国土交通省は2026年9月15日、令和8年都道府県地価調査(いわゆる基準地価)を公表しました。全国21,466地点について各都道府県知事が2026年7月1日時点の1㎡当たりの価格を判定したもので、全用途平均は前年比+1.5%と5年連続の上昇、住宅地は+1.0%、商業地は+2.9%です。上昇幅は、全用途平均と住宅地が前年と同じ、商業地は前年の+2.8%から広がりました。東京圏と大阪圏は3用途とも上昇幅が拡大し、名古屋圏と地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)は縮小しています。本稿は、この調査を「地価が上がった」というニュースとしてではなく、中小の賃貸管理会社・仲介会社が来年の固定資産税、賃料改定の説明、媒介価額の根拠に使う数字として読みます。47都道府県の住宅地・商業地の変動率を一覧にし、令和9年度の固定資産税評価替えとの関係を総務省の通知で、賃料と媒介との関係を条文で確かめました。なお、今回の調査には令和8年熊本地震と令和8年8月千葉豪雨の影響は反映されていません。
結論(90秒で読める)
- 令和8年都道府県地価調査(2026年7月1日時点・21,466地点)は、全用途平均+1.5%、住宅地+1.0%、商業地+2.9%。全用途・住宅地・商業地とも5年連続の上昇で、商業地だけ上昇幅が広がりました(前年+2.8%)。
- 三大都市圏は全用途+4.4%(東京圏+5.4%、大阪圏+3.6%、名古屋圏+1.9%)。東京圏・大阪圏は3用途とも拡大、名古屋圏は3用途とも縮小。地方圏は+0.4%で、地方四市は+4.1%(前年+5.3%から縮小)、その他の地域は+0.2%です。
- 47都道府県を数えると、住宅地は上昇20都府県・横ばい3県・下落24道県(本稿の数え上げ)。商業地は上昇34・横ばい1・下落12です。住宅地の最大は東京都+5.8%、次いで沖縄県+5.3%、千葉県+3.4%。最小は徳島県▲1.2%です。
- 地価公示との共通地点1,589地点で半年ごとに見ると、住宅地は8つの圏域すべてで「2026年1月〜7月」の上昇が「2025年7月〜2026年1月」より小さい。上昇は続いていますが、勢いは前半より弱まっています。
- 管理会社の実務につながるのは3つです。(1)令和9年度の固定資産税評価替えは令和8年1月1日を価格調査基準日として地価公示価格等の7割を目途に評価し、その後の下落だけが修正されます(総務省通知)。今回の7月1日の数字は「1月からさらに上がったか、下がったか」を示す資料です。(2)賃料改定は借地借家法32条1項の「土地若しくは建物の価格の上昇」「租税その他の負担の増減」に当たる事情ですが、それだけで増額が正当になるわけではありません。(3)媒介価額は宅建業法34条の2第2項で根拠の明示が求められ、基準地価はその根拠の1つになりますが、基準地価は「標準価格」であって成約価格ではありません。
- 熊本地震(令和8年)と千葉豪雨(令和8年8月)の影響は反映されていません。個別地点の価格は9月16日に不動産情報ライブラリに掲載予定で、当日はつながりにくいと国土交通省が予告しています。
都道府県地価調査とは何か|地価公示との違い
都道府県地価調査は、国土利用計画法施行令9条に基づいて、各都道府県知事が毎年1回、不動産鑑定士の鑑定評価を求めて基準地の「標準価格」を判定し、公表するものです。価格時点は毎年7月1日。国土交通省は各都道府県の発表に合わせて全国の状況をとりまとめます。一方、地価公示は国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点で行うもので、両者は調査時期と地点で相互に補完する関係にあります。施行令9条3項は、基準地が公示区域内にあるときは公示価格を規準として判定すると定めているので、基準地価は公示価格と切り離された別の相場ではなく、同じ物差しの半年後の目盛りです。
標準価格は「自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格」で、建物や借地権などが無いものとして判定されます(施行令9条2項)。建物の付いた収益物件の価格でも、成約価格でもありません。この点は、あとで媒介と賃料の話をするときにもう一度戻ります。
今回の地点数は21,466(宅地21,050・林地416)で、福島第一原子力発電所の事故の影響による10地点は調査を休止しています。以下の集計に林地は含まれていません。
全国・圏域別の数字|全用途1.5%・住宅地1.0%・商業地2.9%
国土交通省の概要にある圏域別の対前年変動率を、令和7年と令和8年で並べます。
| 圏域 | 全用途平均 R7→R8 | 住宅地 R7→R8 | 商業地 R7→R8 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 1.5 → 1.5 | 1.0 → 1.0 | 2.8 → 2.9 | 5年連続上昇。商業地だけ拡大 |
| 三大都市圏 | 4.3 → 4.4 | 3.2 → 3.2 | 7.2 → 7.4 | 全用途・商業地が拡大、住宅地は同じ |
| 東京圏 | 5.3 → 5.4 | 3.9 → 4.0 | 8.7 → 8.9 | 3用途とも拡大 |
| 大阪圏 | 3.4 → 3.6 | 2.2 → 2.3 | 6.4 → 6.8 | 3用途とも拡大 |
| 名古屋圏 | 2.1 → 1.9 | 1.7 → 1.5 | 2.8 → 2.7 | 3用途とも縮小(2年連続) |
| 地方圏 | 0.4 → 0.4 | 0.1 → 0.1 | 1.0 → 0.9 | 4年連続上昇。商業地は縮小 |
| 地方四市(札幌・仙台・広島・福岡) | 5.3 → 4.1 | 4.1 → 2.9 | 7.3 → 6.0 | 3用途とも縮小(住宅地は令和5年7.5%が頂点) |
| その他の地域 | 0.2 → 0.2 | 0.0 → 0.0 | 0.6 → 0.7 | 住宅地は2年連続で0.0 |
全国の住宅地+1.0%は、東京圏+4.0%と「その他の地域」0.0%の平均です。地方四市を除いた「その他の地域」の住宅地は、令和6年の▲0.1%から令和7年に0.0%へ戻り、今年もそのままです。「全国で地価が上がっている」という見出しは、中小の管理会社の多くが物件を持つ地方圏の住宅地には当てはまりません。上がっているのは三大都市圏と地方四市、それにあとで見るリゾート地と半導体工場の周辺です。
用途別の特徴として国土交通省が挙げているのは、住宅地では堅調な住宅需要(特に東京圏・大阪圏の中心部)、別荘・コンドミニアム・移住者・従業員向け住宅の需要があるリゾート地域、子育て環境が整い転入者が多い地域の3つ。商業地では店舗・ホテル需要とオフィスの空室率低下・賃料上昇による収益性の向上、インバウンドの観光地、再開発、マンション需要との競合の4つです。工業地は全国+3.3%で、半導体工場の進出地域と、高速道路へのアクセスが良い物流施設用地が高い上昇を続けています。令和6年能登半島地震で大きな被害を受けた地域は下落が続いています。
47都道府県の変動率一覧|住宅地は上昇20・横ばい3・下落24
概要の表から、47都道府県の住宅地と商業地の対前年変動率を令和7年・令和8年で転記しました(単位%、▲は下落)。自社の県と、オーナーが土地を持つ県を探してください。
| 都道府県 | 住宅地 R7 | 住宅地 R8 | 商業地 R7 | 商業地 R8 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | ▲0.2 | ▲0.3 | 0.6 | 0.6 |
| 青森県 | ▲0.4 | ▲0.5 | ▲0.5 | ▲0.4 |
| 岩手県 | ▲0.2 | ▲0.7 | ▲0.9 | ▲0.9 |
| 宮城県 | 0.9 | 0.0 | 4.0 | 2.9 |
| 秋田県 | ▲0.4 | ▲0.4 | 0.0 | 0.1 |
| 山形県 | ▲0.2 | ▲0.5 | ▲0.2 | ▲0.4 |
| 福島県 | ▲0.4 | ▲0.7 | 0.7 | 0.4 |
| 茨城県 | 1.2 | 1.3 | 1.8 | 1.9 |
| 栃木県 | ▲0.3 | 0.0 | ▲0.3 | 0.3 |
| 群馬県 | ▲0.4 | ▲0.2 | 0.6 | 0.9 |
| 埼玉県 | 1.5 | 1.6 | 3.0 | 3.3 |
| 千葉県 | 3.3 | 3.4 | 4.8 | 5.1 |
| 東京都 | 5.6 | 5.8 | 11.2 | 11.4 |
| 神奈川県 | 3.3 | 3.1 | 7.0 | 7.2 |
| 新潟県 | ▲1.0 | ▲0.8 | ▲0.5 | ▲0.3 |
| 富山県 | ▲0.3 | ▲0.2 | 0.5 | 0.6 |
| 石川県 | 0.6 | 0.3 | 1.9 | 1.6 |
| 福井県 | ▲0.5 | ▲0.4 | ▲0.4 | ▲0.1 |
| 山梨県 | ▲0.7 | ▲0.6 | 0.0 | 0.1 |
| 長野県 | 0.2 | 0.7 | 0.4 | 0.9 |
| 岐阜県 | ▲0.8 | ▲0.7 | 0.7 | 0.8 |
| 静岡県 | ▲0.1 | ▲0.1 | 0.7 | 0.9 |
| 愛知県 | 1.6 | 1.3 | 2.7 | 2.5 |
| 三重県 | ▲0.2 | ▲0.3 | 0.5 | 0.3 |
| 滋賀県 | 0.2 | 0.6 | 2.1 | 2.6 |
| 京都府 | 1.2 | 1.2 | 5.7 | 5.6 |
| 大阪府 | 2.7 | 3.0 | 7.9 | 8.8 |
| 兵庫県 | 1.5 | 1.4 | 3.4 | 3.2 |
| 奈良県 | ▲0.7 | ▲0.8 | 1.3 | 1.1 |
| 和歌山県 | ▲0.6 | ▲0.5 | ▲0.1 | 0.0 |
| 鳥取県 | ▲0.6 | ▲0.6 | ▲0.5 | ▲0.4 |
| 島根県 | ▲1.0 | ▲1.0 | ▲0.9 | ▲1.0 |
| 岡山県 | ▲0.2 | ▲0.2 | 1.1 | 1.2 |
| 広島県 | 0.4 | 0.5 | 1.8 | 1.7 |
| 山口県 | ▲0.1 | 0.0 | 0.1 | 0.2 |
| 徳島県 | ▲1.1 | ▲1.2 | ▲1.4 | ▲1.4 |
| 香川県 | ▲0.3 | ▲0.3 | ▲0.1 | ▲0.1 |
| 愛媛県 | ▲1.0 | ▲1.0 | ▲0.8 | ▲0.7 |
| 高知県 | ▲0.5 | ▲0.5 | ▲0.6 | ▲0.6 |
| 福岡県 | 2.7 | 2.1 | 5.1 | 4.0 |
| 佐賀県 | 1.3 | 1.1 | 2.2 | 2.5 |
| 長崎県 | 0.0 | 0.1 | 0.4 | 0.5 |
| 熊本県 | 0.9 | 0.8 | 2.5 | 1.8 |
| 大分県 | 1.2 | 1.2 | 0.7 | 1.1 |
| 宮崎県 | 0.2 | 0.3 | ▲0.1 | 0.1 |
| 鹿児島県 | ▲1.1 | ▲1.0 | ▲0.7 | ▲0.5 |
| 沖縄県 | 5.7 | 5.3 | 7.1 | 6.9 |
数えると、住宅地は上昇20都府県・横ばい3県(宮城・栃木・山口)・下落24道県、商業地は上昇34・横ばい1(和歌山)・下落12です(本稿の数え上げ)。前年から傾向が変わったのは、住宅地では長崎県が横ばいから上昇へ、栃木県と山口県が下落から横ばいへ、宮城県が上昇から横ばいへ。商業地では秋田県と山梨県が横ばいから上昇へ、栃木県と宮崎県が下落から上昇へ、和歌山県が下落から横ばいへ移りました。宮城県の住宅地が+0.9%から0.0%に落ちたのは、仙台市の住宅地が+5.1%から+2.5%へ半減した影響が大きいと読めます(県庁所在地の表・次章)。
住宅地で上昇幅が前年より広がったのは20都府県、同じが10、縮まったのが17です。上位は東京都+5.8%(前年+5.6%)、沖縄県+5.3%(同+5.7%)、千葉県+3.4%、神奈川県+3.1%(同+3.3%)、大阪府+3.0%(同+2.7%)、福岡県+2.1%(同+2.7%)。神奈川県と福岡県は上昇しながら幅が縮んでいます。下位は徳島県▲1.2%、島根県・愛媛県・鹿児島県▲1.0%、新潟県▲0.8%、奈良県▲0.8%です。
主要都市|東京23区・大阪市は拡大、福岡市・札幌市は縮小
県庁所在地(東京は23区)の住宅地・商業地の変動率を、動きの大きい都市について令和6年から並べます。
| 都市 | 住宅地 R6→R7→R8 | 商業地 R6→R7→R8 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 東京23区 | 6.7 → 8.3 → 8.7 | 9.7 → 13.2 → 13.3 | 住宅地は3年連続で拡大 |
| 大阪市 | 4.5 → 6.1 → 6.7 | 10.6 → 11.1 → 12.3 | 住宅地・商業地とも拡大 |
| さいたま市 | 2.3 → 2.2 → 2.9 | 4.5 → 4.9 → 6.2 | 拡大 |
| 千葉市 | 4.2 → 5.4 → 5.7 | 6.7 → 7.5 → 7.9 | 拡大 |
| 横浜市 | 3.4 → 3.4 → 3.3 | 7.4 → 8.1 → 8.5 | 住宅地は横ばい圏 |
| 名古屋市 | 4.3 → 3.0 → 2.7 | 5.8 → 4.1 → 4.0 | 2年連続縮小 |
| 京都市 | 2.6 → 2.9 → 2.8 | 8.9 → 8.7 → 8.5 | 高い水準で横ばい |
| 神戸市 | 3.2 → 3.5 → 3.3 | 5.4 → 6.3 → 6.3 | 横ばい圏 |
| 札幌市 | 3.6 → 1.4 → 0.7 | 7.6 → 5.5 → 5.0 | 住宅地は令和5年+12.5%から4年で0.7%へ |
| 仙台市 | 6.3 → 5.1 → 2.5 | 7.9 → 7.6 → 5.8 | 住宅地は1年で半減 |
| 広島市 | 1.7 → 1.8 → 1.8 | 3.8 → 4.2 → 4.0 | 安定 |
| 福岡市 | 9.5 → 7.2 → 5.5 | 13.2 → 10.2 → 8.1 | 令和6年を頂点に2年連続縮小 |
| 那覇市 | 4.3 → 4.9 → 5.3 | 5.6 → 6.8 → 6.7 | 住宅地は拡大 |
地方四市の住宅地は、札幌市が令和5年の+12.5%から+0.7%へ、福岡市が令和6年の+9.5%から+5.5%へ、仙台市が令和6年の+6.3%から+2.5%へ縮んでいます。いずれもまだ上昇ですが、「地方の中核都市は東京と同じように上がり続ける」という前提で組んだ収支や査定は、今回の数字で見直す時期です。対照的に東京23区の住宅地は+6.7%→+8.3%→+8.7%と3年続けて幅が広がり、大阪市も+4.5%→+6.1%→+6.7%です。
半年ごとの動き|後半(1〜7月)は前半より小さい
地価公示(1月1日)と共通の1,589地点(住宅地1,086・商業地503)については、「令和7年7月1日〜令和8年1月1日」(前半)と「令和8年1月1日〜令和8年7月1日」(後半)の半年ごとの変動率が出ています。概要の表では、全国の住宅地は前半1.6%・後半1.4%、商業地は前半3.1%・後半2.8%で、住宅地は全国・三大都市圏・東京圏・大阪圏・名古屋圏・地方圏・地方四市・その他の8つの区分すべてで、後半の上昇が前半より小さくなっています。商業地も8区分のうち6区分で後半が小さく、大きい方へ動いたのは地方圏とその他の地域だけです。
これは「下がり始めた」ではありません。後半もすべての区分でプラスです。ただ、年間の変動率だけを見て「去年と同じ勢い」と説明すると、直近半年の実感とずれます。オーナーには「年間では前年並みの上昇、ただし直近の半年は前の半年より上昇が鈍い」と2段で伝えるのが正確です。
上昇率の上位と下位|スキー場・浅草と、能登・北海道
全国の上昇率上位10地点は、住宅地では北海道富良野市(+32.0%)、長野県白馬村(+31.3%・+31.1%)、野沢温泉村(+21.8%)、茨城県つくば市(+19.0%)、東京都品川区北品川(+18.8%)、沖縄県宮古島市(+18.8%)、港区芝浦(+18.7%)、千葉県流山市(+18.7%)、新潟県妙高市(+18.5%)。商業地では白馬村(+35.6%・+25.9%)、野沢温泉村(+27.0%)、台東区浅草(+26.9%・+25.0%・+24.1%)、北海道千歳市(+25.2%)、中野区(+25.0%)、新宿区西早稲田(+23.8%)、台東区駒形(+23.4%)です。スキーリゾート、インバウンドの浅草、半導体工場の千歳、つくば・流山という子育て転入の街が並びます。
下位は、住宅地では宮城県加美町(▲6.0%)、北海道本別町、石川県輪島市(▲5.7%)など、商業地では輪島市(▲6.8%)、北海道広尾町(▲5.6%)、宮城県気仙沼市(▲5.5%)、大崎市鳴子温泉(▲5.1%)、珠洲市(▲5.0%)です。能登半島地震の被災地と、北海道・宮城県の人口減少地域です。全国最高価格は商業地が中央区銀座2-6-7の明治屋銀座ビル(5,250万円/㎡・+11.9%・21年連続)、住宅地が港区赤坂1-14-11(750万円/㎡・+5.4%・8年連続)です。
繰り返しになりますが、令和8年熊本地震と令和8年8月千葉豪雨の影響は今回の価格に入っていません。価格時点が7月1日だからです。千葉豪雨の被災地で管理している会社は、次の地価公示(令和9年1月1日時点)まで、公的な地価の数字に影響が出ないことを承知しておいてください。豪雨後の応急修理・賃貸型応急住宅の手順は千葉豪雨の記事にあります。
管理会社・仲介につながる3つの回路|固定資産税・賃料・媒介
基準地価は、管理会社の日常業務に直接は出てきません。つながるのは次の3か所です。
回路1|令和9年度の固定資産税評価替え(価格調査基準日は令和8年1月1日)
固定資産税の土地・家屋の評価は3年に一度見直され(評価替え)、宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価されます。総務省の「固定資産税の概要」は現在の課税の仕組みを「令和6年度〜令和8年度」として説明しており、次の評価替えは令和9年度です。総務省自治税務局資産評価室長が令和7年5月29日に各都道府県へ出した通知「令和9年度固定資産の評価替えに関する留意事項について」は、次のように定めています。
- 令和9年度評価替えの価格調査基準日は令和8年1月1日。
- 標準宅地の時価は地価公示価格等の7割を目途とし、①令和8年地価公示価格、②令和7年都道府県地価調査価格(令和8年1月1日に時点修正したもの)、③令和8年1月1日現在の鑑定評価価格を使う。
- 令和8年1月1日以降の地価動向によっては、固定資産評価基準第1章第12節二と同様の措置(下落修正)を講じる予定。
- 地価動向の把握に使う資料は、地価公示価格、都道府県地価調査価格、鑑定評価価格、相続税路線価。
つまり、来年届く令和9年度の固定資産税評価額は、今年1月1日の地価を基にしており、今回の7月1日の基準地価は「1月からさらに上がったか、下がったか」を示す資料です。上がった分は令和9年度の評価には乗りません(次の令和12年度へ持ち越し)。下がった分だけが修正の対象です。オーナーに「基準地価が上がったから来年の固定資産税も上がる」と説明するのは、因果の順序が違います。正確には「1月1日の公示価格を基に評価替えがあり、今回の基準地価はその後の半年の動き」です。負担調整措置により評価額の上昇がそのまま税額に反映されるわけではないことも、総務省の概要に書かれています。固定資産税の納付と月次報告への組み込み方は固定資産税6月納付の記事を参照してください。
回路2|賃料改定の根拠(借地借家法32条)
借地借家法32条1項は、建物の借賃が「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」に、契約の条件にかかわらず当事者が将来に向かって増減を請求できると定めています。基準地価の上昇は「土地の価格の上昇」に、評価替え後の固定資産税は「租税その他の負担の増減」に当たる事情です。
ただし、条文の要件は「不相当となったとき」です。地価が上がった事実だけで増額が正当になるのではなく、現在の賃料が不相当になっているかが問われます。東京都が9月8日に貸主向けに出した注意喚起も、この点を借主側の目線で整理しています。協議が調わないときは借主が相当と認める額を払えば足り(32条2項)、一定期間増額しない特約があればそれに従います(1項ただし書)。通知の前に揃える根拠(納税通知書・CPI民営家賃・近傍同種の成約)と、書いてはいけない一文は東京都の賃料見直し注意喚起の記事にまとめてあります。基準地価は、その根拠の「土地の価格」の欄を埋める公的な数字として使います。消費者物価指数の民営家賃は東京都区部で+2.0%、全国で+0.7%と、地価の上昇率とは桁が違うこともCPI家賃の記事で確かめられます。
回路3|媒介価額の根拠(宅建業法34条の2第2項)
宅建業法34条の2第2項は、媒介契約書に記載する「売買すべき価額又はその評価額」について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。基準地価は都道府県知事が公表する公的な価格なので、根拠の1つとして示せます。ただし、標準価格は建物や借地権が無いものとした更地の価格であり、成約価格ではありません。収益物件や区分所有の価額の根拠には、成約事例(レインズ)と収益還元を併せて示す必要があります。中古マンションの㎡単価は8月に75か月ぶりに下落しており、地価と建物価格が別々に動いていることは中古マンション㎡単価の記事で書きました。相続税路線価(公示価格の8割)を営業に使う手順は路線価2026の記事にあります。
個別地点の価格は9月16日に不動産情報ライブラリに掲載予定です。国土交通省は当日のアクセス集中を予告しているので、査定に使う地点の価格は翌日以降に取りに行くのが現実的です。
管理会社が今週やる5つ
| やること | 具体的に | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 自社の県と市の数字を4つ書き出す | 住宅地R7・R8、商業地R7・R8を本稿の表から転記し、オーナー報告書の定型に「令和8年基準地価」の行を作る | 令和8年都道府県地価調査の概要(第4表・県庁所在地の表) |
| 2. 管理物件の基準地を9月17日以降に引く | 不動産情報ライブラリで管理物件に最も近い基準地の価格と変動率を控える。当日(16日)は避ける | 国土交通省 報道発表(9月16日掲載予定・アクセス集中の予告) |
| 3. 「来年の固定資産税」の説明文を直す | 「基準地価が上がったので固定資産税も上がる」を「令和9年度評価替えは令和8年1月1日の地価が基準。今回の数字はその後の半年の動き」に書き換える | 総務省通知 総税評第17号(価格調査基準日・7割・下落修正) |
| 4. 更新が近い契約で、賃料の根拠の1行に基準地価を足す | 32条の根拠3点(納税通知書・CPI・近傍同種)に「所在地の住宅地基準地価の変動率」を加える。増額は「不相当」の説明が要ることを担当者に再確認 | 借地借家法32条1項・2項 |
| 5. 地方四市・名古屋圏の査定書の前提を見直す | 「上昇が続く」前提の収支シミュレーションは、福岡市5.5%・仙台市2.5%・札幌市0.7%・名古屋市2.7%の縮小に合わせて更新する | 県庁所在地の変動率(本稿の表)・宅建業法34条の2第2項 |
オーナー報告書に足す2行
今月の報告書に、次の2行を足してください。1行目は事実、2行目は来年の税との関係です。
9月15日公表の令和8年都道府県地価調査(7月1日時点)で、〇〇県の住宅地は前年比〇.〇%(前年〇.〇%)、〇〇市は〇.〇%でした。全国は住宅地+1.0%・商業地+2.9%で、直近半年の上昇は前の半年より小さくなっています。
令和9年度の固定資産税評価替えは令和8年1月1日の地価を基準に行われるため、今回の数字がそのまま来年の評価額に反映されるものではありません。評価額の通知が届きましたら、賃料との関係を改めてご報告します。
県の人口・世帯の動きと合わせて説明するなら、令和7年国勢調査 人口速報の記事に47都道府県の人口・世帯増減率があります。東京都で管理している会社は、東京都住宅マスタープランの記事の世帯数ピーク(2035年)と並べると、地価の上昇と世帯数の頭打ちが同じ地図の上にあることが伝わります。
この調査が言っていないこと
都道府県地価調査は土地の標準価格の調査で、賃料・家賃の動きは対象外です。地価が上がった地域で賃料が同じ率で上がるとは、この資料からは言えません。建物の価格も対象外で、収益物件の価格の動きを示すものでもありません。個別地点の価格と地点ごとの変動率は9月16日に掲載予定で、本稿は概要にある圏域・都道府県・県庁所在地・上位下位の数字だけを使っています。市区町村ごとの固定資産税評価額がいくらになるかは、市町村が令和9年度の評価替えで決めることで、本稿では推測していません。熊本地震と千葉豪雨の影響は反映されていないと国土交通省が明記しており、被災地の地価は次の地価公示まで公的な数字が出ません。半年ごとの表は地価公示との共通地点1,589地点に限った集計で、21,466地点全体の半年の動きではありません。
よくある質問
Q1. 基準地価と公示地価と路線価は、どれを使えばよいのですか?
目的で分けます。公示地価(1月1日・国)と基準地価(7月1日・都道府県)は同じ物差しの半年違いで、施行令9条3項により基準地価は公示価格を規準に判定されます。時期が近い方を使えばよく、9月以降は基準地価が最新です。相続税路線価は公示価格の8割を目途にした税務用の価格で、相続の相談にはこちらを使います。固定資産税評価額は公示価格等の7割を目途で、3年に一度しか動きません。
Q2. 基準地価が上がった地域では、来年の固定資産税は必ず上がりますか?
必ずではありません。令和9年度評価替えの価格調査基準日は令和8年1月1日で、今回の7月1日の上昇分は令和9年度の評価には入りません。1月1日以降に下落した地域だけが修正の対象です。また、負担調整措置により評価額の上昇がそのまま税額の上昇にはなりません。実際の税額は来年の納税通知書で確かめてください。
Q3. 地価が5%上がったのだから、賃料も5%上げてよいですか?
その計算は成り立ちません。借地借家法32条は「不相当となったとき」に増減を請求できると定めており、地価の上昇はその事情の1つに過ぎません。近傍同種の賃料との比較、租税負担の増減を含めて「現在の賃料が不相当か」を説明できる場合に、将来に向かって請求できます。協議が調わなければ借主は相当と認める額を払えば足り、不増額特約があればそれに従います。
Q4. 地方四市の縮小は、下落の前兆ですか?
この資料からは言えません。福岡市・仙台市・札幌市の住宅地は上昇幅が縮んでいますが、いずれもまだプラスで、国土交通省の概要も「上昇幅が縮小した」と書くにとどめています。札幌市は令和5年の+12.5%が頂点で、4年かけて+0.7%まで縮みました。査定や収支の前提としては「上昇が続く」ではなく「横ばいに近づいている」と置くのが数字に合います。
Q5. 千葉豪雨の被災地の地価は、いつの数字に出ますか?
今回の基準地価(7月1日時点)には反映されていないと国土交通省が明記しています。次に公的な地価が出るのは令和9年地価公示(令和9年1月1日時点・例年3月に公表)です。それまでは、被災地の物件の価額の根拠に基準地価を使うときは「災害前の価格である」ことを書き添えてください。
Q6. 個別地点の価格はどこで見られますか?
不動産情報ライブラリ(国土交通省)に9月16日掲載予定です。当日はアクセスが集中してつながりにくいと予告されているので、17日以降に管理物件の最寄りの基準地を検索し、価格と変動率を控えてください。都道府県のサイトにも各県分が出ます。
まとめ
令和8年都道府県地価調査は、全用途+1.5%・住宅地+1.0%・商業地+2.9%で5年連続の上昇、東京圏・大阪圏は拡大、名古屋圏と地方四市は縮小、住宅地が上がったのは47都道府県のうち20でした。直近半年は前の半年より上昇が鈍っています。中小の管理会社にとってこの数字は、来年の固定資産税評価替え(基準日は令和8年1月1日・公示価格等の7割・下落のみ修正)の背景、賃料改定の根拠の1行(借地借家法32条)、媒介価額の根拠(宅建業法34条の2第2項)の3か所で使うものです。今週は、自社の県と市の4つの数字を報告書の定型に入れ、17日以降に管理物件の基準地を引き、「基準地価が上がったから固定資産税も上がる」という説明を正しい順序に直してください。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月15日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。PDFはブラウザ内で全文を展開して読み、条文はe-Gov法令検索の該当条のみを取得して読みました。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 公表日2026年9月15日、全国21,466地点、全用途平均・住宅地・商業地が5年連続上昇、三大都市圏・地方圏・地方四市の傾向、個別地点は9月16日に不動産情報ライブラリ掲載予定(アクセス集中の予告)、都道府県地価調査の定義(各都道府県知事が毎年7月1日時点の基準地の1㎡当たり価格を調査・公表) | 国土交通省 報道発表「全国の地価動向は全用途平均で5年連続上昇~令和8年都道府県地価調査~」(2026年9月15日) |
| 圏域別の全用途・住宅地・商業地の変動率(令和3〜8年)、全体的な特徴と用途別の特徴、47都道府県の住宅地・商業地の変動率(令和元〜8年)と傾向が変わった県、県庁所在地の変動率、上昇率上位・下位10地点、三大都市圏の最高価格地点、地価公示との共通地点1,589地点の半年ごとの変動率、熊本地震・千葉豪雨の影響は反映されていない旨 | 国土交通省「令和8年都道府県地価調査の概要」(PDF・11頁) |
| 宅地21,050地点・林地416地点、福島第一原子力発電所の事故の影響による10地点の休止、価格時点 令和8年7月1日、不動産鑑定士の鑑定評価に基づく都道府県知事の判定、全国の工業地3.3%、東京圏・大阪圏・名古屋圏・地方圏の用途別変動率、集計に林地を含まない旨 | 国土交通省「令和8年都道府県地価調査の実施状況及び地価の状況」 |
| 第1表〜第12表(都道府県別・用途別基準地数、圏域別・地方別・都道府県別の対前年平均変動率、三大都市圏の人口10万以上の市の変動率と平均価格)の所在 | 国土交通省「令和8年都道府県地価調査」関係データ |
| 令和9年度評価替えの価格調査基準日は令和8年1月1日、標準宅地の時価は地価公示価格等の7割を目途(令和8年地価公示価格・令和7年都道府県地価調査価格の時点修正・鑑定評価価格)、令和8年1月1日以降の地価動向による下落修正措置の予定、地価動向の把握資料(地価公示価格・都道府県地価調査価格・鑑定評価価格・相続税路線価) | 総務省 自治税務局資産評価室長「令和9年度固定資産の評価替えに関する留意事項について」(総税評第17号・令和7年5月29日・PDF) |
| 宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価(平成6年度評価替えから)、負担調整措置、宅地等に対する課税の仕組みが令和6年度〜令和8年度である旨、土地・家屋は3年に一度評価が見直される旨 | 総務省「固定資産税の概要」 |
| 9条1項(都道府県知事が毎年1回、不動産鑑定士の鑑定評価を求め、基準日における基準地の単位面積当たり標準価格を判定)、2項(標準価格は自由な取引で通常成立する価格、建物や権利が無いものとして)、3項(公示区域内では公示価格を規準) | 国土利用計画法施行令(昭和49年政令第387号)|e-Gov法令検索 |
| 32条1項(租税その他の負担の増減、土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、近傍同種との比較により不相当となったときの借賃増減請求、不増額特約)、2項(協議が調わないとき、請求を受けた者は相当と認める額を支払えば足りる) | 借地借家法(平成3年法律第90号)|e-Gov法令検索 |
| 34条の2第1項第2号(売買すべき価額又はその評価額)、第2項(価額又は評価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする) | 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)|e-Gov法令検索 |
本稿の計算:47都道府県の上昇・横ばい・下落の数(住宅地20・3・24、商業地34・1・12)、前年からの拡大・同じ・縮小の数(住宅地20・10・17)、県庁所在地の推移の読み方、「3つの回路」「今週やる5つ」「報告書の2行」は、資料の数字から本稿が出した整理です。賃料・家賃の動き、個別地点の価格、市区町村別の固定資産税評価額、熊本地震・千葉豪雨の影響は資料に無いので書いていません。