総務省は2026年9月15日、令和9年度の固定資産税評価替えのための「固定資産評価基準の一部を改正する告示案」を地方財政審議会の固定資産評価分科会に諮り、9月16日から10月20日まで国民から意見を募集すると発表しました。家屋の柱は、いま建っている建物(在来分家屋)の評価替えに使う再建築費評点補正率を木造1.16、非木造1.20とすることです。令和6年度は木造1.11・非木造1.07でしたから、木造は3期続けて上がり、非木造は2期据え置いたあと一気に2割の上乗せになります。建築費が上がったのだから当然の数字ですが、賃貸オーナーの固定資産税がその分上がるわけではありません。評価基準には「新しく計算した評価額と令和8年度の価額の低い方をとる」据置措置があり、在来分の家屋の評価額が評価替えで上がることは制度上ありません。本稿が伝えたいのは逆のことです。「建物は毎年古くなるのだから、評価替えで固定資産税は下がるはず」というオーナーの期待が、令和9年度は多くの建物で外れます。RC造は築5年でも築55年でも据置になり、木造も築25年を超えると据置です。改正案の新旧対照表と経年減点補正率基準表の数字で構造・築年別に試算し、管理会社がオーナーに説明する順番に並べ直しました。昨日公表の都道府県地価調査(基準地価)が土地の評価にどうつながるかも、同じ告示案に書いてあります。
結論(90秒で読める)
- 総務省の告示案は、令和9年度評価替えで在来分家屋に使う再建築費評点補正率を木造1.16・非木造1.20とするものです。令和6年度は1.11・1.07、令和3年度は1.04・1.07でした。補正率は「基準年度間の工事原価に相当する費用の変動割合」を基礎に決まります(総務省の分科会資料)。
- それでも在来分家屋の評価額は上がりません。告示案の経過措置「三」は、令和9年度の在来分家屋の価額を「新しく求めた価額」と「令和8年度の価額」の低い方と定めています(据置措置)。この措置は令和11年度まで延長されます。
- 問題は「下がると思っていたのに下がらない」建物が多いことです。本稿の試算では、RC造(鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造)の住宅・アパートは築5年から築60年までどの築年でも据置。鉄骨造(肉厚4mm超)も築37年までほぼ据置。木造(第3区分)は築13年まで据置、築15〜25年は3〜14%下がり、築25年を超えると据置に戻ります。
- 家屋には土地のような負担調整措置が無く、評価額がそのまま課税標準です。標準税率1.4%(地方税法350条)に都市計画税が加わるので、「評価額が据置」は「税額が据置」とほぼ同じ意味です。
- 土地については、令和8年1月1日を価格調査基準日とする評価に対し、令和8年1月1日〜7月1日の下落だけを反映できる措置が入ります。その把握に使うのが昨日公表の都道府県地価調査(基準地価)です。上昇した地域の上昇分は令和9年度の評価に入りません。
- 意見募集は2026年9月16日(水)から10月20日(火)まで、e-Govの意見提出フォームか電子メール・郵送で。総務省は意見と分科会の意見を踏まえて「速やかに」改正するとしています。令和9年度の納税通知書は2027年4〜6月に届きます。
何が公表されたのか|告示案の中身は土地2点・家屋3点
固定資産税の評価は、地方税法388条により総務大臣が定めて告示する「固定資産評価基準」に従って市町村長が行います。総務大臣がこの基準を定めるときは地方財政審議会の意見を聴かなければならず(同条2項)、今回の分科会への諮問と意見募集はその手続きです。土地・家屋の価格は基準年度に決まり、原則として3年間据え置かれます(地方税法349条)。令和6〜8年度が現在の3年間で、令和9年度が次の基準年度(評価替え)です。総務省の報道資料が挙げる改正の概要は次の5点です。
| 区分 | 改正の概要(報道資料の言葉) | 賃貸オーナー・管理会社にとっての意味 |
|---|---|---|
| 土地(1) | 令和8年1月1日から令和8年7月1日までの半年間の地価の下落状況を評価額に反映することができる措置 | 価格調査基準日(令和8年1月1日)以降に下がった地域だけ評価額が修正される。上がった地域の上昇分は入らない |
| 土地(2) | 田、畑及び山林の指定市町村の一部を指定替え | 農地・山林の評価の基準となる市町村の入れ替え。賃貸住宅の実務には直接関係しない |
| 家屋(1) | 在来分家屋の再建築費評点補正率を木造1.16、非木造1.20とし、木造家屋経年減点補正率基準表の適用区分が変更されないよう所要の措置 | 建物の「いま建て直したらいくらか」を木造16%・非木造20%引き上げる。区分の閾値も同率で上げる |
| 家屋(2) | 評点一点当たりの価額に関する経過措置を令和11年度まで延長し、物価水準による補正率について一部の指定市の率を改正 | 評点を円に換える係数。新旧対照表では木造の盛岡市・福島市が0.90→0.95 |
| 家屋(3) | 価額の据置措置及び不均衡是正措置の経過措置を令和11年度まで延長 | 新しい評価額が令和8年度の価額を上回るときは令和8年度の価額のまま。これが本稿の主題 |
資料は3つです。報道資料(改正の概要・意見募集の期間)、別添の告示案(新旧対照表・12頁)、別紙の意見公募要領。分科会の会議資料は15日18時目途に総務省の分科会ページに掲載するとされていますが、本稿執筆時点(16日朝)では分科会ページの最新は第43回(2026年3月24日)のままでした。本稿は報道資料と新旧対照表の文言だけを使い、分科会での議論の中身は書いていません。
家屋の評価額はどう決まるか|3つの掛け算
告示案を読むには、家屋の評価額の作り方を先に押さえる必要があります。固定資産評価基準の家屋の評価は、実際の取引価格でも建築時の請負金額でもなく、「同じ建物をいま建て直したらいくらか」(再建築費)から、経過年数に応じた減価を引く方法です。在来分家屋(前の基準年度からすでに建っている建物)については、次の3つの掛け算になります。
| 要素 | 何を表すか | 今回の告示案で動くところ |
|---|---|---|
| 再建築費評点数 | 建物をいま建て直すのに要する費用を「点」で表したもの。在来分家屋は「前の基準年度の再建築費評点数×再建築費評点補正率」で求める | 再建築費評点補正率が木造1.16・非木造1.20(令和6年度は1.11・1.07) |
| 経年減点補正率 | 建築からの経過年数に応じた減価。構造・用途ごとの基準表(別表第9 木造・別表第13 非木造)で、初年度0.80から最終的に0.20まで下がる | 率そのものは変わらない。木造の適用区分を決める閾値(1㎡当たりの評点数)が1.16倍に |
| 評点一点当たりの価額 | 点を円に換える係数。1円×物価水準による補正率×設計管理費等による補正率 | 経過措置を令和11年度まで延長。木造の盛岡市・福島市が0.90→0.95 |
つまり評価額=再建築費評点数×経年減点補正率×評点一点当たりの価額です。再建築費評点補正率が1.20なら、経年減点補正率が変わらない限り新しい評価額は前の基準年度の1.20倍になります。そこに3年分の経年減価が乗り、さらに据置措置で令和8年度の価額と比べられる。この順番で読めば、「20%上がる」でも「古くなったから下がる」でもない答えが出ます。
再建築費評点補正率の推移|令和3年・6年・9年案
総務省の第41回分科会資料(令和6年度評価替えのとき)は、再建築費評点補正率を「木造・非木造の区分に応じて基準年度間の工事原価に相当する費用の変動割合を基礎として定めている」と説明しています。その新旧対照表と今回の新旧対照表から、3期分を並べます。
| 評価替え | 木造 | 非木造 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 1.04 | 1.07 | 令和6年度の新旧対照表の「現行」欄。非木造は「略」=据え置き |
| 令和6年度 | 1.11 | 1.07 | 木造だけ上げ、非木造は令和3年度の率のまま |
| 令和9年度(案) | 1.16 | 1.20 | 木造は3期連続で上げ幅拡大。非木造は2期据え置いたあと一気に2割 |
非木造1.20は、令和3年度・令和6年度の1.07を2回続けた分(1.07×1.07=1.14)を1期で超える数字です。RC造・鉄骨造の工事原価がこの3年でそれだけ動いたと総務省が見ている、ということです。工事の量と行き先については建築物リフォーム・リニューアル調査の記事で書きましたが、固定資産税の側からも同じ方向の数字が出てきました。
据置措置|評価額は「新しい計算」と「令和8年度の価額」の低い方
告示案の第2章第4節「三」は次のように定めます(新旧対照表の改正案欄。年度だけが令和6年度→令和9年度、令和5年度→令和8年度に置き換わっています)。
固定資産税に係る令和9年度における在来分の家屋の評価に限り、次に掲げるいずれかの低い価額によつてその価額を求めるものとする。(略)1 第1節から本節二までによつて求めた家屋の価額 2 当該家屋の令和8年度の価額(令和8年度の家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に価格として登録されたものをいう。)
「1」が再建築費評点補正率1.16/1.20を使って新しく求めた価額、「2」が令和8年度の課税台帳の価格です。低い方をとるので、評価替えで在来分家屋の評価額が上がることはありません。ただし書きで除かれるのは、令和9年1月1日に地方税法349条2項1号の事情(改築など。損壊その他これに類する特別の事情を除く)があり、それが令和8年1月2日以降に生じた家屋で、これは「1」の新しい価額によります。大規模な改築をした建物は据置の対象外、と読んでください。
「四」〜「六」は令和10年度・11年度の扱いと、市町村長が「著しく均衡を失する」と認める場合の不均衡是正で、いずれも現行の令和6〜8年度の規定の年度を3年ずらしたものです。報道資料はこれを「価額の据置措置及び不均衡是正措置の経過措置を令和11年度まで延長」と表現しています。
本稿の試算|構造・築年別に「据置」か「下がる」か
据置になるか下がるかは、「新しい価額÷令和8年度の価額」が1を超えるかどうかで決まります。令和8年度の価額が令和6年度の評価替えで求めた価額(再建築費評点数×経年減点補正率)だとすると、この比は補正率×経年減点補正率(経過年数+3年)÷経年減点補正率(経過年数)です。経年減点補正率は総務省が公開している固定資産評価基準の別表(住宅・アパート用建物)の値を使い、表にない年は前後の値から直線で補間しました。評点一点当たりの価額は盛岡市・福島市以外は変わらないので省いています。
| 構造(住宅・アパート用建物) | 令和8年度の経過年数→令和9年度 | 経年減点補正率 | 新価額÷令和8年度価額 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(補正率1.20) | 5年→8年 | 0.6825→0.6562 | 1.154 | 据置 |
| 20年→23年 | 0.5509→0.5246 | 1.143 | 据置 | |
| 35年→38年 | 0.4193→0.3930 | 1.125 | 据置 | |
| 55年→58年 | 0.2439→0.2176 | 1.070 | 据置 | |
| 鉄骨造・骨格材の肉厚4mm超(補正率1.20) | 15年→18年 | 0.5378→0.4973 | 1.110 | 据置 |
| 30年→33年 | 0.3351→0.2946 | 1.055 | 据置 | |
| 37年→40年 | 0.2406→0.2000 | 0.998 | ▲0.2% | |
| 鉄骨造・肉厚3mm以下(補正率1.20) | 12年→15年 | 0.4353→0.3471 | 0.957 | ▲4.3% |
| 17年→20年 | 0.2883→0.2000 | 0.833 | ▲16.7% | |
| 20年→23年 | 0.2000→0.2000 | 1.200 | 据置 | |
| 木造・第3区分(補正率1.16) | 10年→13年 | 0.54→0.47 | 1.010 | 据置 |
| 17年→20年 | 0.38→0.31 | 0.946 | ▲5.4% | |
| 22年→25年 | 0.27→0.20 | 0.859 | ▲14.1% | |
| 25年→28年 | 0.20→0.20 | 1.160 | 据置 | |
| 木造・第4区分(補正率1.16) | 20年→23年 | 0.43→0.39 | 1.052 | 据置 |
| 32年→35年 | 0.25→0.20 | 0.928 | ▲7.2% |
RC造の住宅・アパートは、築5年から築60年まで、どの築年でも据置です。RC造の経年減点補正率は60年かけて0.80から0.20まで下がる緩やかな表なので、3年分の減価は1〜3%台にしかならず、20%の上乗せを相殺できません。鉄骨造の肉厚4mm超(40年で0.20)も築37年まで据置です。逆に、減価が速い構造・区分ほど「下がる」が起きます。鉄骨造の肉厚3mm以下(20年で0.20)は築12〜20年で4〜17%、木造の第3区分(25年で0.20)は築15〜25年で3〜14%下がります。ただし最終の0.20に達すると減価が止まるので、木造も築25年を超えれば据置に戻ります。
この試算には前提が2つあります。1つは「令和8年度の価額が令和6年度の評価替えで求めた価額そのものである」こと。令和6年度の評価替えでもすでに据置になっていた建物(RC造の多く)は、令和8年度の価額がさらに古い価額なので、比はここに書いた値より大きく、据置がいっそう確実になります。もう1つは、木造の区分を「第3区分(1㎡当たり95,820点以上147,770点未満)」「第4区分(147,770点以上)」と置いたことで、自分の建物がどの区分かは市町村の家屋評価の資料(評価調書)でしか分かりません。木造の区分と1㎡当たりの評点数は、課税明細書には載っていないのが普通です。
管理会社がオーナーに伝える形にすると、次の3行です。RC造・重量鉄骨造は、令和9年度も税額が変わらない前提で収支を組む。軽量鉄骨造・木造の築15〜25年は下がる可能性があるが、幅は数%から十数%で、納税通知書を見るまで確定しない。築25年超の木造・築20年超の軽量鉄骨は、すでに減価の下限(0.20)なので下がらない。
木造の区分が変わらないための措置|閾値も1.16倍
木造家屋経年減点補正率基準表(別表第9)は、1㎡当たりの再建築費評点数で建物を4つの区分に分け、区分ごとに減価の速さを変えています(評点数が高い=造りが良い建物ほど、減価が遅い列を使う)。再建築費評点数を一律1.16倍にすると、評点数が閾値をまたいで上の区分(減価の遅い列)に移る建物が出て、評価替えのたびに減価の速さが変わってしまいます。そこで告示案は、閾値も同じ1.16倍にしました。
| 専用住宅・共同住宅等の区分(1㎡当たり再建築費評点数) | 現行(令和6年度) | 改正案(令和9年度) | 倍率(本稿の計算) |
|---|---|---|---|
| 第1区分と第2区分の境 | 61,190点 | 70,990点 | 1.160 |
| 第2区分と第3区分の境 | 95,820点 | 111,160点 | 1.160 |
| 第3区分と第4区分の境 | 147,770点 | 171,420点 | 1.160 |
報道資料の「個々の在来分家屋について木造家屋経年減点補正率基準表における適用区分が変更されないよう所要の措置を講じます」はこのことです。農家住宅・ホテル旅館・事務所店舗・工場倉庫・附属家などの区分も同じ考え方で閾値が上がっています。非木造の基準表(別表第13)は構造と用途で列が決まるので、閾値の話は出てきません。
評点一点当たりの価額|盛岡市・福島市は0.90→0.95
評点を円に換える「評点一点当たりの価額」は、経過措置で「1円×物価水準による補正率×設計管理費等による補正率」と定められ、この経過措置が令和11年度まで延長されます。物価水準による補正率は都道府県ごとの指定市(県庁所在地など)に率が定められ、指定市以外の市町村は原則として同じ県の指定市の率によります(市町村長が0.90から指定市の率までの範囲で別に定めることもできます)。
新旧対照表で見える変更は、木造の盛岡市0.90→0.95、福島市0.90→0.95の2つです(札幌市1.00、青森市・仙台市・秋田市・山形市・水戸市・宇都宮市・前橋市・さいたま市・千葉市0.95は変わらず。それ以外の指定市と非木造の表は新旧対照表で「略」=同左)。岩手県・福島県の木造家屋は、再建築費評点補正率1.16に0.95÷0.90=1.056が重なるので、新しい価額の計算上は1.224倍になります。据置措置があるので評価額が上がるわけではありませんが、「下がる」と見込んでいた木造の築15〜25年の建物が、この2県では下がらない側に回ることがあります。
土地|令和8年1月1日から7月1日までの下落だけ修正
土地の改正は1点だけで、第1章第12節「二」の年度を置き換えるものです。令和9年度の宅地の評価では、市町村長が令和8年1月1日から令和8年7月1日までの間に標準宅地等の価額が下落したと認める場合に、評価額に修正を加えることができる。その把握には「国土利用計画法施行令による都道府県地価調査及び不動産鑑定士等による鑑定評価等を活用」する、とあります。
これは昨日の記事で書いた「基準地価が上がったから来年の固定資産税が上がる、は順序が逆」の、告示案側の裏付けです。令和9年度の土地の評価は令和8年1月1日の価格(地価公示価格等の7割目途)が基準で、7月1日までの下落だけが修正の対象。上昇分は令和9年度の評価には入りません。住宅地が下落した24道県の管理会社は、市町村がこの修正を使うかどうかで土地の評価額が変わりますが、それは市町村の判断で、告示案は「できる」と書いているだけです。土地の税額には別途負担調整措置があるので、評価額の動きがそのまま税額の動きにはなりません。路線価の記事に書いた地価の3つの物差し(公示・基準地・路線価)と固定資産税評価額の関係は、ここでも同じです。
管理会社が今週やる5つ
| やること | どうやるか | 何のために |
|---|---|---|
| 1. 管理物件を構造で3つに分ける | RC造・SRC造/重量鉄骨造(肉厚4mm超)/軽量鉄骨造・木造。登記事項証明書か建築確認の構造欄で確認 | 令和9年度の家屋の評価額が「据置」か「下がる可能性あり」かは、構造でほぼ決まる |
| 2. 令和8年度の課税明細書を預かる | オーナーに4〜6月に届いた納税通知書の課税明細書のコピーを依頼。家屋の「価格」と「課税標準額」が同じであることを確認 | 令和9年度の通知書と比べる基準。家屋は価格=課税標準額なので、据置なら税額も変わらない |
| 3. 収支表の固定資産税欄を直す | RC造・重量鉄骨造は「令和9年度も同額」、軽量鉄骨造・木造の築15〜25年は「令和8年度の額(下がれば差額は利益)」と注記 | 「評価替えで下がる」を織り込んだ収支は、令和9年度に外れる |
| 4. 令和8年に改築した建物を別に書き出す | 令和8年1月2日以降に大規模な改築(増築・用途変更・構造に関わる工事)をした建物は据置の対象外。工事の内容と時期を控える | 据置の例外は349条2項1号の「改築その他これに類する特別の事情」。新しい価額で評価される |
| 5. 意見募集の期限(10月20日)を記録する | e-Govの意見提出フォームか総務省への電子メール・郵送。事業者としての意見なら法人名・代表者名・所在地・連絡先を明記 | 補正率の根拠や据置の運用に意見があるなら、告示の前に出す機会はここだけ |
2の課税明細書は、賃料改定の根拠にもなります。賃料増額交渉の記事で書いたとおり、借地借家法32条の「租税その他の負担の増減」は増額請求の事情の1つです。令和9年度の家屋の税額が据置なら「負担の増」は無いので、家賃の増額をこの理由で説明することはできません。逆に土地の評価が上がった地域では負担調整措置のもとで税額が段階的に上がるので、そこは通知書の土地の欄で確かめます。
オーナー報告書に足す2行
今月の報告書には、次の2行を入れることを勧めます。
令和9年度(2027年度)は固定資産税の評価替えの年です。総務省の改正案では建物の再建築費の係数が木造1.16・非木造1.20と大きく上がりますが、「新しい評価額と令和8年度の価額の低い方」をとる据置措置があるため、建物の評価額・税額が上がることはありません。
一方で、RC造の建物は築年にかかわらず令和8年度と同額のまま、木造は築15〜25年で数%〜十数%下がる可能性がある、というのが改正案の数字から出る見込みです(本物件は【構造】造・築【年】年)。確定は令和9年4〜6月の納税通知書で、届きましたら課税明細書のコピーをお預かりします。
「上がりません」と「下がりません」を同じ段落で言うのが要点です。どちらか一方だけを書くと、オーナーは「では下がるのか」「では上がるのか」と反対側を想像します。固定資産税の6月納付の記事で提案した月次報告の型に、この2行を足してください。
この告示案が言っていないこと
告示案は評価の「基準」で、個々の建物の評価額を示すものではありません。市町村がどの建物にどの区分・どの経過年数を当てているかは市町村の評価調書にあり、本稿の試算は基準表の値と標準的な当てはめによる見込みです。令和7年・8年に新築された家屋(新増分家屋)は、再建築費評点補正率ではなく評点基準表そのものの改定で評価されますが、その内容は今回の報道資料の対象外で、本稿でも書いていません。非木造の物価水準による補正率が変わるかどうかは、新旧対照表の該当部分が「略」なので分かりません。分科会での議論、意見募集の結果、告示の日付は未確定です。都市計画税の税率は市町村ごとで(上限0.3%)、本稿は税額の計算をしていません。「税額が変わらない」は評価額の話で、市町村が税率を変えれば税額は動きます。
よくある質問
Q1. 再建築費評点補正率が1.20なら、非木造の建物の固定資産税は2割上がるのですか?
上がりません。告示案の経過措置「三」により、令和9年度の在来分家屋の価額は「新しく求めた価額」と「令和8年度の価額」の低い方です。補正率で新しい価額が上がっても、令和8年度の価額を超える部分は切り捨てられます。例外は令和8年1月2日以降に改築などの事情が生じた家屋です。
Q2. では、築年が進んだ分は下がりますか?
構造と築年によります。本稿の試算では、RC造の住宅・アパートはどの築年でも新しい価額が令和8年度の価額を上回るので据置(下がらない)です。木造の第3区分は築15〜25年で3〜14%、軽量鉄骨造(肉厚3mm以下)は築12〜20年で4〜17%下がりますが、減価の下限(経年減点補正率0.20)に達した建物は下がりません。確定は納税通知書です。
Q3. 令和6年度の評価替えでも評価額が下がらなかったのですが、同じことですか?
同じ仕組みです。令和6年度は非木造1.07・木造1.11で、RC造の多くはそのときも据置でした。令和9年度は非木造が1.20なので、据置になる建物の範囲は令和6年度より広がります。令和6年度に据置だった建物は、令和8年度の価額がさらに古い基準年度の価額なので、令和9年度に下がる可能性はいっそう小さくなります。
Q4. 家屋にも土地のような負担調整措置はありますか?
ありません。負担調整措置は土地の課税標準額を段階的に近づける仕組みで、家屋は評価額(価格)がそのまま課税標準額です。課税明細書の家屋の欄で「価格」と「課税標準額」が同じ数字になっているのはそのためです。新築住宅の税額の減額(一定期間2分の1)は別の仕組みで、課税標準ではなく税額を減らします。
Q5. 評価額に納得できないときは、どうすればよいですか?
地方税法432条により、納税者は課税台帳に登録された価格について、納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までに固定資産評価審査委員会に審査の申出ができます。評価替えの年度(令和9年度)は土地・家屋とも価格が新しく決まるので、申出の対象になります。申出の前に、市町村の資産税課で自分の建物の評価調書(構造・区分・経過年数・再建築費評点数)の閲覧を求めるのが順序です。
Q6. 意見募集には誰でも意見を出せますか?
出せます。期間は2026年9月16日(水)から10月20日(火)まで。e-Govの意見提出フォームが原則で、電子メール(総務省自治税務局資産評価室)と郵送も受け付けます。法人・団体は名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地、連絡先を明記し、日本語で書きます。e-Govから提出できるファイルは4MBまでです。
まとめ
総務省の固定資産評価基準の改正案は、令和9年度評価替えの再建築費評点補正率を木造1.16・非木造1.20とし、据置措置と評点一点当たりの価額の経過措置を令和11年度まで延長し、土地は令和8年1月1日から7月1日までの下落だけを修正できるようにするものです。在来分家屋の評価額は据置措置で上がりませんが、RC造はどの築年でも、木造も築25年超は「下がらない」側に回ります。管理会社の仕事は、管理物件を構造で3つに分け、令和8年度の課税明細書を預かり、収支表の固定資産税欄を「据置」前提に直し、令和8年に改築した建物を別に書き出し、10月20日の意見募集の期限を控えることです。報告書には「上がりません」と「下がりません」を同じ段落で書いてください。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月16日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。PDFはブラウザ内で全文を展開して読み、条文はe-Gov法令検索の該当条のみを取得して読みました。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
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| 2026年9月15日に地方財政審議会固定資産評価分科会に意見を聴いた旨、意見募集期間(令和8年9月16日〜10月20日)、改正の概要(土地:下落地域の修正・指定市町村の変更、家屋:再建築費評点補正率 木造1.16・非木造1.20と適用区分の措置、評点一点当たりの価額の経過措置の延長と一部指定市の率の改正、据置措置・不均衡是正措置の延長)、分科会資料の掲載予定、今後の予定 | 総務省 報道資料「固定資産評価基準の一部を改正する告示案に係る地方財政審議会第44回固定資産評価分科会会議資料及び意見募集」(令和8年9月15日) |
| 土地 第1章第12節二(令和8年1月1日〜7月1日の下落の修正、都道府県地価調査・鑑定評価の活用)、家屋 第2章第4節一(再建築費評点補正率 木造1.16・非木造1.20、現行1.11・1.07)、二(令和9〜11年度の評点一点当たりの価額、物価水準による補正率、盛岡市・福島市0.90→0.95)、三(令和9年度の在来分家屋は新価額と令和8年度の価額の低い方、改築等の例外)、四〜六(令和10・11年度の据置と不均衡是正)、別表第9の区分の閾値(70,990・111,160・171,420点、現行61,190・95,820・147,770点) | 総務省「固定資産評価基準の一部を改正する告示案」(新旧対照表・PDF 12頁) |
| 意見の提出方法(e-Govの意見提出フォーム、電子メール、郵送)、記載事項(氏名・住所、法人は名称・代表者氏名・主たる事務所の所在地、連絡先)、日本語で記入、e-Govのファイルサイズ4MBまで | 総務省「意見公募要領」(別紙・PDF) |
| 令和6年度評価替えの改正理由「再建築費評点補正率は…基準年度間の工事原価に相当する費用の変動割合を基礎として定めている」、新旧対照表(木造1.04→1.11、非木造は略)、適用区分が変更されないための措置 | 総務省 地方財政審議会第41回固定資産評価分科会「審議事項」(令和5年9月19日・PDF) |
| 第41回分科会の開催日・配付資料の一覧、分科会ページの最新回(第43回・2026年3月24日) | 総務省 地方財政審議会「分科会」 |
| 別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表の1(専用住宅、共同住宅、寄宿舎及び併用住宅用建物)の各区分の率、別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準表の2(住宅、アパート用建物)の各構造の率(初年度0.80、最終0.20) | 総務省「固定資産評価基準 第2章 家屋」(PDF) |
| 349条1項(基準年度の価格を課税標準)・2項(第二年度は基準年度の価格、ただし1号 地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情)・3項(第三年度)、350条1項(標準税率1.4%)、388条1項・2項(総務大臣が固定資産評価基準を告示、地方財政審議会の意見を聴く)、432条1項(納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までの審査の申出) | 地方税法(昭和25年法律第226号)|e-Gov法令検索 |
本稿の計算:補正率の3期の並べ方、「新価額÷令和8年度価額=補正率×経年減点補正率(経過年数+3)÷経年減点補正率(経過年数)」による構造・築年別の試算(表にない年は直線で補間)、閾値の倍率1.160、盛岡市・福島市の1.224、「今週やる5つ」「報告書の2行」は、資料の数字から本稿が出した整理です。分科会での議論、新増分家屋の評点基準表、非木造の物価水準による補正率の変更の有無、市町村ごとの税額は資料に無いので書いていません。