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相続した空き家を「負動産」にしない2026|管理不全空家のリスクと3,000万円特別控除の実務

管理不全空家への勧告で固定資産税の優遇が外れ、放置のコストは上がっています。一方、相続空き家の3,000万円特別控除は令和9年末まで延長され、令和6年から買主の解体も対象に。売る・貸す・解体して活用する出口の選び方と、相談を受けた中小不動産会社の初動を、210室を運営する立場から解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
相続した空き家を「負動産」にしない2026|管理不全空家のリスクと3,000万円特別控除の実務
目次

相続した実家が空き家のまま残っていると、それは思い出のある資産であると同時に、放っておくほど負担が増えていく「負動産」にもなりかねません。春に親を見送り、四十九日や名義の整理が一段落した初夏のいま、「実家をどうするか」という相談が不動産会社の窓口に増えてきます。問い合わせが落ち着くこの時期は、相続人に寄り添って出口を一緒に考える、ちょうど良いタイミングです。背景には制度の動きもあります。2023年12月に施行された改正空家法で、これまでの「特定空家」の前段階として「管理不全空家」という枠組みが設けられ、行政の関与が早まりました。勧告を受ければ固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が一気に重くなります。一方で、相続した空き家を売るときに使える「3,000万円特別控除」は、適用期限が令和9年末まで延長され、令和6年からは使い勝手も少し変わりました。放置のコストは上がり、活用や売却を後押しする特例には期限がある——いまは、空き家の出口を先送りにしない理由がそろっている局面です。本記事は、ウルスタ代表として宅地建物取引業を営み、自社で210室規模の賃貸住宅を管理・客付けする立場から、空き家を放置したときのコスト、改正空家法で何が変わったか、相続空き家の3,000万円特別控除の要点、そして相続人から相談を受けた中小不動産会社が取るべき初動までを、実務目線で整理します。

なぜ今、相続した空き家なのか — 増える相談と、強まる行政の関与

まず、なぜこのタイミングで空き家の話なのかを共有します。理由は二つあります。一つは季節要因です。年末年始や春先に親を見送った家庭では、初七日から四十九日、相続の手続き、遺品の整理を経て、初夏のころにようやく「では、この家をどうしよう」と現実的に考え始めます。お盆の帰省で兄弟が顔を合わせ、空き家になった実家の前で立ち話になる——そんな場面を前に、6月から7月は不動産会社への相談が静かに増えていく時期です。賃貸の繁忙期が明けて問い合わせが落ち着くこの時期は、相続人の事情をていねいに聞き、急がせずに出口を一緒に描くのに向いた時間でもあります。

もう一つは、制度と行政の側が着実に動いていることです。2023年12月に施行された改正空家法によって、倒壊などの危険が高い「特定空家」になる前の段階で、市区町村が「管理不全空家」として指導・勧告に踏み込めるようになりました。勧告を受けると、住宅が建っているだけで受けられていた固定資産税の優遇(住宅用地特例)が外れ、税負担が大きく増えます。所有者の特定も、電力会社などインフラ事業者への照会で進めやすくなりました。「持っているだけで、いつのまにか行政の関与とコスト増の対象になりうる」というのが、空き家をめぐる現在地です。さらに、相続した空き家を売るときに使える3,000万円特別控除の適用期限は令和9年(2027年)12月31日までと、年々近づいています。動かす理由と、動かしやすくする特例の期限が、いまそろっています。

空き家を放置するとどうなるか — 「負動産」化の3つのコスト

「いつか考える」と先送りにされがちな空き家ですが、保有しているだけで負担は静かに積み上がります。相続人に出口を促すとき、感情論ではなく、具体的なコストの構造で説明できると話が前に進みます。負担は大きく三つに分けて整理できます。

コスト①:税金 — 住宅用地特例が外れると負担は跳ね上がる

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を小規模住宅用地で6分の1にするなどの「住宅用地特例」が適用され、税負担が大きく軽くなっています。ところが、空き家が管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、この特例が解除されます。その結果、土地の固定資産税は最大で従来の6倍にもなり得ると説明されています。「住んでいないのに、税金だけが重くなる」という事態は、放置のもっとも分かりやすい代償です。加えて、毎年の固定資産税・都市計画税は、使っていようがいまいが課税され続けます。空き家は、何も生まないまま保有コストだけを払い続ける資産になりがちだ、という点を最初に共有しておきたいところです。

コスト②:管理責任と賠償リスク — 壊れた家は、人に迷惑をかける

建物は、人が住まなくなると傷みが加速します。換気されない室内は湿気で劣化し、雨漏りやシロアリ、屋根・外壁の落下、塀の倒壊といった不具合が進みます。もし瓦や外壁が落ちて通行人や隣家に損害を与えれば、所有者は工作物責任を問われ、賠償を求められる可能性があります。草木の越境、害虫や害獣、不法投棄、放火や不審者の侵入といった近隣トラブルの温床にもなります。遠方に住む相続人ほど、こうした管理が物理的に難しく、気づいたときには事態が深刻化していることも少なくありません。所有している以上、管理の責任からは逃れられない、という現実があります。

コスト③:市場価値の毀損 — 時間は売りにくさを増やす

三つめは、資産価値そのものの目減りです。空き家は時間が経つほど建物の状態が悪くなり、買い手から見た魅力が下がります。「あと数年待てば」と先送りするあいだに、建物は売り物にならない状態へ近づき、解体して更地にしなければ売れなくなることもあります。その解体費も、人件費や処分費の上昇で年々重くなる傾向にあります。「いつか」を重ねるほど、選べる出口は狭まり、手取りは減っていきます。動ける時期に動くことが、結局はいちばん損の少ない選択になりやすいのです。

最重要:空き家は「使っていなくても」コストが発生し続ける
空き家の相談でいちばん伝わりにくいのが、「何もしていないのに損が増えている」という感覚です。住んでいない家にも固定資産税はかかり続け、管理を怠れば賠償リスクと近隣トラブルを抱え、放置の時間は建物の価値と売りやすさを削っていきます。保有を続けるという選択も、見えないコストを払い続ける積極的な決断だと捉え直すと、相続人の検討が前に進みます。「急いで手放しましょう」ではなく、「持ち続ける場合と動かす場合の損得を、数字で並べて比べましょう」という姿勢が、信頼される入り口になります。

改正空家法で何が変わったか — 「管理不全空家」という前段階

2023年12月に施行された改正空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法の改正)は、空き家対策の網を一段広げました。従来は、倒壊の危険や著しい衛生上の問題があるなど、状態がかなり悪化した「特定空家」だけが行政の措置の対象でした。改正後は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある状態を「管理不全空家」と位置づけ、その段階で市区町村が指導・勧告に踏み込めるようになっています。行政の関与が、「危険になってから」ではなく「危なくなりそうな段階」へと前倒しされたのが、最大の変化です。

実務上もっとも重いのは、税の扱いです。管理不全空家として勧告を受けると、住宅用地特例が解除され、固定資産税の優遇がなくなります。これは特定空家への勧告と同じ効果で、放置のコストを早い段階から引き上げる仕組みになっています。このほか改正では、所有者に代わって建物を管理する管理不全建物管理人などの選任を市区町村が裁判所に請求できる制度や、電力会社などインフラ事業者へ所有者情報の提供を求められる仕組みも整えられ、所有者が特定されにくいことを理由に放置する、という逃げ道は狭まりました。下表で、二つの段階の違いを整理します。

観点特定空家管理不全空家
状態のイメージ倒壊の危険・著しい衛生上の問題など、すでに深刻放置すれば特定空家になるおそれがある前段階
行政の関与助言・指導から勧告・命令、行政代執行まで適切な管理を促す指導・勧告(改正で新設)
勧告後の固定資産税住宅用地特例が解除され負担増勧告を受けると同様に特例が解除され負担増
最終的なリスク命令違反の過料、行政代執行と費用請求放置が続けば特定空家へ移行しうる

注意したいのは、勧告は突然来るわけではなく、まずは助言・指導という段階を踏むのが一般的だという点です。自治体からの連絡を放置せず、早い段階で相談・対応すれば、税優遇の解除という重い結果は避けやすくなります。具体的な状態の判断基準や手続の細目は自治体の運用や国の指針によりますので、個別の物件については市区町村の空き家担当窓口で確認するのが確実です。

相続空き家を売るなら — 3,000万円特別控除の要件と期限

放置のコストを説明したうえで、「売る」を後押しするのが、相続した空き家を売ったときの譲渡所得の特例、いわゆる3,000万円特別控除です。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と呼ばれ、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。空き家の発生を抑制するための特例措置として、国土交通省や国税庁が案内しています。売却益が出るケースでは、税負担が大きく変わるため、相続人にとって出口を決める強い動機になります。

代表的な要件と期限 — まずは大枠を押さえる

制度の代表的な要件は、おおむね次のとおりです。相続または遺贈で取得した、被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた家屋とその敷地であること。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。マンションのような区分所有建物でないこと。相続のときから売るときまで、事業・貸付け・居住に使われていないこと。売却代金が1億円以下であること。そして、家屋を耐震基準に適合させて売るか、家屋を取り壊して敷地を売ること、です。適用できるのは、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの間の売却で、この期限は近づいています。被相続人が老人ホーム等に入所していた場合など、一定の条件で対象になるケースもありますが、要件は細かく、個別の判断は税理士や税務署への確認が前提になります。

令和6年の見直し — 買主の解体もOK、相続人3人以上は上限減

令和6年(2024年)1月1日以降の売却からは、使い勝手が一部変わりました。これまでは、売主の側が売却の前に耐震改修をするか、家屋を取り壊して更地にしてから引き渡す必要がありました。改正後は、引渡し後、売却した年の翌年2月15日までに、買主が耐震改修工事や取壊しを行った場合でも対象に加わりました。古家付きのまま引き渡せる柔軟さが生まれ、売主の負担と段取りが軽くなった形です。一方で、被相続人居住用家屋とその敷地を取得した相続人が3人以上いる場合は、一人あたりの特別控除額の上限が3,000万円から2,000万円に引き下げられました。兄弟姉妹で分けて相続したケースでは、控除の上限が変わる点に注意が必要です。

控除は「自動」では受けられない — 確認書と確定申告が要る
3,000万円特別控除は、要件を満たせば黙っていても適用される、というものではありません。適用を受けるには、売却した翌年に確定申告を行う必要があり、その際、家屋が建っていた市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類が求められます。確認書の取得には申請から交付まで時間がかかることもあり、売却のスケジュールと逆算した段取りが欠かせません。「売れてから考える」では間に合わないことがあるため、相談の早い段階で、要件に当てはまりそうかの見立てと、必要書類・申告の流れを共有しておくと、相続人は安心して動けます。具体的な適用可否や税額は、必ず税理士・税務署で確認してください。

出口の選択肢 — 売る・貸す・解体して活用する

空き家の出口は「売る」だけではありません。相続人の資金事情、立地、建物の状態、そして思い入れによって、最適解は変わります。中小不動産会社の腕の見せどころは、選択肢を公平に並べ、それぞれの損得を相続人と一緒に確かめることにあります。代表的な選択肢を整理します。

選択肢①:そのまま売る — 古家付き土地・現況有姿という出し方

建物を残したまま、古家付き土地として、あるいは現況有姿で売る方法です。解体費をかけずに済み、令和6年の改正で買主が引渡し後に耐震改修や解体をしても3,000万円特別控除の対象になり得るようになったため、選びやすくなりました。買い手にとっては、自分の判断でリフォームするか建て替えるかを選べる利点があります。一方で、古い建物の状態によっては、契約不適合責任や境界の不明確さがトラブルの種になるため、現況の開示と境界の確認を丁寧に行うことが欠かせません。

選択肢②:解体して更地で売る・活用する — 費用と税の留意点

老朽化が進み、建物に価値が見込めない場合は、解体して更地で売る、あるいは駐車場などとして活用する選択もあります。買い手が広がりやすく、土地本来の価値で評価されやすい一方、解体費という先行投資が必要で、その負担は年々重くなる傾向にあります。もう一つ見落とされがちなのが、更地にすると住宅用地特例が外れ、その土地の固定資産税が上がる点です。「売れるまでのあいだ更地で保有する」期間が長引くと、税負担がかさみます。解体のタイミングは、売却の見通しと合わせて慎重に設計したいところです。

選択肢③:貸す・活用する — リフォーム投資を回収できるか

立地に賃貸需要があり、建物が一定の状態を保っていれば、貸して活用する道もあります。賃料収入が保有コストを上回れば、資産として生き返ります。ただし、貸し出すにはリフォームや設備更新の投資が必要なことが多く、その費用を家賃でどれだけの期間で回収できるかの見極めが要ります。また、いったん賃貸に出すと3,000万円特別控除の「貸付けに使っていないこと」という要件から外れるため、将来売却して控除を使う可能性があるなら、その点も踏まえて判断します。売る・貸す・解体する・当面は適切に管理して持ち続ける——どれが正解かは一律ではなく、相続人の事情に沿って選ぶものだ、という前提で並べることが大切です。

中小不動産会社の実務 — 相談を受けたときの初動と、信頼される対応

では、相続人から「実家が空き家になっていて」と相談を受けたとき、何から手をつければよいか。私が現場で大切にしているのは、売り急がせないことと、選択肢と段取りを見える化することの二つです。初動としては、まず現況を把握します。登記の名義は誰になっているか、相続人は確定しているか、境界は明確か、室内の残置物や建物の劣化はどの程度か。これらは、どの出口を選ぶにしても土台になる情報です。名義が被相続人のままだったり、相続人が複数で意向がそろっていなかったりするケースは多く、ここを整理しないまま売買や賃貸の話を進めると、後で必ず行き詰まります。

次に、出口の選択肢と、それぞれにかかる費用・税・期間を一枚にまとめて示します。とくに3,000万円特別控除を使える見込みがあるなら、要件に当てはまりそうかを早い段階で見立て、確認書の取得や確定申告の流れ、税理士への相談タイミングを共有します。自分の専門でない領域は、抱え込まずに専門家へつなぐことが、結果的に相続人の利益になります。相続登記や遺産分割は司法書士、税の判断は税理士、解体は解体業者、境界の確定は土地家屋調査士——こうした連携の窓口になれることが、中小不動産会社の信頼につながります。空き家の相談は、すぐに売買の成約に結びつくとは限りません。それでも、誠実に出口を一緒に考えた相手は、いざ動くときに必ず思い出してもらえます。目先の手数料ではなく、長い信頼を積み上げる仕事として向き合いたい領域です。

立場別の影響と、いますぐの対応

同じ「相続空き家」でも、関わり方は立場によって変わります。自社や顧客の状況に置き換えて、優先順位を確かめてください。

立場いま起きていることいますぐの対応
相続人(所有者)保有コストと管理責任が静かに増えている持つ場合と動かす場合の損得を数字で比較する
売買仲介の会社初夏に空き家の相談が増える季節現況把握と控除の見立てを初動で示す
賃貸管理会社貸して活用する相談の受け皿になりうる賃貸需要とリフォーム回収を冷静に試算する
地域・近隣倒壊・越境・不法投棄などの不安早めの相談で管理不全化を未然に防ぐ
自治体管理不全空家への指導・勧告を進める連絡を放置せず早期に対応・相談する

とりわけ効き目が大きいのは、相続人が「持ち続ける場合」と「動かす場合」の損得を、感情ではなく数字で並べて比べることです。固定資産税、管理費、将来の解体費、売却時の手取りと控除の有無——これらを一枚にまとめるだけで、先送りされていた検討が前に進みます。不動産会社の役割は、急かして売らせることではなく、判断に必要な材料をそろえて、相続人が自分で納得して決められるように支えることです。その順番で関わると、相続人の腹落ちが違ってきます。

よくある質問

Q1. 空き家は、相続したらすぐ売らないといけませんか。
すぐに売る義務はありません。貸す、解体して活用する、適切に管理して当面持ち続ける、という選択肢もあります。ただし、保有を続けるあいだも固定資産税や管理の負担はかかり続け、建物の価値は時間とともに下がります。「持ち続ける場合」と「動かす場合」の損得を数字で比べたうえで、納得して決めるのが大切です。

Q2. 「管理不全空家」に指定されると、すぐに税金が上がりますか。
いきなり跳ね上がるわけではありません。一般に、市区町村はまず助言・指導を行い、改善されない場合に勧告へ進みます。固定資産税の住宅用地特例が外れるのは勧告を受けた段階とされており、早めに相談・対応すれば、重い結果は避けやすくなります。連絡を放置しないことが何より重要です。

Q3. 3,000万円特別控除は、誰でも使えますか。
いいえ、要件があります。被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた家であること、昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないこと、売却代金が1億円以下であること、耐震改修または取壊しを行うことなどが代表例です。適用できるかは個別事情によりますので、税理士や税務署で確認してください。

Q4. 建物を解体してから売ったほうが得ですか。
一概には言えません。更地のほうが買い手は広がりますが、解体費がかかり、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が増えます。令和6年からは、古家付きで引き渡して買主が解体や耐震改修をしても3,000万円特別控除の対象になり得るため、解体のタイミングは売却の見通しと合わせて設計するのが賢明です。

Q5. 相続人が複数いる場合、控除はどうなりますか。
令和6年1月1日以降の売却では、被相続人居住用家屋とその敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、一人あたりの特別控除額の上限が3,000万円から2,000万円に引き下げられます。共有で相続したケースでは、誰がいくら控除を使えるかが変わるため、分け方を決める前に税理士に相談しておくと安心です。

Q6. 遠方の空き家は、どう管理すればよいですか。
定期的な通風・通水、郵便物の確認、庭木の手入れ、雨漏りや破損の点検が基本ですが、遠方では現実的に難しいものです。地元の不動産会社やシルバー人材センター、空き家管理の代行サービスに、見回りと簡単な維持を依頼する方法があります。管理されている形跡があること自体が、不法投棄や不審者の侵入を防ぎ、管理不全化のリスクを下げます。

Q7. 不動産会社に相談するのは、売ると決めてからでないと失礼ですか。
そんなことはありません。むしろ、決める前の段階で相談していただくほうが、選択肢を公平に並べ、控除や税の段取りまで含めて一緒に検討できます。当社でも、「まだ売ると決めていないのですが」という相談を数多くお受けしています。出口を決めるための材料をそろえるのが私たちの役割ですので、迷っている段階でこそ気軽に声をかけてください。

まとめ:実家を「負動産」にしないために

相続した空き家は、放置するほど税・管理責任・市場価値の三つの負担が積み上がる一方、改正空家法で行政の関与は前倒しになり、売却を後押しする3,000万円特別控除には令和9年末という期限があります。だからこそ、「いつか」を先送りにせず、持ち続ける場合と動かす場合の損得を数字で並べて比べることが、いちばんの近道です。不動産会社の役割は、急かして売らせることではなく、現況を把握し、売る・貸す・解体して活用するという出口の選択肢と、それぞれの費用・税・期間を見える化し、相続人が納得して決められるように支えることにあります。控除の要件や税額の判断は税理士・税務署へ、登記や遺産分割は司法書士へと、専門家につなぐ窓口になれることも、中小不動産会社ならではの信頼の土台です。相続空き家の相談が増えるこの初夏は、地域の「実家のこれから」に寄り添う好機でもあります。できるところから、目の前の一件にていねいに向き合っていきましょう。今日も一件、丁寧に積み上げていきましょう。

相続・空き家の相談履歴と物件情報を一元管理し、出口の検討を取りこぼさない
ウルスタは、中小不動産会社の物件・契約・オーナー・顧客情報と対応履歴を一元管理できる業務クラウドを提供しています。相続空き家の相談は、すぐに成約に結びつくとは限らず、現況・相続人の意向・控除の見立て・専門家連携といった情報が、担当者の記憶の中に散らばりがちです。相談の経緯と次の一手を日々の入力の延長で残しておけば、「あの空き家、その後どうなりましたか」という再相談にも自然に応じられます。先送りされがちな実家の出口を、地域の相談相手として伴走するところから始めていきましょう。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向け実務メディアを運営する傍ら、自社で210室規模の賃貸住宅を管理・客付けする。本記事は、公表された法律・国土交通省や国税庁の資料の概要、自治体の公表資料、報道、専門家の解説に基づく一般的な実務整理であり、税制特例の適用可否や個別の判断は、最新の公表資料および税理士・税務署・司法書士・自治体の空き家担当窓口等で確認のうえ判断すること。制度の運用・細目は、今後の通達やガイドライン等により具体化・変更される可能性がある。

参考: 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」 / 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 / 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2023年12月施行の改正を含む)および「管理不全空家」「特定空家」に関する基本指針・ガイドライン / 固定資産税の住宅用地特例の概要 / いずれも2026年6月時点の公開情報をもとに整理