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【2026年10月】基礎ぐいの建物の転倒対策に指針案|賃貸管理の確認点

国交省が10月30日、能登半島地震の転倒被害を受けた基礎ぐい建物の検証・改修指針案を公表。現行基準より前の建物の条件と改修方法、管理会社の確認点をまとめました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
【2026年10月】基礎ぐいの建物の転倒対策に指針案|賃貸管理の確認点
目次

国土交通省住宅局建築指導課は2026年10月30日、「基礎ぐいを有する建築物の転倒に対する検証・改修指針(案)」の意見募集をe-Govで始めました。締切は11月29日9時30分です。令和6年能登半島地震で鉄筋コンクリート造の建物が転倒した被害を受けて、現行の杭の基準より前に建てられた建物について、転倒の可能性の調べ方と改修の方法をまとめた案です(e-Govの意見募集ページ)。この記事では、案に書かれている中身をそのまま整理し、古いRC造の賃貸マンションを管理している会社が今やっておけることをまとめます。

発表の中身

意見募集の対象は「基礎ぐいを有する建築物の転倒に対する検証・改修指針」の案です。所管は国土交通省住宅局建築指導課で、根拠法令は建築基準法施行令第38条第1項・第3項・第4項等とされています。法律で義務づけられた意見募集ではなく、任意の意見募集として行われています(e-Govの意見募集ページ)。

案の冒頭には、作られた理由が書かれています。令和6年能登半島地震では鉄筋コンクリート造の建物の転倒被害が生じ、国土交通省が令和7年12月23日に公表した原因分析の委員会の最終とりまとめ(国土交通省の報道発表)では、現行基準(平成13年国土交通省告示第1113号)より前の建物で、次の要因が重なると転倒の可能性が高まると示されました。

  • 地震のときに支持性能を失いやすい杭で、基礎が支えられていること
  • 上部の建物が、片側へ傾きやすい計画になっていること
  • 杭が支持力を失ったあと、地盤の支持力が足りずに大きく沈下すること

案は、転倒はまれな被害であり、現行基準より前の建物がすべてただちに危険だとはいえないとしています。そのうえで、安全性を確保する取り組みが必要だとして、(1)転倒の可能性を検証する方法、(2)可能性がある場合の改修の方法、の2つを整理しています。被害事例として示されているのは、1972年に建てられた高さ約28m・建物の幅約8.9mの鉄筋コンクリート造で、既製のコンクリート杭(PC杭)が使われていた建物です(指針案(PDF))。

また案には、2001年以降の杭の耐震設計が求められるようになってからの建物では、基礎ぐいを有する建物の転倒被害は報告されていないと書かれています。基礎や地盤が原因で沈下や傾きが出ているだけの建物も、転倒のリスクを減らすため、指針の条件を一つでも満たすよう検討しておくことが望ましいとされています。

日付と対象の一覧

項目内容
公示日2026年10月30日(受付開始 9時30分)
意見の締切2026年11月29日 9時30分
所管国土交通省 住宅局 建築指導課
根拠法令建築基準法施行令第38条第1項・第3項・第4項等
主な対象現行基準(平成13年国土交通省告示第1113号)より前に建てられた、基礎ぐいを有する既存の建物
所有者の義務案には、法律上の義務や報告の義務は書かれていません。調査と検討をしておくことが「望ましい」という書き方です
指針が決まる時期案には書かれておらず、まだ決まっていません

意見を出す前には、e-Govのページにある意見募集要領と案の全部を確かめるよう求められています(意見募集要領(Word))。

まず確かめる6つの条件(第1章)

案は検証を3段階に分けています。第1章は、転倒を防ぐのに役立つ条件に当てはまるかを調べ、優先して詳しく調べるべき建物を選ぶ段階です。条件は基礎について3つ、上部の建物について3つです。

区分条件案での扱い
基礎杭の耐震設計がされている杭の有害な損傷(状態2)を防ぐ条件
基礎粘り強さ(靭性能)の高い杭が使われている情報がない場合は既製コンクリート杭とみなす
基礎1階部分の全面に地下階がある一部の杭への負担の集中(状態3)に関わる条件
上部の建物塔状比(高さと幅の比)が2.5以下状態3に関わる条件
上部の建物柱の軸力の分担に偏りがない外側の柱の支点反力がゼロになる時点で比べる
上部の建物スパン数が3以上軸力を負担しない化粧柱などは数えない

案は、これらの条件は転倒を確実に防ぐことを保証するものではなく、調査の優先順位を決めるための情報だとしています。当てはまる条件が少ないほど転倒の可能性が高いと考えられ、調べられない項目は「当てはまらない」として扱います。設計図書がなく手に入れるのも難しい場合は、基礎の条件の調査を省いて上部の建物の調査に進められるとされています。

転倒の可能性の検証(第2章)

第1章の条件にどれも当てはまらない建物は、第2章で詳しく検証します。確かめ方は次のどちらかです。

  • 良好な地盤であることを確かめる: 杭の支持力を見込まずに、建物の底面で地盤が支えられるかを確かめる。転倒する側の杭の支持力は考えず、液状化を考えて地表面加速度を350galとする。
  • 基礎ぐいの性能を確かめる: 杭の耐震設計(一次設計)を満たすか、または大地震のときに一部の杭へ圧縮の負担が集中して大きく沈下しないかを確かめる。

このほか、動的FEMなどの詳しい解析で転倒しないことを確かめる方法もあり、その場合は第三者の評価を受けることが望ましいとされています。杭の情報がない場合は、既製コンクリート杭(φ350程度)と仮定して検討します。

改修の方法(第3章)

対策中身主に対応する状態
杭頭の補強パイルキャップの増し打ち、杭頭への鋼管巻き、杭頭まわりの地盤改良状態2(杭の有害な損傷)
増し杭建物の側面から新たに杭を足し、既存の杭の負担を軽くする状態2・状態3
減築上の階を撤去して塔状比を下げる状態3(一部の杭への負担の集中)
耐震改修耐震要素を足し、杭の負担を均等に近づける状態3
地盤改良(高圧噴射)建物の直下の地盤に固化材を噴射して改良体をつくる。建物の内外から施工できる状態4(大きな沈下)
地盤改良(深層・浅層)液状化対策として使われることが多い。既存の建物の支持力の確保としての実績は少ない状態4
1階床の構造床化杭の損傷は防げないが、沈下や傾きの進み方を緩める。地盤改良との併用を検討する状態4

賃貸管理の実務で何をするか

案はまだ確定しておらず、所有者に義務を課す書き方にもなっていません。そのうえで、管理を受けている会社が今のうちにできることは次のとおりです。

  1. 管理物件のうち、対象になりうる建物を拾い出す。構造が鉄筋コンクリート造などで、杭基礎の可能性があり、2001年より前に建てられた建物が目安になります。ウルスタくんでは物件ごとに構造と築年を登録しておけるので、物件一覧から候補を確かめられます。
  2. 設計図書(構造図・杭の資料)の有無をオーナーに確かめる。案では、杭の種類が分からなければ既製コンクリート杭とみなし、調べられない項目は当てはまらないとして扱います。図面があるかないかで、その後の調査の手間と結論が変わります。
  3. オーナーには「案が出た」ことを事実として伝える。案自身が、現行基準より前の建物がすべてただちに危険とはいえないとしています。伝えるときは、まだ案であること・義務ではないこと・決まる時期は未定であることを添え、危険だと言い切らないようにします。
  4. すでに沈下や傾きが見つかっている建物は、点検記録を整理しておく。案は、沈下や傾きが出ているだけの建物も、条件を一つでも満たすよう検討しておくことが望ましいとしています。建物の調査や改修の判断は、建築士などの専門家に相談する前提で記録をそろえます。
  5. 意見があれば11月29日9時30分までにe-Govから出す。オーナーや管理会社として、調査の費用や図面がない建物の扱いなどで意見がある場合は、意見募集ページから提出できます。

よくある質問

Q1. この指針で、オーナーに調査や改修の義務がかかりますか

案には、法律上の義務や報告の義務は書かれていません。現行基準より前の基礎ぐいを有する建物について、条件の調査と必要に応じた検討をしておくことが「望ましい」という書き方です。指針が確定したあとの扱いは、まだ決まっていません。

Q2. どんな建物が対象ですか

現行基準(平成13年国土交通省告示第1113号)より前に建てられた、基礎ぐいを有する建物が中心です。案の本文では階数や用途の範囲は示されていません。もとになった被害事例は、既製のコンクリート杭で支えられた鉄筋コンクリート造の建物です。

Q3. 古い建物はすべて危ないということですか

違います。案は、転倒はまれな被害で、現行基準より前の建物がすべてただちに危険とはいえないとしています。第1章の6つの条件は、詳しく調べる建物の優先順位を決めるためのものです。

Q4. 指針はいつ確定しますか

意見募集の締切は2026年11月29日9時30分ですが、確定や公表の時期は案にもe-Govのページにも書かれておらず、まだ決まっていません。

出典

この記事は 2026-11-02 時点の情報です。

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