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マンション管理計画認定制度の実務2026|区分所有法改正で高まる管理の価値、認定取得の進め方と売買での活かし方

「管理を買え」と言われるとおり、分譲マンションの価値は管理組合の運営で大きく変わります。見えにくい管理の質を市区町村が認定する管理計画認定制度のしくみ、メリット、取得の進め方、そして売買・管理の現場での活かし方を、現場目線で解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
マンション管理計画認定制度の実務2026|区分所有法改正で高まる管理の価値、認定取得の進め方と売買での活かし方
目次

「管理を買え」とよく言われるとおり、分譲マンションの価値は建物のスペックだけでなく、管理組合がどれだけきちんと運営されているかで大きく変わります。とはいえ、管理の良し悪しは外から見えにくく、買主にも売主にも判断が難しいのが実情です。その「見えにくい管理の質」を、市区町村という第三者が一定の基準で認定するのが、マンション管理計画認定制度です。2026年4月に施行された改正区分所有法・老朽化マンション対策の流れを受けて、マンション管理への関心はこれまで以上に高まっています。本記事は、ウルスタ代表として宅地建物取引業を営む立場から、管理計画認定制度のしくみと認定基準、得られるメリット、そして中小不動産会社が売買・管理の現場でこの制度をどう活かすかを、現場目線で整理します。区分所有法の改正で管理組合運営が見直される今こそ、制度を理解しておきたいところです。

マンション管理計画認定制度とは何か、その出発点

マンション管理計画認定制度は、2022年4月に始まった、比較的新しいしくみです。根拠となるのは「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)で、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たしている場合に、その所在地の市区町村が「適切に管理されているマンション」として認定する制度です。認定の事務を担うのは、原則としてマンションが所在する地方公共団体で、申請するのは管理組合です。区分所有者個人ではなく、組合としての意思決定を経て申請する点が、この制度の性格をよく表しています。

背景にあるのは、全国のマンションストックの高経年化です。築40年を超える分譲マンションは年々増え続け、修繕積立金の不足や管理組合の担い手不足、総会が成立しないといった問題が各地で表面化しています。建物は適切に手を入れれば長く使えますが、その前提となるのが管理組合の健全な運営です。そこで、管理の質を外から見える形にし、良好な管理を続けるインセンティブを与えようというのが、この認定制度のねらいとされています。言い換えれば、建物という「ハード」だけでなく、管理組合の運営という「ソフト」を評価の対象に据えた制度だと整理できます。

認定するのは「建物」ではなく「管理のしくみ」
管理計画認定でチェックされるのは、建物の耐震性能やデザインそのものではなく、管理組合が長期的に建物を維持していける体制を整えているかどうかです。総会や理事会がきちんと開かれているか、長期修繕計画があり、それに見合った修繕積立金が確保されているか、管理規約が整備されているか——こうした運営の土台が問われます。だからこそ、新築の豪華なマンションでも管理がおろそかなら認定は難しく、築年数が経っていても運営がしっかりしていれば認定の対象になりえます。建物の新しさと管理の質は別ものだ、という視点がこの制度の核心です。

なぜ今、管理の「見える化」が注目されるのか

この制度が改めて注目を集めているのは、2026年4月に施行された区分所有法の改正という大きな流れがあるからです。今回の改正では、老朽化したマンションの建替えや管理に関する意思決定をしやすくする方向で、決議のしくみなどが見直されました。背景には、管理組合の高齢化や所有者の所在不明などにより、必要な決議が進まず再生が滞るマンションが増えているという課題があります。「管理をどう続けるか」「老朽化にどう備えるか」が、いよいよ社会全体のテーマになってきた局面だといえます。

こうした流れのなかで、管理計画認定制度は、管理組合が自らの運営状況を点検し、足りない部分を整えるきっかけとして位置づけられつつあります。認定を目指す過程で、長期修繕計画を見直し、修繕積立金の水準を確認し、管理規約を最新の標準的な内容に近づける——その作業自体が、マンションの将来の備えになります。認定はゴールではなく、管理を見直す入口だと考えると分かりやすいかもしれません。買主・売主の側でも、管理状況を客観的に確かめたいというニーズは確実に高まっており、第三者の認定という分かりやすい指標への期待が増しています。

認定の基準と、管理計画でチェックされる項目

認定を受けるには、国が定める基準に沿って、いくつかの観点で管理体制が整っていることが求められます。細かな要件は自治体によって運用が異なる部分もありますが、おおまかには次のような領域が確認されると整理できます。あくまで全体像の目安として押さえてください。

確認される領域主に問われること
管理組合の運営総会が定期的に開催されているか、管理者等が選任され連絡先が明確か
管理規約規約が整備され、災害時の対応や情報開示などの定めがあるか
管理組合の経理管理費・修繕積立金の会計が区分経理され、必要な情報が管理されているか
長期修繕計画計画が作成・定期的に見直され、一定の期間を見通した内容になっているか
修繕積立金長期修繕計画に照らして、積立金の額が著しく不足していないか

これらのうち、現場で特につまずきやすいのが長期修繕計画と修繕積立金の関係です。計画はあっても何年も見直されていなかったり、計画上の必要額に対して実際の積立額が大きく足りていなかったりするケースは少なくありません。認定の準備とは、つまるところ「将来必要になる修繕費を、いまの積立で本当に賄えるのか」を直視する作業でもあります。多くの管理組合にとって耳の痛いテーマですが、ここを避けては老朽化への備えは進みません。認定を目指す過程で、この現実と向き合うこと自体に意味があるといえます。

認定を受けることで得られるメリット

では、認定を受けると具体的にどのような利点があるのでしょうか。代表的なものを整理すると、大きく三つの方向に分かれます。第一に、金融面での優遇です。認定を受けたマンションでは、住宅金融支援機構の【フラット35】の金利が一定期間引き下げられる取り扱いや、共用部分のリフォーム融資について金利が引き下げられる取り扱いがあるとされています。住宅ローンの金利優遇は、購入を検討する人にとって分かりやすいメリットになります。

第二に、税制面での可能性です。管理計画の認定を受け、長寿命化に資する一定の大規模修繕工事を行ったマンションについて、固定資産税が軽減される税制(いわゆるマンション長寿命化促進税制)が設けられており、認定はその前提となる要件のひとつとされています。ただし、税制の適用には工事の内容や時期など別途の要件があり、認定を受ければ自動的に税が下がるわけではありません。要件や適用期限は変わりうるため、実際の適用にあたっては税理士や所管の自治体への確認が欠かせません。

第三に、市場での評価です。「市区町村に管理を認定されたマンション」という事実は、買主にとって安心材料になり、売却の場面で物件の魅力を裏づける材料になりえます。管理の良し悪しは外から見えにくいからこそ、第三者の認定という客観的な裏づけは、価格や成約のスピードに良い影響を与える可能性があります。あわせて、認定を目指す過程で管理組合の意識が高まり、管理水準が維持・向上しやすくなるという効果も指摘されています。これは数字には表れにくいものの、長い目で見れば資産価値を支える最も大きな要素かもしれません。

認定は「管理が良好な一定の水準」を示すもので、将来の安全や価値を保証するものではない
注意したいのは、認定があれば建物が絶対に安全だとか、価格が必ず上がるといった保証ではないという点です。認定は申請時点で一定の管理基準を満たしていることを示すもので、その後の運営や市況によって状況は変わります。また、認定の事務を行っていない自治体もあり、すべてのマンションが申請できるわけではありません。制度を案内する際は、メリットを過度に強調せず、「管理を見直し、客観的な裏づけを得るための一つの手段」という等身大の説明を心がけたいところです。

現場メモ — 「管理が見えない」ことが売買のブレーキになった一件

以前、築25年ほどの中古マンションの売却を預かったときのことです。建物自体はよく手入れされていて、内見した買主候補の反応も悪くありませんでした。ところが商談が進むにつれ、買主側から「修繕積立金は足りているのか」「大規模修繕の計画はどうなっているのか」という質問が繰り返し出てきました。管理組合に確認すると、長期修繕計画はあるものの数年見直されておらず、すぐに明快な資料を出せる状態ではありませんでした。

結局、その案件は資料を整えるのに時間がかかり、買主の購入意欲が冷めてしまう一歩手前まで行きました。最終的にはまとまりましたが、「管理がきちんとしているかどうかを、その場で示せる材料がない」ことが、いかに売買のブレーキになるかを痛感した一件でした。もしこのマンションが管理計画の認定を受けていれば、「市区町村に認定された管理体制です」という一言と認定の事実が、買主の不安を入り口で和らげてくれたはずです。

この経験以降、管理組合とお付き合いのある物件では、機会があれば「管理状況を客観的に示せる準備をしておくと、いざ売却というときに有利になります」とお伝えするようにしています。認定制度は、区分所有者が住んでいる間の安心だけでなく、いつか手放すときの「管理の質を証明する手段」としても効いてきます。管理の見える化は、住む人にとっても売る人にとっても価値がある——それを現場で実感した出来事でした。

認定取得の進め方と、つまずきやすいポイント

認定取得は管理組合が主体となって進めますが、不動産会社やマンション管理士などの専門家が伴走することで、ぐっと現実的になります。大まかな流れと、現場でつまずきやすいポイントを整理します。

1. 自治体が認定事務を行っているか確認する。まず、マンションの所在地の市区町村が管理計画認定の事務を実施しているかを確認します。実施していない自治体では申請できないため、ここが出発点になります。

2. 現状を基準に照らして点検する。総会の開催状況、管理規約、会計、長期修繕計画、修繕積立金の水準などを、認定基準に照らして棚卸しします。何が足りていて何が不足しているかを洗い出す段階で、管理の課題が見えてきます。

3. 不足部分を整える。長期修繕計画が古ければ見直し、規約が標準的な内容と乖離していれば改定を検討します。修繕積立金が不足している場合は、値上げや計画の調整といった、組合内での合意形成が必要になります。ここが最も時間と労力のかかる山場です。

4. 管理組合の合意を得て申請する。必要な準備が整ったら、総会での決議など組合としての手続きを経て、自治体(または管理計画の事前確認を行う仕組みを通じて)に申請します。マンション管理士などの専門家による事前確認を活用できる場合もあります。

最大の関門は、言うまでもなく修繕積立金や長期修繕計画にまつわる合意形成です。値上げの話は、どの管理組合でも歓迎されにくいものです。だからこそ、「認定を取ること」そのものを目的にするより、「認定をきっかけに、将来の備えを組合みんなで確認する」という対話の進め方が現実的です。認定はあくまで結果であって、本質は管理を見直すプロセスにあると捉えると、組合の納得も得やすくなります。

中小不動産会社としての関わり方

では、中小不動産会社はこの制度とどう関わればよいのでしょうか。管理組合の運営そのものはマンション管理会社や管理組合の領分ですが、売買仲介や管理を手がける不動産会社だからこそ提供できる価値があります。立場ごとに提案を整理すると、次のようになります。

関わり方こんな場面で提供できる価値
売却前の準備提案管理状況を示す資料が整っていない売主・管理組合認定の有無や管理資料の整備が、売却時の安心材料になると助言する
買主への説明強化管理の質を気にする買主が増えている局面認定マンションであることや管理状況を、根拠を添えて分かりやすく説明する
管理組合への情報提供制度を知らない、検討していない管理組合認定のメリットと進め方、専門家との橋渡しを情報として提供する
専門家との連携長期修繕計画や規約の見直しが必要なケースマンション管理士など適切な専門家につなぎ、伴走体制をつくる

ポイントは、不動産会社が制度の手続きを代行するのではなく、「管理の質を分かりやすく伝える橋渡し役」に徹することです。売買の現場では、管理の良し悪しが価格や成約に直結します。認定という客観的な指標を理解し、買主・売主・管理組合それぞれに適切な言葉で伝えられる会社は、それだけで信頼されます。手続きの専門的な部分はマンション管理士などの専門家に委ね、自社は取引の現場で制度を活かす——この役割分担が、無理のない関わり方です。

売買・管理の現場で制度を活かす

具体的に、売買仲介の場面では、取り扱うマンションが認定を受けているかどうかを確認し、受けている場合はその事実を物件の魅力として丁寧に伝えることが第一歩です。認定がなくても、総会議事録や長期修繕計画、修繕積立金の状況といった管理関連の資料を早めに取り寄せ、買主の不安に先回りして応える準備をしておくことが、商談を前に進めます。前述の現場メモのとおり、管理情報を「その場で示せるかどうか」が、しばしば成約の分かれ目になります。

管理を手がける会社であれば、付き合いのある管理組合に対して、認定制度という選択肢があることを情報として届けるだけでも価値があります。制度の存在を知らないまま、見直しの機会を逃している管理組合は決して少なくありません。「認定を取りましょう」と急かすのではなく、「管理を点検する一つの物差しがあります」と紹介する姿勢が、長い信頼につながります。区分所有法の改正で管理が注目される今は、こうした情報提供が自然に受け止められやすいタイミングでもあります。

よくある質問

Q1. マンション管理計画認定制度とは何ですか。
マンション管理適正化法に基づき、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、所在地の市区町村が「適切に管理されているマンション」として認定する制度です。2022年4月に始まりました。認定の対象は建物そのものではなく、管理組合の運営体制である点が特徴です。

Q2. 認定を受けると、どんなメリットがありますか。
一般に、【フラット35】や共用部分リフォーム融資の金利引下げといった金融面の優遇、長寿命化に資する大規模修繕を行った場合の固定資産税の軽減(別途要件あり)の可能性、そして市場での評価向上などが挙げられます。ただし内容や要件は変わりうるため、最新の取り扱いは所管の窓口で確認することが望まれます。

Q3. どんなマンションでも申請できますか。
いいえ。まず、所在地の市区町村が認定事務を行っていることが前提になります。実施していない自治体では申請できません。また、申請は区分所有者個人ではなく、管理組合として行う必要があり、総会での決議など組合の手続きを経ることになります。

Q4. 認定の基準では、何が重視されますか。
管理組合の運営状況、管理規約の整備、会計の区分経理、長期修繕計画の作成・見直し、長期修繕計画に見合った修繕積立金の確保などが、おおまかな観点とされています。とりわけ、長期修繕計画と修繕積立金の水準の整合が、現場では大きな関門になりやすい部分です。

Q5. 認定があれば、そのマンションは安全だと考えてよいですか。
認定は申請時点で一定の管理基準を満たしていることを示すものであり、建物の安全や将来の資産価値を保証するものではありません。その後の運営や市況によって状況は変わります。買主への説明でも、認定をメリットとして伝えつつ、過度に安心を強調しない姿勢が望まれます。

Q6. 認定には有効期間がありますか。
認定には有効期間が設けられており、期間満了後も継続するには更新の手続きが必要とされています。認定は一度取れば永続するものではなく、良好な管理を続けていることを定期的に確認するしくみになっている、と理解しておくとよいでしょう。具体的な期間や更新手続きは所管の窓口で確認してください。

Q7. 中小不動産会社は、この制度にどう関わればよいですか。
手続きそのものはマンション管理士などの専門家や管理組合の領分ですが、不動産会社は「管理の質を分かりやすく伝える橋渡し役」として関われます。売買時に認定や管理状況を根拠を添えて説明し、必要に応じて専門家につなぐことで、買主・売主・管理組合それぞれの信頼を得られます。

まとめ:管理の「見える化」を、取引の信頼に変える

マンション管理計画認定制度は、外から見えにくい「管理の質」を市区町村という第三者が認定し、見える形にするしくみです。区分所有法の改正で管理への関心が高まる今、この制度は管理組合が将来に備えるきっかけであり、不動産会社にとっては取引の信頼を裏づける材料になります。中小不動産会社がやるべきことは、制度の手続きを代行することではなく、認定や管理状況を買主・売主・管理組合に分かりやすく伝え、必要に応じて専門家につなぐ橋渡し役に徹することです。認定は管理を保証する魔法ではなく、あくまで一定水準を示す指標にすぎません。だからこそ、メリットを等身大に伝え、管理を見直すプロセスそのものに価値を見いだす姿勢が、長い信頼を生みます。管理が問われるこの時代に、「管理の見える化」を取引の強みに変えていきましょう。

物件・管理情報を一元管理し、「管理の質」をすぐ示せる体制に
ウルスタは、中小不動産会社の物件・顧客・取引情報を一元管理できる業務クラウドを提供しています。取り扱うマンションの管理状況や長期修繕計画、認定の有無、総会資料の所在などを物件ごとに紐づけて残しておけば、いざ売却や提案というときに、管理の質を裏づける情報をすぐに取り出せます。買主の不安に先回りして応えられる体制は、商談のスピードと成約率を高め、管理組合やオーナーへの提案力にもつながります。見えにくい管理の価値を、取引の現場で武器に変えていきましょう。

著者: 馬場生悦(宅地建物取引士)。ウルスタ代表。中小不動産会社向け実務メディアを運営する傍ら、自社で宅地建物取引業を営み、賃貸住宅の管理・客付けおよびマンションを含む売買仲介に携わる。本記事は、マンション管理適正化法に基づく管理計画認定制度の一般的なしくみと自社での実務経験に基づく整理であり、認定の基準・手続き・メリットの詳細は、制度の運用や自治体により異なる。実際の申請や税制の適用にあたっては、所管の自治体・マンション管理士・税理士など専門家への確認が望ましい。

参考: マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)および管理計画認定制度に関する国土交通省・各自治体の公開情報 / 住宅金融支援機構【フラット35】および共用部分リフォーム融資の金利引下げに関する取り扱い / マンション長寿命化促進税制(管理計画認定と長寿命化に資する大規模修繕に係る固定資産税の特例)に関する一般的な情報 / 2026年4月施行の改正区分所有法をめぐる動向 / いずれも2026年6月時点の公開情報および自社の売買・管理実務をもとに整理