帝国データバンクが2026年9月8日に公表した「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」によると、1〜8月の倒産は86件。このまま推移すると通年では約130件で、過去最多だった2025年の133件に迫るペースです。負債総額は約79億8,300万円で前年同期から66.6%増えましたが、件数の69.8%にあたる60件は負債5,000万円未満でした。同じ資料が引用する国土交通省の調査では、宅建業者は令和6年度末で132,291業者、11年連続の増加です。業者は増え続け、その中で小さい会社が消えている。帝国データバンクはこの構図を「DX化への投資が難しい中小零細事業者」と大手の格差と読みました。私たちは自社で210戸を持ち、約100戸を自主管理しています。倒産の統計は、他社の話として読むと何も残りません。本稿は、この数字を自社の帳簿に当てはめて読む順番と、取引先の仲介会社や管理会社が倒れたときに預り金がどうなるか(宅建業法の営業保証金は業者どうしの取引には効かないこと、賃貸住宅管理業法の分別管理)を、9月中にやることに落として整理します。
結論(90秒で読める)
- 帝国データバンクの集計対象は負債1,000万円以上の法的整理です。休廃業や解散は入っていません。86件は「裁判所の手続きに乗った会社」の数で、静かに看板を下ろした会社はこの外にいます。
- 件数は前年同期(87件)と同じ水準ですが、負債総額は約47億9,300万円から約79億8,300万円へ1.66倍。負債5億円以上が2件から5件に増えた分です。一方で60件(69.8%)は負債5,000万円未満で、倒産の主役は小さい会社のままです。
- 地域は関東38件(44.2%)、近畿24件(27.9%)で、2つで72.1%。年別では2022年の69件から2023年に120件へ跳ね、以後120・119・133件と高い水準が続いています。
- 宅建業者数は132,291業者で11年連続の増加(国土交通省・令和6年度末)。倒産86件を業者数で割ると0.065%です。淘汰というより、入る会社が多く、出る会社も多い状態です。
- 中小が毎月見る数字は3つ。反響から初回連絡までの時間、管理料が固定費の何割を賄っているか(管理料カバー率)、預り金の口座残高と帳簿の一致。3つ目は賃貸住宅管理業法第16条の分別管理そのものです。
- 取引先の宅建業者が倒産しても、営業保証金・弁済業務保証金の還付は宅建業者どうしの取引には使えません(宅建業法第27条・第64条の8が「宅地建物取引業者に該当する者を除く」と定めています)。客付け会社との精算やオーナーの預り金は、制度ではなく自社の締めの早さで守るしかありません。
数字の中身|86件・79.8億円・69.8%・関東44.2%
帝国データバンクの調査は、土地・建物の売買仲介と、賃貸マンション・アパートの賃貸仲介および管理を手がける「不動産代理・仲介業」を対象にしています。集計期間は2026年1月1日から8月31日、集計対象は負債1,000万円以上の法的整理による倒産です。まず、年別の推移を資料の表から写します。
| 年 | 倒産件数(通年) | 備考 |
|---|---|---|
| 2020年 | 83件 | - |
| 2021年 | 71件 | - |
| 2022年 | 69件 | この7年で最少 |
| 2023年 | 120件 | 前年から51件増 |
| 2024年 | 119件 | - |
| 2025年 | 133件 | 過去最多(1〜8月は87件) |
| 2026年 | 86件(1〜8月) | 通年約130件の見込み(帝国データバンク) |
2022年の69件から2025年の133件へ、3年で1.93倍です。2023年に一段上がり、そのまま下がっていません。2026年は1〜8月で86件と前年同期の87件と並び、通年で約130件という帝国データバンクの見込みは、86件を8で割って12を掛けた129件とほぼ同じです。
負債は1.66倍、しかし7割は5,000万円未満
負債総額は約79億8,300万円で、前年同期の約47億9,300万円から66.6%増えました。増えた理由は資料に書いてあります。負債10億円以上が1件(高知市の岡﨑不動産、負債約16億円、1月に破産)、5億円以上10億円未満が4件で、5億円以上の倒産が前年同期の2件から5件に増えたためです。負債総額は数件の大型案件で動く数字なので、これを「業界全体の傷が深くなった」と読むのは早い。むしろ見るべきは、負債5,000万円未満が60件で69.8%という行です。負債5,000万円未満の会社は、社員が数名、事務所が1か所という規模です。倒産の主役は、今年も小さい会社です。
地域は関東と近畿で72.1%
| 地域 | 2024年 | 2025年 | 2026年(1〜8月) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5 | 3 | 1 |
| 東北 | 2 | 3 | 4 |
| 関東 | 45 | 66 | 38 |
| 北陸 | 3 | 3 | 1 |
| 中部 | 10 | 9 | 6 |
| 近畿 | 43 | 37 | 24 |
| 中国 | 3 | 3 | 3 |
| 四国 | 2 | 0 | 1 |
| 九州 | 6 | 9 | 8 |
| 全国 | 119 | 133 | 86 |
関東38件(44.2%)と近畿24件(27.9%)を足すと62件、72.1%です。帝国データバンクは「特に賃料、売買価格ともに高騰している首都圏では、大手不動産管理・仲介業者の収入高は軒並み増加している」と書いています。市場が最も大きく、大手の収入が伸びている地域で、倒産も最も多い。市場が縮んで倒れているのではなく、市場が大きいところで競争に負けて倒れている、というのがこの表の読み方です。
この数字に入っていないもの
集計対象が「負債1,000万円以上の法的整理」なので、次は入っていません。負債1,000万円未満の倒産、裁判所の手続きを取らずに廃業した会社、解散した法人、免許の更新をしなかった会社。宅建業法第11条は、廃業したときは30日以内に届け出ることを定めていますが、その届出の件数はこの調査とは別の統計です。つまり86件は、小さい会社が消えていく現象の、裁判所に届いた部分だけを数えています。実際に看板を下ろした会社は、これより多いと考えて読むのが自然です。
業者は増え、個人は減った|132,291業者の内側
帝国データバンクは、国土交通省の「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」を引いて、宅建業者数が132,291業者で11年連続の増加だと書いています。国土交通省の発表(令和7年10月3日)を確かめると、内訳は大臣免許が3,158業者、知事免許が129,133業者、前年度から1,708業者(1.3%)の増加です。同じ発表には、監督処分が免許取消99件・業務停止16件・指示32件の合計147件(前年度比12.0%減)、行政指導が592件(11.5%増)、宅建士の新規登録が30,336人で総登録者数1,211,760人、とあります。
倒産86件を132,291業者で割ると0.065%です。母集団の定義が違う(帝国データバンクの「不動産代理・仲介業」と国土交通省の「宅建業者」は同じ範囲ではない)ので、厳密な倒産率ではありません。それでも、1,000社のうち1社に届かない比率です。この数字だけを見れば、不動産仲介業は倒れにくい業種です。
個人業者は20年で半分以下になった
国土交通省の参考資料には「宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間)」という表があります。平成17年度末の合計は131,251業者で、法人105,448・個人25,803でした。令和4年度末は合計129,604業者、法人116,230・個人13,374です。合計はほぼ同じなのに、中身が入れ替わっています。法人は約1万増え、個人は約1万2千減った。令和6年度末の法人数は、帝国データバンクが引用する119,902業者(前年から1.8%増)なので、個人は132,291から差し引いて12,389業者。平成17年度の25,803に対して48.0%、つまり20年で半分以下です(この引き算は本稿の計算です)。
| 年度末 | 合計 | 法人 | 個人 |
|---|---|---|---|
| 平成17年度(2006年3月) | 131,251 | 105,448 | 25,803 |
| 令和4年度(2023年3月) | 129,604 | 116,230 | 13,374 |
| 令和6年度(2025年3月) | 132,291 | 119,902(帝国データバンク引用) | 12,389(本稿の引き算) |
「11年連続で増加」の中身は、個人の廃業を法人の新規参入が上回っている、ということです。帝国データバンクが「新規参入業者の増加に伴う競争が激化していることで、一定の淘汰が進んでいる」と書くのはこの構図で、淘汰されているのは主に、個人と、法人化して間もない小さい会社です。
「DX格差」を中小の側から読み直す
帝国データバンクは、倒産が高止まりしている理由の一つとして、「オンライン内見やAIなどを活用した分譲・賃貸情報サイトを展開し、顧客の囲い込みや利便性の向上を図っている大手仲介業者と、DX化への投資が難しい中小零細事業者との間で、顧客獲得の格差が広がっていること」を挙げています。文末は「可能性がある」です。資料はそこまでしか言っていないので、本稿もそこまでにします。
そのうえで、中小の側からこの一文を読み直すと、引っかかるのは「投資が難しい」ではなく「顧客獲得の格差」のほうです。大手のサイトが顧客を囲い込むのは、お客様が最初に触れる場所を押さえているからで、中小がそこで張り合っても勝てません。中小に残っている顧客獲得の入口は、ポータルサイトの反響と、管理物件からの紹介と、既存のお客様の再来です。この3つは、システムの大小より、反響が来てから最初の連絡までの時間と、管理しているオーナーが次の物件も任せるかで決まります。どちらも投資ではなく、運用の話です。
私たちの会社で言えば、投資が難しいのはその通りで、自社サイトで大手と競う予算はありません。やっているのは、反響が入った時刻と最初に返した時刻を記録して、その差を毎週見ることだけです。数字が出ると、遅れている曜日と担当が見えます。これは「DX投資」というほどのものではなく、記録を残す習慣です。帝国データバンクの言う格差は、投資額の差として読むと諦めるしかありませんが、初動の時間の差として読めば、明日から詰められます。
仲介の売上と管理の売上|毎月見る3つの数字
不動産代理・仲介業の倒産で負債5,000万円未満が7割という事実は、売上の構造で説明できます。仲介手数料は成約のたびに入る売上で、翌月に同じ額が入る保証はありません。固定費(人件費・家賃・ポータル掲載料)は毎月出ていきます。成約が2か月続けて止まると、負債5,000万円未満の会社の手元資金は尽きます。倒れる会社の負債が小さいのは、借入で耐える力そのものが小さかった、ということでもあります。
これに対して管理料は毎月入る売上です。中小の不動産会社が仲介だけでなく管理を持つ意味は、売上の大きさではなく、固定費を毎月入る売上でどこまで賄えるかにあります。本稿はこれを「管理料カバー率」と呼びます(資料にある指標ではなく、本稿が置いた名前です)。
| 毎月見る数字 | 出し方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 1. 反響の初動時間 | 反響が入った時刻から、最初に電話かメールを返した時刻までの差。週ごとの中央値 | 「顧客獲得の格差」のうち、自社で詰められる部分。担当・曜日別に出すと遅れの原因が見える |
| 2. 管理料カバー率 | その月の管理料収入 ÷ その月の固定費(人件費・家賃・掲載料・システム費) | 仲介の成約がゼロの月に、何割の固定費が自動で埋まるか。100%に近いほど、成約の波に耐えられる |
| 3. 預り金の一致 | 家賃・敷金の預り口座の残高と、帳簿上の契約ごとの預り金合計との差。月末に確認 | 賃貸住宅管理業法第16条の分別管理ができているか。差がゼロでない月は、固有財産と混ざっている |
3つ目は、経営指標というより法律上の義務です。賃貸住宅管理業法第16条は、管理受託契約にもとづいて受領する家賃・敷金・共益費その他の金銭を、自己の固有財産や他の管理受託契約の金銭と分別して管理することを求めています。施行規則第36条はその方法を、預り金を管理する口座を固有財産の口座と明確に区分し、どの管理受託契約の金銭かが帳簿で直ちに判別できる状態にすること、と定めています。倒産する会社の多くは、この分別が崩れてから倒れます。預り金で固定費を払い始めた月が、後から見れば分岐点です。月末に残高と帳簿を突き合わせる作業は、オーナーのためであると同時に、自社が分岐点を越えたかどうかを知る唯一の方法です。
取引先が倒れたとき|営業保証金と分別管理
年間130件の倒産があるということは、客付けをお願いしている仲介会社、物件を預けている管理会社、あるいは自社が客付けしている元付け会社の中に、倒れる会社が出るということです。そのとき預り金や精算金がどうなるかを、制度の側から整理します。
営業保証金は、宅建業者どうしの取引には使えない
宅建業法第25条は、宅建業者に営業保証金の供託を求めています。額は施行令第2条の4で、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき500万円です。保証協会に加入する場合は弁済業務保証金分担金で、施行令第7条により主たる事務所60万円、その他の事務所30万円です。宅建業者が倒産したとき、取引の相手方はこの営業保証金(または保証協会の弁済業務保証金)から弁済を受けられます。
ただし、条文には除外があります。第27条第1項は「宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)」と定め、第64条の8第1項も同じ括弧書きを置いています。つまり、倒産した会社と取引していたのが宅建業者であれば、営業保証金からの還付は受けられません。客付け会社に払うはずだった手数料の分配、元付け会社に預けていた申込金、業者間で精算する広告料。これらは制度の外です。一般のお客様を守る仕組みであって、業者を守る仕組みではない、と条文が言っています。
管理会社が倒れたとき、オーナーの預り金はどうなるか
賃貸住宅管理業法は、管理業者が破産手続開始の決定により解散したときは、破産管財人が30日以内に国土交通大臣へ届け出ること(第9条第1項第3号)、届出があれば登録は効力を失うこと(同条第2項)を定めています。一方で第27条は、登録が失われた後も、締結していた管理受託契約の業務を結了する目的の範囲内では、なお管理業者とみなすと定めています。契約は突然消えず、結了のための業務は続く建て付けです。
それでも、預り金が固有財産と混ざっていれば、破産財団の中でオーナーの家賃と会社の運転資金の区別がつきません。第16条の分別管理は、まさにこの場面のための規定です。口座が分かれ、帳簿で契約ごとに判別できる状態なら、どの金銭が誰のものかを示せます。オーナーとして管理会社を選ぶとき、あるいは自社が管理を受託するときに見せるべきものは、管理戸数の多さではなく、預り金の口座が固有財産と分かれていることと、月末の残高と帳簿が一致していることです。
制度で守れない分は、締めの早さで守る
業者間の精算は、制度で守られない以上、締めを早くするしかありません。客付け会社との手数料の分配は成約月のうちに精算する。元付け会社に預ける申込金は、預けた日と返金の期日を書面に残す。広告料の請求は月内に出し、翌月に持ち越さない。相手が倒れてから取り戻せる額は、営業保証金の外にいる限り、破産手続きの配当だけです。取り戻す仕組みがないのなら、取り戻す必要がない状態を保つ、という順番です。
9月中にやること5つ
- 反響の初動時間を1か月ぶん出す。反響管理の記録から、受信時刻と初回返信時刻の差を担当別・曜日別に並べます。中央値が1時間を超える担当と曜日を見つけるのが目的で、叱るのが目的ではありません。
- 管理料カバー率を直近3か月で計算する。管理料収入を固定費で割ります。50%を切っているなら、成約が2か月止まったときの資金繰りを表にして、代表が自分で見ます。
- 預り金の口座残高と帳簿を月末に突き合わせる。差があれば、その月に固有財産と混ざった取引を特定します。賃貸住宅管理業法第16条と施行規則第36条の要件そのものなので、立入検査の項目でもあります。
- 業者間の精算を月内で締める。客付け手数料の分配、広告料、申込金の預け・返金を、成約月または受領月のうちに終える取り決めを、主要な取引先と確認します。
- 管理を預けているオーナーに、分別管理の状態を1枚で見せる。預り口座が固有財産と分かれていること、月末の残高と帳簿が一致していることを、定期報告に添えます。管理会社の倒産が年130件近くある年に、オーナーが最も知りたい情報はこれです。
現場メモ|倒産の統計を自社の帳簿で読む
倒産の統計を読むたびに思うのは、86件の会社のほとんどは、倒れる半年前まで普通に営業していた、ということです。負債5,000万円未満の会社は、大きな投資に失敗して倒れるのではなく、成約が止まった月が2つ続き、預り金に手をつけ、そこから戻れなくなって倒れます。統計には「DX投資の格差」と書いてありますが、私たちのような規模の会社にとっての格差は、システムの有無ではなく、毎月の数字を見ているかどうかの差だと思っています。
私たちの会社では、自主管理の約100戸から入る管理料と家賃で固定費のどこまでを賄えているかを、月初に代表が自分で計算しています。この数字が悪い月は、仲介の成約を焦るのではなく、先に固定費のほうを見直します。焦って成約を追うと、初動の時間が伸びるという逆説があるからです。反響への返信が遅れる会社は、忙しい会社ではなく、余裕のない会社です。管理料カバー率は、その余裕を数字にしたものです。
よくある質問
Q1. 「過去最多に迫る」というのは、仲介業が不況だということですか?
資料はそう書いていません。帝国データバンクは、首都圏で大手の収入高が軒並み増加していると書いたうえで、新規参入の増加による競争と、大手と中小の顧客獲得の格差を理由に挙げています。市場が縮んでいるのではなく、市場が大きいところで小さい会社が競争に負けている、という読み方が資料に近いです。
Q2. 86件のうち賃貸管理会社は何件ですか?
分かりません。帝国データバンクの「不動産代理・仲介業」は売買仲介・賃貸仲介・管理をまとめた業種分類で、資料に業態別の内訳はありません。本稿も内訳を推測して書いていません。
Q3. 休廃業・解散は含まれますか?
含まれません。集計対象は「負債1,000万円以上、法的整理による倒産」です。負債1,000万円未満の倒産、裁判所の手続きを取らない廃業、解散、免許の更新をしなかった会社はこの外です。宅建業法第11条の廃業等の届出は別の統計になります。
Q4. 客付けをお願いしていた仲介会社が倒産しました。未払いの手数料の分配を営業保証金から受けられますか?
受けられません。宅建業法第27条第1項と第64条の8第1項は、弁済を受けられる者から「宅地建物取引業者に該当する者」を除いています。業者間の債権は、破産手続きの中で他の一般債権と同じ扱いになります。取り戻す仕組みがないので、精算を月内で締めることが唯一の備えです。
Q5. 管理を委託している会社が倒産したら、預けている家賃や敷金は戻りますか?
賃貸住宅管理業法第16条と施行規則第36条により、登録業者は預り金を固有財産と別の口座で管理し、帳簿で契約ごとに判別できる状態にする義務があります。分別ができていれば、どの金銭がオーナーのものかを示せます。ただし、分別が崩れていた場合の回収は破産手続きの中の話になります。倒産の前に、分別管理の状態を定期報告で確かめておくのが実務上の備えです。なお、登録が失われた後も、第27条により契約の業務を結了する範囲では管理業者とみなされます。
まとめ|増え続ける業者の中で、小さい会社が静かに消えている
2026年1〜8月の不動産代理・仲介業の倒産は86件、通年で約130件の見込みです。負債総額は1.66倍に増えましたが、それは5億円以上の数件が動かした数字で、件数の69.8%は負債5,000万円未満、関東と近畿で72.1%です。宅建業者は132,291業者で11年連続の増加、個人業者は20年で半分以下。増える法人と減る個人の入れ替わりの中で、小さい会社が倒れています。帝国データバンクはこれを「DX投資の格差」の可能性と書きました。中小の側から読めば、格差は投資額ではなく、反響の初動時間と、管理料が固定費を賄う割合と、預り金の分別に現れます。
制度の側では、営業保証金と弁済業務保証金は宅建業者どうしの取引を守りません。管理業者の分別管理は、自社の預り金がオーナーのものであることを示す唯一の根拠です。ウルスタくんでは反響の受信時刻と対応の記録、契約ごとの入金の履歴を同じ画面で残せるので、本稿の3つの数字はそこから出せます。関連する記事として、不動産業全体の倒産が過去10年で最多になったときの経営チェックリスト、賃貸住宅管理業の立入検査に備える自己点検、登録更新の手続き、9月の価格交渉促進月間と取引先との精算、退去防止と管理収入の安定も合わせてご覧ください。制度と数字の出典は次の章にまとめました。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月8日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 倒産86件、通年約130件の見込み、過去最多133件(2025年)、負債総額約79億8,300万円(前年同期約47億9,300万円・66.6%増)、負債5,000万円未満60件(69.8%)、10億円以上1件・5億円以上10億円未満4件、関東38件(44.2%)・近畿24件(27.9%)、集計期間と集計対象、「DX投資で大手と中小の格差が広がる」の分析、首都圏の大手の収入高 | 帝国データバンク「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」(2026年9月8日) |
| 年別推移(2020年83件・2021年71件・2022年69件・2023年120件・2024年119件・2025年133件・2026年1〜8月86件)、地域別の件数(2020〜2026年) | 同 レポート本体(PDF・2頁・グラフと地域別表) |
| 同日の発表文(PR TIMES 2026年9月8日15時27分) | PR TIMES 帝国データバンク「不動産代理・仲介業の倒産、過去最多に迫るペース 小規模事業者中心に高水準で推移」 |
| 9月8日の報道(調査の要点) | R.E.port「不動産仲介事業者の倒産、高水準で推移」(2026年9月8日) |
| 宅建業者数132,291(大臣3,158・知事129,133)、前年度比1,708業者(1.3%)増・11年連続、監督処分147件の内訳、行政指導592件、宅建士新規登録30,336人・総登録1,211,760人 | 国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」(令和7年10月3日) |
| 宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間):平成17年度末 合計131,251(法人105,448・個人25,803)、令和4年度末 合計129,604(法人116,230・個人13,374) | 同 参考資料(PDF) |
| 第11条(廃業等の届出・30日以内)、第25条(営業保証金の供託等)、第27条(営業保証金の還付・宅建業者に該当する者を除く)、第64条の8(弁済業務保証金の還付等) | e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)」 |
| 第2条の4(営業保証金の額:主たる事務所1,000万円・その他500万円)、第7条(弁済業務保証金分担金の額:主たる事務所60万円・その他30万円) | e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行令(昭和39年政令第383号)」 |
| 第9条(廃業等の届出・破産管財人・登録の失効)、第16条(分別管理)、第27条(登録の取消し等に伴う業務の結了) | e-Gov 法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)」 |
| 第36条(財産の分別管理:口座の区分と帳簿で直ちに判別できる状態) | e-Gov 法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和2年国土交通省令第83号)」 |
本稿の計算:86件÷132,291業者=0.065%(母集団の定義が異なるため厳密な倒産率ではありません)。令和6年度末の個人業者数12,389は、132,291から帝国データバンクが引用する法人数119,902を引いたもので、国土交通省の参考資料の令和6年度の行そのものは本稿で確認できていません。2022年から2025年の1.93倍、関東と近畿の72.1%も本稿の計算です。「管理料カバー率」は本稿が置いた指標で、公的な基準ではありません。個別の倒産企業の事情には触れていません。


