「住宅ローン控除は、いつまで使えるのですか」「中古でも受けられますか」——売買の現場で、買主から必ずと言ってよいほど受ける質問です。この住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、令和8年度の税制改正で適用期限が五年延長され、2026年1月から2030年12月までに入居した場合にも使えることになりました。あわせて、住宅の省エネ性能や世帯の事情に応じた借入限度額の組み立ても、これまでの考え方が引き継がれています。本記事は、ウルスタ代表として宅地建物取引業を営む立場から、2026年(令和8年)入居からの住宅ローン控除の全体像を、宅地建物取引士の目線で整理します。控除額の正確な計算や個別の判定は税理士や税務署の領分ですが、買主に最初に接する中小不動産会社こそ、制度の大枠を正しく押さえ、安心して相談に応じられる準備をしておきたいテーマです。
2026年、住宅ローン控除はどう変わったのか — 五年延長と全体像
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを取得した人が、年末のローン残高に応じた額を所得税(一部は住民税)から差し引ける制度です。令和8年度の税制改正では、この制度の適用期限が五年延長され、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居した場合も対象とされました。買主から「もう間に合わないのでは」と心配されることがありますが、当面は使える制度だと、まずは落ち着いて案内できます。
延長にあわせて、住宅の省エネ性能や世帯の事情に応じて借入限度額に差をつける考え方も引き継がれました。性能の高い住宅ほど、また子育て世帯や若者夫婦世帯ほど、控除の対象となるローン残高の上限が手厚くなる設計です。あわせて、既存(中古)住宅やコンパクトな住宅への支援を拡充する方向も示されています。「どんな家を、どんな世帯が買うか」で控除の手厚さが変わる——この大枠を押さえておくと、買主への説明が一気にしやすくなります。
住宅ローン控除は、令和8年度の税制改正で適用期限が五年延長され、2026年1月から2030年12月までの入居も対象になりました。控除率は0.7%、控除期間は新築・買取再販で原則13年、中古(既存)で10年が基本です。借入限度額は住宅の省エネ性能で段階的に分かれ、子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあります。新築は省エネ基準への適合が前提となり、基準に適合しない「その他の住宅」は原則として控除の対象外です。以下の数値は令和8年度税制改正大綱および国土交通省の公表内容に基づく目安で、最終的な適用や控除額は国税庁・税務署で確認するのが確実です。
そもそも住宅ローン控除とは — 控除率と控除期間の基本
住宅ローン控除の基本の形を、買主に説明する順序で整理します。まず、年末時点での住宅ローンの残高に、控除率の0.7%をかけた額が、その年の控除額の目安になります。たとえば年末残高が3,000万円であれば、その0.7%にあたる21万円が一年あたりの控除額の上限の目安です。これを、控除期間にわたって毎年、所得税などから差し引いていく、というしくみです。
控除期間は、住宅の種類で変わります。新築住宅や買取再販(事業者がリフォームして再販売する)住宅は原則13年、中古(既存)住宅は10年が基本です。また、控除を受けるには、合計所得金額が2,000万円以下であることや、自らが居住するための住宅であることといった要件があります。控除額は、その人が納めている所得税などの範囲で差し引かれるため、ローン残高が大きくても、納税額が少なければ満額を使い切れないこともあります。ここは「上限の目安」と「実際に戻る額」が違う点として、ていねいに伝えたいところです。
| 項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| 控除率 | 年末ローン残高の0.7% |
| 控除期間 | 新築・買取再販は原則13年、中古(既存)は10年 |
| 所得要件 | 合計所得金額2,000万円以下 |
| 居住要件 | 取得後、原則として一定期間内に自ら居住すること |
借入限度額は省エネ性能で決まる — 新築・買取再販
住宅ローン控除でつまずきやすいのが、借入限度額(控除の対象となるローン残高の上限)の考え方です。新築・買取再販の住宅では、住宅の省エネ性能が高いほど、限度額が手厚くなる段階構造になっています。あわせて、子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあります。令和8年(2026年)入居の目安は、次のとおりです。
| 住宅の性能(新築・買取再販) | 子育て・若者夫婦世帯 | その他の世帯 |
|---|---|---|
| 認定住宅(長期優良・低炭素) | 5,000万円 | 4,500万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
| その他の住宅(省エネ基準に適合しない) | 原則として控除の対象外(後述) | |
表のとおり、同じ新築でも、認定住宅と省エネ基準適合住宅では限度額に大きな差があります。買主が検討している物件が、どの性能区分にあたるかで、受けられる控除の手厚さが変わるわけです。性能区分は、住宅性能評価書や認定通知書などの書類で確認します。これらの数値は令和8年度税制改正大綱と国土交通省の公表に基づく目安であり、年や制度の見直しで変わることがあります。物件ごとの正確な区分と限度額は、性能を証する書類と国税庁・税務署の最新情報で確認するのが確実です。
中古(既存)住宅の借入限度額と控除期間
中古(既存)住宅にも住宅ローン控除は使えます。買主から「中古は対象外なのでは」と誤解されることが多いのですが、要件を満たせばしっかり対象です。中古の場合、控除期間は10年が基本で、借入限度額は新築とは別の枠組みで整理されます。
| 住宅の性能(中古・既存) | 借入限度額の目安 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合 | 3,000万円 | 10年 |
| その他の住宅(一般の中古住宅) | 2,000万円 | 10年 |
中古で押さえておきたいのは、新築のような「省エネ基準に適合しないと対象外」という厳しい線引きは、中古には基本的に及ばないという点です。一般の中古住宅でも、2,000万円を目安とする限度額で控除を受けられます。さらに、令和8年度の改正では、既存住宅やコンパクトな住宅への支援を拡充する方向が示されており、子育て世帯等が省エネ性能の高い中古住宅を取得する場合の上乗せや控除期間の取り扱いについても、見直しが図られています。中古は買主層が幅広く、相談も多い領域です。「中古でも使えますよ」と最初に伝えられるかどうかが、買主の安心と検討の後押しにつながります。適用の細部は変わり得るため、最新の内容は国税庁・国土交通省で確認しましょう。
子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せと床面積の特例
新築・買取再販の借入限度額には、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せがあります。先の表のとおり、たとえば認定住宅では、その他の世帯の4,500万円に対し、子育て・若者夫婦世帯は5,000万円が目安となります。同じ性能の住宅でも、世帯の事情で限度額が変わるため、買主がこの上乗せの対象になるかどうかは、早めに確認しておきたいポイントです。一般に、子育て世帯は一定年齢以下の子を有する世帯、若者夫婦世帯は夫婦のいずれかが一定年齢以下の世帯、といった形で整理されます。具体的な年齢の線引きは制度の定めによります。
もう一つ実務で効いてくるのが、床面積の要件です。住宅ローン控除は、床面積が原則50平方メートル以上であることが基本です。ただし、新築住宅については、合計所得金額が1,000万円以下の人を対象に、床面積40平方メートル以上に緩和される特例が設けられています。単身者や夫婦のみの世帯が、コンパクトな新築住宅を取得するケースでは、この40平方メートルの特例にあてはまるかどうかで、控除を受けられるかが変わることがあります。なお、上乗せ措置を利用する場合や合計所得が一定額を超える場合は、原則どおり50平方メートル以上が必要とされる点に注意が必要です。
住宅ローン控除は、住宅の性能だけでなく、買主が子育て世帯・若者夫婦世帯にあたるか、床面積が要件を満たすかでも、受けられる手厚さや可否が変わります。とくに40平方メートル台のコンパクトな新築や、所得が高めの世帯では、特例の対象になるかどうかで結論が分かれます。重要なのは、不動産会社が控除額そのものを断定しないことです。世帯や所得、床面積、性能区分という「判定に必要な材料」に早めに気づき、買主に整理して示したうえで、正確な計算と適用判断は税理士・税務署につなぐ。この役割分担を崩さないことが、トラブルを避ける肝になります。
新築は「省エネ基準適合」が前提に — その他の住宅は原則対象外
新築住宅で、近年とくに重要になっているのが、省エネ性能の要件です。新築住宅については、省エネ基準に適合していることが住宅ローン控除の前提とされており、省エネ基準に適合しない「その他の住宅」は、新築では原則として控除の対象外となっています。かつては一般の新築住宅でも控除を受けられましたが、住宅の省エネ化を進める流れの中で、新築に求められる性能のハードルが上がっています。
ここは、買主にも売主にも誤解が生まれやすい部分です。「新築だから当然に控除が使える」と思い込んでいると、性能が基準に届かない物件で、想定していた控除が受けられない事態になりかねません。逆に、性能区分が一段上がれば限度額が手厚くなるため、物件の省エネ性能は、控除の有無と手厚さを左右する重要な情報になります。新築や買取再販を扱うときは、性能を証する書類を早めに確認し、控除の前提を満たしているかを押さえておくことが、買主への正確な説明につながります。経過措置や細かな取り扱いは変わり得るため、最新の要件は国土交通省・国税庁で確認してください。
現場メモ — 「中古でも控除は使えますか」と聞かれた一件
少し前に、中古マンションの購入を検討されていた、若いご夫婦の接客をしたときのことです。物件は気に入っていただいていたのですが、商談の終盤になって、奥様が少し言いにくそうに「中古だと、住宅ローン控除は使えないんですよね」と切り出されました。どこかでそう聞いたことがあり、それを理由に新築と迷っておられた様子でした。
そこで、中古でも要件を満たせば住宅ローン控除は使えること、控除期間は10年が基本で、一般の中古住宅でも限度額の目安は2,000万円あることを、その場で順を追ってお伝えしました。あわせて、お二人が若者夫婦世帯にあたる可能性があること、ただし正確な控除額や適用の可否は、所得や物件の条件によるので、税務署や税理士で確認していただくのが確実であることも添えました。「中古は対象外」という思い込みが解けたことで、ご夫婦の表情がぐっと明るくなり、その後、納得して中古マンションの購入に進まれたのを覚えています。
この経験で感じたのは、住宅ローン控除をめぐる買主の不安の多くが、正確でない思い込みから来ている、ということです。私たちがやるべきは、控除額をその場で計算してみせることではありません。「使えるのか、使えないのか」「どこで正確に確認すればよいのか」という大枠を、誤解なく整理して示すこと。それだけで、買主は安心して大きな決断に向き合えます。
中小不動産会社としての向き合い方
では、中小不動産会社はこの制度とどう向き合えばよいのでしょうか。控除額の計算や適用の最終判断は、税理士や税務署が担う領域です。それでも、買主に最初に接し、物件の情報を最もよく知る私たちには、果たせる役割がいくつもあります。
| 向き合い方 | こんな場面で | 提供できる価値 |
|---|---|---|
| 制度の大枠を正しく伝える | 買主への初期相談・物件案内 | 誤解を解き、検討を前に進める安心を届ける |
| 性能区分の確認 | 新築・買取再販・中古の取り扱い時 | 性能を証する書類で限度額の前提を押さえる |
| 世帯・床面積の材料整理 | 子育て・若者夫婦世帯やコンパクト住宅 | 上乗せや特例の対象かを判定する材料を示す |
| 税理士・税務署へのつなぎ | 正確な控除額や可否の確認が必要なとき | 専門家へ橋渡しし、断定によるトラブルを避ける |
ポイントは、制度を「税金の難しい話」と敬遠するのではなく、「買主の不安に先回りして応える、信頼づくりの接点」として活かすことです。買主の多くは、住宅ローン控除の大枠すら正確には知りません。だからこそ、最初に誤解なく整理してくれた会社は、強く信頼されます。控除額の計算は税理士に任せつつ、「正しく伝えて、つなぐ」を丁寧にやれる会社こそ、これからの購入相談で選ばれていきます。
実務での進め方 — 五つのステップ
買主の住宅取得の相談を受けたときに、住宅ローン控除を踏まえてどう動けばよいか、おおまかな流れを整理します。現場でつまずきやすいポイントもあわせて押さえておきましょう。
1. 適用期限と基本を正しく伝える。まず、住宅ローン控除が2030年12月入居まで延長されたこと、控除率は0.7%、控除期間は新築原則13年・中古10年が基本であることを、落ち着いて案内します。「もう間に合わない」という思い込みを、最初に解いておきます。
2. 物件の性能区分を確認する。扱う物件が、認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合・その他のどれにあたるかを、性能を証する書類で確認します。新築は省エネ基準への適合が前提となるため、ここは特に丁寧に押さえます。
3. 世帯と床面積の材料を整理する。買主が子育て世帯・若者夫婦世帯にあたる可能性があるか、床面積が要件を満たすか、40平方メートルの特例にあてはまるかといった、判定に必要な材料を整理して示します。額そのものは断定しません。
4. 中古でも使えることを伝える。中古を検討している買主には、要件を満たせば控除を受けられること、限度額や控除期間の目安をあわせて伝えます。「中古は対象外」という誤解は、その場で解いておきます。
5. 正確な確認は税理士・税務署へつなぐ。控除額の計算や適用の最終判断は、税理士や税務署に確認してもらうよう案内します。不動産会社が断定しないことが、後の「聞いていた額と違う」というトラブルを防ぎ、結果として信頼を守ります。
よくある質問
Q1. 住宅ローン控除は、いつまで使えますか。
令和8年度の税制改正で適用期限が五年延長され、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居した場合も対象とされています。当面は使える制度です。ただし、今後の見直しで内容が変わる可能性はあります。
Q2. 控除率と控除期間は、どのくらいですか。
控除率は年末ローン残高の0.7%、控除期間は新築・買取再販で原則13年、中古(既存)で10年が基本です。実際に差し引かれる額は、その人が納めている所得税などの範囲内になります。
Q3. 借入限度額は、どう決まりますか。
主に住宅の省エネ性能で段階的に分かれます。新築・買取再販では、認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合の順に限度額が手厚く、子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあります。具体的な額は本文の表の目安をご覧ください。
Q4. 中古住宅でも、控除は使えますか。
はい。要件を満たせば中古(既存)住宅でも対象です。控除期間は10年が基本で、限度額の目安は性能の高い住宅で3,000万円、一般の中古住宅で2,000万円です。「中古は対象外」というのは誤解です。
Q5. 新築なら、必ず控除を受けられますか。
いいえ。新築住宅は省エネ基準への適合が前提とされ、基準に適合しない「その他の住宅」は原則として控除の対象外です。新築でも、物件の性能区分の確認が欠かせません。
Q6. 不動産会社が、控除額を計算してくれますか。
不動産会社は、制度の大枠を正しく伝え、性能区分や世帯・床面積といった判定材料を整理する役割を担います。控除額の正確な計算や適用の最終判断は、税理士や税務署の領分です。断定的な金額の説明は避け、専門家への確認をご案内します。
Q7. 正確な要件や控除額は、どこで確認すればよいですか。
借入限度額や床面積、世帯要件、省エネ基準の取り扱いなどの詳細は、改正や運用で変わることがあります。最終的な確認は、国税庁・国土交通省の最新の公開情報、および税理士・税務署への相談によるのが確実です。本記事は概要を大づかみにつかむためのものとお考えください。
まとめ:「住宅ローン控除の大枠を、誤解なく伝えられる会社」が選ばれる
住宅ローン控除は、令和8年度の税制改正で適用期限が五年延長され、2026年1月から2030年12月までの入居も対象になりました。控除率0.7%、控除期間は新築原則13年・中古10年が基本で、借入限度額は住宅の省エネ性能で段階的に分かれ、子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあります。新築は省エネ基準への適合が前提となり、基準に適合しない住宅は原則対象外。中古でも要件を満たせば使え、一般の中古住宅でも限度額の目安は2,000万円です。中小不動産会社がやるべきことは、控除額を断定することではなく、制度の大枠を誤解なく伝え、性能区分や世帯・床面積といった判定材料を整理し、正確な計算と判断は税理士・税務署につなぐことです。買主の不安の多くは、正確でない思い込みから来ています。最初に正しく整理して伝えてくれた会社は、強く信頼されます。住宅ローン控除の大枠を、誤解なく伝えられる会社でありたいものです。
ウルスタは、中小不動産会社の物件・顧客・対応履歴を一元管理できる業務クラウドを提供しています。扱う物件の省エネ性能区分や、買主が子育て世帯・若者夫婦世帯にあたるか、床面積や検討状況といった情報を、物件・顧客ごとに紐づけて残しておけば、住宅ローン控除の判定材料をその場で整理して示せます。誰にどこまで説明したか、税理士や税務署につないだ記録も残しておけば、「聞いていた話と違う」という行き違いを防げます。制度の大枠を正しく伝え、専門家へなめらかにつなぐ体制は、買主からの信頼につながります。
参考: 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月公表)における住宅ローン減税の延長・拡充に関する情報 / 国土交通省「住宅ローン減税」および住宅ローン減税等の延長・拡充に関する公開情報 / 認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の借入限度額および控除期間に関する一般的な制度情報 / 床面積要件の特例・合計所得金額の要件に関する一般的な制度情報 / いずれも2026年6月時点の公開情報および自社の売買仲介実務をもとに整理