国土交通省は2026年9月10日、「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和8年度第1四半期受注分)」を公表しました。2026年4月から6月までに、建設業の許可業者が元請けとして受注した既存建築物の改修・修繕工事を、5,000業者への調査から推計したものです。合計は5兆427億円で前年同期比22.8%増と、見出しだけ読めば好調です。ただ、住宅に係る工事は1兆807億円で7.6%減、非住宅建築物は3兆9,619億円で34.9%増でした。住宅の減少は第1四半期として2年連続です。賃貸管理会社にとってこの統計が意味を持つのは、市場規模ではなく、原状回復や共用部の修繕を頼んでいる職人が、いまどちらの仕事を受けているかが読めるからです。本稿は、公表された12枚の表から賃貸の実務に関係する数字を5つに絞り、出どころと計算を示したうえで、今月変える発注の手順を整理します。
結論(90秒で読める)
- 2026年4〜6月の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は5兆427億円(前年同期比22.8%増)。ただし住宅は1兆807億円で7.6%減、非住宅建築物は3兆9,619億円で34.9%増です。第1四半期の住宅は令和6年度11,966億円、令和7年度11,698億円、令和8年度10,807億円と2年続けて減っています。
- 住宅の減少の中心は共同住宅です。共同住宅は4,457億円で17.0%減、うち共用部分は1,877億円で31.2%減。発注者別では管理組合が1,476億円で36.2%減で、本稿の計算では住宅全体の減少額(約891億円)のほとんどが管理組合の発注減(約837億円)で説明できます。
- 賃貸オーナーにあたる「個人・非居住オーナー」の発注は753億円で3.5%増。内訳は改装・改修が553億円で13.9%増、維持・修理が187億円で17.0%減です。壊れてから直す工事が減り、計画して直す工事が増えた形です。
- 内装・塗装・防水・建具などの職別工事業は、住宅からの受注が2,072億円で29.8%減、非住宅からの受注が3,028億円で49.3%増。本稿の計算では、職別工事業の受注合計はほぼ横ばい(+2.4%)で、住宅の割合が59%から41%に下がりました。同じ職人が、住宅から事務所や工場へ動いています。管工事業も同じ向きです(住宅26.4%減・非住宅52.0%増)。
- 住宅の工事件数171万件のうち92.6%は「劣化や壊れた部位の更新・修繕」で、部位は給水給湯排水衛生器具設備が49万件で最多(28.7%)。賃貸管理会社が日々出している発注は、この統計の中心にいます。
- 管理会社が今月変えるのは、退去予告の時点で工事の枠を仮押さえすること、共用部の修繕を「壊れてから」から「四半期ごとの計画」に移すこと、見積りの労務費内訳を改正建設業法にそって読むこと、オーナー報告書に「職人の行き先」を1行入れることの4点と、次の公表(12月中旬)を予定に入れることです。
何の調査か|元請受注ベース・5,000業者・四半期
建築物リフォーム・リニューアル調査は、統計法にもとづく一般統計調査で、国土交通省総合政策局が平成20年から続けています。建設業許可業者のうち、リフォーム・リニューアル工事の受注が多い17業種(一般土木建築、建築、木造建築、大工、屋根、塗装、ガラス、建具、防水、内装、管、電気、機械器具設置など)を対象に、住宅調査で約3,000業者、非住宅調査で約2,000業者を業種と規模で層化して無作為に抽出し、四半期ごとに元請けとして受注した工事の件数と額を聞きます。今回の回収は住宅調査が3,000業者中1,765業者、非住宅調査が2,000業者中1,331業者でした。
読むときに押さえる定義が3つあります。第1に、受注ベースです。4〜6月に契約した工事の額で、完成した工事ではありません。第2に、元請けの受注だけです。下請け工事は数えないので、管理会社がリフォーム会社に頼み、その会社が内装業者に出した仕事は、リフォーム会社の受注として1回だけ数えられます。第3に、対象外の工事があります。新築、別棟の増築、全面改築、点検、清掃、窓や壁に単体で付けるルームエアコンは入りません。エアコンの交換だけを頼んだ仕事は、この統計の外です。工事の種類は、増築、一部改築、改装・改修(模様替え、間取り変更、設備更新など機能や耐久性を上げる工事)、維持・修理(壊れた部分や劣化した部材の交換で、機能向上を意図しない工事)の4つに分かれます。原状回復の内装張替えは、多くが維持・修理か改装・改修のどちらかに入ります。
資料の利用上の注意には「受注件数・受注高の少ない集計区分等では、誤差が大きくなる場合がある」とあります。本稿で扱う数字のうち、住宅全体や共同住宅は大きな区分ですが、「非居住オーナー」の維持・修理187億円のような小さな区分は、四半期の増減率をそのまま信じないほうがよい、という前提で読みます。
数字1|住宅1兆807億円(7.6%減)、非住宅3兆9,619億円(34.9%増)
第1四半期(4〜6月)だけを5年分並べます。記者発表資料の棒グラフから数字を拾い、直近3年は表1-1の前年同期比と突き合わせました。
| 第1四半期(4〜6月) | 住宅(億円) | 前年同期比 | 非住宅建築物(億円) | 前年同期比 | 住宅の割合(本稿の計算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 9,100 | - | 18,927 | - | 32.5% |
| 令和5年度 | 11,471 | - | 23,037 | - | 33.2% |
| 令和6年度 | 11,966 | +4.3% | 26,214 | +13.8% | 31.3% |
| 令和7年度 | 11,698 | −2.2% | 29,371 | +12.0% | 28.5% |
| 令和8年度 | 10,807 | −7.6% | 39,619 | +34.9% | 21.4% |
4年間で非住宅は2.09倍、住宅は1.19倍です(本稿の計算)。住宅の額そのものは令和4年度より多いので、「住宅のリフォームが冷え込んだ」と読むのは行き過ぎです。読むべきは割合です。リフォーム・リニューアル工事に占める住宅の割合は、4年で32.5%から21.4%に下がりました。建設業者の側から見れば、同じ会社が受ける仕事の5件に4件が非住宅になった、ということです。非住宅の内訳は、事務所9,329億円(62.9%増)、生産施設(工場・作業場)9,658億円(53.3%増)、物販店舗3,667億円(48.2%増)、医療施設1,807億円(68.8%増)で、発注者は民間企業等が3兆1,390億円(40.4%増)です。企業の設備投資が、建設業者の手を住宅から引き抜いている構図です。
住宅の受注件数は171万402件で6.3%減、額は7.6%減なので、1件あたりの受注高は約64.1万円から約63.2万円へ、わずかに下がりました(本稿の計算)。件数が減った分だけ額が減った、単価は動いていない、という読み方になります。改装・改修は53万件で8,052億円(1件あたり約151万円)、維持・修理は117万件で2,280億円(同約20万円)です。管理会社が日常的に出している退去後の補修や設備交換は、後者の「117万件・20万円」の世界にいます。
数字2|共同住宅の共用部が31.2%減、管理組合の発注が36.2%減
住宅1兆807億円を用途で分けると、一戸建住宅6,155億円(0.1%増)、共同住宅4,457億円(17.0%減)、店舗等併用住宅147億円、長屋建48億円です。減ったのは共同住宅だけで、その内訳が次の表です。
| 共同住宅の工事部分 | 受注高(億円) | 前年同期比 | うちコンクリート系構造 |
|---|---|---|---|
| 専有・専用部分 | 1,803 | +0.2% | 1,491(−1.3%) |
| 共用部分 | 1,877 | −31.2% | 1,686(−34.0%) |
| 専有・専用部分と共用部分の両方 | 777 | −7.5% | 706(−8.8%) |
| 共同住宅 計 | 4,457 | −17.0% | 3,883(−19.8%) |
専有部分(部屋の中)の工事は横ばいで、共用部分(外壁・屋上・廊下・給排水の本管など)が3割減っています。発注者別に見ると理由が見えます。住宅の発注者のうち管理組合は1,476億円で36.2%減、その中の改装・改修が1,254億円で40.4%減です。本稿の計算では、共用部分の前年同期は約2,728億円で減少幅は約851億円、管理組合の前年同期は約2,313億円で減少幅は約837億円、住宅全体の減少幅は約891億円です。区分ごとに独立して推計しているので厳密には足し引きできませんが、住宅のリフォーム受注が減った分のほとんどは、分譲マンションの管理組合が大規模修繕の発注を減らした分で説明がつきます。
これは賃貸管理会社にとって2つの意味があります。1つは、分譲マンションの区分所有の部屋を賃貸で預かっている場合、建物の大規模修繕が先送りされている可能性が数字に出ている、ということです。修繕積立金の不足と工事費の上昇で総会の決議が通らない事情は修繕積立金と大規模修繕の記事に書きました。もう1つは、管理組合が発注を減らした分、外壁・防水・屋上の職人の手が一時的に空いている可能性がある、ということです。ただし次の数字4で見るとおり、その手は非住宅に向かっています。
数字3|非居住オーナーは改装13.9%増・維持修理17.0%減
この調査は賃貸と分譲を分けていませんが、発注者の区分に「個人・非居住オーナー」があります。自分が住んでいない住宅の工事を個人が発注したもので、賃貸オーナーと空き家の所有者がここに入ります。法人オーナーは「民間企業等」に入ります。
| 住宅の発注者 | 受注高(億円) | 前年同期比 | うち改装・改修 | うち維持・修理 |
|---|---|---|---|---|
| 個人・居住者 | 6,574 | −1.2% | 4,728(−0.5%) | 1,390(−6.6%) |
| 個人・非居住オーナー | 753 | +3.5% | 553(+13.9%) | 187(−17.0%) |
| 管理組合 | 1,476 | −36.2% | 1,254(−40.4%) | 221(+9.9%) |
| 民間企業等 | 1,378 | −0.8% | 1,003(−6.0%) | 368(+27.0%) |
| 公共 | 626 | +2.0% | 513(+0.4%) | 113(+11.0%) |
非居住オーナーの発注は住宅全体の7.0%(本稿の計算)と小さく、四半期の増減率には誤差が乗ります。それでも向きは読めます。改装・改修(設備更新、間取り変更、内装の模様替え)が増え、維持・修理(壊れた部分の交換)が減っています。空室対策として計画的に手を入れるオーナーが増え、壊れてから直す発注が減った、と読むのが素直です。法人オーナーを含む民間企業等は逆で、改装・改修が6.0%減、維持・修理が27.0%増です。法人は投資を絞り、壊れたものだけ直している、という向きになります。
管理会社の側で使うなら、オーナーへの修繕提案の言い方が変わります。「壊れました、直します」の維持・修理の発注が全国で減っている中で、個人オーナーは計画的な改装に金を出しています。設備更新を「故障の連絡」ではなく「年間の計画」として出す会社が、この数字と同じ向きにいます。提案の組み立ては修繕費のオーナー説明に、故障を放置したときの賃料減額の扱いは設備故障の賃料減額リスクに書きました。
数字4|職別工事業は住宅29.8%減・非住宅49.3%増
本稿で一番重要な表です。調査は建設業者を6業種に分けています。職別工事業とは、大工、屋根、金属製屋根、塗装、ガラス、建具、防水、内装の各工事業のことで、賃貸管理会社が原状回復や外壁・屋上の修繕で直接付き合う業種がほぼここに集まります。管工事業は給排水・給湯・ガスの配管です。
| 業種 | 住宅(億円) | 前年同期比 | 非住宅(億円) | 前年同期比 | 住宅の割合 前年→今期(本稿の計算) |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築工事業 | 6,800 | +4.6% | 11,007 | +12.1% | 39.8% → 38.2% |
| 職別工事業(内装・塗装・防水・建具など) | 2,072 | −29.8% | 3,028 | +49.3% | 59.3% → 40.6% |
| 管工事業(給排水・給湯・ガス) | 966 | −26.4% | 7,213 | +52.0% | 21.7% → 11.8% |
| 電気・機械器具設置工事業 | 505 | −18.5% | 9,878 | +37.4% | 7.9% → 4.9% |
| 一般土木建築工事業 | 436 | +47.8% | 8,493 | +69.0% | 5.5% → 4.9% |
職別工事業の受注を住宅と非住宅で足すと、今期5,100億円、前年同期4,980億円で2.4%増です(本稿の計算)。仕事の総量はほぼ変わらず、住宅の割合が59.3%から40.6%へ、1四半期で19ポイント下がりました。管工事業は合計が35.0%増えたうえで、住宅の割合が21.7%から11.8%に半減しています。数字が示しているのは、内装屋・塗装屋・防水屋・配管屋が仕事を失ったのではなく、事務所と工場の仕事を優先して受けるようになった、ということです。住宅の側から見れば、同じ職人に頼んでいるのに、順番が後ろに回されている状態です。
管理会社が現場で感じている「見積りが遅い」「着工が1か月先」「小さい仕事は断られる」は、この表の裏返しです。非住宅の工事は1件が大きく、事務所改修は9,329億円を年間ではなく四半期で受注しています。1件20万円の維持・修理を117万件こなす住宅の仕事より、職人の側の採算がよいのは当然です。改正建設業法で、著しく低い労務費による見積り依頼が禁止され、見積書に材料費・労務費・経費の内訳を示すことになった経緯は改正建設業法と修繕の見積りに書きました。労務費を値切って住宅の仕事を取りに行く余地は、法律の面でも数字の面でも、もうありません。
数字5|件数の92.6%は「劣化・故障の更新」、部位は給排水が最多
住宅の工事171万件を目的別(複数回答)に見ると、「劣化や壊れた部位の更新・修繕」が158万3,823件で92.6%(本稿の計算)を占め、前年同期比6.8%減です。省エネルギー対策が10万9,399件(4.9%増)、高齢者・身体障害者対応が1万8,153件(12.5%増)、防災・防犯・安全性向上が1万8,299件(9.9%減)、耐震性向上が3,830件(32.9%減)です。
部位別(複数回答)は次のとおりです。
| 工事部位(住宅) | 受注件数 | 前年同期比 | 件数に占める割合(本稿の計算) |
|---|---|---|---|
| 給水給湯排水衛生器具設備 | 490,389 | −11.7% | 28.7% |
| 内装 | 339,286 | −13.7% | 19.8% |
| 建具 | 301,324 | +0.2% | 17.6% |
| 電気設備 | 167,063 | +1.0% | 9.8% |
| 屋根 | 154,238 | −10.6% | 9.0% |
| 外壁 | 133,308 | −14.0% | 7.8% |
| 空気調和換気設備 | 113,468 | −1.9% | 6.6% |
| 防災関連設備 | 19,378 | +25.0% | 1.1% |
| 太陽光発電設備 | 7,742 | +99.0% | 0.5% |
給湯器、水栓、便器、排水の詰まりといった水まわりが49万件で最多、次が内装34万件です。賃貸の退去後に出す工事は、ほぼこの2つに集中します。どちらも1割以上減っています。件数が減った理由は資料に書かれていません。壊れる設備が減ったわけではないので、発注が細かい仕事から順に受けてもらえなくなっているか、管理会社やオーナーが交換を先送りしているか、のどちらかです。増えているのは防災関連設備(25.0%増)と太陽光発電設備(2倍)で、補助金の対象になる工事です。建築の時期で見ると、住宅の受注高は1991〜2000年築が1,767億円で最も多く、2001〜2010年築1,383億円、2011年以降1,119億円、1981〜1990年築1,015億円と続きます。築25〜35年の建物が、いま一番手を入れられています。
この統計が言っていないこと
4つあります。第1に、額は名目です。工事費が上がれば件数が減っても額は保たれるので、7.6%減は「工事の量」の減少より小さく見えている可能性があります。第2に、賃貸と分譲の区別はありません。本稿は「非居住オーナー」と「管理組合」を手がかりに読み替えていますが、資料が賃貸住宅の数字を出しているわけではありません。第3に、都道府県別の表はありません。首都圏で職人が足りないのか地方でも同じかは、この資料からは分かりません。第4に、職人の人数や単価の推移は調査項目に無く、本稿の「職人が非住宅へ動いた」は受注高の構成の変化から本稿が読んだものです。工事費そのものの動きは建築着工統計7月分(貸家の1戸あたり工事費)を合わせて見てください。
管理会社が今月変える5つの手順
5つの数字を発注の手順に落とすと次のようになります。どれも次の公表(12月中旬)を待たずに始められます。
| 変えること | もとになる数字 | 具体的には |
|---|---|---|
| 退去予告を受けた時点で、内装と水まわりの工事枠を仮押さえする | 職別工事業 住宅−29.8%・非住宅+49.3%、内装−13.7%、給排水−11.7% | 退去立会いの日ではなく、解約通知が届いた日に施工会社へ「〇月〇日以降、1Kの原状回復1件」と枠だけ伝える。見積りは立会い後でよい。枠が取れない会社は、今のうちに2社目を作る |
| 共用部の修繕を「壊れてから」から「四半期の計画」に移す | 共用部−31.2%、管理組合−36.2% | 管理物件ごとに外壁・屋上・共用給排水の次回工事年を1枚の表にし、12月・3月・6月・9月の年4回、オーナーに「次の四半期に出す工事」を見せる。緊急の発注を減らすほど、職人の予定に乗りやすい |
| 見積書の労務費の内訳を読み、値切らずに時期で調整する | 改正建設業法(令和7年12月全面施行)、住宅1件あたり約63万円 | 材料費・労務費・経費の内訳が無い見積りは出し直しを頼む。労務費を下げる交渉はしない。金額を下げたいなら、繁忙期(3月)を避けて工期を職人に選ばせる |
| オーナーの修繕提案を「故障の連絡」から「年間計画」に変える | 非居住オーナー 改装・改修+13.9%・維持・修理−17.0% | 給湯器・エアコン・水栓の設置年を物件ごとに持ち、耐用の目安を過ぎたものは壊れる前に交換の提案を出す。個人オーナーは計画的な改装に金を出している |
| オーナー報告書に「職人の行き先」を1行入れる | 非住宅+34.9%、住宅の割合32.5%→21.4% | 「国交省の調査では、内装・塗装の職人の仕事の6割が非住宅に移っています。工事の予約は早めにお願いしています」と書く。着工が遅れたときの説明が、事後ではなく事前になる |
オーナー報告書に足す2行
数字を使うなら、次の2行で足ります。出典を付けて、四半期ごとに更新します。
国土交通省の建築物リフォーム・リニューアル調査(2026年4〜6月)では、住宅の改修・修繕の受注は前年同期比7.6%減、事務所や工場など非住宅は34.9%増でした。
内装・塗装・防水などの職別工事業は、住宅からの受注が29.8%減り、非住宅からの受注が49.3%増えています。工事の予約は退去予告の時点で入れ、設備は壊れる前に計画で交換する方針にしています。
この2行があると、「なぜ原状回復に3週間かかるのか」「なぜ壊れていない給湯器を替えるのか」というオーナーの疑問に、管理会社の都合ではなく市場の数字で答えられます。退去精算の手順そのものは原状回復・退去精算の実務に、価格交渉の進め方は価格交渉促進月間の記事にまとめてあります。
よくある質問
Q1. 住宅のリフォーム市場が縮んでいる、と読んでよいですか?
第1四半期だけを見れば2年続けて減っていますが、令和7年度は第2四半期13,429億円(32.5%増)、第4四半期11,655億円(27.0%増)と増えた四半期もあります。年度で見ると令和7年度は上半期13.7%増、下半期24.4%増でした。四半期の数字は振れるので、「縮んでいる」と言い切るには12月中旬に出る第2四半期の数字を待つ必要があります。本稿が確かだと考えているのは、額の増減ではなく「住宅の割合が下がり続けている」ことです。
Q2. 賃貸住宅の数字はどこに出ていますか?
出ていません。調査は住宅と非住宅、一戸建と共同住宅、発注者の種類で分けていますが、賃貸か分譲かは聞いていません。本稿は「個人・非居住オーナー」と「民間企業等」を賃貸オーナーの手がかりに、「管理組合」を分譲マンションの手がかりに読んでいます。
Q3. 職人が非住宅へ動いた、と資料に書いてありますか?
書いてありません。資料にあるのは、職別工事業の受注高が住宅で29.8%減、非住宅で49.3%増という2つの数字です。合計がほぼ横ばい(本稿の計算で2.4%増)なので、本稿は「仕事の総量は変わらず、行き先が変わった」と読みました。職人の人数や稼働率は調査項目にありません。
Q4. エアコンの交換はこの統計に入っていますか?
窓や壁に単体で取り付けるルームエアコンは調査対象外です。空気調和換気設備の11万3,468件は、換気設備や建物に組み込む空調が中心です。賃貸のエアコン交換の需給は、この統計ではなくエアコン2027年問題の記事で扱った省エネ基準の改定から読んでください。
Q5. 管理組合の発注が36.2%減ったのは、修繕積立金が足りないからですか?
資料は理由を書いていません。管理組合の改装・改修が40.4%減で維持・修理が9.9%増という組み合わせは、計画修繕を先送りして壊れた部分だけ直している向きと整合しますが、四半期の数字で断定はできません。修繕積立金の不足と工事費の上昇の関係は別の記事に書きました。
Q6. 次はいつ出ますか?
第2四半期(7〜9月受注分)は12月中旬、第3四半期(10〜12月分)は翌年3月中旬、第4四半期と年度計は6月中旬の公表予定です。オーナー報告書の2行は、12月中旬に第2四半期の数字へ差し替えてください。
まとめ
国土交通省が9月10日に公表した建築物リフォーム・リニューアル調査は、住宅のリフォーム受注が2026年4〜6月に1兆807億円で7.6%減、非住宅が3兆9,619億円で34.9%増だったことを示しています。住宅の減少のほとんどは管理組合の発注減で、共用部は31.2%減。内装・塗装・防水・建具の職別工事業は住宅29.8%減・非住宅49.3%増で、仕事の総量は変わらないまま行き先が住宅から離れています。賃貸管理会社ができるのは、退去予告の時点で工事枠を押さえること、共用部の修繕を四半期の計画に移すこと、見積りの労務費を値切らず時期で調整すること、設備を壊れる前に計画で替える提案に変えること、そしてオーナー報告書に職人の行き先を1行入れることです。次の数字は12月中旬に出ます。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月14日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 公表日2026年9月10日、調査対象5,000業者、受注高合計5兆427億円(22.8%増)、住宅1兆807億円(7.6%減)、非住宅3兆9,619億円(34.9%増)、Excel・PDFの所在 | 国土交通省 報道発表「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和8年度第1四半期受注分)」(2026年9月10日) |
| 第1四半期の受注高の推移(住宅 令和4年度9,100〜令和8年度10,807億円、非住宅18,927〜39,619億円) | 同 記者発表資料(PDF・4頁) |
| 表1-1 受注高の推移、表1-2 工事種類別の件数・受注高、表1-3・1-4 業種別の受注高(住宅・非住宅)、表2-1 用途・構造別(共同住宅の専有・共用の内訳、事務所・生産施設など)、表2-2 発注者別(居住者・非居住オーナー・管理組合・民間企業等・公共)、表2-3 工事目的別件数、表2-4 工事部位別件数、表2-5 建築の時期別受注高、参考表1-1・1-2 調査対象数と回収数 | 同 令和8年度第1四半期受注分 調査報告データ(Excel・12シート) |
| 調査の目的・沿革、統計法にもとづく一般統計調査、対象17業種と6業種への区分、住宅調査約3,000業者・非住宅調査約2,000業者の層化無作為抽出、四半期の調査時期、調査事項 | 国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査の概要」 |
| 工事種類4区分の定義(増築・一部改築・改装・改修・維持・修理)、調査対象外の工事(下請・新築・点検・清掃・ルームエアコン単体など)、元請工事の定義、利用上の注意(独立推計・母集団推計の誤差)、公表予定(Q1は9月中旬・Q2は12月中旬・Q3は3月中旬・Q4と年度計は6月中旬) | 国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査を利用するにあたっての参考情報」 |
本稿の計算:住宅の割合(32.5%→21.4%)、4年間の倍率(非住宅2.09倍・住宅1.19倍)、共用部・管理組合・住宅全体の減少幅(約851億円・約837億円・約891億円)、職別工事業と管工事業の住宅+非住宅の合計と住宅の割合(59.3%→40.6%、21.7%→11.8%)、住宅1件あたりの受注高(約64.1万円→約63.2万円、維持・修理約20万円、改装・改修約151万円)、目的・部位の件数割合(92.6%、28.7%など)、非居住オーナーの割合7.0%、回収率は、資料の数字から本稿が出したものです。「職人が非住宅へ動いた」という読み方、5つの手順、報告書の2行は本稿の整理です。賃貸と分譲の区別、都道府県別の数字、職人の人数と単価は資料に無いので書いていません。

