賃貸管理 読了 13分

家賃滞納の初期督促SOP|支払期日の翌日から保証会社連絡・催告・解除までの手順と法令

家賃滞納の初期対応は、入金を確かめる日を決め、本人への連絡、書面の督促、保証会社や連帯保証人への連絡、期間を定めた催告と記録を残して進めるのが基本です。民法、登録規程、貸金業法21条、最高裁判決を確かめ、手順と社内ルールの例にまとめました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
家賃滞納の初期督促SOP|支払期日の翌日から保証会社連絡・催告・解除までの手順と法令
目次

家賃滞納の初期対応は、入金を確かめる日を決め、本人への連絡、書面の督促、保証会社や連帯保証人への連絡、期間を定めた催告と解除の検討という順に記録を残して進め、私生活の平穏を害する取立てをしないことが基本です。この記事では、民法、消費者契約法、家賃債務保証業者登録規程、貸金業法21条、最高裁令和4年12月12日判決を確かめ、段階ごとの手順と社内ルールの例を示します。

督促で押さえる法令と判例

支払期日と遅延損害金

督促の起点は、契約書に書いた支払期日です。契約で定めがない場合、民法614条は、建物の賃料は毎月末に支払うものとしています。まず契約書の支払期日と支払方法を確かめます。

金銭債務の不履行による損害賠償は法定利率によるのが原則で、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によります(民法419条1項)。消費者との契約では、支払期日までに支払わない場合の損害賠償の予定や違約金は、合算して年14.6%を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項2号)。

催告と解除

民法541条は、相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がないときに解除できるとし、不履行が契約と取引上の社会通念に照らして軽微なときは解除できないとしています。国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)第10条1項も、賃料などの支払義務の違反について、相当の期間を定めた催告と、その期間内の不履行を解除の条件にしています。

何か月分の滞納で解除できるかという数は、民法の条文には書かれていません。賃貸借の解除では、判例上、当事者間の信頼関係が壊れたといえるかが問われてきました。最高裁昭和50年2月20日判決(昭和49(オ)904)は、賃借人の義務違反によって賃貸借契約の基礎である信頼関係が破壊されたとして、無催告の解除を認めた事例です。滞納の月数だけでなく、連絡への応答や分割払いの約束を守ったかといった経過も記録しておきます。

時効

債権は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で、時効によって消滅します(民法166条1項)。催告をすると、その時から6か月を経過するまでは時効が完成しませんが、その間の再度の催告にこの効力はありません(150条)。借主が滞納額を認めて分割払いを申し出たときなどは「権利の承認」として時効が新たに進行を始めるため(152条1項)、承認の内容を書面に残します。

最高裁令和4年12月12日判決

最高裁令和4年12月12日判決(令和3(受)987)は、家賃債務保証業者の契約条項について、賃料などの不払いの合計が賃料3か月分以上に達したときに保証業者が無催告で賃貸借契約を解除できる条項と、賃料の不払いが2か月以上で、利用状況などから明渡しの意思が客観的に見て取れ、明示の異議がなければ明渡しがあったとみなせる条項を、いずれも消費者契約法10条に当たると判断しました。国土交通省の家賃債務保証業者登録制度のページも、この判決に触れています。

管理会社としては、利用している保証会社の約款にこうした条項が残っていないかを確かめ、「明渡しがあったとみなして」室内の物を片付けるような対応はとりません。

家賃債務保証業者登録規程

家賃債務保証業者の登録制度は、平成29年10月25日に施行された任意の登録制度で、登録しなくても家賃債務保証業を営むことはできます。登録規程(平成29年国土交通省告示第898号。最終改正は令和7年7月18日国土交通省告示第543号で、令和7年10月1日施行)は、登録した業者に次のような義務を定めています。

条内容
11条賃借人その他の者の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をし、又はその権利利益を侵害することがないよう、適正に業務を行う
12条業務に従事する者に、従業者であることを示す証明書を携帯させる
17条・18条保証委託契約の締結前の説明と書面の交付、締結時の書面の交付
19条求償権を行使するときの書面の交付
23条求償権を譲渡するときの規制

登録の有無は、国土交通省の登録業者一覧で確かめられます。保証会社の選び方は賃貸保証会社の選び方で詳しく扱っています。

貸金業法21条の扱い

貸金業法21条1項は、「貸金業を営む者」と、その貸付けの契約に基づく債権の取立てについて委託を受けた者が、取立てに当たって人を威迫したり、私生活や業務の平穏を害するような言動をしたりすることを禁じています。対象は貸付けの契約に基づく債権の取立てで、条文の文言からは、家賃の督促や家賃債務保証の求償をそのまま対象とした規定とは読めません。家賃債務保証業者にこの条文がかかるかどうかは事業の内容によっても変わりうるため、この記事では断定しません。

ただ、同条が例として挙げる行為は、登録規程11条の「私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」を社内で具体的にするときの目安になります。たとえば、正当な理由なく夜間(貸金業法施行規則19条1項では午後9時から午前8時まで)に電話や訪問をすること、勤務先など居宅以外の場所へ連絡や訪問をすること、帰ってほしいと言われても居座ること、貼り紙などで借入れなどの事実をほかの人に知らせること、本人以外の人に代わりの支払いを求めることです(21条1項1号〜7号)。

室内への立入りと鍵

標準契約書第16条1項は、管理上特に必要があるときも、あらかじめ借主の承諾を得て立ち入るとしています。刑法130条は、正当な理由がないのに人の住居に侵入する行為を罰しています。滞納を理由に承諾なく鍵を替えたり、室内に入ったり、家財を運び出したりする対応はとりません。

支払期日の翌日から解除の検討までの手順

次の表は手順の例です。日数は、契約書や保証会社との取り決めに合わせて社内で決めます。

段階主な対応残す記録
支払期日の翌営業日入金を確かめ、未入金の一覧を作る。口座振替の不能や、振込名義の違いも確かめる入金の記録、未入金の一覧
本人への連絡電話、SMS、メールで入金が確認できないことを伝え、支払予定日を聞く連絡した日時、手段、相手の回答
書面の督促支払予定日を過ぎても入金がなければ、滞納額と支払期限を書いた督促状を封書で送る督促状の写し、送付日
保証会社への報告保証委託契約で決められた期限までに滞納を報告し、代位弁済を請求する報告日、保証会社の受付の記録
連帯保証人への連絡連帯保証人がいる契約では、状況を知らせて支払いを求める。委託を受けた保証人から請求があれば、履行の状況を伝える(民法458条の2)通知の写し
催告相当の期間を定めて支払いを催告する。内容証明郵便など、日付と内容が残る方法をとる催告書の写し、配達の記録
解除・明渡しの検討オーナーと話し合い、弁護士に相談する。金銭の請求には、少額訴訟(60万円以下、民事訴訟法368条1項)や支払督促(382条)の手続もある協議の記録

最初の連絡の段階では、振込の忘れや口座の残高不足など、すぐに解決する事情のこともあります。責める口調ではなく、入金が確認できないという事実を伝え、支払予定日を聞く形にします。

入金を確かめる日を決める

督促の遅れは、入金を確かめる日が決まっていないことから生まれます。支払期日の翌営業日に加え、口座振替の結果が分かる日、保証会社へ報告する期限の前日など、確認する日を月の予定に入れておきます。振込名義が契約者と違う入金(家族の名義や会社名)は、誰の入金かを確かめてから記録します。

督促状に書く項目

項目書き方の考え方
宛名と物件契約者の氏名、物件名と部屋番号
滞納の内訳何月分の賃料・共益費がいくら未払いか
支払期限と方法いつまでに、どの口座へ払うか
行き違いの場合すでに支払った場合の連絡先と、行き違いへのお詫び
連絡先担当者名、電話番号、受付時間

初期の督促状には、解除や法的手続きを強い調子で書き並べる必要はありません。契約の解除を前提にした催告は、別の段階で、相当の期間を明記した書面として送ります。

電話・訪問の社内ルールの例

  • 連絡は本人にする。夜間(午後9時から午前8時)は避ける
  • 勤務先には連絡しない。緊急連絡先は、申込時に伝えた利用目的の範囲で使う
  • 玄関やポスト、共用部分に、滞納を知らせる貼り紙をしない
  • 督促状は、外から滞納と分からない封書で送る
  • 訪問するときは社員証を示し、帰ってほしいと言われたら帰る
  • 大声や威圧的な言葉を使わない

分割払いの約束

分割払いに応じるときは、滞納額、各回の金額と期日、遅れた場合の扱いを書面にして、借主の署名をもらいます。滞納額を認める内容は、時効の更新の事由である「権利の承認」(民法152条1項)の記録にもなります。

オーナーへの報告と入金の記録

賃貸住宅管理業法16条は、管理業務で受け取った家賃などを、自己の財産や他の管理受託契約の金銭と分けて管理することを求めています。20条は、管理業務の実施状況などを定期的に委託者(オーナー)へ報告することを求めています。滞納の状況は、滞納額、どの段階まで進んだか、保証会社への請求の状況を一覧にして報告します。

ウルスタくんでは、入金の記録から未入金を確かめ、管理料や修繕費を差し引いたオーナーへの送金明細を作れます。督促の経過を入居者ごとの記録に残しておくと、保証会社への報告とオーナーへの説明で同じ情報を使えます。

してはいけない対応

  • 承諾なく鍵を替える、室内に入る、家財を運び出す(標準契約書第16条、刑法130条)
  • 明渡しがあったとみなして、残された物を処分する
  • 貼り紙などで、滞納の事実をほかの入居者に知らせる
  • 勤務先や、保証人ではない家族に支払いを求める
  • 正当な理由なく夜間に電話や訪問をする
  • 消費者契約法9条1項2号の上限(年14.6%)を超える遅延損害金を請求する

このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 何か月滞納したら契約を解除できますか?

民法の条文に月数の決まりはありません。相当の期間を定めた催告と期間内の不払いが前提で(民法541条)、判例は当事者間の信頼関係が壊れたといえるかを見ています。滞納額、期間、連絡への応答などの経過をそろえ、解除の前に弁護士に相談します。

Q2. SMSやLINEでの督促は催告になりますか?

民法541条は催告の方法を定めていません。ただ、後で解除や訴訟を検討するときに、いつ何を伝えたかを示す必要があります。解除の前提になる催告は、内容証明郵便など日付と内容が残る方法をとります。

Q3. 保証会社が代位弁済したら、管理会社は何をしますか?

代位弁済の後、借主への請求は保証会社が求償として行います。登録規程19条は、求償権を行使するときの書面の交付を定めています。管理会社は、翌月以降の入金の確認と、保証会社との情報の共有を続けます。

Q4. 連帯保証人や緊急連絡先には、どこまで連絡してよいですか?

連帯保証人には、保証契約にもとづいて支払いを求められます。委託を受けた保証人から請求があれば、滞納の有無や残額などの情報を提供する義務があります(民法458条の2)。緊急連絡先は保証人ではないため、支払いは求めません。

Q5. 滞納した家賃はいつ時効になりますか?

各月の賃料は、支払期日から権利を行使できることを知っているのが通常なので、民法166条1項1号の5年が目安になります。催告による完成猶予(150条)や、承認による更新(152条1項)があるため、督促と分割払いの記録を残しておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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