2026年9月10日、公益財団法人不動産流通推進センターは「指定流通機構の物件動向(令和8年8月)」を、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は「月例速報 Market Watch 2026年8月度」を公表しました。全国の既存マンションの成約㎡単価は62.56万円(前年同月比-3.46%)で、75か月ぶりのマイナスです。首都圏の成約件数は3,180件(-10.5%)で5か月連続の前年割れ、在庫は48,235件(+8.2%)で6か月連続の増加でした。この数字を売主やオーナーにそのまま伝えると、「マンションが値下がりし始めた」と受け取られます。エリア別のデータを開くと、そうは読めません。㎡単価が前年より下がったのは東京都区部と横浜・川崎市だけで、それも-0.3%と-0.5%です。下がったのは値段ではなく、成約の構成です。本稿は、9月10日に出た2本の資料を、媒介の現場で売主に見せられる形に組み直します。あわせて、在庫の㎡単価が成約の1.46倍になっているという、もう一つの数字を扱います。
結論(90秒で読める)
- 全国の既存マンション成約㎡単価は62.56万円(-3.46%)で75か月ぶりのマイナス。成約件数は6,006件(-8.04%)で6か月連続の減少。既存戸建は成約価格2,726万円(+4.32%)、件数4,746件(+0.15%)で、戸建は下がっていません(不動産流通推進センター)。
- 首都圏の中古マンションは成約3,180件(-10.5%)で5か月連続の前年割れ、成約㎡単価81.60万円(-3.8%)で4か月連続の下落。一方、新規登録は15,627件(+9.7%)、在庫は48,235件(+8.2%)で6か月連続の増加(東日本レインズ)。
- エリア別の㎡単価は、東京都区部-0.3%、横浜・川崎市-0.5%、東京都多摩+9.1%、千葉県+5.1%、埼玉県+2.0%、神奈川県+2.0%、神奈川県他+9.0%。区部の成約件数が-20.6%と大きく減り、単価の高い区部が首都圏の成約に占める割合が44.8%から39.8%に落ちたので、平均が下がっています(割合は本稿の計算)。
- 成約㎡単価81.60万円に対して、新規登録㎡単価は116.81万円(+21.5%)、在庫㎡単価は119.36万円(+28.4%)。在庫÷成約は1年前の1.10倍から1.46倍に開きました(本稿の計算)。売り出し価格で買い手がつかない物件が在庫に積み上がっている、という読み方になります。
- 媒介契約の書面には「売買すべき価額又はその評価額」を書き(宅建業法第34条の2第1項第2号)、その価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする義務があります(同条第2項)。「在庫の㎡単価で出しましょう」という提案は、成約㎡単価との1.46倍の差を説明できて初めて根拠になります。
- 管理会社がオーナーから受ける「今の賃貸中の部屋はいくらか」という相談は、実需の成約データでは答えられません。投資用区分マンションの売り出し価格は8月に3,001万円(+22.14%)で調査開始以降の最高値(健美家)で、実需とは別の市場です。本稿は売り時の助言をしません。見る資料を分けることだけを書きます。
9月10日に出た2本の資料|全国と首都圏の数字
毎月10日前後に、レインズの成約データは2つの経路で公表されます。1つは不動産流通推進センターが東日本・中部圏・近畿圏・西日本の4機構のデータをまとめた全国版、もう1つは各機構が出す地域版で、首都圏は東日本レインズの「Market Watch」です。数字は少しずつ違います。全国版の首都圏は3,174件、東日本レインズの首都圏は3,180件で、集計の締めと対象の定義が異なるためです(全国版は「各指定流通機構が公表しているデータの内容とは異なる」と注記しています)。本稿では、全国の話は全国版、首都圏のエリア別の話は東日本レインズを使い、混ぜません。
全国(不動産流通推進センター)
| 2026年8月・全国 | 既存マンション | 前年同月比 | 既存戸建住宅 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 成約価格 | 4,047万円 | -2.79%(3か月ぶり下落) | 2,726万円 | +4.32% |
| ㎡単価 | 62.56万円 | -3.46%(75か月ぶり下落) | - | - |
| 面積 | 66.21㎡ | +1.27% | 建物112.56㎡/土地197.59㎡ | +0.81%/+2.10% |
| 築年数 | 28.30年 | +5.95%(28か月連続) | 28.92年 | +0.84% |
| 成約件数 | 6,006件 | -8.04%(6か月連続減少) | 4,746件 | +0.15% |
地域別のマンション成約価格は、首都圏5,155万円(-3.12%・3,174件・-10.49%)、近畿圏3,091万円(-3.71%・1,369件・-7.31%)、中部圏2,379万円(+0.63%・490件・+6.75%)、北海道2,481万円(+21.74%・205件・-12.02%)、九州・沖縄2,874万円(+8.86%・351件・-10.46%)です。首都圏と近畿圏の2つの大都市圏で価格も件数も下がり、それ以外の地方では価格が上がっている地域が多い、という分布です。全国の件数6,006件のうち首都圏が3,174件で52.8%を占めるので、全国の平均は首都圏の動きにほぼ引きずられます。
首都圏(東日本レインズ)
| 2026年8月・首都圏中古マンション | 成約 | 前年同月比 | 在庫 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 件数 | 3,180件 | -10.5%(5か月連続減少) | 48,235件 | +8.2%(6か月連続増加) |
| ㎡単価 | 81.60万円 | -3.8%(前月比-3.1%) | 119.36万円 | +28.4% |
| 価格 | 5,129万円 | -2.8%(前月比-2.6%) | 6,939万円 | +29.0% |
| 専有面積 | 62.85㎡ | +1.0% | 58.13㎡ | +0.5% |
| 築年数 | 28.29年 | 前年26.28年 | 29.14年 | 前年29.88年 |
成約件数の前年同月比を13か月並べると、2025年8月+54.5%、9月+46.9%、10月+36.5%、11月+38.3%、12月+25.9%、2026年1月+3.1%、2月+2.1%、3月+0.2%、4月-1.2%、5月-3.4%、6月-1.3%、7月-8.6%、8月-10.5%です。2025年の後半は前年(2024年)が低かった反動で大きなプラスが続き、2026年に入って伸びが止まり、4月からマイナスに転じて7月・8月で幅が広がっています。在庫は3月+1.8%から8月+8.2%まで6か月続けて増えました。件数が減って在庫が増える、という向きがそろっているのが8月の形です。
「75か月ぶり」は何が下がったのか|エリア別に開く
75か月前は2020年5月です(本稿の計算)。最初の緊急事態宣言の月で、全国のマンション成約㎡単価が前年を下回ったのは、それ以来ということになります。ここで「6年ぶりの値下がり」と読む前に、東日本レインズのエリア別の表を開きます。
| 2026年8月・エリア | 成約件数 | 前年比 | 成約㎡単価 | 前年比 | 成約価格 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,562件 | -18.7% | 118.85万円 | -0.8% | 6,826万円 | -0.4% |
| 東京都区部 | 1,265件 | -20.6% | 132.69万円 | -0.3% | 7,526万円 | -0.2% |
| 東京都多摩 | 297件 | -9.5% | 59.90万円 | +9.1% | 3,844万円 | +8.8% |
| 埼玉県 | 412件 | +5.4% | 44.35万円 | +2.0% | 3,041万円 | +4.0% |
| 千葉県 | 398件 | +0.3% | 41.68万円 | +5.1% | 2,998万円 | +4.6% |
| 神奈川県 | 808件 | -4.3% | 60.08万円 | +2.0% | 3,961万円 | +1.2% |
| 横浜・川崎市 | 581件 | -2.2% | 65.95万円 | -0.5% | 4,345万円 | -0.3% |
| 神奈川県他 | 227件 | -9.2% | 45.07万円 | +9.0% | 2,979万円 | +4.3% |
| 首都圏計 | 3,180件 | -10.5% | 81.60万円 | -3.8% | 5,129万円 | -2.8% |
8つのエリアのうち、㎡単価が前年を下回ったのは東京都区部(-0.3%)と横浜・川崎市(-0.5%)の2つだけで、どちらも1%未満です。残りの6エリアはすべてプラスで、多摩と神奈川県他は+9%台です。それなのに首都圏の平均は-3.8%です。理由は件数の列にあります。㎡単価132.69万円の区部が-20.6%、59.90万円の多摩が-9.5%と、東京都の件数が減り、44万円台の埼玉が+5.4%、41万円台の千葉が+0.3%と、単価の低いエリアの件数が減っていません。区部が首都圏の成約に占める割合を計算すると、2025年8月は約1,593件÷3,553件で44.8%、2026年8月は1,265件÷3,180件で39.8%です(区部の前年件数は1,265÷(1-0.206)で逆算。本稿の計算)。単価の高いエリアの割合が5ポイント落ちれば、各エリアの単価が変わらなくても平均は下がります。
これは全国版でも同じです。全国の㎡単価は東京都が114.75万円、全国が62.56万円で、東京都の成約件数は1,916件から1,558件へ18.7%減っています(不動産流通推進センター13か月表)。全国平均の-3.46%の中身も、東京都の件数減が大きく効いています。したがって、売主に伝える言い方は「マンションが値下がりした」ではなく、「区部の成約が2割減って、平均の構成が変わった。あなたの物件のエリアの単価はこうだ」です。千葉県の物件の売主に全国の-3.46%を見せるのは、その物件の市場を見せていないのと同じです。
区部で何が起きているかは、この資料からは分からない
区部の成約件数が2割減った理由は、この2本の資料には書かれていません。資料は件数と単価を並べるだけで解釈を書かないので、本稿もそこは書きません。東日本レインズのサマリーレポートはエリア別の在庫㎡単価を載せていないため、次の節の「売り出しと成約の差」が区部でどれだけ開いているかも、この資料からは確かめられません。
成約・新規登録・在庫の3つの㎡単価|1.10倍が1.46倍に
東日本レインズのMarket Watchには、㎡単価が3種類あります。成約した物件の単価(成約㎡単価)、その月に新しく登録された物件の売り出し単価(新規登録㎡単価)、月末時点で売れ残っている物件の売り出し単価(在庫㎡単価)です。13か月分を抜き出します。
| 首都圏中古マンション㎡単価 | 2025年8月 | 2026年2月 | 2026年5月 | 2026年6月 | 2026年7月 | 2026年8月 | 8月の前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 成約㎡単価 | 84.85万円 | 85.61万円 | 80.78万円 | 82.64万円 | 84.17万円 | 81.60万円 | -3.8% |
| 新規登録㎡単価 | 96.15万円 | 108.83万円 | 112.67万円 | 115.57万円 | 117.86万円 | 116.81万円 | +21.5% |
| 在庫㎡単価 | 92.96万円 | 106.60万円 | 114.40万円 | 116.54万円 | 118.30万円 | 119.36万円 | +28.4% |
| 在庫÷成約(本稿の計算) | 1.10倍 | 1.25倍 | 1.42倍 | 1.41倍 | 1.41倍 | 1.46倍 | - |
成約㎡単価は1年間ほぼ横ばいで、80万円から87万円の間を動いています。新規登録㎡単価と在庫㎡単価は毎月上がり続け、在庫は13か月連続で前月を上回っています(前月比は0.7%から3.3%の間)。結果として、在庫の㎡単価は成約の1.46倍になりました。1年前は1.10倍でした。売り出している値段と、実際に成約している値段の差が、この1年で4倍以上に開いたということです。
在庫の平均価格6,939万円に対して成約の平均価格は5,129万円で、在庫の専有面積は58.13㎡と成約の62.85㎡より小さく、在庫の築年数は29.14年と成約の28.29年より古い。つまり、狭くて古い部屋が高い単価で売りに出ていて、広くて新しい部屋が低い単価で成約している、という平均の姿です。個々の物件がそうだという意味ではなく、母集団の平均がそうなっている、ということです。「売り出し価格が高すぎて売れ残っている」と読むのが自然ですが、在庫には登録の取り下げ漏れが含まれ、成約は媒介した業者の報告にもとづくので報告されない成約は載らない、という資料の性質も押さえておきます。
媒介の現場で何が起きるか|宅建業法第34条の2第2項
売主から査定を頼まれたとき、売主が先に見ているのは、ポータルサイトに出ている近隣の売り出し価格です。それは在庫㎡単価の側の数字です。「隣の部屋が7,000万円で出ている」は、7,000万円で売れているという意味ではなく、7,000万円で売れていないという意味かもしれません。8月の首都圏では、その2つの差が平均で1.46倍です。
宅建業法第34条の2は、売買の媒介契約を結んだときに書面を作り、その第1項第2号で「当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額」を記載することを求めています。そして第2項が、その価額について意見を述べるときは、根拠を明らかにしなければならないと定めています。「隣が7,000万円で出ているので7,000万円で出しましょう」は、売り出し価格を根拠にした意見です。成約価格の根拠ではありません。第2項の「根拠」として売主に見せるべきなのは、次の3つの単価を並べた1枚です。
- 成約㎡単価:そのエリアで実際に成約した単価。首都圏平均81.60万円、区部132.69万円、多摩59.90万円、埼玉44.35万円、千葉41.68万円、神奈川60.08万円(2026年8月)。
- 新規登録㎡単価:今月売りに出た物件の希望単価。首都圏平均116.81万円。
- 在庫㎡単価:売れ残っている物件の希望単価。首都圏平均119.36万円。
この3つを並べると、売主は「売り出し価格は成約価格の1.4倍以上で付いているのが平均で、それが在庫として6か月続けて増えている」という市場の形を、自分の目で見ることができます。そのうえで、売主が高い価格で出すことを選ぶのは売主の自由です。専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられません(第34条の2第3項)。3か月の間に成約㎡単価に近づける値下げの合意を取るのか、在庫として次の3か月に持ち越すのか、その判断を売主がする材料を、媒介契約の時点で渡しておくことが、第2項の趣旨に合っています。
「平均」を使わない
ここまで首都圏平均で書きましたが、媒介の現場で首都圏平均を使うことはありません。売主に見せるのは、その物件の市区、駅、築年、面積帯で絞ったレインズの成約事例と、その物件と同じ条件の売り出し中物件です。本稿が平均を扱ったのは、「75か月ぶり」という平均の見出しが、個別の物件の市場とどう違うかを説明するためです。区部の物件を預かるなら、8月の区部の成約事例は前年より2割少なく、比較事例の数が減っていることも売主に伝えます。
管理会社に来る相談|実需と投資用は別の市場
管理会社には、区分所有の賃貸中の部屋のオーナーから、「今いくらで売れるのか」「持ち続けるべきか」という相談が来ます。この相談に、本稿の成約データで答えることはできません。レインズの既存マンションの成約データは、実需(自分で住む人が買う取引)を中心にした市場の数字で、賃貸中の部屋の価格は利回りで決まる別の市場だからです。
その別の市場の8月の数字は、健美家の収益物件市場動向マンスリーレポート(9月9日)にあります。同社のサイトに登録された投資用区分マンションの全国平均価格は3,001万円(前月比+8.50%・前年同月比+22.14%)で、2008年4月の調査開始以降の最高値、首都圏は3,425万円、東京23区は4,267万円で、いずれも直近1年間の最高値です。平均利回りは6.61%(前月比-0.07ポイント)。これは売り出し価格の集計であって成約価格ではない、という点は、レインズの在庫㎡単価と同じ注意が要ります。
同じ「中古マンション」という言葉で、8月は2つの市場が逆の向きを示しています。オーナーに伝えるべきことは、どちらが正しいかではなく、賃貸中の部屋の価格を見るときは投資用の資料を、空室にして実需で売るときはレインズの成約事例を見る、という資料の分け方です。その差が今どちらに開いているかは、物件ごとにその2つの資料を並べないと分かりません。本稿は、売る・持つの助言をしません。
なお、賃貸中の区分所有の部屋には、本稿と別の論点として、改正区分所有法の建替え決議が出た場合の賃貸借の終了請求(建替え決議と賃貸借の終了請求)と、修繕積立金の不足が売却時にどう扱われるか(修繕積立金不足と仲介)があります。価格の相談のときに一緒に確認しておくと、後から出てくる話が減ります。
毎月10日にやること|自社エリアの13か月表
レインズの月次データは、毎月10日前後に無料で公開され、引用も自由です(出典の表記が条件)。中小の仲介会社が毎月やることは3つです。
1. 自社エリアの都県の行だけ、13か月表を作る
不動産流通推進センターの全国版PDFの7ページ以降には、都道府県別に成約価格・㎡単価・専有面積・築年数・件数の13か月表があります。自社が扱う都県の行だけを毎月1行足していけば、社内の13か月表ができます。千葉県のマンション㎡単価は2025年8月39.10万円、2026年8月40.88万円、埼玉県は43.46万円から44.22万円、神奈川県は58.82万円から60.11万円で、いずれも1年で上がっています(全国版13か月表)。「75か月ぶりの下落」の月に、自社の県の単価は上がっている、という事実を自分の表で持っておくと、売主への説明が変わります。
2. 成約・新規登録・在庫の3つの単価を同じ紙に書く
東日本レインズのサマリーレポートの3ページに、首都圏の13か月分が3種類とも載っています。エリア別の在庫㎡単価は載っていないので、自社エリアの在庫側の数字は、レインズの登録物件を自分で検索して集める必要があります。ここは手作業です。
3. 前年比ではなく件数の実数を見る
前年比は前年の水準に左右されます。2025年後半の+54.5%は2024年が低かった数字で、2026年4月からのマイナスは2025年が高かった数字です。件数の実数(首都圏で3,180件、東京都で1,562件)を13か月並べたほうが、自社の月の成約件数と比べられます。8月は例年、成約件数が少ない月でもあります(2026年8月3,180件は、同年3月5,001件の64%。本稿の計算)。
これらの表は、ウルスタくんの物件台帳に月次の市況メモとして残しておけば、査定書を作るときに前年の同じ月の数字をすぐ引けます。レインズへの登録状況そのものについては、囲い込み規制とレインズ登録状況で書いています。
よくある質問
Q1. 「75か月ぶりのマイナス」は、マンション価格が下がり始めたということですか?
全国の既存マンションの成約㎡単価の平均が、前年同月を下回ったという事実です。エリア別に見ると、首都圏8エリアのうち㎡単価が下がったのは東京都区部(-0.3%)と横浜・川崎市(-0.5%)だけで、他の6エリアは上がっています。単価の高い区部の成約件数が-20.6%と大きく減って平均の構成が変わったことが、平均を押し下げています。個別のエリアの価格が下がり始めたとは、この資料からは言えません。
Q2. 全国版の首都圏3,174件と、東日本レインズの3,180件はなぜ違うのですか?
集計の締めと対象の定義が違うためです。全国版は各指定流通機構からデータの提供を受けて独自に集計したもので、「各指定流通機構が公表しているデータの内容とは異なる」と注記されています。どちらかが間違いではなく、資料を混ぜないことが大切です。
Q3. 在庫㎡単価が成約の1.46倍というのは、売り出し価格を3割下げないと売れないという意味ですか?
違います。平均の在庫は平均の成約より狭く(58.13㎡対62.85㎡)古い(29.14年対28.29年)ので、同じ物件を比べた差ではありません。言えるのは、売り出し価格で買い手がつかない物件が在庫として増えている(6か月連続増加)ことと、その差が1年前の1.10倍から開いていることまでです。個別の物件の値下げ幅は、その物件の成約事例から決めます。
Q4. 売主が在庫㎡単価の水準で売り出したいと言ったら、断るべきですか?
断る必要はありません。宅建業法第34条の2第2項が求めているのは、価額について意見を述べるときに根拠を明らかにすることです。成約㎡単価・新規登録㎡単価・在庫㎡単価の3つを見せ、売り出し価格が成約価格からどれだけ離れているかを売主が理解したうえで決めるなら、その価格で媒介契約を結ぶことに問題はありません。専任媒介は3か月以内なので、3か月後に見直す約束を書面に添えておくことが実務です。
Q5. 賃貸中の区分マンションの価格も、この成約データで査定できますか?
できません。レインズの既存マンションの成約データは実需中心の市場で、賃貸中の部屋は利回りで価格が決まる別の市場です。8月は投資用区分の売り出し価格が最高値を更新(健美家)しており、実需の成約㎡単価とは逆の向きです。賃貸中のまま売るなら投資用の資料、空室にして売るなら実需の成約事例を見ます。
Q6. 戸建は下がっていないのですか?
全国の既存戸建住宅の成約価格は2,726万円(+4.32%)で上がり、件数も4,746件(+0.15%)で減っていません。首都圏の中古戸建は成約1,641件(+1.9%)、成約価格3,960万円(+1.7%)で8か月連続の上昇、在庫は23,277件(-1.2%)で減っています。8月に件数が減って在庫が増えたのはマンションで、戸建は逆です。
まとめ|見出しの平均ではなく、売主の物件のエリアの単価を見せる
2026年8月のレインズ成約データは、全国の既存マンション成約㎡単価が-3.46%で75か月ぶりのマイナス、首都圏は成約-10.5%で5か月連続の前年割れ、在庫+8.2%で6か月連続の増加でした。エリア別の㎡単価は区部-0.3%と横浜・川崎-0.5%以外がプラスで、区部の成約件数が2割減ったことが平均を下げています。在庫の㎡単価は成約の1.46倍で、1年前の1.10倍から開きました。
媒介の現場でやることは、見出しの平均を売主に見せることではなく、宅建業法第34条の2第2項の「根拠」として、その物件のエリアの成約・新規登録・在庫の3つの単価を並べることです。管理会社が賃貸中の部屋の相談を受けたときは、実需の成約データではなく投資用の資料を見ます。毎月10日に自社の都県の行を1行足すだけで、「75か月ぶり」のような見出しが出た月に、自分の数字で答えられるようになります。仲介会社の経営そのものの数字は、不動産仲介業の倒産 2026年1〜8月86件で扱っています。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月11日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 全国の既存マンション:成約価格4,047万円(-2.79%)・㎡単価62.56万円(-3.46%・75か月ぶり)・専有面積66.21㎡・築年数28.30年・件数6,006件(-8.04%・6か月連続)。既存戸建:2,726万円(+4.32%)・4,746件(+0.15%)。地域別(首都圏・近畿圏・中部圏・北海道・九州・沖縄)の価格と件数。都道府県別13か月表(東京都㎡単価115.49→114.75万円・件数1,916→1,558件、千葉県39.10→40.88万円、埼玉県43.46→44.22万円、神奈川県58.82→60.11万円、全国㎡単価64.80→62.56万円・件数6,531→6,006件)。集計の注記 | 公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の物件動向(令和8年8月)」(2026年9月10日・PDF) |
| 上記資料の掲載ページ(引用自由・出典表記の条件・過去データ) | 公益財団法人不動産流通推進センター「不動産市況データ」 |
| 首都圏中古マンション:成約3,180件(-10.5%)・㎡単価81.60万円(-3.8%・前月比-3.1%)・価格5,129万円(-2.8%)・専有面積62.85㎡・築年数28.29年、新規登録15,627件(+9.7%)・在庫48,235件(+8.2%)、新規登録㎡単価116.81万円(+21.5%)・在庫㎡単価119.36万円(+28.4%)・在庫価格6,939万円・在庫面積58.13㎡・在庫築年数29.14年。13か月の成約件数前年比・在庫前年比・3種類の㎡単価。エリア別(東京都・区部・多摩・埼玉・千葉・神奈川・横浜川崎・神奈川県他)の件数・㎡単価・価格。中古戸建:1,641件(+1.9%)・3,960万円(+1.7%)・在庫23,277件(-1.2%) | 公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年8月度」(2026年9月10日・PDF) |
| 全国版の報道(75か月ぶり・3か月ぶり・28か月連続・6か月連続の表現) | R.E.port「既存マンションの平米単価、75ヵ月ぶりにマイナス」(2026年9月11日) |
| 首都圏版の報道(5か月連続前年割れ・多摩が5か月ぶり・神奈川県他が22か月ぶりの減少・4か月連続の単価下落・在庫6か月連続増加・戸建8か月連続上昇) | R.E.port「首都圏既存M、成約件数が5ヵ月連続前年割れ」(2026年9月10日) |
| 投資用区分マンションの全国平均価格3,001万円(前月比+8.50%・前年同月比+22.14%・2008年4月の調査開始以降の最高値)、首都圏3,425万円・東京23区4,267万円、平均利回り6.61% | R.E.port「8月の区分M価格、過去最高値を更新/健美家」(2026年9月10日) |
| 第34条の2第1項第2号(売買すべき価額又はその評価額の記載)、第2項(価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする)、第3項(専任媒介契約の有効期間は3か月以内) | e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)」 |
本稿の計算:東京都区部が首都圏の成約件数に占める割合は、2026年8月が1,265件÷3,180件=39.8%、2025年8月が1,265÷(1-0.206)=約1,593件÷3,553件=44.8%。在庫㎡単価÷成約㎡単価は、2026年8月が119.36÷81.60=1.46倍、2025年8月が92.96÷84.85=1.10倍、2026年2月が106.60÷85.61=1.25倍、5月が114.40÷80.78=1.42倍、6月が116.54÷82.64=1.41倍、7月が118.30÷84.17=1.41倍。首都圏が全国件数に占める割合は3,174÷6,006=52.8%。75か月前は2026年8月から6年3か月さかのぼった2020年5月。価格の先行き、売り時・買い時、金利の影響は本稿では扱っていません。