東京カンテイは2026年9月16日、2026年8月の三大都市圏・主要都市別の分譲マンション賃料を公表しました。首都圏は4,242円/㎡で前月比0.8%の上昇、前年同月比では10.0%の上昇です。東京都は4,985円/㎡で5,000円の大台に迫り、東京23区は5,170円/㎡。近畿圏は2,479円/㎡と小幅に続落しましたが、前年同月比では10.2%、大阪府は12.8%上がっています。同じ日に読める総務省の消費者物価指数(2026年7月分)では、家賃は前年同月比0.5%、民営家賃は0.7%の上昇にとどまります。募集の賃料は1年で1割上がり、住んでいる人の家賃はほとんど動いていない。この2つの数字の距離が、いま管理会社が扱わなければならない賃料ギャップです。本稿は、東京カンテイの数字を部屋の家賃に戻す計算、平均が動く2つの理由、借地借家法32条の「近傍同種」との距離を整理し、今週やることと報告書の2行までを書きます。
結論(90秒で読める)
- 東京カンテイの2026年8月の分譲マンション賃料は、首都圏4,242円/㎡(前月比+0.8%・前年同月比+10.0%)で3ヵ月連続の上昇。東京都4,985円/㎡(+0.4%・+6.8%)、神奈川県2,910円/㎡(+0.6%・+8.7%)、埼玉県2,409円/㎡(+1.7%・+13.0%)は直近1年の最高値です。千葉県だけが2,230円/㎡(-0.4%)と5ヵ月連続で下がりましたが、前年同月比では+7.7%です。
- 主要都市は東京23区5,170円/㎡(+0.3%・+6.4%)、大阪市3,427円/㎡(+0.1%・+10.1%)、名古屋市2,319円/㎡(+0.5%・+4.0%)。3都市とも新築を含む「築5年以内」は上値が重く、それ以外の築年帯は堅調、と東京カンテイは書いています。
- この数字は分譲マンション(ファミリータイプ・30㎡以上)の月額「募集」賃料を行政区ごとに集計して㎡単価に直したものです。賃貸専用のアパートは入っておらず、住んでいる人が払っている家賃でもありません。部屋の家賃に戻すには面積を掛け、築年を揃えてから比べます。東京23区の平均専有面積57.27㎡・平均築年18.1年で計算すると、1戸あたり約29.6万円です。
- 総務省の消費者物価指数(2026年7月分・全国)では、家賃は前年同月比+0.5%、民営家賃は+0.7%です。物差しは違いますが、募集賃料が1年で1割上がる間に、継続中の契約の家賃はほとんど動いていない、という方向は読めます。同じ建物の新しい入居者と古い入居者の家賃の差(賃料ギャップ)が、この1年で大きく開いています。
- 賃料ギャップは、借地借家法32条の増額請求の事情の1つ「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当」につながります。ただし東京カンテイの圏域や区の平均は「近傍同種」ではありません。増額の根拠にするなら、その物件の近くで、同じ種類・同じ築年帯の募集事例を自分で並べる必要があります。東京都が9月8日に貸主へ出した注意喚起は、まさにその根拠の説明を求めるものです。
- 管理会社が今週やるのは、管理物件の「新規賃料」と「継続賃料」の差を戸ごとに数えること、更新が近い戸を賃料ギャップ順に並べること、査定書の事例を築年で揃えること、募集中の部屋の賃料を8月の数字と突き合わせること、報告書に2行を足すことの5つです。
何が公表されたのか|三大都市圏・主要都市の8月の数字
東京カンテイの「分譲マンション賃料月別推移」は毎月15日前後に前月分が出ます。対象は同社のデータベースに登録された分譲マンションの月額募集賃料で、専有面積30㎡未満の住戸と事務所・店舗用は除かれます。直近3ヵ月の流通事例数は首都圏50,432件、近畿圏33,244件、中部圏8,069件です。8月分の主な数字を並べます。
| 圏域・都府県・都市 | 2026年8月(円/㎡) | 前月比 | 前年同月比 | 平均専有面積・平均築年 |
|---|---|---|---|---|
| 首都圏 | 4,242 | +0.8% | +10.0% | 59.79㎡・21.0年 |
| 東京都 | 4,985 | +0.4% | +6.8% | 57.72㎡・18.7年 |
| 神奈川県 | 2,910 | +0.6% | +8.7% | 61.86㎡・25.3年 |
| 埼玉県 | 2,409 | +1.7% | +13.0% | 63.44㎡・27.5年 |
| 千葉県 | 2,230 | -0.4% | +7.7% | 70.69㎡・26.1年 |
| 近畿圏 | 2,479 | -0.3% | +10.2% | 59.70㎡・24.8年 |
| 大阪府 | 2,900 | -0.2% | +12.8% | 58.29㎡・21.3年 |
| 中部圏 | 2,124 | +0.7% | +5.0% | 64.90㎡・21.2年 |
| 東京23区 | 5,170 | +0.3% | +6.4% | 57.27㎡・18.1年 |
| 大阪市 | 3,427 | +0.1% | +10.1% | 55.05㎡・16.4年 |
| 名古屋市 | 2,319 | +0.5% | +4.0% | 61.60㎡・20.0年 |
出典は東京カンテイのプレスリリース(2026年9月16日)です。細かい行政区の数字や過去の月次の表は同社のPDFにあり、本稿はそこから主要な行だけを引いています。東京カンテイの本文で目を引くのは、下がった地域の説明です。千葉県の5ヵ月連続の下落は「千葉市内の賃料水準が高い行政区で築浅事例が減少していた影響」、大阪府の小幅な下落は「築古事例が増加した」ため、兵庫県は1,900円を割り込んだが「当月と平均築年数が同程度だった月の水準は依然として上回っている」。つまり、8月に下がった地域は相場が下がったのではなく、集計に入った部屋の顔ぶれが変わった、と同社自身が読んでいます。この点は後の章で管理会社の査定に置き換えます。
長い目で見ると、首都圏は2022年1月の3,297円/㎡から2026年8月の4,242円/㎡へ28.7%、東京23区は3,828円/㎡から5,170円/㎡へ35.1%、大阪市は2,573円/㎡から3,427円/㎡へ33.2%上がっています。名古屋市は2,042円/㎡から2,319円/㎡で13.6%です。4年半で3割という上がり方は、昨日の基準地価や中古マンションの㎡単価と同じく、都市部の住宅の価格が賃料にも及んできたことを示します。
㎡単価を部屋の家賃に戻す|面積と築年を掛けてから比べる
「東京23区は5,170円/㎡」と言われても、オーナーには伝わりません。管理会社の仕事は、この数字を部屋の家賃に戻すことです。やることは掛け算1回です。㎡単価×専有面積=月額賃料の目安。東京カンテイのプレスリリースには平均専有面積が載っているので、平均的な部屋の家賃はその場で出ます。
| 地域 | ㎡単価 | 平均専有面積 | 1戸あたりの目安(本稿の計算) |
|---|---|---|---|
| 東京23区 | 5,170円 | 57.27㎡ | 約29.6万円(平均築18.1年) |
| 東京都 | 4,985円 | 57.72㎡ | 約28.8万円 |
| 首都圏 | 4,242円 | 59.79㎡ | 約25.4万円 |
| 神奈川県 | 2,910円 | 61.86㎡ | 約18.0万円 |
| 大阪市 | 3,427円 | 55.05㎡ | 約18.9万円(平均築16.4年) |
| 千葉県 | 2,230円 | 70.69㎡ | 約15.8万円 |
| 埼玉県 | 2,409円 | 63.44㎡ | 約15.3万円 |
| 名古屋市 | 2,319円 | 61.60㎡ | 約14.3万円 |
この表で気づくのは、㎡単価の順と1戸の家賃の順が入れ替わる場所があることです。千葉県の㎡単価は埼玉県より低いのに、平均専有面積が70.69㎡と大きいので1戸の家賃は千葉県のほうが高い。㎡単価だけで「千葉は安い」と言うと、オーナーが持っている70㎡の部屋の家賃を安く見積もることになります。逆に、東京23区の5,170円/㎡を自社の管理物件に当てるときは、築年を見ます。23区の平均築年は18.1年、大阪市は16.4年で、これは三大都市圏の中でも若い。築30年の部屋に18年の平均を当てれば、査定は高く出ます。
もう1つ、この数字は募集賃料です。成約賃料でも、住んでいる人の家賃でもありません。募集賃料は貸す側の希望なので、成約はそれより低くなることがあり、長く空いている部屋の高い希望賃料が平均を押し上げることもあります。オーナーに「相場は29.6万円です」と言うのではなく、「募集の平均は29.6万円で、当物件は築年と面積を揃えると◯万円が目安です」と言う。この1文の差が、後で「相場と言ったのに決まらない」を防ぎます。
平均が動く2つの理由|相場の動きと、事例の入れ替わり
東京カンテイのレポートの読み方でいちばん大事なのは、平均が動く理由が2つあることです。1つは相場そのものが動くこと。もう1つは、集計に入る部屋の顔ぶれが変わることです。8月のレポートには後者の例が3つあります。
| 地域 | 8月の動き | 東京カンテイの説明 | 管理会社への意味 |
|---|---|---|---|
| 千葉県・千葉市 | 千葉県-0.4%で5ヵ月連続下落、千葉市-0.8%。ただし前年同月比は千葉県+7.7%、千葉市+20.9% | 賃料水準が高い行政区で築浅事例が減少、高額な賃料事例が減少した反動 | 「千葉は下がっている」ではない。築浅・高額の部屋が集計から抜けただけで、同じ部屋の相場は下がっていない |
| さいたま市 | +4.0%、前年同月比+24.9%で3,214円/㎡ | 特定の物件からの高額な賃料事例によって水準が大きく押し上がっている | 「さいたまは1年で25%上がった」を査定に使うと外れる。1棟の高額事例が平均を作っている |
| 大阪府・兵庫県 | 大阪府-0.2%、兵庫県-0.2%で1,900円割れ | 築古事例が増加。兵庫県は平均築年数が同程度だった月の水準を上回る | 築年を揃えれば上がっている。平均だけ見ると「近畿は弱い」と読み違える |
同じことは、管理会社が自分で作る査定書でも起きます。ポータルサイトで近隣の事例を10件拾って平均を出すとき、その10件に築浅のタワーマンションが2件入れば平均は上がり、翌月その2件が成約して消えれば平均は下がる。相場は動いていないのに、査定書の数字が月ごとに揺れる。事例は数を集めるより、面積と築年を揃えるほうが先です。東京カンテイが「平均築年数が同程度だった月と比べる」と書いているのは、そのための作法です。査定書には、使った事例の築年の範囲と面積の範囲を書き、平均築年を物件と並べて示す。これだけで、オーナーからの「ネットではもっと高い」に答えられます。
募集賃料は10.0%、住んでいる人の家賃は0.7%|賃料ギャップ
総務省統計局が8月21日に公表した2026年7月分の消費者物価指数(全国)では、総合指数が前年同月比1.9%の上昇で、住居のうち家賃は0.5%、民営家賃は0.7%の上昇です。消費者物価指数の家賃は、いま住んでいる世帯が実際に払っている家賃を調べるので、何年も前に契約してそのままの家賃も入ります。東京カンテイの数字は、いま募集に出ている部屋の希望賃料です。物差しが違うので、10.0%と0.7%を引き算して「差は9.3%」とは言えません。それでも方向は明らかで、新しく借りる人の家賃は1年で1割上がり、住み続けている人の家賃はほとんど動いていないのです。
数字で置くとこうなります。首都圏の平均専有面積59.79㎡で、2025年8月の3,857円/㎡なら月額230,610円、2026年8月の4,242円/㎡なら253,629円。1年で約2.3万円の差です。同じ部屋に住み続けている人の家賃が消費者物価指数の民営家賃と同じ0.7%で動いたとすれば、上がるのは約1,600円です。つまり、同じ建物で今年入った人と去年から住んでいる人の家賃の差は、この1年だけで2万円を超える計算になります。
賃料ギャップはオーナーにとって2つの顔を持ちます。1つは「更新で上げられる余地」。もう1つは「退去されたときに次の募集で取り戻せる額」です。前者に走ると、東京都が9月8日に貸主へ出した注意喚起のとおり、値上げの相談が特別相談窓口に約1,900件も寄せられる状況に足を踏み入れます。後者だけを見ると、退去のたびに原状回復と空室期間の費用が出ます。賃料ギャップ管理の記事で書いた退去コストの試算と、ここで出した「1戸あたり年間で数万円の差」を並べて、どの戸は据え置き、どの戸は更新時に相談するかを戸ごとに決めるのが管理会社の仕事です。
借地借家法32条で読む|圏域の平均は「近傍同種」ではない
借地借家法32条1項は、建物の借賃が「租税その他の負担の増減」「土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動」「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当」となったとき、契約の条件にかかわらず、当事者が将来に向かって増減を請求できると定めます。ただし一定の期間増額しない特約があればそれに従います。募集賃料が1年で1割上がった、という東京カンテイの数字は、この3番目の事情に見えます。
しかし条文は「近傍同種の建物の借賃」と言っています。首都圏の平均でも、東京23区の平均でもありません。増額を求める貸主が示すべきなのは、その建物の近くで、同じ種類・同じ築年帯・同じ広さの建物の借賃です。東京カンテイの数字は「圏域全体で上がっている」という背景を説明するには使えますが、「だからこの部屋は◯円が相当」の根拠にはなりません。根拠になるのは、前の章で書いた、面積と築年を揃えた近隣の事例です。
32条2項も読んでおきます。増額について協議が調わないとき、請求を受けた借主は、増額を正当とする裁判が確定するまで「相当と認める額」を払えば足ります。多くの場合それは従前の家賃です。裁判で増額が認められれば不足額に年1割の利息が付きますが、裁判の前に調停を経る必要があり、そこまで行く更新はほとんどありません。賃料増額交渉の記事で書いたとおり、実務は「根拠を示して協議し、合意した額で更新する」の一択です。定期建物賃貸借で借賃改定の特約があるときは32条が適用されない(38条9項)ので、定期借家の物件は契約書の改定条項を先に読みます。
管理会社が今週やる5つ
| やること | どうやるか | 何のために |
|---|---|---|
| 1. 戸ごとの賃料ギャップを数える | 管理物件の全戸について、現在の家賃と、同じ建物・同じ間取りの直近の成約または募集賃料の差を出す。差額と差の率を戸ごとに並べる | 「圏域で1割」ではなく「この戸は1.8万円」に落とさないと、オーナーにも入居者にも説明できない |
| 2. 更新が6ヵ月以内の戸を、ギャップの大きい順に並べる | 更新日の一覧に1の差額を付け、差が大きく、かつ近隣の事例が揃う戸から相談の準備をする。差が小さい戸は据え置きと決める | 全戸に一律の通知を出すと、相談窓口に向かう人を自分で作る。戸を選んで、根拠のある戸だけ話す |
| 3. 査定書の事例を築年と面積で揃える | 使う事例の築年の範囲・面積の範囲・平均築年を査定書に書く。範囲外の築浅・高額事例は入れない | 東京カンテイが千葉・さいたま・大阪で説明した「顔ぶれの変化」を、自社の査定で起こさない |
| 4. 募集中の部屋の希望賃料を8月の数字と突き合わせる | 募集中の各部屋について、㎡単価に直し、同じ区の平均と、築年を揃えた事例の両方と比べる。長く空いている部屋は希望賃料の置き方を見直す | 募集賃料の平均が上がっている月に、自社の部屋だけ古い相場で出していないかを確かめる |
| 5. 報告書に2行を足す | 次の章の2行を、今月のオーナー報告書に入れる。物件の㎡単価と築年を埋める | 「相場が上がっている」を、上げる話ではなく、守る話と取り戻す話に分けて伝える |
1の作業で、家賃の台帳に「入居年月」の列が無いことに気づく会社が多いはずです。賃料ギャップは入居が古いほど大きいので、入居年月が無いとギャップ順に並べられません。台帳に列を足すのが今週の最初の仕事になります。
オーナー報告書に足す2行
今月の報告書には、次の2行を入れることを勧めます。
東京カンテイが9月16日に公表した8月の分譲マンションの募集賃料は、首都圏で前年同月比10.0%の上昇(東京23区は5,170円/㎡で6.4%)でした。本物件(【区・市】、築【年】年、【㎡】㎡)を同じ物差しで見ると、募集の目安は月額【万円】で、現在の平均家賃との差は1戸あたり【万円】です。
一方、総務省の消費者物価指数では住んでいる方の家賃は0.7%しか上がっていません。この差は退去のときに次の募集で取り戻せる額であると同時に、更新時に一律に上げると相談やトラブルにつながる額でもあります。更新が近い【戸数】戸について、近隣の同じ築年の事例を揃えたうえで、据え置く戸と相談する戸を分けてご提案します。
「上がっている」と「上げられる」を分けるのが要点です。相場の上昇をそのまま更新の値上げに結びつけると、オーナーの期待だけが先に上がります。取り戻す場面(退去後の募集)と、相談する場面(更新)と、据え置く判断を、同じ段落で言い切ります。
このレポートが言っていないこと
東京カンテイの数字は分譲マンションの募集賃料で、賃貸専用のアパートや戸建て、30㎡未満の単身向け住戸は入っていません。管理会社の管理物件の多くを占める木造アパートの相場は、このレポートからは分かりません。成約賃料でもないので、募集と成約の差(値引き)や、空室期間の長さも分かりません。築年帯別の推移は東京23区・大阪市・名古屋市の3都市について図で示されていますが、築年帯ごとの㎡単価の数値はプレスリリースに載っていないので、本稿も書いていません。消費者物価指数の家賃は全国の数字で、東京カンテイの三大都市圏の数字と同じ範囲ではありません。本稿の「約2.3万円と約1,600円」は、物差しの違う2つの数字を同じ部屋に当てはめた例示で、実際の差は物件ごとに違います。9月以降の賃料がどう動くかは、レポートは予測していません。
よくある質問
Q1. 東京カンテイの「5,170円/㎡」は、うちの管理物件の家賃と比べてよい数字ですか?
そのままでは比べられません。分譲マンション(ファミリータイプ・30㎡以上)の募集賃料の平均で、東京23区の平均専有面積57.27㎡・平均築年18.1年の部屋の数字です。自社の物件が賃貸アパートなら対象外ですし、分譲マンションでも築年と面積を揃えてから比べます。㎡単価×専有面積で1戸の目安を出し、築年の差を加味するのが順序です。
Q2. 千葉県は5ヵ月連続で下がっています。千葉の家賃は下がっているのですか?
東京カンテイは、千葉市内の賃料水準が高い行政区で築浅事例が減少した影響と説明しています。前年同月比では千葉県+7.7%、千葉市+20.9%です。集計に入る部屋の顔ぶれが変わって平均が下がったのであって、同じ部屋の相場が下がったとは書かれていません。
Q3. 募集賃料が1割上がったのだから、更新時に1割上げてよいですか?
借地借家法32条の増額請求は「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当」など3つの事情が根拠で、圏域や区の平均は「近傍同種」ではありません。その物件の近くの、同じ種類・築年帯・広さの事例を揃えて協議するのが筋です。協議が調わなければ借主は相当と認める額(多くは従前の家賃)を払えば足り、貸主は調停を経る必要があります。東京都は貸主に対して理由と根拠の説明を求める注意喚起を9月8日に出しています。
Q4. 消費者物価指数の家賃0.7%と、東京カンテイの10.0%は、どちらが本当ですか?
どちらも本当で、測っているものが違います。消費者物価指数の家賃は、いま住んでいる世帯が実際に払っている家賃の動きで、古い契約もそのまま入ります。東京カンテイは、いま募集に出ている分譲マンションの希望賃料です。前者が継続家賃、後者が新規賃料の動きと考えると、2つの差が賃料ギャップの広がりを示します。
Q5. 定期借家の物件でも32条で増額請求できますか?
定期建物賃貸借で借賃の改定に係る特約があるときは、32条は適用されません(借地借家法38条9項)。特約の定めに従います。特約が無ければ32条が適用されます。定期借家の契約書は、期間と再契約の条項だけでなく、改定条項の有無を先に確かめてください。
Q6. この数字を査定書に引用してよいですか?
東京カンテイはプレスリリースの無断転用を禁じています。査定書に同社の表や図をそのまま貼ることは避け、出典と公表日を明記したうえで、主要な数字を文章で引く範囲にとどめてください。査定の根拠は、自社で集めた近隣の事例を築年と面積で揃えたものが中心になります。
まとめ
東京カンテイの2026年8月の分譲マンション賃料は、首都圏4,242円/㎡で前年同月比10.0%、東京23区5,170円/㎡で6.4%、大阪府は12.8%の上昇でした。下がった千葉・大阪・兵庫は相場ではなく事例の顔ぶれの変化、と同社は説明しています。一方で総務省の消費者物価指数の民営家賃は0.7%。募集賃料が1割上がる間に住んでいる人の家賃はほとんど動かず、賃料ギャップが1年で大きく開きました。管理会社の仕事は、㎡単価を面積と築年で部屋の家賃に戻し、戸ごとのギャップを数え、更新が近い戸を根拠のある順に選び、据え置く戸と相談する戸を分けてオーナーに示すことです。圏域の平均は「近傍同種」ではない、を忘れずに。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月16日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。PDFはブラウザ内で全文を展開して読み、条文はe-Gov法令検索の該当条のみを取得して読みました。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 2026年8月の首都圏・近畿圏・中部圏と都府県の分譲マンション賃料(前月比・前年同月比)、千葉県・大阪府・兵庫県の下落の説明、公表日(9月16日) | 東京カンテイ 市況レポート「2026年8月 東京23区は+0.3%の5,170円/㎡と3ヵ月連続で上昇、各築年帯の動きに目立った変化なし」(2026年9月16日) |
| 圏域・都府県・主要都市の8月の㎡単価、前月比、前年同月比、平均専有面積、平均築年、東京23区・横浜市・さいたま市・千葉市・大阪市・神戸市・名古屋市の説明(特定物件の高額事例、高額事例の減少、築5年以内の上値の重さ)、集計方法(月額募集賃料・ファミリータイプ・30㎡未満と事務所店舗を除外)、直近3ヵ月の流通事例数、2022年1月以降の月間推移表 | 東京カンテイ プレスリリース「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移」(2026年9月16日・PDF) |
| 東京23区・大阪市・名古屋市の新築賃料事例シェアと築年帯別(5年以内・6〜10年・11〜20年・21〜30年・30年超)の賃料推移が図で示されていること(数値表は無い) | 東京カンテイ「築年帯別 分譲マンション賃料の推移」(2026年9月16日・PDF) |
| 2026年7月分の総合指数の前年同月比1.9%、住居のうち家賃0.5%(寄与度0.08)・民営家賃0.7%(0.01)、公表日(8月21日) | 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」・同 結果の概要(PDF) |
| 32条1項(租税その他の負担の増減、土地建物の価格の上昇低下その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の借賃に比較して不相当、契約の条件にかかわらず、不増額特約)、2項(増額の協議が調わないとき請求を受けた者は裁判確定まで相当と認める額を支払えば足りる、不足額に年一割の利息)、38条9項(定期建物賃貸借で借賃改定特約があるときは32条を適用しない) | 借地借家法(平成3年法律第90号)|e-Gov法令検索 |
本稿の計算:㎡単価×平均専有面積による1戸あたりの目安、2022年1月から2026年8月までの上昇率、首都圏59.79㎡での「約2.3万円と約1,600円」の例示、「今週やる5つ」「報告書の2行」は、資料の数字から本稿が出した整理です。築年帯別の㎡単価、成約賃料、賃貸アパートの相場、9月以降の見通しは資料に無いので書いていません。