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固定は上がり、変動は据え置き——2026年8月の金利で、買主の借入可能額はいくら縮んだのか

金利のニュースは「上がった/据え置き」で終わります。ですが媒介の現場で効いてくるのは、買主がいくら借りられなくなったかという一点です。審査金利が0.198%上がると、借入可能額は年収にかかわらず約2.7%縮みます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
金利上昇2026|買主の借入可能額と価格改定の実務
目次

2026年8月の住宅ローン金利は、固定が上がり、変動は据え置きでした。ニュースの見出しはそこで終わります。ですが媒介の現場で本当に効いてくるのは、買主がいくら借りられなくなったのかという一点です。審査金利が0.198%上がるだけで、借入可能額は年収の大小にかかわらず約2.7%縮みます。年収600万円のお客様なら約115万円。この数字を自社で出せるかどうかで、売主への説明の質が変わります。ウルスタ代表として自社で210室の管理と売買の媒介を手がける立場から、計算の型と価格判断への落とし方を整理します。

【要点】2026年8月に起きた2つのこと

結論から書きます。2026年7月31日、大手5行が8月の10年固定金利を引き上げ、最優遇は平均3.698%になりました。前月比で0.198%の上昇です。同時に変動型は5行とも据え置き。そしてその3日後の8月3日、短期プライムレートが引き上げられました。変動が据え置きに見えているのは、基準が動いていないからではなく、基準の変化がまだ適用金利まで降りてきていないからです。この時間差を理解していないと、お客様に「変動は大丈夫です」と言い切ってしまう事故が起きます。
項目内容
7月31日大手5行が8月の10年固定を引き上げ。最優遇平均3.698%(前月比+0.198%)
連続更新10年固定の最優遇は比較可能な2006年4月以降の最高を13カ月連続で更新
変動型5行とも据え置き
8月3日三菱UFJ銀行の短期プライムレートが2.125%から2.375%へ(+0.25%)
その前提2026年6月16日の日銀の政策金利引き上げ(1.0%程度)。6月時点で予告済み
フラット358月の最低金利は3.29%。現行制度で過去最高を更新
媒介への影響審査金利が0.198%上がると借入可能額は約2.7%縮む
やること買主の借入可能額を自社で逆算し、売主への報告に1行足す

固定は上げ、変動は据え置き——その意味

8月の各行の10年固定は、次のとおりです。最優遇金利で、3,500万円を35年・元利均等で借りた場合の毎月返済額を並べました。

銀行8月の10年固定(最優遇)3,500万円・35年の毎月返済
みずほ銀行3.350%141,626円
三菱UFJ銀行3.590%146,483円
三井住友銀行3.650%147,710円
りそな銀行3.795%150,697円
三井住友信託銀行4.105%157,183円

三井住友信託銀行が4%台に乗りました。上げ幅は5行とも0.150〜0.270%の範囲です。長期金利の上昇を織り込んだ結果で、10年固定の水準としては13カ月連続の最高更新になります。

一方で変動型は据え置き。契約者の多くが選ぶのは変動ですから、見出しだけを読めば「まだ大丈夫」と受け取れます。問題は、その読み方が正しいのは「今月の適用金利について」だけだという点です。

8月3日、短期プライムレートが動いた

8月3日、三菱UFJ銀行の短期プライムレートが2.125%から2.375%へ、0.25%引き上げられました。みずほ銀行も同じ幅で動いています。6月16日に日銀が政策金利を1.0%程度へ引き上げたことを受けた改定で、6月の時点で予告されていたものです。突然の話ではありません。

短期プライムレートは、銀行が信用力の高い企業へ1年未満で貸し出すときの最優遇金利です。そして変動型住宅ローンの基準金利は、多くの銀行がこの短期プライムレートを参照して決めています。つまり8月3日に動いたのは、変動金利の上流にある水源のほうです。

政策金利から毎月返済額まで、4段の時間差

金利が上流から下流へ伝わる経路を、段で並べておきます。お客様への説明でも、この順番をそのまま使えます。

何が動くか2026年の実際
1日銀の政策金利6月16日に1.0%程度へ
2各行の短期プライムレート8月3日に+0.25%
3変動型の基準金利10月1日の基準日で見直しの見込み
4適用金利(借入利率)基準日の2〜3か月後から
5毎月の返済額5年ルールのある契約は次の見直しまで据え置き

いま私たちは、2段目と3段目のあいだにいます。「据え置き」に見えるのは、時間差の途中だからです。8月に契約したお客様が、来年の春に返済額の変更通知を受け取る。その順番になります。

変動の基準金利は4月1日と10月1日に見直される

多くの銀行が、毎年4月1日と10月1日を基準日として変動型の基準金利を見直します。見直した金利が実際の借入利率に反映されるのは、そこから2〜3か月後。たとえば「4月1日・10月1日の見直し後の利率は、6月・12月の約定返済日の翌日から適用」といった定めです。

さらに、毎月の返済額そのものは5年ルール(返済額の見直しは5年ごと)と125%ルール(見直し時の増加は従前の1.25倍まで)を置いている契約が多くあります。ただしこれらのルールの有無は金融機関と商品によって異なります。ネット銀行や一部の商品では採用していない場合があり、その場合は基準金利の変更が比較的早く返済額に届きます。「一般にはこうです」で話を止めず、お客様ご自身の契約書で確認していただくのが正解です。

買主の借入可能額は、実行金利では決まらない

ここからが媒介の実務です。買主がいくら借りられるかを決めるのは、実際に適用される金利ではなく、銀行が審査に使う金利です。変動0.6%の商品でも、審査は3%台や4%台で行われるのが一般的だと言われます。返済額が将来増えても払い切れるかを見るためです。

ただし審査金利の水準を公表している銀行はほとんどありません。本稿でこのあと使う3.5%と4.0%も、あくまで試算のための仮定値です。数字そのものより、「仮定を置いて自社で計算できる状態」を作ることのほうが実務では効きます。

もう一つの変数が返済負担率です。フラット35は年収400万円以上で35%以下、400万円未満で30%以下という基準を公表しています。民間銀行の基準は非公表ですが、この水準が一つの目安になります。以下は返済負担率35%・返済期間35年・元利均等で統一して計算します。

元利均等返済の式を、自社で持っておく

計算そのものは難しくありません。毎月返済額をM、借入額をP、月利をr(年利÷12)、返済回数をn(年数×12)とすると、こうなります。

毎月返済額を出す:M = P × r × (1+r)n ÷ { (1+r)n - 1 }
借入可能額を逆算する:P = M × { (1+r)n - 1 } ÷ { r × (1+r)n }

表計算ソフトなら、借入可能額は =PV(年利/12, 年数*12, -毎月返済額) の一行で出ます。毎月返済額は =PMT(年利/12, 年数*12, -借入額) です。この2行を入れたシートを1枚作っておけば、金利が動くたびに数字を差し替えるだけで済みます。金利のニュースが出た日の午前中に、営業会議で配れる状態にしておく。それだけで会社の温度が変わります。

0.198%で、いくら借りられなくなるのか

審査金利が3.5%から3.698%へ、今回の固定金利と同じ0.198%だけ上がったと仮定します。返済負担率35%・35年で計算した借入可能額の変化です。

年収毎月返済の上限審査3.5%のとき審査3.698%のとき
400万円11.67万円2,823万円2,746万円-77万円
500万円14.58万円3,529万円3,433万円-96万円
600万円17.50万円4,234万円4,119万円-115万円
700万円20.42万円4,940万円4,806万円-134万円
800万円23.33万円5,646万円5,492万円-154万円

年収600万円のお客様で約115万円、年収800万円なら約154万円です。物件価格に直せば、これまで検討できていた価格帯から一段下がる程度の幅があります。「先月なら通っていた」が起きるのは、この差のためです。

縮む割合は、年収によらず同じという事実

上の表をもう一度見てください。金額の差は年収に比例して大きくなりますが、縮む「割合」はどの年収でも約2.7%で一定です。

理由は式にあります。借入可能額Pは毎月返済額Mに正比例し、Mは年収に正比例する。金利が変わったときに動くのは、Mにかける係数の部分だけです。年収はその係数に影響しません。

これは現場でそのまま使える性質です。「金利が0.2%上がると、お客様の予算はだいたい3%弱下がります」と、年収を聞く前に説明できる。売主に対しても「買主層の予算が一律に約3%削られました」と、根拠のある一文で伝えられます。個別の年収を持ち出さずに済むぶん、話が早い。

審査金利が4.0%まで上がった場合

固定の水準が4%台に届き始めたことを踏まえて、審査金利が3.5%から4.0%へ上がった場合も置いておきます。

年収審査3.5%審査4.0%
400万円2,823万円2,635万円-188万円
500万円3,529万円3,294万円-235万円
600万円4,234万円3,952万円-282万円
700万円4,940万円4,611万円-329万円
800万円5,646万円5,270万円-376万円

縮小率はここでも一律で、約6.7%です。年収600万円で約282万円が消えます。これは頭金や諸費用の削減で埋められる幅ではありません。価格帯そのものの見直しが要ります。

期間を延ばして埋める、の限界

「期間を延ばせばいいのでは」という発想は当然出ます。年収600万円・審査4.0%で、返済期間だけを動かした結果です。

返済期間借入可能額35年との差
30年3,666万円-287万円
35年3,952万円(基準)
40年4,187万円235万円
45年4,380万円427万円
50年4,537万円585万円

35年を40年に延ばして増えるのは約235万円。審査金利が3.5%から4.0%へ上がって失った約282万円を、5年の延長では取り戻せません。さらに45年、50年と延ばしても増え方は鈍り、完済年齢という別の壁に当たります。

期間延長は「効かない」わけではありませんが、金利上昇を丸ごと吸収できる手段ではない。ここを曖昧にしたまま「延ばせば大丈夫です」と言うと、後で梯子を外すことになります。

頭金で埋める、の現実

頭金は借入可能額そのものを増やしませんが、必要な借入額を減らします。年収600万円で審査4.0%なら借入上限は約3,952万円ですから、4,500万円の物件を狙うなら差額をお手元から出していただく必要がある、という単純な話です。

ただし現場感覚として、ここで無理をしていただくのは危険です。手元資金を使い切った直後に給湯器が壊れる、転職する、子どもの進学が重なる。住宅ローンは35年の話で、事故は5年以内に起きます。私たちが提案していいのは選択肢の提示までで、いくら出すべきかの判断は、お客様と金融機関・ファイナンシャルプランナーの領域です。

売出価格に効いてくる経路

ここまでの計算が、売主側の話にどうつながるか。経路は一本です。

審査金利が上がる。すると買主の借入可能額が縮む。するとその価格帯を見に来る買主の母数が減る。すると内見数が落ちる。そして成約までの期間が伸びる。

大事なのは、この経路が「物件が悪くなった」からではないという点です。物件は先月と同じ。変わったのは買主側の与信の天井のほうです。売主にとってはこの区別が重要で、区別を伝えないまま値下げを提案すると「うちの物件が悪いと言われた」という受け取り方をされます。

「売れない」のか「買えない」のか

反響が鈍ったとき、原因を切り分ける順番を決めておくと迷いません。

見る指標落ちていたら疑うこと
ポータルの閲覧数写真・タイトル・掲載順位。金利の話ではない
問い合わせ率(問合せ÷閲覧)価格の見え方。同価格帯の競合が増えていないか
内見率(内見÷問合せ)資料の情報不足、条件のミスマッチ
申込率(申込÷内見)ここが落ちたら資金計画。金利の影響を疑う
否決率審査金利の引き上げが効いている可能性が高い

金利の影響がいちばん早く出るのは、内見はするが申込に至らない、という形です。閲覧数が落ちているだけなら写真を撮り直すべきで、値段の話ではありません。ここを取り違えると、直せるものを直さずに価格だけ下げることになります。

媒介中の売主報告に、金利の1行を入れる

専任媒介・専属専任媒介では、業務の処理状況を定期的に報告する義務があります。この報告書は多くの場合、反響件数と内見数を並べただけの一枚になりがちです。

ここに、金利の1行を足すことを勧めます。「8月の10年固定は最優遇平均3.698%(前月比+0.198%)。買主層の借入可能額は約2.7%縮小しています」。それだけで、報告書が数字の羅列から市況の説明に変わります。

効果は2つあります。ひとつは、価格改定を切り出す前に売主の頭の中に環境変化が入っていること。もうひとつは、こちらが市況を見ているという事実が伝わることです。値下げ交渉の当日に初めて金利の話をすると、言い訳に聞こえます。2か月前から書いてあれば、根拠になります。

価格改定を提案するときの型

私が使っている順番は、いつも同じ4段です。

話すこと
1. 事実反響・内見・申込の実数と、前月との差
2. 環境金利の動きと、買主の借入可能額の縮小幅
3. 切り分け物件側の問題か、買主側の与信の問題か
4. 選択肢価格を動かす/条件を動かす/待つ、の3つを並べる

4段目で「待つ」を必ず選択肢に入れるのが要点です。値下げありきで持っていくと交渉になりますが、待った場合に何が起きるか(金利がさらに上がれば買主の予算はさらに縮む)まで示すと、判断は売主のものになります。決めるのは売主で、私たちの仕事は判断材料を揃えることです。

固定4%台をどう扱うか——予想はしない

固定が3%台後半から4%台、変動が1%前後。この差は歴史的に見ても大きく開いています。ここで「差が大きいうちに固定へ」と勧めるのは簡単ですが、差が大きいということは、固定に移った瞬間の負担増も大きいということです。

参考までに、変動が1.00%から1.25%へ0.25%上がった場合の毎月返済額の増加を置いておきます。35年・元利均等です。

借入額1.00%のとき1.25%のとき毎月の差年間の差
3,000万円84,686円88,226円+3,540円+42,482円
3,500万円98,800円102,930円+4,130円+49,562円
4,000万円112,914円117,635円+4,720円+56,643円

3,500万円で月4,130円、年49,562円です。一方、同じ3,500万円を8月の固定3.698%で借りると毎月148,695円。1.00%の場合と比べて月49,895円の差になります。「固定に移る」という判断は、この差を最初から引き受けるという意味です。

そして、金利の予想はしません。予想を口にした瞬間、外れたときに信頼ごと失います。私たちが提供できるのは、事実の整理と選択肢の提示、そして銀行やファイナンシャルプランナーへの橋渡しまでです。借り換えの損得判断は、不動産会社の仕事の範囲外だと考えています。

フラット35という選択肢の現在地

全期間固定のフラット35は、8月の最低金利が3.29%で、現行制度としての過去最高を更新しました。3,500万円・35年なら毎月140,426円です。

実務で押さえておきたいのは、フラット35の金利は日銀の会合より前に方向がほぼ決まっているという点です。原資は住宅金融支援機構が市場から調達しており、機構債の条件決定日は前月の中旬。翌月の水準は、そこでおおむね見えています。翌月の金利がどちらに向かうかを早めに掴みたいなら、機構債の発表を見るのが実務的です。

商品としての比較は別の記事に譲ります。

住宅ローン比較2026|金利タイプ・商品性・審査の違いを実務目線で整理

賃貸オーナーとアパートローンは事情が違う

ここまでは実需の買主の話です。賃貸オーナーのアパートローンは、前提が変わります。

大きな違いは2つ。ひとつは、5年ルール・125%ルールを置いていない契約が住宅ローンより多いこと。基準金利の変更が、比較的短い期間で返済額に届きます。もうひとつは、判断材料が家賃収入とのバランスになることです。返済比率、空室率、修繕の予定。給与収入だけを見る実需の審査とは、見る場所が違います。

管理オーナーへの説明の組み立ては、6月の利上げのときに一本まとめています。

日銀利上げ2026|政策金利1.0%を賃貸オーナーへどう説明し相談につなげるか

これから投資用物件を取得するお客様には、また別の見方が要ります。借入コストが上がる局面は、価格交渉の余地が生まれる局面でもあります。銀行カテゴリの選び方と打診の順序を間違えなければ、金利上昇局面でも取得は成立します。

不動産投資ローン2026|銀行選定・金利戦略・否決回避の完全マニュアル

台帳に「借入区分」の1列を足す

最後に、今日から10分でできることを書きます。

管理オーナーと過去の売買のお客様について、借入が変動か固定かを、台帳に1列足して埋めていく。それだけです。

入っていれば、10月1日の基準金利見直しの前に、影響が大きそうな方から順に声をかけられます。入っていなければ、電話が鳴ってから調べることになります。

足す列入れる内容
金利タイプ変動/固定期間選択/全期間固定
固定期間の満了年月固定期間選択型のみ。満了の6か月前に接触する
借入残高の概算影響額の試算に使う。桁が分かれば十分
借入先基準日と反映時期の確認先
最終接触日放置年数が見える

利上げのニュースは突然来ますが、来ること自体は予測できます。10月に基準金利が見直される可能性が高いことは、8月3日の時点でもう分かっている。分かっていることに9月ではなく8月のうちに手をつけておくと、秋の一本の電話が、不安の相談ではなく経営の相談になります。

よくある誤解

よく聞く言い方実際は
変動は据え置きだから影響はない誤り。基準の短プラは8月3日に動いている。適用は秋以降
審査は適用される金利で行われる誤り。審査金利は適用金利より高く置かれるのが一般的
年収が高い人ほど影響が大きい金額は大きいが、縮む割合は年収によらず同じ
期間を延ばせば金利上昇を吸収できる不十分。35年を40年にしても埋まるのは一部だけ
5年ルールはどの銀行にもある誤り。採用していない商品がある。契約書で要確認
反響が減ったのは価格が高いから閲覧数が落ちているなら写真の問題。指標を分けて見る
今のうちに固定へ移るのが正解断定できない。残高・残期間・手元資金で答えが変わる

情報の扱いで慎重にした点

本稿は2026年8月4日時点で確認できた公表情報と報道をもとにしています。そのうえで、書かなかったことを明示しておきます。

書かなかったこと理由
各行の審査金利の実数公表されていないため。本稿の3.5%・4.0%は試算用の仮定値
民間銀行の返済負担率の基準非公表。フラット35の公表基準のみを根拠に使った
今後の金利の見通し予想はしない方針のため
借り換えの損益分岐個別性が高く、銀行・FPの領域だと考えるため
5行以外の金融機関の水準網羅できないため。地銀・信金は個別に確認が必要
10月の基準金利見直しの幅確定していないため。「見直しの見込み」までにとどめた

本稿の試算はすべて元利均等返済・ボーナス返済なし・保証料や団信の金利上乗せを考慮しない単純計算です。実際の借入可能額は、諸費用の扱い、他の借入、勤続年数、団信の加入可否など多くの要素で変わります。お客様への提示にあたっては、必ず金融機関の事前審査で裏を取ってください。本稿の数字は、社内で議論を始めるための共通言語として使っていただくのが適切な使い方です。

最後に一点だけ。金利が上がる局面は、不動産会社にとって不利なだけの局面ではありません。数字で説明できる会社と、雰囲気で「今が買い時です」と言う会社の差が、いちばんはっきり出る局面です。借入可能額の逆算は、表計算ソフトの2行でできます。2行を持っているかどうかで、秋の商談の中身が変わります。

執筆:馬場生悦/宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。中小不動産会社向けの実務支援を行うウルスタ代表。自社で210室の賃貸管理と売買の媒介を手がけながら、現場で起きたことをもとに記事を書いています。オーナー台帳と接触履歴を1つの画面にまとめる仕組みは ウルスタ で提供しています。
参照した資料
  1. 2026年7月31日発表の大手5行の8月適用金利に関する報道——10年固定の最優遇は平均3.698%(前月比+0.198%)、みずほ3.350%・三菱UFJ3.590%・三井住友3.650%・りそな3.795%・三井住友信託4.105%、上げ幅0.150〜0.270%、2006年4月以降の最高を13カ月連続更新、変動型は5行とも据え置き
  2. 三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について」(2026年6月16日付)——2026年8月3日より2.125%から2.375%へ0.25%引き上げ。2026年6月16日の日銀の政策金利引き上げ(1.0%程度)を受けたもの
  3. 各行の「変動金利の基準金利見直しについて」——毎年4月1日および10月1日を基準日として見直し、見直し後の利率は約2〜3か月後の約定返済日の翌日から適用。5年ルール・125%ルールの有無は金融機関・商品により異なる
  4. 2026年8月のフラット35金利に関する公表——最低金利3.29%で現行制度における過去最高を更新。原資は住宅金融支援機構債で調達され、条件決定日は前月中旬
  5. 住宅金融支援機構フラット35の返済負担率基準——年収400万円以上は35%以下、400万円未満は30%以下