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賃貸住宅管理業の立入検査2026|是正指導率67.9%時代に中小管理会社が備える11項目セルフ監査SOPと指摘トップ3の直し方

もしあした地方整備局から「立入検査に伺います」と連絡が来たら、自信を持って帳簿と書面を出せるでしょうか。令和6年度の全国一斉立入検査では、検査を受けた賃貸住宅管理業者の67.9%が是正指導を受け、指摘の上位は締結時書面・従業者証明書・帳簿という「知らないまま放置された事務の穴」でした。本記事はウルスタ代表として宅建業を営み自社で210室を管理・客付けする立場から、(1)検査をめぐる3つの事実、(2)当日の流れ、(3)国交省データで見る指摘トップ11、(4)11項目セルフ監査SOP5ステップ、(5)サブリース併営時の追加チェック、(6)NGとFAQまでを、少人数の会社が今日から動ける粒度で整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
賃貸住宅管理業の立入検査2026|是正指導率67.9%時代に中小管理会社が備える11項目セルフ監査SOPと指摘トップ3の直し方
目次

もしあした、地方整備局から「立入検査に伺います」と連絡が来たら、自信を持って帳簿と書面一式を出せるでしょうか。国土交通省は賃貸住宅管理業法に基づき、毎年度、全国の賃貸住宅管理業者とサブリース業者への一斉立入検査を続けています。直近の令和6年度は全国187社が検査を受け、67.9%にあたる127社が是正指導を受けました。検査を受けた会社の3社に2社が、何らかの法令違反を指摘されている計算です。しかも指摘の中身は、悪質な違反よりも「書面の記載漏れ」「帳簿の様式不備」「従業者証明書を作っていない」といった、知らないまま放置された事務の穴が大半を占めます。2026年6月15日で管理業法の全面施行から丸5年。この5月29日にはマンション管理業者・住宅宿泊管理業者への令和7年度立入検査結果も公表され、不動産まわりの管理業に対する検査は完全に「恒例行事」になりました。本記事は、ウルスタ代表として宅建業を営み、自社で210室規模の賃貸住宅を管理・客付けする立場から、(1)検査をめぐる3つの事実、(2)検査当日に何が起きるか、(3)国交省データで見る指摘トップ11、(4)自社でできる11項目セルフ監査SOP(5ステップ)、(5)サブリース併営時の追加チェック、(6)避けるべきNGとよくある質問までを、少人数の会社が今日から動ける粒度で整理します。条文や様式の細目は、運用にあたって必ず国土交通省など提供元の最新情報を確認してください。

立入検査をめぐる3つの事実 — 是正指導率67.9%・検査の恒例化・施行5年

まず、検査がどれくらい現実的な話なのかを、公表データで押さえます。「うちのような小さな会社には来ないだろう」という感覚は、数字を見るともう成り立ちません。論点は「指導率の高さ」「検査の恒例化」「制度の節目」の3つです。

事実1:検査を受けた会社の3社に2社が是正指導を受けている

ひとつめは、指導率の高さです。国土交通省の公表によると、令和6年度の全国一斉立入検査では、187社の賃貸住宅管理業者・特定転貸事業者(サブリース業者)が検査を受け、うち127社が是正指導を受けました。指導率は67.9%で、前年度の59.2%から8.7ポイント上がっています。初回の令和4年度が97社中59社(60.8%)、令和5年度が179社中106社(59.2%)ですから、3年連続で「受けた会社の6割前後が指摘される」状態が続き、直近はむしろ悪化しました。国交省はこの結果を「一部の賃貸住宅管理業者等において法に対する理解不足がみられる」と総括しています。裏を返せば、検査される側の大半は故意の違反ではなく、義務の存在や様式の細目を知らないまま日常業務を回してしまっているということです。

事実2:検査は毎年の恒例行事になり、対象社数も増えている

ふたつめは、検査の定着です。賃貸住宅管理業への全国一斉立入検査は令和4年度に初めて実施され、以降、毎年度続いています。対象社数は97社、179社、187社と増えてきました。検査を担うのは国土交通省の各地方整備局・北海道開発局・沖縄総合事務局で、全国どの地域の会社にも検査の枠組みが及びます。さらに、この2026年5月29日には、マンション管理業者(112社検査・31社是正指導)と住宅宿泊管理業者への令和7年度立入検査結果が公表されました。賃貸管理・マンション管理・民泊管理と、不動産まわりの管理業全般で、立入検査と結果公表が毎年の運用として完全に定着したということです。賃貸住宅管理業の令和7年度分の結果も、例年のペースであれば近く公表される時期にあります。次の検査サイクルは、もう始まっています。

事実3:全面施行5年。「知らなかった」が通らない段階に入った

みっつめは、制度の節目です。賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)は2021年6月15日に全面施行され、2026年6月15日でちょうど5年を迎えます。登録業者数は令和6年度末で9,881社にのぼり、初回5年の登録更新もすでに始まっています。国は是正指導にとどまらず「悪質な法令違反に対しては、法に基づき厳正かつ適正に対処する」と毎年明言しており、業務改善命令や業務停止命令、登録の取消しといった監督処分の枠組みも整っています。施行直後の「周知期間」はとうに終わり、制度を知らなかったこと自体が経営リスクになる段階です。あわせて、賃貸住宅管理業のあり方を見直す有識者会議の議論も進んでおり、規制は緩む方向ではなく、実効性を高める方向に動いています。

ここが核心:指摘の大半は「事務の穴」で、自分で見つけられる
令和6年度に指摘された違反の上位は、管理受託契約の締結時書面(60件)、従業者証明書(42件)、帳簿の備付け(41件)です。いずれも高度な法解釈ではなく、書式の記載項目・証明書や標識の作成・帳簿の付け方という、チェックリストで自己点検できる事務です。つまり、検査で慌てる会社と平然と出せる会社の差は、年に一度のセルフ監査をやっているかどうかの差にすぎません。

立入検査で何が起きるのか — 当日の流れと見られるもの

次に、検査の実際を押さえます。立入検査は、法律に定められた報告徴収・立入検査の権限に基づいて、地方整備局等の職員が事務所に立ち入り、帳簿や書類を確認し、質問するものです。一般には日程調整の連絡があったうえで実施され、抜き打ちで突然踏み込まれるという性質のものではありませんが、検査を拒んだり妨げたりすれば罰則の対象になり得ます。連絡が来てから書類を作り始めるようでは間に合わない、と考えてください。

当日に確認されるのは、おおむね次のようなものです。管理受託契約の重要事項説明書と契約締結時書面の控え、帳簿(管理受託契約ごとの法定事項の記録)、従業者証明書、事務所の標識、オーナーへの定期報告の控え、家賃等を管理する口座の分別管理の状況、業務管理者の選任状況。サブリースを営んでいれば、広告物や特定賃貸借契約の書面、業務状況調書も対象になります。共通するのは「日常業務で当たり前に発生しているはずの書類が、法定の様式と中身で残っているか」を見られるという点です。検査後、違反があれば是正指導を受け、是正した内容を報告して完結します。令和6年度も指摘を受けた127社すべてが是正を確認されており、誠実に対応すれば直ちに処分という話にはなりません。怖いのは検査そのものではなく、何も準備しないまま迎えることです。

指摘の多い義務違反トップ11 — 国交省データで読む「自社の穴」

では、実際に何が指摘されているのか。国交省が公表した令和6年度の是正指導の内訳を、条文ごとに整理します。この表がそのまま、自社セルフ監査のチェックリストの骨格になります。件数の右のかっこ内は令和5年度の件数です。

条文義務の内容令和6年度の指導件数よくある不備
法第14条管理受託契約の締結時書面の交付60件(57件)登録年月日・登録番号や、入居者への周知に関する事項の記載漏れ
法第17条従業者証明書の携帯42件(22件)従業者証明書そのものを作成していない
法第18条帳簿の備付け41件(37件)事業年度ごとに閉鎖・保存していない、契約年月日や管理業務の内容等の記載漏れ
法第13条管理受託契約の締結前書面(重要事項説明)35件(26件)登録番号や入居者への周知事項など法定記載事項の不備
法第19条標識の掲示22件(13件)標識未作成、法定様式を使っていない
法第20条委託者(オーナー)への定期報告20件(16件)報告未実施、報告書の記載不備、オーナーが内容を理解したことの確認不足
法第16条財産の分別管理7件(2件)家賃等を受け取る口座と自社固有財産の口座を明確に区分していない
法第32条業務状況調書等の閲覧(サブリース)26件(24件)業務状況調書を作成していない、法定様式の未使用
法第31条特定賃貸借契約の締結時書面(サブリース)19件(17件)維持保全の実施状況の報告に関する事項などの記載漏れ
法第30条特定賃貸借契約の締結前書面(サブリース)13件(7件)維持保全の実施方法・費用分担に関する事項などの記載漏れ
法第28条誇大広告等の禁止(サブリース)6件(7件)家賃の変更条件や契約解除に関する事項(借地借家法関係)の記載がない

上位3つを少し深掘りします。第14条の締結時書面(60件)と第13条の重要事項説明(35件)は、書面を交付していないケースよりも「交付しているが法定記載事項が欠けている」ケースが典型です。とくに自社の登録年月日・登録番号、再委託に関する事項、入居者に対する管理業務の内容・実施方法の周知に関する事項は、施行前から使っている古い雛形には存在しない項目で、雛形を更新しないまま使い回している会社が軒並み指摘されています。第17条の従業者証明書(42件)は前年のほぼ倍増で、「存在自体を知らなかった」が最多パターン。業務に従事する人に携帯させる証明書を会社が作る義務で、宅建業の従業者証明書とは別物です。第18条の帳簿(41件)は「会計帳簿ならある」という誤解が典型で、求められているのは管理受託契約ごとに契約年月日・契約の対象・報酬の額・管理業務の内容などを記録し、事業年度ごとに閉鎖して保存する管理業法上の帳簿です。いずれも、知ってさえいれば1日で直せるものばかりです。

11項目セルフ監査SOP — 5ステップで「いつ来ても出せる」状態にする

ここからは、上の11項目を自社で点検する手順を、5つのステップに落とし込みます。かける時間は、初回でも2〜3日、慣れれば半日です。特別な投資は要らず、照合する・作る・記録する、の積み上げで完結します

ステップ1:自社に適用される義務を棚卸しする

最初に、11項目のうち自社にどれが適用されるかを確定します。判断軸は3つ。賃貸住宅管理業の登録をしているか(200戸以上の管理戸数があれば登録は義務)、管理受託方式で受けている契約があるか、サブリース(特定転貸)を営んでいるか。登録業者であれば第13条から第20条までの義務が戸数に関係なくかかり、サブリースを営んでいれば登録の有無にかかわらず第28条から第32条のサブリース規制がかかります。この時点で、上の表を自社用に並べ替えた「うちのチェック表」を1枚作ってください。以降のステップはこの表に沿って進めます。

ステップ2:書面の雛形を国交省の記載例と突合する

次に、重要事項説明書(第13条)と締結時書面(第14条)の自社雛形を、国土交通省が公開している記載例・標準管理受託契約書と一条ずつ照合します。国交省は立入検査の場でも「重要事項説明書記載例」「賃貸住宅標準管理受託契約書」「管理業法FAQ集」などの資料を周知しており、検査官が照合するのも事実上この水準です。つまり、答え合わせの正解が先に公開されている試験です。自社の登録年月日・登録番号、再委託に関する事項、入居者への周知に関する事項、委託者への報告に関する事項など、指摘頻出の項目を重点的に確認し、欠けていれば雛形を直します。雛形を直せば、以降の契約はすべて適法な書面になります。過去の契約分は、次回更新時に新書式で巻き直すルールを決めておきます。

ステップ3:証明書・標識・帳簿・口座の「現物」を確認する

三つめは、書面以外の現物です。従業者証明書(第17条)は全従業者分を作成し携帯させているか。標識(第19条)は法定様式で事務所の見やすい場所に掲示しているか。帳簿(第18条)は管理受託契約ごとの法定事項を記録し、事業年度ごとに閉鎖して保存しているか。家賃等を受け取る口座(第16条)は自社の固有財産の口座と分かれているか。この4点は「あるか・ないか」がはっきりしているぶん、検査では言い逃れがきかない一方、作ると決めれば早い項目です。従業者証明書と標識は国交省の様式に沿って作れば1日で揃います。帳簿は、管理ソフトやスプレッドシートの項目を法定事項に合わせて整え、年度末に閉鎖・出力して保存する運用を決めれば足ります。

ステップ4:定期報告の「出した後」まで記録に残す

四つめは、オーナーへの定期報告(第20条)です。指摘されるのは、報告をしていないケースだけでなく、報告書に対象期間・管理業務の実施状況・入居者からの苦情の発生と対応状況といった法定事項が欠けているケース、そして「オーナーが内容を理解したことの確認」が残っていないケースです。メールで送って終わり、ではなく、返信や確認の記録まで残して初めて義務を満たしたといえる運用が求められています。報告書の様式を法定事項に合わせて整えたうえで、送付日・相手・確認の取れた日を一覧で記録する欄を作ってください。報告と確認の記録は、検査対応であると同時に、オーナーとの解約トラブルで自社を守る証拠にもなります。

ステップ5:年1回の定例監査に落とし込む

最後に、これを一度きりで終わらせない仕組みです。セルフ監査を毎年6月の年間業務として固定し、担当者と期限を決めます。6月にする理由は、国交省の検査結果の公表が例年5月前後で、最新の指摘傾向を反映してチェック表を更新できるからです。あわせて、書式を変更したとき・新しい従業者が入ったとき・サブリースなど新しい事業を始めたときに、チェック表を見直すトリガーも決めておきます。是正した項目は「いつ・何を・どう直したか」を一行でも記録に残す。この記録の蓄積が、万一検査を受けたときに、法令遵守に取り組む会社であることを示す何よりの材料になります。

現場感覚で言うと
当社で初めてセルフ監査をやったとき、一番ひやりとしたのは従業者証明書でした。宅建業の従業者証明書はあるのに、管理業法のそれは誰も作っていなかった。気づいてしまえば様式に沿って作るだけで、半日で全員分が揃いました。帳簿も、管理ソフトの項目を法定事項に合わせて一度整えてからは、年度末に閉鎖して保存するだけです。立入検査対策は、つまるところ「知っているかどうか」で、知ったその日からコストはほとんどかかりません。逆に、知らないまま検査の連絡を受けてから揃えるのは、時間も心理的な負担もまるで違います。

サブリースを併営している場合の追加チェック

自社で借り上げて転貸するサブリース(特定転貸)を一部でも営んでいる場合は、追加の点検が必要です。サブリース規制は賃貸住宅管理業の登録の有無にかかわらず適用され、令和6年度も誇大広告(第28条)、特定賃貸借契約の重要事項説明(第30条)・締結時書面(第31条)、業務状況調書の閲覧(第32条)で計64件が指摘されています。とくに見落としやすいのが第32条の業務状況調書で、事業の状況を記載した書類を事務所に備え置き、オーナーの求めに応じて閲覧させる義務ですが、「作成していない」という指摘が26件と、サブリース関係では最多でした。また、オーナー向けの勧誘資料や自社サイトの文言が「家賃保証」「空室の心配なし」といった表現のままなら、家賃が減額され得ることや契約解除の条件(借地借家法の適用関係)の記載とあわせて、誇大広告に当たらないかを点検してください。サブリースは1棟だけの取り扱いでも規制の対象です。「メインは管理受託だから」という線引きは通用しません。

立入検査対応で避けるべき5つのNG

最後に、検査をめぐってやりがちな失敗を5つ挙げます。いずれも「うちは大丈夫」という思い込みから生じるものです。

NG1:「小さい会社には来ない」と決めつける

検査対象は年々増え、全国の地方整備局等が地域ごとに選定しています。会社の規模で免除される枠組みはなく、200戸未満でも登録していれば義務は全部かかります。「来ないだろう」は対策ではありません。来ても困らない状態を作るのが対策です。

NG2:施行前の古い雛形を使い回す

締結時書面と重要事項説明の指摘の典型は、古い雛形の記載漏れです。登録番号や入居者への周知事項は、法施行前の書式には存在しません。雛形を一度国交省の記載例に合わせれば、以降の契約はすべて守られます。逆に放置すれば、契約のたびに違反が積み上がります。

NG3:帳簿を会計帳簿で代用できると考える

管理業法の帳簿は、管理受託契約ごとの契約内容・報酬・業務の実施状況を記録する専用の帳簿で、仕訳帳や総勘定元帳では代わりになりません。事業年度ごとの閉鎖・保存まで含めて義務です。「経理はちゃんとしている」と「帳簿義務を満たしている」は別の話です。

NG4:従業者証明書と標識を「知らなかった」まま放置する

令和6年度、従業者証明書の指摘は42件とほぼ倍増し、標識も22件に増えました。どちらも作れば終わる義務で、作っていない理由のほとんどは「知らなかった」です。この記事を読んだ今日が、作る日です。

NG5:検査の連絡が来てから慌てて整える

日程調整の連絡から検査日までに、帳簿の遡及整備や全契約書面の巻き直しを終えるのは現実的ではありません。付け焼き刃の対応は検査官にも分かります。年1回のセルフ監査で平時から整えておくことが、結局いちばん安上がりです。

よくある質問

Q1. 立入検査の対象はどうやって選ばれるのですか。事前に連絡は来ますか。
対象の選定基準は公表されていませんが、各地方整備局・北海道開発局・沖縄総合事務局が地域ごとに実施し、対象社数は年々増えています。一般には日程調整の連絡を経て実施されますが、法律上、報告徴収・立入検査の権限が定められており、検査を拒んだり妨げたりした場合の罰則もあります。連絡が来てから準備を始めるのではなく、平時から出せる状態にしておくことが前提です。

Q2. 管理戸数が200戸未満で登録もしていない会社には関係ありませんか。
登録していなければ第13条から第20条の登録業者の義務はかかりませんが、サブリース(特定転貸)を1棟でも営んでいれば、誇大広告の禁止や重要事項説明などのサブリース規制は登録の有無に関係なく適用され、検査の対象にもなり得ます。また、200戸以上を管理しているのに未登録であれば、それ自体が法律違反です。管理戸数が増えてきた会社は、登録要否の確認から始めてください。

Q3. 指摘を受けたら、すぐに処分や公表をされるのですか。
多くの場合は是正指導を受け、是正した内容を報告して完結します。令和6年度も是正指導を受けた127社すべてが是正等を確認されています。ただし、是正に応じない場合や悪質な違反の場合は、業務改善命令・業務停止命令・登録の取消しといった監督処分や罰則の対象になり、処分は公表されます。誠実に直せば致命傷にはならない一方、放置や虚偽は会社の信用に直結すると考えてください。

Q4. 書式は何に合わせておけば安全ですか。
国土交通省が公開している「管理受託契約及び特定賃貸借契約の重要事項説明書記載例」「賃貸住宅標準管理受託契約書」「特定賃貸借標準契約書」、そして「賃貸住宅管理業法FAQ集」「解釈・運用の考え方」です。これらは立入検査の場で検査側が周知している資料そのもので、事実上の採点基準といえます。自社書式をこれらに揃えておくのが、最短で確実な対策です。

Q5. 重要事項説明や書面交付を電子で行っている場合の注意点は。
電磁的方法による交付も認められていますが、法定記載事項が同じであることに加え、相手方の承諾の取得や、出力して書面にできる状態での提供といった要件があります。電子化したから安心なのではなく、電子の書式にも紙と同じ記載漏れの問題は起こります。雛形の照合は電子・紙を問わず必要です。

Q6. 帳簿には具体的に何を書き、いつまで保存すればよいですか。
管理受託契約ごとに、委託者、契約年月日、契約の対象となる賃貸住宅、受託した管理業務の内容、報酬の額などの法定事項を記録します。帳簿は事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。管理ソフトやスプレッドシートでの管理でも、法定事項が揃い、年度ごとに閉鎖・保存できていれば運用できます。詳細な項目は施行規則と国交省FAQで確認してください。

Q7. まず何から始めればよいですか。
令和6年度の指摘トップ3である、締結時書面の雛形・従業者証明書・帳簿の3点を今週中に確認することです。雛形は国交省の記載例と照合し、従業者証明書は全員分の有無を確認し、帳簿は法定事項と年度閉鎖の運用を確認する。この3点だけで、指摘件数ベースでは上位の穴の大半をふさげます。そのうえで、本記事の11項目チェック表を使った年1回のセルフ監査を6月の定例業務にしてください。

まとめ:立入検査は「来てから対応」ではなく「来ても平気」をつくる

賃貸住宅管理業への全国一斉立入検査は、令和4年度から毎年続く恒例の運用になり、令和6年度は187社中127社、67.9%が是正指導を受けました。指摘の上位は、締結時書面の記載漏れ、従業者証明書の未作成、帳簿の不備と、いずれも知ってさえいれば短期間で直せる事務の穴です。全面施行から5年を迎える2026年は、「知らなかった」が通らない段階に入っています。幸い、答え合わせの基準は国交省の記載例や標準契約書として先に公開されており、検査で見られるポイントも毎年の公表資料で分かっています。本記事の11項目チェック表とセルフ監査SOPの5ステップ — 義務の棚卸し、雛形の突合、現物の確認、報告と記録、年1回の定例化 — を回せば、少人数の会社でも「いつ来ても出せる」状態は十分つくれます。立入検査対策の本質は、検査官のためではなく、オーナーと入居者に対して胸を張れる管理の土台を整えることです。施行5年の節目のこの6月、自社の帳簿と書面を一度棚卸ししてみてください。今日も一件、丁寧に積み上げていきましょう。

帳簿・契約書面・オーナー報告を、ばらけさせないために
ウルスタは、中小不動産会社の管理受託契約・帳簿事項・オーナーへの定期報告とその確認記録を物件・契約にひもづけて一元管理できる、実務に根ざした業務クラウドを提供しています。日常業務の記録がそのまま法定帳簿と報告の土台になる状態を整えることが、立入検査にもオーナーからの信頼にも効く最短の備えです。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向け実務メディアを運営する傍ら、自社で210室規模の賃貸住宅を管理・客付けする。本記事は自社でのセルフ監査運用の実感と、国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国一斉立入検査結果」(令和4〜6年度)ほか公開情報に基づく実務整理として執筆。検査の運用や様式の細目は変わり得るため、対応にあたっては必ず国土交通省など提供元の最新情報を確認すること。

参照: 国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国一斉立入検査結果(令和6年度)」(令和7年5月15日公表・検査187社/是正指導127社) / 同(令和5年度・検査179社/是正指導106社、令和4年度・検査97社/是正指導59社) / 国土交通省「マンション管理業者への全国立入検査結果(令和7年度)」「住宅宿泊管理業者への全国立入検査結果(令和7年度)」(2026年5月29日公表) / 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(2021年6月15日全面施行)および同法施行規則 / 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」「重要事項説明書記載例」「賃貸住宅標準管理受託契約書」「賃貸住宅管理業法FAQ集」 / いずれも2025〜2026年時点の公開情報