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低未利用土地の100万円控除2026|令和8年度改正で3年延長・確認書と報酬特例を空き地の売却仲介につなげる

「売っても手間ばかり」と放置されてきた低額の空き地に、税制の追い風が続きます。100万円控除の3年延長で何が変わるのか、市区町村の確認書の段取りから報酬特例との併用まで、低額物件を商機に変える実務を中小不動産会社の現場目線で解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
低未利用土地の100万円控除2026|令和8年度改正で3年延長・確認書と報酬特例を空き地の売却仲介につなげる
目次

「あの空き地、売っても手間ばかりで大した金額にならないから」——そう言って放置されてきた低額の土地に、税制の側から出口をつくるのが、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除です。譲渡価額500万円以下(一定の区域では800万円以下)という条件からも分かるとおり、この特例は最初から「安いから動かない土地」を動かすために設計されています。そして2025年12月に閣議決定された令和8年度税制改正大綱で、適用期限が令和10年(2028年)12月31日まで3年延長されました。本記事は、ウルスタ代表として宅地建物取引業を営む立場から、この特例のしくみと延長の中身、市区町村の確認書をめぐる手続き、そして低額物件の仲介を中小不動産会社の商機に変える実務を、宅地建物取引士の目線で整理します。

低未利用土地の100万円控除とは——「安いから動かない土地」のための特例

低未利用土地の100万円控除は、正式には低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除といい、令和2年度税制改正で創設され、2020年7月1日以後の譲渡から適用されている制度です。個人が、都市計画区域内にある低未利用土地等——空き地や、空き家・空き店舗が建つ土地など、利用されていないか周辺に比べて利用の程度が著しく低い土地——を低額で譲渡したとき、その年の低未利用土地等に係る長期譲渡所得から最大100万円を控除できます。譲渡所得が100万円に満たない場合は、その金額が控除の上限です。

長期譲渡所得には所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%の税率がかかりますから、100万円の控除は最大でおよそ20万円の税負担の軽減を意味します。金額としては大きくないと感じるかもしれませんが、譲渡価額が数百万円の土地では、譲渡費用や税金を差し引くと手残りがわずかになり、「それなら売らずに置いておく」という判断に傾きがちです。その背中をひと押しするのがこの特例で、放置された土地が管理不全のまま次の世代に渡り、所有者不明土地の予備軍になることを防ぐ、という政策目的が背景にあります。

令和8年度税制改正で3年延長——令和10年12月31日まで使える

この特例の適用期限は当初令和4年末、令和5年度改正の延長で令和7年(2025年)12月31日まででした。期限切れが近づく中、2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱で、適用期限を令和10年(2028年)12月31日まで3年延長することが盛り込まれ、令和8年1月1日以後の譲渡にも引き続き適用できることになりました。国土交通省の税制改正要望でも、低未利用地の利活用促進と所有者不明土地の発生予防の観点から延長が求められていた措置です。

まず押さえたい制度の全体像
個人が都市計画区域内の低未利用土地等を500万円以下(市街化区域など一定の区域では800万円以下)で譲渡し、譲渡後にその土地が利用される見込みであることについて市区町村長の確認を受けた場合、長期譲渡所得から最大100万円を控除できます。適用期限は令和8年度税制改正で3年延長され、令和10年(2028年)12月31日までの譲渡が対象です。

なぜ今押さえるのか——夏草の季節とお盆前、そして相続登記義務化

7月にこのテーマを取り上げる理由は三つあります。第一に、夏は空き地の管理負担が目に見える季節だからです。梅雨明けから夏にかけて雑草は一気に伸び、遠方の所有者には草刈りの手配や近隣からの苦情が届きます。「持っているだけで負担」という実感が最も強まる時期であり、売却の提案が響きやすいタイミングです。第二に、お盆前という時期。帰省で家族が集まるお盆は、実家や相続した土地の扱いが話題になる数少ない機会です。7月のうちに所有者へ情報を届けておけば、家族会議の材料になります。第三に、相続登記の義務化です。2024年4月に施行された相続登記の申請義務化は、施行前に相続した不動産についても2027年3月末までの申請を求めており、放置していた土地の名義を整理する過程で「この土地、どうするか」という相談が増えています。

特例の延長が決まった直後の今年は、「期限が切れたはず」と思い込んでいる所有者や、そもそも制度を知らない所有者に、延長の事実そのものがニュースとして届く年でもあります。情報を運ぶ役割は、地域の不動産会社にこそ向いています。

適用要件の全体像——五つの柱で確認する

特例の適用要件を、実務で確認する順に整理します。

要件内容実務でのポイント
土地の所在と状態都市計画区域内にある低未利用土地等(空き地・空き家等の敷地・土地の上に存する権利を含む)であること都市計画区域外は対象外。低未利用かどうかは市区町村の確認書で判定される
所有期間譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること(長期譲渡所得)相続で取得した土地は被相続人の取得時期を引き継ぐため、相続直後でも要件を満たす場合が多い
譲渡価額建物等を含む譲渡対価の合計が500万円以下(一定の区域では800万円以下)土地と建物を合わせた金額で判定。値付けの段階から上限を意識する
買主の属性配偶者・直系血族・生計を一にする親族や同族会社など、特別の関係がある者への譲渡でないこと親族間売買は対象外。第三者への売却を前提に組み立てる
譲渡後の利用譲渡後にその土地が利用される見込みであること(コインパーキングとしての利用は対象外)について市区町村長の確認を受けること買主の利用意向を確認書申請の書類で示す。ここに宅建業者の関与の余地が大きい

このほか、前年・前々年に同じ土地やそこから分筆した土地についてこの特例を受けていないことも要件です。広い土地を分筆して毎年少しずつ売る、という形で連年適用することはできません。また、収用等の特別控除など他の譲渡所得の課税特例と同一の譲渡で重ねて使うことはできず、どの特例を選ぶかは確定申告での選択になります。

500万円と800万円——二つの価格上限と、報酬特例との重なり

譲渡価額の上限は原則500万円ですが、令和5年度改正により、令和5年1月1日以後の譲渡では市街化区域や、非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められている区域など一定の区域内の土地について800万円以下に引き上げられており、この引き上げも延長後の期間に引き継がれています。自社の商圏がどちらの上限に当たるかは、確認書を発行する市区町村の担当課に確かめておくと、査定の場で迷いません。

実務家として見逃せないのは、この800万円というラインが、2024年7月1日施行の報酬告示改正で拡充された「低廉な空家等」の媒介報酬特例の上限と重なっていることです。800万円以下の宅地建物の売買媒介では、あらかじめ依頼者に説明して合意すれば、通常の上限にかかわらず売主・買主それぞれから最大30万円(消費税別)まで報酬を受領できます。つまり、低額の土地取引は「税制は買い手と売り手を後押しし、報酬制度は仲介会社の採算を支える」という形で、制度の側の環境が揃ってきているのです。

市区町村の確認書——手続きの中核に、宅建業者の書類がある

この特例のいちばんの特徴は、適用の入口に市区町村長による「低未利用土地等確認書」があることです。確定申告の際にこの確認書を添付する必要があり、発行を受けるには、土地が低未利用であったことと、譲渡後に買主が利用する見込みであることを、書類で示さなければなりません。

低未利用であったことの証明には、空き家バンクへの登録のほか、宅地建物取引業者が媒介にあたって現況を確認した書類——たとえば「現況更地」「空き家」と表示した広告——や、電気・水道・ガスの使用中止日が分かる書類などが使われます。譲渡後の利用については、買主の利用意向を記した書類を添えるのが一般的で、様式や運用は市区町村ごとに異なります。つまりこの手続きは、媒介した不動産会社が日常業務で作る書類がそのまま証明力を持つ構造になっており、売主が単独で進めるより、仲介会社が段取りした方が圧倒的に速い。ここが、この特例を「知っている会社」と「知らない会社」の差になる部分です。

相続空き家の3,000万円控除との使い分け——別物として整理する

譲渡所得の特別控除というと、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除を思い浮かべる方が多いはずです。両者は対象も要件も別の制度で、現場では使い分けの整理が欠かせません。相続空き家の3,000万円控除は、昭和56年5月31日以前に建築された被相続人居住用の家屋とその敷地が対象で、耐震改修または取り壊しといった家屋側の要件があり、譲渡価額は1億円以下、期限は令和9年12月31日までとされています。一方、低未利用土地の100万円控除は家屋の建築時期や耐震性を問わず、相続に限らず使え、金額の上限が低いのが特徴です。

実務では、まず3,000万円控除が使えるかを検討し、要件から外れる案件の受け皿として100万円控除を確かめる、という順番が基本になります。昭和57年以降に建った家の敷地、被相続人が住んでいなかった土地、更地のまま長年置かれた土地——3,000万円控除の土俵に乗らない低額案件は地域に数多くあり、そこを拾えるのがこの特例です。どちらの適用可能性があるかで売主への説明も値付けも変わりますから、査定の初期段階で分岐を意識しておくことが大切です。

中小不動産会社にとっての商機——低額物件を「仕事になる案件」に変える

低額の土地は、これまで多くの会社にとって「受けても採算が合わない案件」でした。その構図が変わりつつあります。第一に、掘り起こしの武器になること。過去に査定だけで止まった空き地、管理の相談だけ受けていた空き家の敷地に、「税の特例が3年延長されました」という具体的なニュースを添えて再アプローチできます。第二に、確認書の手続きを含めた一気通貫の支援が差別化になること。特例の存在を教え、媒介で必要書類を整え、市区町村への確認書申請を案内し、税理士へつなぐ——この流れを型として持っている会社は、まだ多くありません。第三に、報酬特例との併用で採算が立つこと。前述のとおり800万円以下の売買媒介は双方から各30万円(消費税別)まで受領でき、低額案件を件数でこなす業務設計が現実味を帯びています。

掘り起こしリストと対応履歴を、仕組みで回す
ウルスタは、中小不動産会社の物件・顧客・対応履歴を一元管理できる業務クラウドを提供しています。低未利用土地の掘り起こしは、過去の査定履歴や管理相談の記録から「特例が使えそうな所有者」を洗い出すことから始まります。誰にいつ何を案内したか、確認書の申請はどこまで進んだか——低額案件を件数でこなすほど、記録の抜けが命取りになります。担当者の記憶ではなく仕組みで回すことが、この分野を収益源に変える土台になります。詳しくは https://ulsta.jp をご覧ください。

現場メモ——「売っても仕方ない」と言われた空き地が動いた話

当社で扱った案件に、市街化区域の端にある60坪ほどの空き地がありました。所有者は相続で取得した70代の方で、数年前に他社で査定を受け、「300万円前後にしかならない。税金や手間を考えたら持っていた方がいい」と言われてそのままにしていたそうです。転機は、夏の草刈りの手配を毎年頼んでいた造園業者の廃業でした。管理の相談で来店された際、低未利用土地の100万円控除と、譲渡費用・税額まで含めた手取りの試算をお見せしたところ、「売った後の数字がはじめて具体的に分かった」と売却を決断されました。

買主は隣接地で工場を営む会社の役員の方で、資材置き場と従業員駐車場としての利用意向を書面にしていただき、市の確認書もスムーズに発行されました。印象的だったのは、決済後の所有者の言葉です。「金額よりも、草の心配をしなくていいことが何よりありがたい」。低額案件の価値は、売却額の大きさではなく、所有者の負担が消えることにある——この特例を案内するときの軸になった取引でした。

実務での進め方——五つのステップ

低未利用土地の100万円控除を自社の商機にするための進め方を、五つのステップに整理します。第一に、市区町村の運用確認。確認書の様式・必要書類・発行までの日数、自社の商圏が500万円と800万円のどちらの上限に当たるかを担当課に確かめます。第二に、掘り起こしリストの作成。過去の査定・管理相談・相続相談の記録から、都市計画区域内の低額な空き地・空き家敷地を洗い出します。第三に、所有者への情報提供。特例の3年延長と手取りの試算を添えて、お盆前に案内を届けます。第四に、媒介と書類の設計。広告に現況を明記し、買主の利用意向書の取得まで見越して段取りします。第五に、確認書申請と税理士連携。引き渡し前後に確認書の申請を案内し、確定申告は税理士へつなぎます。

出発点は第一ステップです。確認書の運用は市区町村ごとに幅があり、ここを最初に押さえるかどうかで案件全体の速度が決まります。窓口とのやり取りを一度経験すれば、二件目からは型として回せるようになります。

注意点——適用を断定せず、数字で誠実に案内する

案内の際の注意点を挙げます。まず、適用の可否を断定しないこと。低未利用に当たるかの判断は市区町村の確認を経て確定し、税額への影響は売主の所得状況にもよります。不動産会社の役割は「使える可能性がある」ことを情報として届け、確認と申告の道筋を整えるところまでで、税務判断は税理士に委ねます。次に、控除の効果を過大に見せないこと。軽減されるのは最大でおよそ20万円であり、取得費が不明な土地では概算取得費で譲渡益が大きく出ることも含め、手取りの試算は保守的に示します。また、コインパーキング利用は対象外である点、親族間売買には使えない点、分筆による連年適用ができない点は、案件の入口で必ず確認します。確認書の申請時期や必要書類は自治体ごとに異なるため、思い込みで進めず、案件ごとに窓口へ確かめる姿勢が基本です。

取得費が分からない土地の試算
先祖代々の土地など取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を取得費とみなす概算取得費で計算するのが一般的です。たとえば譲渡価額400万円なら取得費は20万円とされ、譲渡費用を差し引いても譲渡益が大きく出やすい構造になります。だからこそ100万円の控除が効く場面が多い一方、税額そのものが残るケースもあります。手取り試算は概算取得費を前提に保守的に示し、最終判断は税理士につなぎましょう。

よくある質問

Q1. 低未利用土地の100万円控除は、いつまでの譲渡に使えますか。
令和8年度税制改正で適用期限が3年延長され、令和10年(2028年)12月31日までの譲渡が対象です。都市計画区域内の低未利用土地等を500万円以下(一定の区域では800万円以下)で譲渡した場合に、長期譲渡所得から最大100万円を控除できます。

Q2. 空き家が建ったままの土地でも対象になりますか。
なります。低未利用土地等には、空き家や空き店舗が建つ土地も含まれます。建物を含めた譲渡対価の合計が価格上限以下であることと、譲渡後の利用見込みなど他の要件を満たすことが前提です。

Q3. 相続した直後の土地でも所有期間5年超の要件を満たせますか。
相続や贈与で取得した土地は、被相続人など前所有者の取得時期を引き継いで所有期間を判定します。親が長く持っていた土地であれば、相続直後の譲渡でも長期譲渡所得の要件を満たすことが一般的です。

Q4. 確認書はどこで、どうやって取得しますか。
土地の所在する市区町村に申請します。低未利用であったことを示す書類(空き家バンク登録、宅建業者の広告、電気・水道・ガスの使用中止日が分かる書類など)と、買主の利用意向を示す書類を添えるのが一般的ですが、様式や運用は市区町村ごとに異なるため、事前に担当課へ確認してください。

Q5. 相続空き家の3,000万円控除と両方使えますか。
同一の譲渡について重ねて適用することはできません。まず3,000万円控除の要件に当たるかを検討し、外れる場合の受け皿として100万円控除を確かめる順番が実務的です。どちらが有利かを含め、最終判断は税理士に相談してください。

Q6. 買主が決まっていない段階で所有者に案内してもよいですか。
有効です。特例は「売れたら使える可能性がある制度」として、売却検討の入口で伝えることに意味があります。ただし適用の可否は市区町村の確認と申告を経て確定するため、断定的な説明は避け、手取り試算は保守的に示しましょう。

まとめ:3年延長の追い風を、地域の空き地に届ける

低未利用土地の100万円控除は、令和8年度税制改正で令和10年12月31日まで3年延長され、市街化区域などでの800万円上限やコインパーキング除外といった令和5年度以降の枠組みも引き継がれました。手続きの中核にある市区町村の確認書は、媒介した宅建業者の書類が証明力を持つ構造になっており、報酬特例の拡充と合わせて、低額な土地の仲介を「仕事になる案件」に変える環境が揃っています。夏草が伸び、お盆に家族が集まるこの季節は、放置された土地の負担が最も語られやすいタイミングです。市区町村の運用を確かめ、過去の相談リストに戻り、延長のニュースと手取りの試算を添えて所有者に届けること。小さな案件を誠実に積み重ねる会社が、地域の「土地の相談窓口」として選ばれ続けていきます。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向け実務メディアを運営する傍ら、自社で宅地建物取引業を営み、賃貸住宅の管理・客付けおよび戸建て・マンションを含む売買仲介に携わる。本記事は、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除と令和8年度税制改正による適用期限の延長について、2026年7月時点の公開情報と自社での仲介の実務経験に基づき整理したものである。確認書の様式・運用は市区町村により異なり、本記事は個別の税の適用を保証・断定するものではない。具体的な判断は市区町村の担当課および税理士など専門家にご確認いただきたい。

参考: 国税庁タックスアンサーNo.3226「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」 / 令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日閣議決定)および国土交通省の令和8年度税制改正要望資料 / 国土交通省「土地の譲渡に係る税制」・低未利用土地等確認書に関する各市区町村の案内 / 宅地建物取引業者の報酬に関する告示改正(低廉な空家等の媒介報酬特例・2024年7月1日施行)に関する国土交通省の公表資料 / いずれも2026年7月時点の公開情報および自社の不動産実務をもとに整理