強制執行費用が対象か店舗の明渡しは残置物が多く、執行費用が膨らむ
滞納報告の期限は何日か、遅れたらどうなるか報告遅延を免責事由にしている商品がある

保証会社の選び方の一般論は賃貸保証会社の選び方の記事に整理しています。事業用では、そこに上の3点を足して見てください。

実務でいちばん効くのは、保証会社への報告期限

保証契約が有効でも、代位弁済が受けられないケースがあります。原因の多くは報告の遅れです。

多くの保証会社は、滞納の発生から一定日数以内の報告を代位弁済の要件にしています。「もう少し待とう」という現場の温情が、そのまま免責事由に変わります。

日数やること担当
支払期日の翌営業日入金消込で未入金を検知する経理
期日+2日借主へ連絡。入金予定日を確認して記録する管理担当
期日+5日保証会社へ第一報(入金予定があっても報告する)管理担当
期日+10日書面での催告。保証人へも状況を共有する管理担当
翌月の期日2か月目に入る前に、代位弁済の請求手続きを開始する管理責任者

日数は保証会社ごとに違います。自社が使っている商品の実際の日数に、この表を書き換えて使ってください。覚えている担当者が1人しかいない状態が、いちばん危ない状態です。

原状回復 — 事業用にガイドラインは適用されない

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は民間賃貸住宅を対象にしたもので、事業用建物には直接適用されません。通常損耗や経年変化の負担を借主に負わせる特約も、事業者間の契約では有効と扱われやすい傾向にあります。

ただし「事業用だから何でも書ける」ではありません。範囲の見当がつく形で書かれていること、借主がそれを認識して契約したこと。この2つが要ります。

書き方評価
「本契約終了時、賃借人は本物件を原状に回復して明け渡す」だけ弱い。何が原状かで揉める
「引渡し時の状態(スケルトン)に回復する。別紙の引渡し時図面のとおり」強い。図面が基準になる
「賃借人が設置した造作・設備はすべて撤去する。躯体に及ぶ加工は復旧する」強い。範囲が特定されている
「通常損耗および経年変化を含め、賃借人の負担とする」事業用では有効となりやすいが、単独では不足。上の2行と併記する

いちばん効くのは引渡し時の写真と図面を契約書に添付しておくことです。5年後・10年後に「元がどうだったか」を証明できるのは、契約時に撮った写真だけです。

あわせて造作買取請求権(借地借家法33条)の扱いも点検してください。33条は借地借家法37条が掲げる強行規定(31条・34条・35条)に含まれないため、特約で排除できます。排除条項がないと、スケルトンに戻させながら造作の買取を請求されるという矛盾が理屈のうえでは起こりえます。事業用でも定期借家は使えますが、契約書とは別個の書面での事前説明が要件である点は居住用と同じです(定期借家の実務の記事)。

契約書の点検12項目

事業用の雛形を1本、この表で通してみてください。

#点検項目あるべき状態
1保証人が個人か法人か申込書の時点で区別されている
2極度額の記載金額が具体的に書かれている(「賃料の◯か月分」だけでは不十分な場合がある)
3465条の10の確認書保証人から、契約締結前に取得している
4取消権の事前放棄条項入っていない
5保証の対象範囲賃料・共益費・原状回復費・遅延損害金が明示されている
6期限の利益喪失条項発動条件が明確で、保証人通知の工程とつながっている
7原状回復の基準引渡し時図面・写真が別紙で添付されている
8造作買取請求権の排除特約が入っている
9用途の特定業態が書かれている(変更には承諾が必要と明記)
10転貸・営業譲渡事業承継や株主変更を承諾事由に含めるか決めてある
11遅延損害金の利率約定利率が入っている
12保証会社との併用保証会社の保証範囲と個人保証の関係が整理されている

やってはいけない4つ

やってはいけないこと何が起きるか
居住用の雛形の「居住」を「店舗」に置換して使う造作買取の排除も、原状回復の基準も、465条の10の確認書も入っていない
確認書を契約日にまとめて署名させる「委託をするとき」より後になる。時点の証明として弱い
保証人に取消権の放棄条項へ署名させる有効性が疑わしいうえ、情報提供の不備を認識していた証拠になりかねない
滞納の報告を「もう少し待とう」で先送りする保証会社の報告期限を過ぎ、代位弁済が受けられなくなる

今週やること

#やること所要
1事業用の管理物件を一覧にし、保証人が個人の契約を抜き出す1時間
2465条の10の確認書の雛形を1枚作り、次の契約から運用に入れる1時間
3使っている保証会社の「滞納報告の期限」を書面で確認し、滞納フロー表の日数を書き換える30分

既存契約の遡及対応は、慎重に判断してください。今から確認書を取りにいくと、かえって「情報提供が不十分だったのではないか」という論点を掘り起こすことになりかねません。まずは新規から。既存分は、更新のタイミングで契約書ごと巻き直すのが自然です。

よくある質問

Q. 保証会社を入れているのに、代表者の個人保証も取っています。465条の10の確認書は必要ですか。
A. 必要です。3項の適用除外は「保証人が法人であるとき」で、保証人ごとに判断します。保証会社の部分には適用されませんが、代表者個人の部分には適用されます。

Q. 借主が決算書を保証人に見せたがりません。
A. 見せる義務を負っているのは借主です。貸主が代わりに見せる必要はありません。ただ、見せないまま契約すると取消しの余地が残ります。「保証人を法人(保証会社)だけにする」「個人保証を外して保証金を厚くする」といった設計変更のほうが、実務としては早いことがあります。

Q. 社宅として法人が居住用を借り、代表者が保証人になります。適用されますか。
A. 建物は居住用ですが、法人が事業活動の一環として負担する債務にあたるという整理もありえます。判断が分かれる領域なので、確認書を取っておくのが安全です。取ることによる不利益はありません。

Q. 極度額を書き忘れた既存契約はどうなりますか。
A. 個人根保証契約は極度額の定めがなければ効力を生じません。書き忘れは保証全体に及びます。更新の機会に、極度額を定めた保証契約として結び直すことを検討してください。合意更新の扱いは極度額の記事で整理しています。

出典

事項出典
保証契約の書面性民法第446条第2項・第3項
個人根保証契約の極度額民法第465条の2
公正証書による保証意思の確認(貸金等債務)民法第465条の6
契約締結時の情報の提供義務と取消権民法第465条の10
主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務民法第458条の2
期限の利益喪失時の情報の提供義務民法第458条の3
造作買取請求権と強行規定の範囲借地借家法第33条・第37条
定期建物賃貸借借地借家法第38条
原状回復ガイドラインの対象国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(民間賃貸住宅を対象)
事業用保証の実務動向全国賃貸住宅新聞 2026年8月8日号 連載「知らないと損をする『事業用保証』の実務」
賃料上昇と法人需要全国賃貸住宅新聞 2026年8月3日号「家賃高でシェアハウスに法人需要」

本稿の極度額の試算は、考え方を示すために筆者が置いた仮定値です。原状回復費は業態・面積・設備の内容により大きく変動します。実際の設計では、施工会社に概算を取ったうえで積んでください。

また、465条の10の適用範囲、とくに社宅や自宅兼事務所のような混在型の扱いは、事案ごとの個別判断になります。本稿は一般的な整理であり、個別の案件については顧問弁護士または所属団体の相談窓口にご確認ください。賃貸仲介と管理の実務については、ウルスタのコラムで継続的に書いています。