制度・法改正 読了 13分

特定居住促進計画とは|二地域居住の改正法(2024年11月施行)と、不動産会社が協議会・特定居住支援法人に関わる方法

特定居住促進計画は、二地域居住を進めるために市町村が作る計画です。2024年11月1日施行の改正法で生まれました。宅建業者は協議会の構成員として条文に書かれ、会社でも特定居住支援法人の指定を受けられます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
特定居住促進計画とは|二地域居住の改正法(2024年11月施行)と不動産会社の関わり方
目次

特定居住促進計画は、二地域居住(法律上は「特定居住」)を進めるために市町村が作る計画で、2024年11月1日に施行された改正「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」の22条に定められています。不動産会社の入口は2つです。計画を話し合う協議会に宅建業者として加わること(23条2項)と、特定居住支援法人の指定を受けること(28条)です。この記事では、制度の仕組みを条文の順に整理し、賃貸・売買の実務で何が変わるかをまとめます。

制度の全体像

二地域居住の促進は、1本の新しい法律ではなく、既存の「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」(平成19年法律第52号)を改正する形で作られました。この記事では、以下「法」と書きます。

法2条は「特定居住」を、地域の外に住所がある人が、定期的に滞在するためにその地域に居所を定めることと定義しています。住民票を移す移住ではなく、住所はそのままで、もう一つの拠点を持つ暮らし方です。

仕組み根拠誰が中身
広域的地域活性化基盤整備計画法5条都道府県特定居住の拠点施設と重点地区を書き込み、市町村へ送る
特定居住促進計画法22条市町村(単独または共同)区域、方針、拠点施設や生活・仕事の施設の整備、計画期間など
特定居住促進協議会法23条市町村が組織計画の作成・実施を協議。宅建業者も構成員として明記
特定居住支援法人法28条〜32条市町村長が指定相談・情報提供、施設の整備、調査研究、普及啓発、計画の提案

改正法の名前と施行日

改正法の名前は「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第31号)です。流れは次のとおりです。

  • 2024年2月9日:法律案を閣議決定
  • 2024年5月22日:公布
  • 2024年10月30日:施行期日を定める政令を公布
  • 2024年11月1日:施行

国土交通省は、法律案の閣議決定時に、人口減少が進む地方で生活環境の維持が難しくなるおそれがあることを背景に挙げ、地方への人の流れを生む手段として二地域居住を位置づけています。住まい、なりわい(仕事)、地域の人との交流の3つを整えることが柱です。

特定居住促進計画の作り方と中身

作れるのは都道府県の計画があってから

法22条1項によると、市町村が特定居住促進計画を作れるのは、都道府県が作る広域的地域活性化基盤整備計画に、特定居住の拠点施設とその重点地区が書かれ、その計画の送付を受けたときです。市町村が単独で、または共同して作ります。つまり、県の計画がない地域では、市町村の計画も作れません。

計画に書くこと

法22条2項は、おおむね次の事項を書くとしています。

  1. 計画の区域(特定居住促進区域)
  2. 特定居住の促進に関する活動の基本的な方針
  3. 区域内の特定居住拠点施設の整備に関する事項
  4. 特定居住者の生活の利便性の向上や、就業の機会を生むために必要な施設の整備に関する事項
  5. 3と4の施設の整備と一体となって効果を高める事業・事務
  6. 3と4の施設の整備と、関連する基盤施設の整備事業との連携
  7. 計画期間

計画に連動する特例

計画が公表されると、いくつかの特例が使えるようになります。不動産の実務に関係が深いものを挙げます。

特例条文内容
建築基準法の用途規制法24条計画に用途の特例の要件を定めて公表すると、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域(建築基準法48条1項〜4項)での許可の理由に、その要件への適合が加わる
公的賃貸住宅法22条4項、25条拠点施設の整備として公的賃貸住宅等の整備事業を計画に定められる
市街化調整区域の用途変更法26条調整区域内の建物を計画の施設に変える許可を求められたとき、都道府県知事は活用が進むよう適切に配慮する
地方住宅供給公社法27条市町村の委託を受けて、特定居住者向け住宅の整備や賃貸などの管理ができる

空き家や使われていない建物を、二地域居住者向けの住まいや仕事場に変えたいときに、用途の制限が壁になることがあります。地域の計画にこうした特例が入っているかどうかは、物件の活用案を考える前に確かめておく価値があります。

特定居住促進協議会には宅建業者が入れる

法23条1項により、市町村は、計画の作成や実施などを話し合う協議会を組織できます。2項は構成員を、市町村、その市町村を含む都道府県、特定居住支援法人、地域住民、宅地建物取引業者、その他市町村が必要と認める者と定めています。

宅建業者が条文に名指しされている点は、この制度の特徴です。二地域居住の住まいを用意するには、空き家の掘り起こし、賃貸借や売買の契約、入居後の管理が欠かせず、そこを担うのが地域の不動産会社だからです。協議会で決まった事項は、構成員が尊重しなければなりません(23条3項)。

特定居住支援法人の指定と業務

会社でも指定を受けられる

法28条1項によると、市町村長は、申請により、特定居住支援法人を指定できます。対象は、特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人などの営利を目的としない法人のほか、「特定居住の促進を図る活動を行うことを目的とする会社」です。業務を適正かつ確実に行えると認められることが条件です。指定すると、市町村長は名称や所在地を公示します(28条2項)。

国土交通省の資料(2026年7月)も、指定の対象としてNPO法人と並べて「民間企業(例:不動産会社)」を挙げています。

支援法人の業務

法29条が定める業務は次の5つです。

  1. 特定居住者や特定居住を希望する人への情報提供、相談などの援助
  2. 計画にある拠点施設や生活・仕事の施設の整備
  3. 特定居住の促進に関する調査研究
  4. 普及啓発
  5. そのほか特定居住の促進に必要な業務

支援法人ができること、求められること

  • 計画の提案:支援法人は、市町村に計画の作成や変更を提案できます。その際は素案を作って示します。市町村は、作るかどうかを遅滞なく通知し、作らないときは理由を示します(32条)。
  • 所有者の情報:支援法人が業務のために区域内の住宅や土地の所有者を知る必要があるとき、市町村長は、探索に必要な範囲で所有者の情報を提供します。ただし、あらかじめ本人の同意を得ることが条件です(31条2項・3項)。
  • 監督:市町村長は、業務について報告を求め、改善を命じることができ、命令に違反すると指定を取り消せます(30条)。

空き家の所有者が分からず話が進まない、という場面で、本人の同意を前提に市町村から情報を得られる仕組みがある点は、不動産会社にとって大きな意味があります。一方で、報告や改善命令の対象になるため、指定を受けるなら業務の記録を残せる体制が要ります。

2026年6月末時点の数字

国土交通省の資料「二地域居住の促進について」(2026年7月)によると、2026年6月30日時点の状況は次のとおりです。

項目2026年6月30日時点国の目標(施行後5年間の累計)
都道府県の広域的地域活性化基盤整備計画25件(資料に記載なし)
市町村の特定居住促進計画53件600件
特定居住支援法人の指定146法人600法人

同じ資料では、自治体と民間事業者が参加する「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」の会員が1,375団体(地方公共団体809、関係団体・民間事業者等566)とされています。指定を受けた支援法人には、株式会社や一般社団法人が含まれています。

目標に対して、計画も支援法人もまだ途中の段階です。自分の地域に計画があるかどうかは、都道府県と市町村のページで、計画の公表と支援法人の公示を確かめるのが確実です。

不動産会社が関わる方法

手順の例

  1. 営業エリアの都道府県に広域的地域活性化基盤整備計画があるか、拠点施設と重点地区がどこかを確かめる。
  2. 市町村の特定居住促進計画が公表されているか、区域と特例の有無を確かめる。
  3. 協議会があれば、宅建業者として参加できるか市町村の担当課に問い合わせる。
  4. 支援法人の指定を考えるなら、定款の目的に特定居住の促進を図る活動が読み取れるか、相談対応や記録の体制を作れるかを確かめる。
  5. 国の予算による支援(国土交通省資料では空き家改修やコワーキングスペースの整備への支援が示されています)は、年度ごとの公募要領で対象と要件を確かめる。

二地域居住者との賃貸借の組み方

二地域居住者は、月に何日か、季節ごと、など滞在の形がさまざまです。契約の形を先に決めておくと、後のもめごとを減らせます。

契約の形根拠押さえること
普通建物賃貸借借地借家法更新が前提。滞在が年の一部でも、借地借家法の保護は及ぶ
定期建物賃貸借借地借家法38条書面で契約し、更新がなく期間満了で終わることを、事前に書面を交付して説明する(借主の承諾があれば電磁的方法も可、4項)。説明しないと更新しない定めは無効(5項)
一時使用目的の賃貸借借地借家法40条一時使用のためであることが「明らかな場合」に限り、借家の規定が適用されない。週末だけ使う、という理由だけで当たるとは限らない

数年単位で拠点を持つ人には、期間を区切れる定期建物賃貸借が合うことが多いです。家具付きで泊まる形にするなら、賃貸借ではなく宿泊の扱いになる場合があり、別の法令の手続が必要です。どちらで貸すのかを、募集の前に決めておきます。

二地域居住者向けの住まいを用意するときの考え方

二地域居住者は、住所(住民票の所在地)を別の地域に置いたまま、こちらには居所を定めて定期的に滞在する人です(法2条)。通常の入居者と同じ前提で募集・審査・管理をすると、合わない点が出てきます。ここでは、手順の例として整理します。

募集の段階

  • 滞在の頻度と期間を最初に聞きます。月に数日なのか、季節ごとに数か月なのかで、合う契約の形と設備が変わります。
  • 仕事をしながら滞在する人が多いため、通信環境や作業できる場所の有無を物件情報に書きます。
  • 家具・家電を付けるかどうかは、賃貸借として貸すのか、宿泊として扱われる形になるのかにも関わるため、先に方針を決めます。

審査と契約の段階

  • 住所地は別の地域にあるため、本人確認書類の住所と物件の所在地が違うことを前提に、緊急連絡先や連絡の取り方を決めます。
  • 定期建物賃貸借にするなら、契約の前に、更新がなく期間満了で終わることを書いた書面を交付して説明します(借地借家法38条3項)。

入居後の管理の段階

  • 不在の期間が長い部屋は、郵便物、換気、水回り、寒冷地なら凍結への備えなど、不在中の確認事項を契約時に取り決めます。
  • 不在中に部屋へ入る必要が出たときの連絡と承諾の方法を、書面で決めておきます。

こうした取り決めは、協議会や支援法人の相談窓口で地域の受け入れ側と共有しておくと、二地域居住者からの問い合わせに地域全体で答えやすくなります。

このテーマの全体像は「不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法」にまとめています。

よくある質問

Q1. 特定居住促進計画は、どの市町村にもありますか。

ありません。市町村が作れるのは、都道府県の計画に拠点施設と重点地区が書かれ、その送付を受けたときだけです(法22条1項)。2026年6月30日時点で市町村の計画は53件です。

Q2. 株式会社の不動産会社でも特定居住支援法人になれますか。

なれます。法28条1項は、特定居住の促進を図る活動を行うことを目的とする会社を対象に含めています。指定するのは市町村長で、申請が必要です。

Q3. 協議会に入るには何が必要ですか。

協議会を組織するかどうか、誰を構成員にするかは市町村が決めます。宅建業者は法23条2項に構成員として書かれているため、まずは市町村の担当課に参加の可否を問い合わせます。

Q4. 計画の区域外の物件は関係ありませんか。

用途の特例や所有者情報の提供など、区域を前提にした仕組みは使えません。二地域居住者の住まい探しそのものは区域外でも起きるため、契約の形の整理は区域に関係なく役立ちます。

Q5. 二地域居住者は住民票を移す必要がありますか。

法2条の特定居住は、地域の外に住所がある人が、定期的な滞在のために地域内に居所を定めることです。住所を移すことは前提になっていません。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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