固定資産税は年4回の納期で納める税で、第1期の納期が6月の地域では、賃料の送金額が少ない月に納付が重なるとオーナーの資金繰りが苦しくなります。管理会社ができるのは、納期を送金計画に入れておくこと、課税明細書の確認を手伝うこと、払えないときの徴収猶予や換価の猶予の窓口を案内することです。地方税法の条文と総務省・東京都主税局の資料をもとに、2026年度(令和8年度)と次の評価替え(令和9年度)に向けた実務を整理します。
固定資産税の納期は年4回|地方税法362条
地方税法362条1項は、固定資産税の納期を「4月、7月、12月及び2月中において、当該市町村の条例で定める」としています。同じ項のただし書きで、特別の事情がある場合はこれと異なる納期を定めることができるとされており、実際の納期は市町村の条例で決まります。
たとえば東京都主税局の案内では、東京23区の固定資産税・都市計画税(土地・家屋)は、6月(第1期)、9月(第2期)、12月(第3期)、2月(第4期)の年4回で納めます。納税通知書は第1期の納付月に届きます。第1期が4月や5月の市町村もあるため、オーナーが複数の市町村に物件を持っている場合は、市町村ごとに納期を確かめておく必要があります。
また、362条2項は、税額が条例で定める金額以下のときは、いずれか1つの納期で全額を徴収できると定めています。小さな物件では1回でまとめて請求される場合があります。
固定資産税の賦課期日は1月1日で(地方税法359条)、納税義務者はその時点の所有者です(総務省「固定資産税の概要」)。年の途中で売買があっても、その年度の納税通知書は1月1日時点の所有者に届きます。売買のときに日割りで精算するかどうかは当事者間の取り決めです。
令和8年度は据置年度、次の評価替えは令和9年度
総務省の「固定資産税の概要」では、土地と家屋は3年ごとに評価替えを行い、それ以外の年度は原則として価格を据え置くと説明されています。地方税法341条6号は、基準年度を「昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度」と定めています。これに当てはめると、令和6年度(2024年度)が基準年度で、令和7年度が第二年度、令和8年度が第三年度です。次の基準年度、つまり評価替えの年は令和9年度(2027年度)です。
2026年度の納税通知書は据置年度のものですが、2027年度の通知書は評価替え後の価格にもとづいて届きます。地価や建築費の動きが価格にどう反映されるかは市町村の評価によるため、2026年のうちに「来年度は通知書の金額が変わる可能性がある」とオーナーに知らせておくと、2027年6月の資金繰りに備えてもらえます。
据置年度でも税額が動く主な場面
価格が据え置かれていても、税額が前年度と同じになるとは限りません。オーナーから「評価替えの年でもないのに上がった」と聞かれたときは、次の点を課税明細書で確かめます。
土地の負担調整措置
総務省の資料では、令和6年度から令和8年度までの土地について、負担水準の低い土地はなだらかに税負担を上昇させ、負担水準の高い土地は引き下げまたは据え置く「負担調整措置」の仕組みが示されています。価格が変わらない年度でも、課税標準額が段階的に上がる土地があります。
新築住宅の減額が終わる年度
総務省の「固定資産税の概要」では、新築住宅について、床面積120平方メートル相当分までの税額を、一般の住宅は3年間、3階建以上の中高層耐火住宅等は5年間、2分の1に減額する措置が示されています。減額の期間が終わった年度は、家屋の税額が増えたように見えます。築年数の浅いアパートを持つオーナーには、減額がいつまで続くかを課税明細書で確かめてもらいます。
住宅用地の特例が外れる場合
地方税法349条の3の2は、住宅用地の課税標準を価格の3分の1とし、200平方メートル以下の小規模住宅用地は6分の1とする特例を定めています。建物を取り壊して更地にした場合や、住宅として使わなくなった場合は、翌年度から特例が外れ、土地の税額が大きく変わることがあります。建替えや解体を検討しているオーナーには、1月1日時点の状態で翌年度の課税が決まることを伝えておきます。
縦覧と審査の申出|据置年度にできること
縦覧|他の土地・家屋の価格と見比べる
地方税法416条1項により、市町村長は毎年4月1日から、4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を納税者の縦覧に供します。納税者は、自分の土地や家屋の価格を、同じ市町村内の他の土地や家屋の価格と比べることができます。縦覧の場所と期間は、あらかじめ公示されます(同条3項)。
審査の申出|据置年度は原則として価格を争えない
地方税法432条1項は、固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある納税者は、固定資産評価審査委員会に審査の申出ができると定めています。期間は、価格等の登録の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月を経過する日までなどとされています。
ただし、同項のただし書きにより、基準年度以外の年度(据置年度)は、基準年度の価格がそのまま登録されたものとみなされる土地・家屋の価格について、原則として審査の申出ができません。例外は、地目の変換、家屋の改築または損壊その他これらに類する特別の事情(地方税法349条2項1号)がある場合などです。令和8年度に価格そのものを争う余地は限られるため、価格の確認は令和9年度の評価替えの通知書で行うのが現実的です。
一方、住宅用地の特例が正しく適用されているか、新築住宅の減額が漏れていないかといった課税の誤りは、価格の不服とは別の問題です。課税明細書の記載に疑問があれば、市町村の資産税の担当課に問い合わせてもらいます。
払えないときの徴収猶予と換価の猶予
徴収猶予|地方税法15条
地方税法15条1項は、納税者が次のいずれかに当たり、一時に納付できないと認められるときは、1年以内の期間を限って徴収を猶予できると定めています。
- 財産が震災、風水害、火災その他の災害を受け、または盗難にかかったとき
- 納税者や生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したとき
- 事業を廃止し、または休止したとき
- 事業について著しい損失を受けたとき
- これらに類する事実があったとき
申請による換価の猶予|地方税法15条の6
地方税法15条の6は、一時に納付することで事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあり、納付について誠実な意思があると認められる場合に、本人の申請によって換価の猶予ができると定めています。申請は、納期限から条例で定める期間内にする必要があります。期間は市町村の条例によるため、納期限が過ぎる前に担当課へ相談してもらうのが基本です。
管理会社が気をつけること
猶予の申請は納税者であるオーナー本人が行うもので、要件に当たるかどうかは市町村が判断します。管理会社は「こういう制度がある」「窓口は市町村の納税課」と案内し、必要に応じて賃料収入や修繕費の資料を出すところまでにとどめます。税額の計算や申告の助言は税理士の業務になるため、顧問税理士がいるオーナーには早めにつなぎます。
管理会社がオーナーにできる案内
送金計画に納期を書き込む
仮の数字で計算例を示します。年税額(固定資産税・都市計画税)が120万円で、4回に分けて納める物件を考えます。各期がおおむね30万円になるとすると、6月の手取り送金額が45万円、ローンの返済が35万円のオーナーでは、6月だけで20万円の不足になります。
| 項目 | 6月(仮の数字) | メモ |
|---|---|---|
| 管理会社からの送金額 | 45万円 | 管理料・修繕費を差し引いた後の額 |
| ローン返済 | 35万円 | 元利均等の毎月返済 |
| 固定資産税・都市計画税 第1期 | 30万円 | 年税額120万円を4回で納める場合のおおよその額 |
| 差引 | マイナス20万円 | 5月までに手元資金を確保しておく必要がある |
この例のように、毎月の収支が黒字でも、納期の月だけ資金が足りなくなることがあります。管理会社が送金明細とあわせて「次の納期と見込み額」を書いておくと、オーナーは前の月から資金を残しておけます。
案内の時期と内容
| 時期 | オーナーへの案内 | 根拠・資料 |
|---|---|---|
| 前年の秋〜冬 | 建替えや解体の予定があれば、1月1日時点の状態で翌年度の課税が決まることを伝える | 総務省「固定資産税の概要」、地方税法349条の3の2 |
| 4月 | 縦覧の期間と場所を伝える | 地方税法416条 |
| 納税通知書が届いた月 | 課税明細書の住宅用地の特例、新築住宅の減額の記載を一緒に確かめる | 地方税法349条の3の2、総務省「固定資産税の概要」 |
| 各期の前月 | 送金明細に次の納期と見込み額を書く | 地方税法362条、市町村の条例 |
| 納付が難しいとき | 納期限の前に市町村の担当課へ相談するよう伝え、徴収猶予・換価の猶予の制度を案内する | 地方税法15条・15条の6 |
| 2026年度中 | 令和9年度は評価替えの年で、通知書の金額が変わる可能性があることを伝える | 地方税法341条6号 |
家賃の見直しを考えるとき
税負担の増加は、借地借家法32条1項が定める賃料増額請求の理由の1つ(土地または建物に対する租税その他の負担の増減)に挙げられています。ただし、増額が認められるかどうかは近傍同種の賃料など他の事情とあわせて判断されます。進め方は賃料増額請求の手順の記事で整理しています。
ウルスタくんでは、入金の記録と、管理料・修繕費を差し引いたオーナーへの送金明細を作れます。送金明細のメモ欄に次の納期と見込み額を書いておくと、オーナーとの確認がしやすくなります。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 固定資産税の第1期はどこでも6月ですか。
いいえ。地方税法362条1項は納期を4月、7月、12月、2月中で条例で定めるとしつつ、特別の事情がある場合は異なる納期を定められるとしています。東京23区は6月・9月・12月・2月ですが、市町村ごとに違うため、納税通知書や市町村のホームページで確かめます。
Q2. 2026年度は評価替えの年ですか。
いいえ。令和8年度(2026年度)は据置年度です。直近の評価替えは令和6年度、次は令和9年度(2027年度)です(地方税法341条6号)。
Q3. 据置年度なのに税額が上がったのはなぜですか。
土地の負担調整措置で課税標準額が段階的に上がっている場合や、新築住宅の減額期間が終わった場合、住宅用地の特例が外れた場合などが考えられます。課税明細書で原因を確かめ、疑問があれば市町村の担当課に問い合わせます。
Q4. 据置年度に審査の申出はできますか。
基準年度の価格がそのまま使われている土地・家屋の価格については、地目の変換や家屋の改築・損壊などの特別の事情がある場合を除き、原則としてできません(地方税法432条1項ただし書き)。
Q5. 一度に払えないときはどうすればよいですか。
災害や病気、事業の休廃止、著しい損失などに当たる場合は徴収猶予(地方税法15条)、一時の納付で事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれがある場合は申請による換価の猶予(15条の6)の制度があります。どちらも市町村が判断するため、納期限の前に担当課へ相談してもらいます。
訂正のお知らせ(2026年9月4日)この記事は当初、2026年度(令和8年度)を「3年に一度の評価替えの年」として書いていました。これは誤りです。固定資産の評価替えは3年ごとで、直近は令和6年度(2024年度)、次は令和9年度(2027年度)。令和8年度は据置年度にあたります。あわせて、地価公示の変動率と家屋の再建築費に関する数値、縦覧・審査の申出の説明も、公的資料に照らして書き直しました。誤った前提でお読みになった方にお詫びします。
出典(本文で参照している資料)
- 地方税法(e-Gov法令検索)15条・15条の6・341条・349条・349条の3の2・359条・362条・416条・432条
- 総務省「固定資産税の概要」
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
- 借地借家法(e-Gov法令検索)32条
この記事は2026年10月7日時点の情報です。