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首都圏の新築マンションは2026年8月に発売1,140戸・初月契約率61.1%・平均9,770万円(不動産経済研究所 9月17日公表)|売れていないのは5,000〜6,000万円台で、完成在庫4,221戸は中古の査定と賃貸の募集の隣に並ぶ。中小不動産会社が今週使う数字

不動産経済研究所は2026年9月17日、首都圏と近畿圏の新築分譲マンション市場動向(8月)を公表しました。首都圏の発売は1,140戸で前年同月比12.4%減、初月契約率は61.1%、平均価格は9,770万円で5か月ぶりに下がり、販売在庫は6,610戸で3か月連続の増加です。ただ、平均だけを見ると読み違えます。価格帯別に本稿が集計すると、5,000万円未満の契約率は82.3%、1億円以上は70.3%なのに、5,000〜6,999万円は34.8%しかありません。東京都下では5,500〜6,500万円の104戸のうち売れたのは10戸です。売れていないのは中古マンションの主戦場と同じ価格帯で、完成在庫4,221戸は中古の査定と賃貸の募集の隣に並びます。数字の読み方、売主・区分オーナーへの説明の雛形、今週やる5つ、報告書に足す2行までをまとめます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
首都圏新築マンション8月|契約率61%、5,000〜6,000万円台が売れない
目次

不動産経済研究所は2026年9月17日、首都圏(1都3県)と近畿圏(2府4県)の新築分譲マンション市場動向の8月分を公表しました。首都圏の発売戸数は1,140戸で前年同月比12.4%減、初月契約率は61.1%、戸当たり平均価格は9,770万円で5か月ぶりの下落、8月末の販売在庫は6,610戸で3か月連続の増加です。新聞の見出しは「価格下落」「在庫増」になりますが、中小の不動産会社が使う数字は平均の下ではなく、価格帯の中にあります。資料の価格帯別の表を本稿が集計すると、5,000万円未満の契約率は82.3%、1億円以上は70.3%なのに、5,000万〜6,999万円は34.8%です。東京都下では5,500万〜6,500万円の104戸のうち、初月に売れたのは10戸でした。売れていないのは、中古マンションの主戦場と同じ価格帯です。そして販売在庫6,610戸のうち4,221戸は完成在庫、つまり建物ができているのに売れていない部屋で、これは中古の売り出しと賃貸の募集の隣に並びます。本稿は、数字の読み方を平均から価格帯に移し、中古の査定と売主への説明、区分オーナーの「売るか貸すか」、今週やる5つ、報告書に足す2行までをまとめます。

結論(90秒で読める)

  • 首都圏の新築分譲マンションは2026年8月に発売1,140戸(前年同月比12.4%減)、初月契約率61.1%、平均価格9,770万円、㎡単価144.4万円。平均価格は5か月ぶり、㎡単価は16か月ぶりの前年割れです。8月末の販売在庫は6,610戸で、前年8月末の5,715戸より895戸(15.7%)多く、3か月連続で増えました。
  • 契約率61.1%は月ごとの揺れの範囲ですが、2025年4月から2026年8月までの17か月で70%を超えた月は2026年2月の1回だけです。地域別では東京23区72.4%、千葉県70.0%、神奈川県69.3%に対し、埼玉県53.9%、東京都下15.0%。都下は173戸を発売して初月に売れたのが26戸でした。
  • 価格帯別に本稿が集計すると、5,000万円未満は96戸中79戸(82.3%)、1億円以上は340戸中239戸(70.3%)が初月に売れ、5,000万〜6,999万円は267戸中93戸(34.8%)です。東京都下の5,500万〜6,500万円は104戸中10戸(9.6%)。売れていないのは、中古マンションの主戦場と重なる価格帯です。
  • 平均価格の下落は「安くなった」ではありません。都心6区の発売は217戸で平均1億8,113万円、前年同月は145戸で2億4,211万円。前月7月の首都圏平均は1億6,493万円でした。その月にどの物件を売り出したかで平均は数千万円動きます。査定や説明に使うのは㎡単価と価格帯です。
  • 販売在庫6,610戸のうち完成在庫は4,221戸(63.9%)。建物が完成しているのに売れていない部屋で、値下げか、賃貸に回るか、そのまま持たれるかのどれかです。中古の売り出しと賃貸の募集の隣に並ぶのはこの4,221戸です。
  • 近畿圏は発売517戸で8月として1993年以来の低水準、契約率67.3%、平均5,947万円は前年比9.2%増で3か月連続の上昇、在庫は3,141戸で255戸減りました。首都圏とは別の絵です。投資用1物件92戸を除くと契約率60.2%になります。
  • 今週やるのは、査定案件を価格帯で仕分ける、商圏の完成在庫を物件名で把握する、売主説明の言い方を揃える、区分オーナーの「売るか貸すか」の相談窓口を作る、報告書に2行を足す、の5つです。

何が公表されたのか|首都圏8月の数字

不動産経済研究所は毎月中旬から下旬に、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)と近畿圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)の新築分譲マンションの発売戸数・契約率・価格を公表しています。8月分は9月17日14時に出ました。「契約率」は発売した月のうちに契約に至った戸数の割合(初月契約率)で、8月は1,140戸のうち697戸です。「販売在庫」は発売したがまだ売れていない戸数の累計(全残戸数)、「完成在庫」はそのうち建物が完成している部屋です。

地域発売戸数(シェア)初月契約率平均価格・㎡単価読み方
首都圏1,140戸(前年同月1,301戸・12.4%減、前月2,145戸・46.9%減)61.1%(前年同月比4.0ポイント減、前月比8.4ポイント減)9,770万円(555万円・5.4%減)・144.4万円/㎡(14.4万円・9.1%減)平均価格は5か月ぶり、㎡単価は16か月ぶりの前年割れ。1戸当たり平均専有面積67.67㎡
東京23区478戸(41.9%)72.4%1億3,821万円・212.2万円/㎡発売は前年同月比30.7%減、契約率は8.1ポイント上昇。都心6区が217戸で平均1億8,113万円、277.4万円/㎡。23区の発売の45%が都心6区
東京都下173戸(15.2%)15.0%6,678万円・96.1万円/㎡契約率は前年同月比57.7ポイント減。173戸のうち初月に売れたのは26戸。3LDKは147戸中18戸
神奈川県140戸(12.3%)69.3%7,309万円・108.0万円/㎡発売は前年同月比37.8%減、契約率は7.5ポイント上昇、平均価格は10.6%増
埼玉県102戸(8.9%)53.9%6,840万円・98.6万円/㎡発売は前年同月比17.2%増、平均価格は15.6%増、契約率は5.6ポイント上昇
千葉県247戸(21.7%)70.0%6,702万円・94.8万円/㎡発売は前年同月の約2倍(100.8%増)。即日完売の1物件4戸(流山市・4,771万円)は千葉

そのほか、超高層(20階以上)は12物件244戸で契約率82.0%(前年同月は8物件253戸で56.9%)、フラット35の登録物件は909戸で全体の79.7%、1物件当たりの平均発売戸数は12.4戸。9月の発売戸数は1,500戸程度の見込みで、前年9月の1,908戸より少ない見立てです。

契約率61.1%の読み方|70%を超えたのは17か月で1回

不動産経済研究所は近畿圏の資料で「2カ月ぶりの70%割れ」と書いています。70%が好不調の目安として使われている数字です。首都圏の8月61.1%を、資料の図-2の月次系列に置いて読みます。2026年は1月55.7%、2月71.7%、3月64.5%、4月62.3%、5月64.9%、6月62.5%、7月69.5%、8月61.1%。2025年4月から2026年8月までの17か月で、70%を超えた月は2026年2月の1回だけです。8月の61.1%は「急に悪くなった」ではなく、「1年半ほど60%台が続いている中の、やや低い月」です。

一方、発売戸数は減っていません。図-3から2026年1〜8月の発売を足すと11,274戸で、2025年の同じ期間の11,360戸とほぼ同じです(本稿の計算)。売り出す戸数は変わらず、初月に売れる割合が6割で止まり、残りが在庫に積み上がる。8月末の販売在庫6,610戸は、この積み上がりの結果です。

東京都下15.0%|5,500万〜6,500万円の104戸のうち売れたのは10戸

地域別で目を引くのは東京都下の15.0%です。173戸を発売して、初月に売れたのは26戸。資料の価格帯別の表を都下の列で読むと、5,500万円以上6,000万円未満が44戸中5戸、6,000万円以上6,500万円未満が60戸中5戸で、この2つの価格帯だけで104戸を出して10戸です。タイプ別では3LDKが147戸中18戸。東京都下で5,500万〜6,500万円の部屋を出して、初月に決まったのは10戸に1戸、という数字です。

これは中古の実務に響きます。8月の中古マンションの成約データでは、首都圏の成約件数は3,180件で5か月連続の前年割れ、在庫は48,235件で6か月連続の増加でした。5,500万〜6,500万円は、東京都下の中古では築浅の上位帯です。同じ予算の買い手が、新築の売れ残りと中古の売り出しを同じ週に見ています。

超高層82.0%と即日完売4戸|売れるものは売れている

反対側の数字も見ます。20階以上の超高層は12物件244戸で契約率82.0%、前年同月の56.9%から25ポイント上がりました。都心6区の217戸は平均1億8,113万円で、23区全体の契約率は72.4%です。即日完売は千葉県流山市の1物件4戸(平均4,771万円)だけでした。1億円以上と5,000万円未満は売れ、真ん中が売れていない。次の章で価格帯別に集計します。

平均価格9,770万円の下落は「安くなった」ではない

平均価格は前年同月比555万円(5.4%)の下落で、5か月ぶりに前年を下回りました。しかし、資料の図-1の系列を見ると、2026年の首都圏の平均価格は1月8,383万円、2月1億1,025万円、3月1億413万円、4月8,736万円、5月1億660万円、6月1億137万円、7月1億6,493万円、8月9,770万円です。7月から8月で6,700万円下がったことになりますが、7月の1億6,493万円は都心の高額物件の発売が集中した月の平均で、8月はそれが一巡しただけです。都心6区の発売は前年同月の145戸(平均2億4,211万円)から217戸(1億8,113万円)に増えたのに平均が下がったのも、8月に売り出された都心の物件の顔ぶれの違いです。

不動産経済研究所の平均価格は、その月に発売した部屋の価格の平均で、同じ部屋の値動きではありません。分譲マンションの募集賃料の平均が募集に出た部屋の顔ぶれで動くのと同じ構造です。売主や買主への説明で「新築の平均が5%下がった」と言うと、その人の物件も5%下がったように聞こえます。使うのは、地域別の㎡単価(23区212.2万円、都下96.1万円、神奈川108.0万円、埼玉98.6万円、千葉94.8万円)と、次の価格帯別の契約率です。

売れていないのは5,000〜6,000万円台|価格帯別の契約率

資料の3頁目には、価格帯別の発売戸数と契約戸数が首都圏と地域別に載っています。本稿はこれを4つの帯に束ねて契約率を出しました(発売の縦計1,140戸、契約の縦計697戸が資料の合計と一致することを確かめています)。

価格帯発売戸数(首都圏に占める割合)初月に契約した戸数契約率読み方
5,000万円未満96戸(8.4%)79戸82.3%出せば売れる。ただし発売の1割も無い。千葉県が中心
5,000万〜6,999万円267戸(23.4%)93戸34.8%4戸に1戸を出して、3戸に1戸しか決まらない。267戸のうち128戸が東京都下
7,000万〜9,999万円437戸(38.3%)286戸65.4%最も多い帯。8,000万円台は181戸中133戸(73.5%)と悪くない
1億円以上340戸(29.8%)239戸70.3%340戸のうち294戸が23区。2億円以上は59戸中44戸、3億円以上は21戸中17戸

首都圏の61.1%は、82%と35%と65%と70%を戸数で重ねた平均です。不調なのは市場全体ではなく、5,000万〜6,999万円という一つの帯で、その帯は首都圏の発売の4分の1を占め、267戸のうち128戸が東京都下です。1億円以上を買う人と5,000万円未満を買う人は8月も動き、5,000万〜6,999万円を買う人だけが止まっている。この帯は、年収と住宅ローンの上限が当たる帯であり、首都圏の中古マンションで最も売り物が多い帯でもあります。

中古の査定でこの表を使うなら、こう読みます。東京都下で5,000万〜6,999万円の売り出しを預かるときは、同じ駅の新築が初月に3戸に1戸しか決まっていないことを、売主に最初に伝えます。新築が決まらない駅で中古を新築に近い価格で出しても、買い手は新築の値下げを待ちます。逆に5,000万円未満で出せる中古は、新築の同じ帯が82.3%で決まっている以上、強気でよい。査定の説明を「相場が下がった」から「この価格帯は今こう動いている」に変えるのが、この資料の使い方です。

在庫6,610戸・完成在庫4,221戸はどこへ行くか

8月末の販売在庫6,610戸は、前月末から13戸増えて3か月連続の増加、前年8月末の5,715戸からは895戸(15.7%)の増加です。このうち完成在庫は4,221戸で、販売在庫の63.9%を占めます。完成在庫は建物ができているのに売れていない部屋で、分譲会社には完成後も金利と管理費と固定資産税が毎月かかります。行き先は3つしかありません。値下げして売るか、賃貸に出して持つか、そのまま持ってじっと待つか。

どれになっても、中小の不動産会社の目の前に現れます。値下げして売るなら、同じ駅の中古の売り出しと価格で並びます。賃貸に出すなら、新築の分譲仕様の部屋が「新築・分譲賃貸」として募集に並び、管理会社が預かる築10年・15年の部屋と同じ検索結果に出ます。分譲マンションの募集賃料が首都圏で1年に1割上がった今は、売れ残りを賃貸に回す判断は分譲会社にとって難しくない選択です。持って待つなら、その物件の広告は来年も出続け、中古の買い手はそれを値引きの根拠にします。

賃貸管理の側で言えば、完成在庫が多い駅では、これから1〜2年、募集の隣に新築の分譲賃貸が並ぶと考えておくことです。区分マンションのオーナーからは「今売るべきか、貸し続けるべきか」の相談が増えます。新築の1年以内の転売が23区で9.7%ある市場でも、5,000万〜6,999万円の帯は今すぐ売る帯ではない、と数字で言えるのがこの資料です。

近畿圏は別の絵|517戸は1993年以来、価格は3か月連続上昇

項目首都圏近畿圏
発売戸数1,140戸(12.4%減)517戸(44.2%減)。8月として1993年(502戸)以来の低水準。稼働日が少ない影響、と資料
契約率61.1%(4.0ポイント減)67.3%(3.5ポイント減)。2か月ぶりの70%割れ。投資用1物件92戸を除くと60.2%
平均価格9,770万円(5.4%減・5か月ぶり下落)5,947万円(9.2%増・3か月連続上昇)。㎡単価97.2万円(7.9%増)
販売在庫6,610戸(+13戸・3か月連続増、前年比+895戸)3,141戸(−255戸、前年8月末2,916戸)
完成在庫4,221戸1,503戸
即日完売1物件4戸2物件51戸(守口市49戸・5,476万円、東灘区2戸)
9月の発売予測1,500戸程度(前年1,908戸)1,000戸程度(前年1,492戸)

近畿圏は発売が少なく、価格は上がり、在庫は減っています。首都圏の「在庫増・価格下落」を全国の話として使わないでください。大阪市部は182戸で契約率82.4%、㎡単価114.0万円は前年比20.5%増。近畿圏の8月の数字には投資用1物件92戸(戸数シェア17.8%)が入っており、これを除くと契約率は60.2%、平均価格は6,547万円です。近畿圏の管理会社が使うなら、投資用を除いた後の数字です。

売主・区分オーナーに説明するときの言い方(雛形)

中古の売却を預かる売主、貸している区分マンションのオーナーに、この資料の数字を伝えるときの言い方です。平均価格の下落を言わず、価格帯と在庫で言います。

不動産経済研究所が9月17日に公表した8月の首都圏の新築マンションでは、発売1,140戸のうち初月に契約できたのは61%で、5,000万〜7,000万円の価格帯に限ると35%でした。売れ残って建物が完成している部屋が首都圏で4,221戸あります。お預かりする物件は【価格帯】なので、同じ駅で新築が【契約率】の状況です。この価格帯の買い手は新築の値下げを待って比較していますので、売り出し価格は【提案価格】とし、【期間】で反応が無ければ【見直し幅】を一緒に検討させてください。相場が下がったのではなく、この価格帯の買い手が今は慎重だ、という数字です。

貸し続ける場合は、募集賃料は首都圏の分譲マンションで1年に1割上がっており、今の入居者様が退去したときの次の募集は今より高くできる見込みです。売る場合と貸し続ける場合の手取りを、5年で並べた表を次回お持ちします。

【 】の中は物件ごとに埋めます。大事なのは「相場が下がった」と言わないことです。平均価格の5.4%減はその人の部屋の値動きではなく、言ってしまうと売主は「安くしろと言われた」、オーナーは「今売ると損だ」と受け取り、どちらも数字の中身とずれます。

中小不動産会社が今週やる5つ

やること具体的になぜ今週か
1. 査定案件を価格帯で仕分ける預かり中と査定中の売却案件を、5,000万円未満/5,000万〜6,999万円/7,000万〜9,999万円/1億円以上の4つに分け、真ん中の帯の案件に印をつける。その案件の売り出し価格と、同じ駅の新築の販売状況を並べる34.8%の帯にある案件が、いちばん長期化する。先に売主と話す
2. 商圏の完成在庫を物件名で把握する自社の商圏(駅)にある新築マンションのうち、完成済みで販売中の物件と残り戸数、広告価格を一覧にする。分譲会社のサイトと現地の看板で足りる4,221戸のうち自社の駅に何戸あるかが、中古の価格交渉と賃貸募集の前提になる
3. 売主説明の言い方を揃える上の雛形を自社の書式にし、営業担当が「相場が下がった」と言わないことを共有する。㎡単価と価格帯別の契約率を1枚にして持たせる担当ごとに違う説明をすると、売主は不安になる
4. 区分オーナーの「売るか貸すか」の相談を受ける窓口を作る管理中の区分マンションのオーナーに、売却と継続保有の5年手取りを並べる書式を用意する。売却は自社仲介で受ける。貸し続けるなら次の募集賃料の見込みを添える平均価格の下落が報道されると、オーナーは「今のうちに売るべきか」と考える。受け皿が無いと他社に行く
5. 報告書に2行を足す次の章の2行を今月のオーナー報告書に入れる。10月20日には9月分と上半期の集計が出るので、そのとき差し替える数字を先に出した管理会社が、相談を受ける

2の作業は半日で終わります。完成在庫の物件名と残り戸数を持っているだけで、中古の買い手が「新築が残っているから」と言ってきたときに、どの物件の何戸かを答えられます。

オーナー報告書に足す2行

区分マンションのオーナーと、売却を考えている所有者への今月の報告書には、次の2行を入れることを勧めます。

不動産経済研究所が9月17日に公表した8月の首都圏新築マンションは、発売1,140戸、初月契約率61.1%、販売在庫6,610戸(うち完成在庫4,221戸)で、在庫は3か月連続で増えています。価格帯別では5,000万〜7,000万円の契約率が35%と低く、1億円以上は70%、5,000万円未満は82%でした。本物件の価格帯は【価格帯】で、同じ駅の新築の販売状況は【状況】です。

売却をご検討の場合は、この価格帯の買い手が新築の値下げを待って比較している時期ですので、売り出し価格と見直しの時期を先に決めてから出すことをお勧めします。貸し続ける場合の次の募集賃料の見込みと、売却した場合の手取りを並べた表を、ご希望があればお持ちします。

「売ったほうがよい」「持ったほうがよい」とは書きません。売るか持つかはオーナーの判断で、管理会社が出すのは判断に使える数字と、どちらを選んでも自社が段取りできることです。

この資料が言っていないこと

不動産経済研究所の月次資料は、発売した月に契約した割合であり、発売から2か月目以降に売れた戸数は載っていません。契約率61.1%は「最終的に61%しか売れない」ではなく「初月に61%決まった」です。完成在庫4,221戸のうち何戸が賃貸に出たか、値下げされたかも書かれていません。「完成在庫は値下げか賃貸か保有のどれかに行く」は本稿の整理で、資料は行き先を調べていません。価格帯別の4つの帯と契約率は本稿の集計で、資料は細かい帯(3,000万円から3億円以上まで19段階)のまま出しています。「5,000万〜6,999万円は中古の主戦場」「年収と住宅ローンの上限が当たる帯」は本稿の読みで、資料に買い手の属性はありません。9月の発売予測1,500戸は資料の見込みで、実績は10月20日に出ます。

よくある質問

Q1. 契約率61.1%は、悪い数字ですか?

単月で見れば、2026年の1〜8月では2番目に低い月です(最も低いのは1月の55.7%)。ただ、2025年4月から2026年8月までの17か月で70%を超えたのは1回だけなので、「1年半続いている60%台の中のやや低い月」が正確です。地域別では東京23区72.4%、千葉県70.0%と悪くなく、東京都下15.0%が全体を下げています。

Q2. 平均価格が5.4%下がったと売主に言ってよいですか?

勧めません。不動産経済研究所の平均価格は、その月に発売した部屋の価格の平均で、同じ部屋の値動きではありません。7月は1億6,493万円、8月は9,770万円と、1か月で6,700万円動く数字です。売主には地域別の㎡単価と、その物件の価格帯の契約率で説明してください。

Q3. 5,000万〜6,999万円が売れていないのは、なぜですか?

資料には理由が書かれていません。本稿の読みは、この帯が首都圏の発売の4分の1を占めて半数近くが東京都下に集まり、同時に中古マンションで最も売り物が多い帯であるため、買い手が新築と中古と新築の値下げを同時に比べて動きを止めている、というものです。5,000万円未満と1億円以上は動いているので、買い手全体が止まったわけではありません。

Q4. 完成在庫4,221戸は、賃貸の募集にどう影響しますか?

分譲会社が完成在庫を賃貸に回すと、新築の分譲仕様の部屋が「分譲賃貸」として募集に並びます。完成在庫が多い駅で築10年以上の部屋を預かっている管理会社は、この1〜2年は募集の隣に新築が並ぶ前提で、賃料ではなく初期費用と入居時期の柔軟さで差をつけるのが現実的です。何戸が賃貸に回ったかは資料に無いので、自社の駅で確かめてください。

Q5. 近畿圏でも同じ説明を使えますか?

使えません。近畿圏の8月は発売517戸で8月として1993年以来の低水準、契約率67.3%、平均価格5,947万円は前年比9.2%増で3か月連続の上昇、在庫は3,141戸で255戸減っています。首都圏の「在庫増・価格下落」とは逆です。近畿圏の数字には投資用1物件92戸が入っているので、実需の説明に使うなら投資用を除いた契約率60.2%、平均6,547万円を使ってください。

Q6. 区分マンションのオーナーには何を報告すればよいですか?

発売1,140戸・契約率61.1%・在庫6,610戸(完成在庫4,221戸)という事実、その物件の価格帯の契約率、同じ駅の新築の販売状況、売る場合の価格と見直し時期、貸し続ける場合の次の募集賃料の見込み、の5点です。上の「報告書に足す2行」をそのまま使い、売るか持つかの判断はオーナーに委ねてください。

まとめ

首都圏の新築分譲マンションは2026年8月に発売1,140戸、初月契約率61.1%、平均価格9,770万円、販売在庫6,610戸。平均の下に降りると、売れていないのは5,000万〜6,999万円という一つの帯(契約率34.8%)で、東京都下の5,500万〜6,500万円は104戸中10戸でした。1億円以上と5,000万円未満は動いています。完成在庫4,221戸は値下げか賃貸か保有のどれかに向かい、中古の査定と賃貸の募集の隣に並びます。中小の不動産会社がこの資料から持ち帰るのは「相場が下がった」ではなく、「この価格帯の買い手が今は待っている」という説明と、自社の駅の完成在庫の物件名です。近畿圏は在庫減・価格上昇で別の絵です。次回は10月20日に9月分と上半期の集計が出ます。

出典(本文で参照している資料)

本稿の記述は、すべて2026年9月18日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。PDF2本は全文を取得して読み、価格帯別の表は発売と契約の縦計が資料の合計と一致することを確かめました。

本稿で使った内容資料
発売1,140戸(前年同月1,301戸・12.4%減、前月2,145戸・46.9%減)、初月契約率61.1%(前年同月比4.0ポイント減・前月比8.4ポイント減、2026年2〜7月の月次値)、平均価格9,770万円・㎡単価144.4万円(555万円・5.4%減、14.4万円・9.1%減、5か月ぶり・16か月ぶり)、販売在庫6,610戸(前月末比+13戸、2026年7月末6,597戸、2025年8月末5,715戸)、即日完売1物件4戸(流山市・4,771万円)、超高層12物件244戸・82.0%(前年8物件253戸・56.9%)、地域別の発売戸数とシェア、都心6区217戸・1億8,113万円・277.4万円(前年同月145戸・2億4,211万円・339.0万円)、フラット35登録909戸・79.7%、9月の発売予測1,500戸程度(過去4年の9月)、地域別の契約率・平均価格・㎡単価と前年同月比、売却戸数697戸・全残戸数6,610戸・1物件当り12.4戸・平均専有面積67.67㎡・最寄駅7.5分、タイプ別・価格帯別の発売戸数と契約戸数(首都圏と地域別)、図-1〜図-3の月次系列(2023年8月〜2026年8月)株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年8月」(2026年9月17日・PDF)
発売517戸(前年同月927戸・44.2%減、前月1,847戸・72.0%減)、契約率67.3%(3.5ポイント減、「2カ月ぶりの70%割れ」)、平均5,947万円・㎡単価97.2万円(9.2%増・7.9%増、3か月連続上昇)、販売在庫3,141戸(前月末比255戸減、2025年8月末2,916戸)、完成在庫1,503戸、即日完売2物件51戸(守口市49戸・5,476万円、東灘区2戸・5,065万円)、地域別シェア、投資用1物件92戸(17.8%)と除外後の425戸・60.2%・6,547万円・95.4万円、「8月としては1993年(502戸)以来の低水準」「稼働日が少ない影響」、9月の発売予測1,000戸程度、大阪市部182戸・82.4%・5,210万円・114.0万円(20.5%増)株式会社不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向 2026年8月」(2026年9月17日・PDF)
発表日(2026年9月17日14時)、2026年8月度の完成在庫数(首都圏4,221戸・近畿圏1,503戸)、次回の発表日程(2026年9月および2026年度上半期=2026年10月20日)、毎月中旬から下旬に公開・調査対象地域株式会社不動産経済研究所「マンション市場動向」(発表資料・発表日程・月間完成在庫)

本稿の計算:価格帯別の4つの帯の戸数・契約戸数・契約率(96戸・79戸・82.3%、267戸・93戸・34.8%、437戸・286戸・65.4%、340戸・239戸・70.3%)、東京都下の5,500万〜6,500万円の104戸・10戸・9.6%、都下3LDKの147戸・18戸、8,000万円台の181戸・133戸・73.5%、2億円以上59戸・44戸、3億円以上21戸・17戸、在庫の前年比895戸・15.7%、完成在庫の比率63.9%、都心6区が23区に占める45%、2026年1〜8月の発売累計11,274戸と2025年同期11,360戸、「17か月で70%超は1回」は、資料の表と図の数値から本稿が集計・丸めたものです。「5,000万〜6,999万円は中古の主戦場」「年収と住宅ローンの上限が当たる帯」「完成在庫は値下げ・賃貸・保有のどれかに向かう」「募集の隣に新築の分譲賃貸が並ぶ」は本稿の読みで、資料は買い手の属性や在庫の行き先を調べていません。売主説明の雛形、今週やる5つ、報告書の2行は本稿の整理です。2か月目以降の販売状況、完成在庫のうち賃貸に回った戸数、値下げの有無は資料に無いので書いていません。

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