賃貸管理 読了 25分

家賃滞納初期督促SOP2026|中小不動産会社のうっかり〜2ヶ月〜保証会社代位弁済までの督促テンプレート

賃貸住宅の家賃滞納督促は、(a)家賃債務保証の利用率が居住用で8割超に達し督促主体が「管理会社+保証会社」のハイブリッド運用に移行していること、(b)2020年改正民法による消滅時効5年化と違法督促への社会的目線の厳格化、(c)SMSや電子決済の普及で初期接触手段の選択肢が広がったこと、の3つの環境変化が同時に進み、2026年は「経験と勘の電話督促」では実務が成立しなくなりました。一方、中小不動産会社の督促実務は、(i)うっかり滞納と意図滞納の判断基準が個別運用、(ii)督促時間・手段・回数のガイドラインが社内不在、(iii)保証会社への滞納報告期限の管理漏れで代位弁済が無効化、(iv)訴訟移行判断の基準不在、という構造課題を抱えがちです。本記事は自社210室での運用を踏まえ、家賃滞納督促を4段階SOPで整える実務テンプレートを、中小不動産会社が今月から実装できる粒度で整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
家賃滞納初期督促SOP2026|中小不動産会社のうっかり〜2ヶ月〜保証会社代位弁済までの督促テンプレート
目次

賃貸住宅の家賃滞納督促は、(a)家賃債務保証の利用率が居住用で8割を超え督促主体が「管理会社+保証会社」のハイブリッド運用に移行していること、(b)2020年改正民法による消滅時効5年化と違法督促への社会的目線の厳格化、(c)SMSや電子決済の普及で初期接触手段の選択肢が広がったこと、という3つの環境変化が同時に進み、2026年は「個別判断の電話督促」では実務が成立しない局面に入りました。中小不動産会社の督促実務は、(i)うっかり滞納と意図的滞納の判断基準が担当者個人の経験に依存している、(ii)督促の時間帯・手段・回数のガイドラインが社内に存在せず違法督促リスクを抱えている、(iii)保証会社への滞納報告期限の管理が漏れることで本来受けられるはずの代位弁済が無効化するケースが残っている、(iv)滞納3ヶ月以降の解除・明渡訴訟への移行判断基準が不在、という4つの構造課題を抱えがちです。家賃滞納督促は、(1)うっかり滞納(0〜5日)、(2)1ヶ月滞納、(3)2ヶ月滞納+保証会社代位弁済、(4)3ヶ月以上+解除予告・訴訟準備、の4段階SOPでテンプレート化することで、督促業務の所要時間を体感で4〜5割削減でき、違法督促リスクを大幅に抑えつつ、入居者側の自主納付率を上げられる業務領域です。本記事は、ウルスタの代表として宅建業を営みつつ、自社で210室規模の賃貸住宅を運営している立場から、(1)2026年に督促SOPの見直しが必須になる3つの環境変化、(2)中小不動産会社が抱える督促業務の4つの実務課題、(3)うっかり〜代位弁済までの4段階督促SOP、(4)6月入金確認SOPと月次運用、(5)違法督促を回避する5つのNG行為、(6)よくある質問6問を、中小不動産会社の現場粒度で整理します。

2026年に督促SOPの見直しが必須になる3つの環境変化

賃貸住宅の家賃滞納督促を「電話と督促状の経験運用」と捉える対応は、2026年でほぼ通用しなくなります。中小不動産会社の管理物件で求められる対応は、(a)家賃債務保証の利用率上昇で督促主体が「管理会社+保証会社」のハイブリッドに移行していること、(b)2020年改正民法による消滅時効の統一と違法督促への社会的目線の厳格化、(c)SMS・電子決済の普及で初期接触手段の選択肢が広がっていることの3点に集約されます。「電話と紙の督促状で個別判断」運用は、保証会社の報告期限管理と違法督促リスクの両面で持続が難しくなっている局面に入っています。

変化1:家賃債務保証の利用率8割超でハイブリッド督促が標準に

第一の変化は、家賃債務保証(家賃保証会社)の利用率が居住用賃貸で8割を超え、督促主体が「管理会社+保証会社」のハイブリッド運用に移行していることです。国土交通省の2021年度「家賃債務保証業者の登録制度に関する実態調査」では、賃貸物件における家賃債務保証の利用率は80%水準とされ、矢野経済研究所の2025年公表データでは家賃債務保証市場(居住用+事業用)は2025年度に2,723億円規模へ拡大する見通しです。これは、督促が「管理会社単体の業務」から「保証会社への報告期限管理を含む組織業務」に変質したことを意味します。保証委託契約書には「滞納発生後◯日以内に保証会社へ報告する」期限が設けられているケースが多く、報告漏れが発生すると本来受けられるはずの代位弁済が無効化するリスクがあります。報告期限を社内SOPに組み込まずに「気付いたら遅れていた」という運用は、2026年では明確な機会損失です。

変化2:民法改正と違法督促への社会的目線の厳格化

第二の変化は、2020年4月施行の改正民法による消滅時効の統一(5年/10年)と、違法督促行為への社会的目線が厳しくなっていることです。改正民法では、債権の消滅時効が「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年」に統一され、職業別・商事の区分が撤廃されました。家賃債権も原則5年で時効消滅し得るため、督促の証拠化(配達証明・内容証明)と時効中断措置(訴訟提起・債務承認)の判断タイミングを誤ると、本来回収可能な債権を取り損ねる事案が発生します。並行して、貸金業法ベースの督促行為ガイドラインに準じる形で、夜21時〜翌朝8時の連絡禁止、玄関やポストへの張り紙(滞納事実の周知)禁止、鍵交換・家具搬出といった自力救済禁止という3つは、家賃督促の現場でも常識として運用されるようになりました。違法督促が一件でも発生すると、SNSや口コミでの評判悪化と訴訟リスクが連動するため、中小不動産会社にとっては「経験と勘の電話督促」から「SOPに沿った組織対応」への切り替えが不可避になっています。

変化3:SMS・電子決済普及で初期接触手段の選択肢が拡大

第三の変化は、SMS(ショートメッセージ)・LINE・電子決済の普及で、初期接触手段の選択肢が広がり、電話一辺倒の督促から「テキスト先行+必要に応じて電話」の流れが現実的になっていることです。SMSは到達率が高く、入居者側の在席を問わず24時間以内に既読されるケースが多い一方、電話と比べて「督促されている感」が和らぎ、うっかり滞納者からの自主納付反応が早い傾向にあります。電子決済(口座振替・クレジットカード・QR決済)の併用が進んだ物件では、SMS督促後にアプリ経由で即日納付されるケースも増えています。一方、SMSやLINEだけで督促を完結させようとすると、配達証明・内容証明の証拠化が後手に回り、訴訟移行の段階で督促履歴の整理に苦労します。テキスト先行の運用を取り入れるなら、SMS/LINEの送信履歴をテキストとPDFの両方で社内保存する仕組みを最初に整える必要があります。

現場感覚で言うと
自社210室では、2023年から督促業務を4段階SOPで整理し、2026年5月時点で(a)月次の督促業務所要時間は平均14時間から6時間へ約6割削減、(b)2ヶ月以上滞納の発生率は0.9%から0.3%へ約7割削減、(c)代位弁済請求の期限漏れは年5件から0件へ、(d)違法督促クレームは0件継続、と経営数字に表れています。督促SOPの整備は、目先の回収額だけでなく、督促業務の人時削減と訴訟リスク低減の両面で継続的に効く「ローコストの実務改善」の一つです。

中小不動産会社が抱える督促業務の4つの実務課題

4段階督促SOPの設計に入る前に、現状の督促業務がどの種類の課題を抱えているかを言語化しておく必要があります。主要な課題は、(1)うっかり滞納と意図的滞納の判断基準が個別運用、(2)督促の時間・手段・回数のガイドラインが社内不在、(3)保証会社への滞納報告期限の管理漏れ、(4)解除・明渡訴訟への移行判断基準が不在の4つに分類できます。これらを4段階SOPでどう潰すかを意識すると、テンプレートの粒度が見えてきます。

課題1:うっかり滞納と意図的滞納の判断基準が個別運用

第一の課題は、うっかり滞納(口座残高不足・引落口座変更忘れ等)と意図的滞納(収入悪化・退去含み・トラブル含み)の判断基準が、担当者個人の経験に依存していることです。日管協短観の傾向データでは、2か月以上滞納率は首都圏で0.4%、全国で0.8%程度と低水準で推移している一方、1か月以内の「うっかり滞納」を含めると数%レンジに広がるのが現場感覚です。うっかり滞納の大半は、初期SMSや軽い電話確認で即日納付されるため、いきなり強い督促状を送る必要はありません。一方、意図的滞納の兆候(連絡無反応・郵便不在続き・電気水道の使用形跡なし)が出ているケースに、優しい催促を繰り返すのは、保証会社の代位弁済請求期限を逸する原因になります。判断基準のSOP化は、A4一枚の「うっかり/意図的の見分けチェックリスト」で整えられます。

課題2:督促時間・手段・回数のガイドラインが社内不在

第二の課題は、督促の時間帯・手段・回数に関する社内ガイドラインが存在せず、違法督促リスクを抱えていることです。多くの中小不動産会社では、(a)架電可能な時間帯、(b)SMS・電話・郵便の使い分け、(c)1日あたりの架電回数の上限、(d)張り紙・玄関貼付の禁止、(e)勤務先連絡の制限、(f)親族連絡の制限が文書化されていません。違法督促が一件でも発生すると、SNSや口コミによる評判悪化に直結するため、中小規模の会社ほど「組織対応のSOP化」が重要になります。督促時間ガイドラインは、A4一枚の社内ルールで標準化できます。

課題3:保証会社への滞納報告期限の管理漏れ

第三の課題は、家賃保証会社への滞納報告期限の管理が、担当者個人の付箋・カレンダー依存で運用されていることです。保証委託契約書には「滞納発生後◯日以内に保証会社へ報告する」期限が設けられているケースが多く、報告期限を逸すると本来受けられるはずの代位弁済が無効化します。報告期限は保証会社・契約区分ごとに異なり、当月25日・末日・翌5日・翌10日など複数パターンが混在することも珍しくありません。物件カルテと連動した一覧表をスプレッドシートで整え、月次の入金確認SOPに「保証会社報告漏れチェック」を組み込む運用が必須です。

課題4:解除・明渡訴訟への移行判断基準が不在

第四の課題は、滞納3ヶ月以降の契約解除・明渡訴訟への移行判断基準が、社内で文書化されていないことです。判例上、家賃滞納による契約解除が認められるには「賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊された」と評価できる程度の滞納が必要とされ、目安として3ヶ月以上の滞納が一つの基準と理解されています。一方、保証会社が代位弁済を行うと「賃借人の債務不履行は解消されるか」という論点が生じ、解除の可否が単純な滞納月数で決まらないケースもあります(不動産流通推進センターの公開回答や判例の整理を参照)。社内で「3ヶ月以上+督促履歴+保証会社協議+弁護士相談」の4点をワンセットで運用する基準を作っておかないと、移行判断が遅れたり、逆に早すぎて訴訟費用倒れになったりします。

うっかり〜代位弁済までの4段階督促SOP

家賃滞納督促の実務は、(1)うっかり滞納(0〜5日)、(2)1ヶ月滞納、(3)2ヶ月滞納+保証会社代位弁済、(4)3ヶ月以上+解除予告・訴訟準備、の4段階SOPでテンプレート化します。このうち最も即効性が高いのはステップ1のSMS+電話確認で、外部費用ゼロ・社内パート工数のみで完結するため、その他のSOP化への社内合意も取りやすくなります。4段階を順番に運用すれば、督促業務の所要時間を体感で4〜5割削減でき、違法督促リスクを抑えつつ自主納付率を上げられます。

ステップ1:うっかり滞納(0〜5日)— 自動SMS+電話確認

第一のステップは、入金確認日(月初の3〜5日)に未入金が判明した瞬間から5日以内の対応です。運用手順は(a)入金確認の翌営業日にSMSで「家賃の入金が確認できていない」旨を中立的な文面で送信、(b)2営業日後に電話で確認(平日10時〜18時、留守電可)、(c)3〜5日目に普通郵便で軽い文面の催促状を投函、(d)入金期限(その月の15日目処)を文面に明記の4点です。うっかり滞納の大半はこの段階で自主納付されるため、強い表現や違約金の威圧は避け、「お電話・SMSなどで行き違いがあれば失礼します」という中立的な文面を統一テンプレート化します。電子決済併用物件では、SMSにアプリ決済リンクを添えると、即日納付反応が体感的に早くなります。

ステップ2:1ヶ月滞納 — 普通郵便督促状+電話+保証会社事前連絡

第二のステップは、入金確認日から1ヶ月以上経過しても入金が無い場合の対応です。運用手順は(a)普通郵便で督促状を発送(支払期限7〜14日後を明記)、(b)電話で「ご連絡いただけないと保証会社報告が必要になる」旨を伝達、(c)保証会社の報告期限を社内で再確認し報告予定日を設定、(d)入居者の電気・水道メーターや郵便受けの状況を現地で目視確認(無断立入は厳禁、共用部から見える範囲のみ)の4点です。督促状の文面は「家賃の支払いが確認できていない」「期限まで支払いがない場合は保証会社へ報告する」「ご事情があればご相談ください」の3点を簡潔にまとめ、威圧的な文言や違約金強調は避けます。電話の架電時間は平日10〜20時を上限とし、夜21時以降と早朝の架電は禁止します。

ステップ3:2ヶ月滞納 — 内容証明+保証会社代位弁済請求

第三のステップは、入金確認日から2ヶ月以上経過しても入金が無い場合の対応です。運用手順は(a)内容証明郵便で督促状を発送(配達証明付き)、(b)保証会社へ正式な代位弁済請求を提出、(c)代位弁済入金見込み日(滞納検知から1週間〜10日目処)を社内で確認、(d)入居者に対して「保証会社からの請求に切り替わる」旨を電話・SMSで通知、(e)将来の解除・明渡訴訟に備えて督促履歴を時系列で整理の5点です。内容証明郵便は配達証明とセットで運用し、督促履歴を法的な証拠として整えます。保証会社の代位弁済は、報告期限の管理が前提なので、ステップ2の段階で報告予定日を社内合意しておくことが重要です。

ステップ4:3ヶ月以上 — 解除予告+訴訟準備

第四のステップは、入金確認日から3ヶ月以上経過し、保証会社の代位弁済を受けても入居者からの自主納付が再開されない場合の対応です。運用手順は(a)弁護士に相談し解除予告通知(内容証明)の文面を確認、(b)保証会社と協議して解除の可否を整理、(c)解除予告通知の発送、(d)解除後の明渡訴訟提起の準備(訴状ドラフト・督促履歴の整理・物件カルテの確認)、(e)訴訟提起→判決→強制執行までの工程表をクライアント(オーナー)と共有の5点です。判例上、3ヶ月以上の滞納で信頼関係破壊の評価がなされやすい一方、保証会社が代位弁済を継続している場合の解除可否は争点になり得るため、弁護士の助言を踏まえた判断が必要です。訴訟費用と回収見込みのバランスを物件オーナーと協議し、「訴訟費用倒れ」を避ける運用も並行して行います。

合鍵を使った無断立入と鍵交換は絶対に行わない
合鍵を使った無断立入や、滞納を理由とした鍵交換・施錠変更、家財の搬出は、自力救済禁止の原則に反する違法行為で、損害賠償と慰謝料の対象になります。たとえ「電気・水道メーターが何ヶ月も動いていない」「郵便物が溢れている」状態でも、合鍵で立入することは厳禁です。安否確認が必要な状況であれば、管轄警察署・消防署の同行を依頼し、必ず第三者立会で対応します。

6月入金確認SOPと月次運用

4段階SOPを定着させるには、月次の入金確認業務に「督促ステップ判定+保証会社報告チェック」を組み込む必要があります。6月は4〜5月の引越シーズン直後で、口座振替の手続き漏れ・新生活の資金繰り悪化・通信費や引越関連支出の重複によるうっかり滞納が表面化しやすい月です。6月までに月次運用のテンプレートを整えておくと、夏〜秋の安定運用に直結します。

月次入金確認SOP(毎月3日・10日・末日)

月次入金確認SOPは、(a)毎月3日に口座振替・送金の入金一覧を出力、(b)未入金一覧から「うっかり滞納候補(初回・1ヶ月以内)」と「2ヶ月以上滞納継続」に二分、(c)毎月10日に保証会社報告期限の物件をチェック、(d)毎月末に督促ステップ進捗を整理しオーナー報告に組み込む、の4点です。エクセル一覧+ファイルサーバ運用で十分に組み立てられ、月次工数は社内パート1〜2名で完結します。

物件カルテに記録すべき督促履歴項目

物件カルテ(物件×入居者単位の管理シート)に督促履歴を記録する場合の項目は、(a)入金確認日と未入金月、(b)督促ステップ(1〜4)と進捗、(c)SMS送信日時と本文テンプレート番号、(d)電話架電日時と応答有無、(e)郵便発送日と種別(普通・配達証明・内容証明)、(f)保証会社報告日と報告書受領日、(g)代位弁済入金日と金額、(h)入居者からの応答内容(時系列)の8項目です。督促履歴は、訴訟移行時の証拠としてそのまま提出できる粒度で残します。

6月の月内チェックリスト

6月の月内チェックリストとして、(a)6月3日:5月分入金確認・未入金抽出、(b)6月5日:うっかり滞納候補へSMS+電話、(c)6月10日:保証会社報告期限の物件チェック、(d)6月15日:1ヶ月滞納継続物件へ督促状発送、(e)6月20日:2ヶ月滞納候補の内容証明準備、(f)6月末日:督促ステップ進捗の整理とオーナー報告ドラフト、の6点を運用します。チェックリスト化により、月次の督促業務所要時間は体感で4〜5割削減できます。

違法督促を回避する5つのNG行為

督促SOPを運用する上で、社内全員が共通認識として持っておくべき「絶対にやってはいけない5つのNG行為」を明文化します。違法督促は、損害賠償・慰謝料請求のリスクに加え、SNS・口コミでの評判悪化と免許更新時のレピュテーションリスクに直結するため、SOP化と社員教育の両輪で押さえる必要があります。

NG1:夜21時〜翌朝8時の電話・訪問

第一のNG行為は、夜21時〜翌朝8時の電話・訪問督促です。貸金業法の督促行為ガイドラインに準じ、家賃督促も夜21時〜翌朝8時の連絡は原則禁止とされています。やむを得ず夜間連絡が必要な場合は、SMS・メール・LINEなどの非同期手段に切り替え、相手側のタイミングで読める形にします。

NG2:玄関・ポスト・共用部への張り紙

第二のNG行為は、玄関ドア・ポスト・共用部への張り紙(滞納事実が周囲に分かる形)です。滞納事実が第三者に知られる行為は、プライバシー侵害・名誉毀損のリスクが極めて高く、損害賠償の対象になります。督促状は必ず封書で投函し、督促内容が外から見える方法は使いません。

NG3:鍵交換・施錠変更・家財搬出

第三のNG行為は、滞納を理由とした鍵交換・施錠変更・家財の無断搬出です。これらは自力救済禁止の原則に明確に違反する違法行為で、たとえ「数ヶ月連絡が取れず夜逃げの疑い」がある場合でも、必ず法的手続(契約解除→明渡訴訟→強制執行)を経て対応します。残置物の処理も、訴訟の判決と強制執行を経ない限り、勝手に処分してはいけません。

NG4:勤務先・親族への過度な連絡

第四のNG行為は、入居者の勤務先・親族への過度な連絡です。連帯保証人や緊急連絡先への連絡は、契約に基づく範囲で実施できますが、勤務先への連絡は社会的信用を毀損する行為として違法評価されるリスクが高く、特に短期間に複数回連絡することは厳禁です。連絡先利用の範囲は契約書の条項に従い、SOPに「連絡先利用の判断フロー」を組み込みます。

NG5:威圧的・侮辱的な文言の使用

第五のNG行為は、督促状・電話・SMSでの威圧的・侮辱的な文言の使用です。「裁判にする」「強制執行する」「ブラックリストに載せる」といった表現は、契約・法的根拠が伴わない段階で使うと違法督促として評価され得るため、督促文書のテンプレートは社内承認制とし、弁護士監修済の文面のみを使用します。

よくある質問6問

Q1. うっかり滞納と意図的滞納はどう見分ければよいですか?

初回滞納・過去3年滞納なし・SMS/電話に即応・口座引落手続ミスなど客観事情がある場合は「うっかり滞納」と扱い、軽い催促で対応します。一方、(a)2ヶ月以上連続滞納、(b)SMS/電話に複数回無反応、(c)郵便不在続き、(d)電気・水道メーター停滞、(e)退去希望や生活悪化の申告のいずれかが該当する場合は「意図的滞納または事情変化」とみなし、保証会社報告と督促ステップ進行を判断します。

Q2. SMSやLINEでの督促は法的効力がありますか?

SMSやLINEで「家賃の入金が確認できていない」旨を伝えること自体は適法で、初期接触手段として有効です。一方、契約解除や訴訟の前提となる催告は、配達証明や内容証明など到達の証拠化が容易な郵便で行うのが実務的に堅実です。SMS/LINE履歴は社内サーバへ自動転送し、テキストとPDFで保存します。

Q3. 保証会社が代位弁済すれば、契約解除はできなくなりますか?

公開回答や下級審判例には、代位弁済が行われても賃借人の債務不履行が当然に解消されるわけではなく、信頼関係破壊の評価は別途行われるとする整理が見られます。一方、代位弁済の継続が解除可否の評価に影響する可能性があるため、訴訟移行は弁護士相談と保証会社協議をワンセットで行います。社内SOPでは「3ヶ月以上+督促履歴+保証会社協議+弁護士相談」の4点を判断基準とします。

Q4. 連帯保証人・親族への連絡はどこまで許容されますか?

連帯保証人への連絡は、契約に基づき主債務者の滞納事実と支払請求を伝える範囲で適法です。緊急連絡先の親族へは所在確認・連絡仲介の依頼に限定し、滞納金額や強い表現は避けます。勤務先連絡は社会的信用毀損のリスクが高いため、他の連絡手段が尽きた段階のみに限り、判断フローを文書化します。

Q5. 督促を弁護士・債権回収会社に外注するべきタイミングは?

外注タイミングは、(a)3ヶ月以上の連続滞納、(b)代位弁済後も自主納付が再開しない、(c)解除・明渡訴訟が現実的視野に入った段階、の3点が揃った時が目安です。中小不動産会社は、弁護士事務所と「賃貸トラブル相談」のスポット顧問契約を併用する形が現実的で、訴訟費用と回収見込みのバランスをオーナーと協議した上で外注します。

Q6. 物件オーナーへの督促状況報告はどの粒度で行えばよいですか?

オーナー報告は、(a)月次入金確認結果、(b)1ヶ月以上滞納物件の督促ステップ、(c)保証会社報告・代位弁済の状況、(d)解除・明渡訴訟検討段階の有無、の4点を1ページの月次レポートにまとめる粒度が実務的です。訴訟費用見込み・回収見込み・原状回復費用見込みを並列に提示することで、訴訟移行の合意形成が早まります。

まとめ:督促業務を「電話と紙の個別判断」から「4段階SOPの組織運用」へ

家賃滞納督促は、家賃保証会社の利用率8割超え、改正民法による消滅時効5年化、違法督促への社会的目線の厳格化を背景に、2026年は「電話と紙の経験運用」から「4段階SOPに沿った組織対応」へ切り替える局面に入りました。中小不動産会社が今月から実装できる打ち手は、(1)うっかり滞納SMS+電話確認のテンプレート整備、(2)督促時間・手段・回数のガイドライン文書化、(3)保証会社報告期限の月次チェック、(4)解除・明渡訴訟への移行判断基準の明文化、の4点です。自社210室での運用実績では、4段階SOP導入で督促業務所要時間が約6割削減、2ヶ月以上滞納の発生率が約7割減、保証会社報告期限漏れがゼロ継続、違法督促クレームゼロ継続と、現場負荷とリスクの両面で効果が出ています。督促SOPの整備は、目先の回収だけでなく、業務時間削減と訴訟リスク低減の両輪で継続的に効く、ローコストの実務改善です。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向け実務メディアを運営する傍ら、自社で210室規模の賃貸住宅を運営。本記事は自社運用の数値根拠と、国土交通省・日本賃貸住宅管理協会・矢野経済研究所の公開データに基づく一次情報整理として執筆。

参照: 国土交通省「家賃債務保証業者の登録制度実態調査」 / 日管協短観 / 矢野経済研究所(2025) / 改正民法(2020/4) / 不動産流通推進センター 公開回答 / 貸金業法 督促行為ガイドライン